10 / 255
《裏技》マスター、転生する
これは……魔法のお豆……!?
しおりを挟む
「ほら、そろそろ起きなさーい」
「んんぅ?」
誰だ俺の頰をペチペチ叩くのは。
「ほら、さっさと行かないとライガウルフの討伐が出来なくなっちゃうわよ」
「ふわぁ~、ああ~」
欠伸をしながら体を捻らせて空中浮遊裏技を解除する。
「あでっ」
「ちょ、大丈夫? そんなので怪我しないで頂戴ね?」
意外とこの高さから落ちるのも痛いもんだな。
「安心しろ、慣れてるから」
「慣れてるって……いつも浮いて寝ているの……?」
「んな事はない、でもまあ……敵に襲われにくくなるし悪くないかもな……」
「やめて! なんか心配になるから!」
空中に浮くの結構安全で良いと思うんだけどな……。
身支度をして、朝食を食べる為部屋を出て食堂へと向かう。
「おや、早起きなんだね」
昨日、宿の受付をしていたおばさんが眼鏡をクイッと上げてそう言う。
「はい、クエストがあって」
「クエストって事はあんたら、冒険者なのかい?」
「そうです」
「冒険者ねぇ……日々命をかけて魔物共と戦うのは怖くないのかい?」
「こ、怖いですけど、誰かがやらなきゃいけない事ですから」
ルリカがそう言うと、おばさんは少し笑顔になった。
「そうかい、ちょっと待ってな、すぐに用意してやるから」
おばさんはそう言って奥へと行ってしまった。
早朝なのもあって食堂には俺ら以外人がいなかった。
いやぁーやっぱ貸し切り状態ってなんかテンション上がるな。
「さっきのお婆さん不思議な雰囲気の人だったわね」
「そうだな……と言っても、気が強いだけにも思うがな」
「あはは、確かにそうかもね」
そんな事を話していると奥からおばさんが出てきた。
「ほら、朝食だよ」
おっ、来たか。
えーっと米にシャケに……こ、これは……!?
「あれ? どうしたのイイジマ?」
「……おばさん」
「なんだい?」
「これ、どこで売ってるのか教えてくれ」
俺が指さしてそう言ったのは、『納豆』だった。
「ん? それかい? それはうちだけで作ってる魔法の豆だからどこにも売ってないよ」
「頼む、作り方を教えてくれ」
俺は普通に納豆が大好物で、よく私生活でも食べていた。
ただ、自由度が高いはずのこの『インフィニア・ワールド』には何故か納豆が無く、少しだけ悲しかったのだが、まさかこんな所にあるとは……。
「いくら冒険者さんのお願いでもダメだ。それを作るのにかなりの時間がかかったからね、そう易々と教えられないよ」
「そこを何とか!」
そう言うとおばさんは手を顎に当てて考え始めた。
「……分かった、教えてあげよう」
「! ありがとうございます!」
「ただし……あーちょっと待ちな」
食堂の奥へ行き、すぐに戻って来た。
「ほら」
そう言われて一枚の紙を渡される。
「これは?」
「一応私は薬を作ったりもしていてね、その素材さ。こんなおいぼれが魔物のいる森に行ったら死んじまうからね」
なるほど、つまりこれはクエストだな?
「分かった、引き受ける」
「ちょ、イイジマ! この豆凄い変な臭いなのにそこまで作り方を知りたいの!?」
「そこを目を瞑ればバカ美味い豆だから、試しに食ってみ」
「おや、あんた食った事ないはずなのに何で美味いって分かるんだい?」
……な、なんて言おう?
元いた世界で食った事があるからです……何て言えるわけねぇしな。
「か、勘だ! 絶対美味しいと思ったんだ!」
「…………」
あちゃー、ダメだったか?
「ははははは! そうか、勘か! ははは!」
なんか爆笑してる。良かったっぽいな。
「ほらほらさっさと食っちまいな、冷めちまうよ」
「あっ、いただきまーす」
ルリカが納豆を一口食べる。
「ん? ……んぅ~、ん?」
分かる、初めて食った時そんな反応になるよな。
「イイジマ、本当にこれが美味しいの?」
「食い方が違う、米にかけて食うんだ」
「あっ、そうなの?」
ルリカがかけ始めたので、俺も米にかけて食う。
「あーやっぱ美味い」
「本当ね、米にかけると凄く美味しくなるわ」
そのままパクパク食べる。
というか納豆があるだけで箸が進む進む。
多分10分程で食べ終わった。
「この豆……凄く美味しかったわ……」
「だろ? やっぱ納豆って偉大なんだよな」
「な、納豆?」
「この豆の名前だ。合ってるか?」
「合ってるよ、全く何で知ってるんだか。最近の冒険者は怖いね~」
そう言っておばさんは食器を持って奥へと行ってしまった。
「それじゃ、行きましょ」
「ああ」
もう少し納豆食べたかったなと思いながら宿を出て――
「今更だけど、私達木にタックルするって中々ヤバい事してるわよね」
「……そうだな」
今が早朝で本当に良かったとも思える奇行をするのだった。
「んんぅ?」
誰だ俺の頰をペチペチ叩くのは。
「ほら、さっさと行かないとライガウルフの討伐が出来なくなっちゃうわよ」
「ふわぁ~、ああ~」
欠伸をしながら体を捻らせて空中浮遊裏技を解除する。
「あでっ」
「ちょ、大丈夫? そんなので怪我しないで頂戴ね?」
意外とこの高さから落ちるのも痛いもんだな。
「安心しろ、慣れてるから」
「慣れてるって……いつも浮いて寝ているの……?」
「んな事はない、でもまあ……敵に襲われにくくなるし悪くないかもな……」
「やめて! なんか心配になるから!」
空中に浮くの結構安全で良いと思うんだけどな……。
身支度をして、朝食を食べる為部屋を出て食堂へと向かう。
「おや、早起きなんだね」
昨日、宿の受付をしていたおばさんが眼鏡をクイッと上げてそう言う。
「はい、クエストがあって」
「クエストって事はあんたら、冒険者なのかい?」
「そうです」
「冒険者ねぇ……日々命をかけて魔物共と戦うのは怖くないのかい?」
「こ、怖いですけど、誰かがやらなきゃいけない事ですから」
ルリカがそう言うと、おばさんは少し笑顔になった。
「そうかい、ちょっと待ってな、すぐに用意してやるから」
おばさんはそう言って奥へと行ってしまった。
早朝なのもあって食堂には俺ら以外人がいなかった。
いやぁーやっぱ貸し切り状態ってなんかテンション上がるな。
「さっきのお婆さん不思議な雰囲気の人だったわね」
「そうだな……と言っても、気が強いだけにも思うがな」
「あはは、確かにそうかもね」
そんな事を話していると奥からおばさんが出てきた。
「ほら、朝食だよ」
おっ、来たか。
えーっと米にシャケに……こ、これは……!?
「あれ? どうしたのイイジマ?」
「……おばさん」
「なんだい?」
「これ、どこで売ってるのか教えてくれ」
俺が指さしてそう言ったのは、『納豆』だった。
「ん? それかい? それはうちだけで作ってる魔法の豆だからどこにも売ってないよ」
「頼む、作り方を教えてくれ」
俺は普通に納豆が大好物で、よく私生活でも食べていた。
ただ、自由度が高いはずのこの『インフィニア・ワールド』には何故か納豆が無く、少しだけ悲しかったのだが、まさかこんな所にあるとは……。
「いくら冒険者さんのお願いでもダメだ。それを作るのにかなりの時間がかかったからね、そう易々と教えられないよ」
「そこを何とか!」
そう言うとおばさんは手を顎に当てて考え始めた。
「……分かった、教えてあげよう」
「! ありがとうございます!」
「ただし……あーちょっと待ちな」
食堂の奥へ行き、すぐに戻って来た。
「ほら」
そう言われて一枚の紙を渡される。
「これは?」
「一応私は薬を作ったりもしていてね、その素材さ。こんなおいぼれが魔物のいる森に行ったら死んじまうからね」
なるほど、つまりこれはクエストだな?
「分かった、引き受ける」
「ちょ、イイジマ! この豆凄い変な臭いなのにそこまで作り方を知りたいの!?」
「そこを目を瞑ればバカ美味い豆だから、試しに食ってみ」
「おや、あんた食った事ないはずなのに何で美味いって分かるんだい?」
……な、なんて言おう?
元いた世界で食った事があるからです……何て言えるわけねぇしな。
「か、勘だ! 絶対美味しいと思ったんだ!」
「…………」
あちゃー、ダメだったか?
「ははははは! そうか、勘か! ははは!」
なんか爆笑してる。良かったっぽいな。
「ほらほらさっさと食っちまいな、冷めちまうよ」
「あっ、いただきまーす」
ルリカが納豆を一口食べる。
「ん? ……んぅ~、ん?」
分かる、初めて食った時そんな反応になるよな。
「イイジマ、本当にこれが美味しいの?」
「食い方が違う、米にかけて食うんだ」
「あっ、そうなの?」
ルリカがかけ始めたので、俺も米にかけて食う。
「あーやっぱ美味い」
「本当ね、米にかけると凄く美味しくなるわ」
そのままパクパク食べる。
というか納豆があるだけで箸が進む進む。
多分10分程で食べ終わった。
「この豆……凄く美味しかったわ……」
「だろ? やっぱ納豆って偉大なんだよな」
「な、納豆?」
「この豆の名前だ。合ってるか?」
「合ってるよ、全く何で知ってるんだか。最近の冒険者は怖いね~」
そう言っておばさんは食器を持って奥へと行ってしまった。
「それじゃ、行きましょ」
「ああ」
もう少し納豆食べたかったなと思いながら宿を出て――
「今更だけど、私達木にタックルするって中々ヤバい事してるわよね」
「……そうだな」
今が早朝で本当に良かったとも思える奇行をするのだった。
11
お気に入りに追加
1,039
あなたにおすすめの小説
この世界はバグで溢れているのでパーティに捨石にされた俺はそのバグを利用して成り上がります
かにくくり
ファンタジー
冒険者マール・デ・バーグは、同期の仲間がレベル30まで上昇する中、未だにレベルが10までしか上がっていない落ちこぼれ冒険者だった。
ある日強敵を前に仲間達に捨石にされ、モンスターに殺されかける。
その時マールは走馬灯と共に前世の記憶を思い出す。
その前世はゲーム好きの日本の高校生で、自分は当時プレイしていたバグまみれで有名なRPG、ファンタシー・オブ・ザ・ウィンドの世界に転生してしまった事に気付く。
この世界では原作で発生するバグも完璧に再現されているようだ。
絶体絶命というところを女勇者ユフィーアに助けられるが、何故かそのまま勇者に惚れられてしまう。
これもバグか?
どうせ自分は真っ当に経験を積んでもこれ以上レベルが上がらないバグったキャラクターだ。
仕方ないので勇者と一緒にバグ技を駆使して成り上がります。
※作中で使用したバグ技の元ネタとか当ててみて下さい(@'-')b
※時間差で小説家になろうにも掲載しています。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる