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第24話 アダルトビデオ

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「父親の部屋のクローゼットに、怪しげな段ボール箱があって、その中にいろいろ入ってたんだ。見つかるとまずいから、適当に何枚かだけ抜いてきたんだけど」

宮本さんがそう言いながら、鞄の中から数枚のDVDを取り出した。

どれも明らかにアダルトビデオだ。

生唾を飲み込む。
本当なら、すぐにでも飛びついて見たいところだが、部屋に女の子がいるのでそうもいかない。


だが、それに真っ先に手を伸ばしたのが桜井さんだった。

「わー、すごい。子供の頃、レンタルビデオ屋さんのアダルトコーナーに入ってしまって、怒られたことがあります。オッパイの写真がいっぱい飾ってあって、何だろうここはって思った覚えがあります」

パッケージを次々と手に取って見ている。

「いろいろありますね。でも、まずはこれにしましょう」

と桜井さんが選んだのは、『童貞男と隣の巨乳奥様』というタイトルだった。

いかにも童貞といった感じの男が、巨乳の女性に迫られている写真がパッケージだ。

「なんか、この男の人が先輩に似てるんですよね」
と、桜井さんがニヤニヤしながら言う。

自分でもそう思ったが、女の子に言われるとちょっとショックだ。


ちょっとコミカルなドラマ仕立てになっている。
巨乳の主婦が、隣の童貞男にイタズラをしてからかい、童貞を奪ってしまうのだが、逆に童貞男の性欲パワーに圧倒されてしまうという、くだらない話だ。

パイずりシーンを見て、「男の人はこういうのやって欲しいんですか?」と桜井さんか聞くと、

「そりゃ、男の憧れだからな」と宮本さん。

桜井さんは自分の胸の大きさを気にしているらしい。

最初はダメダメだった童貞が、女性を圧倒するシーンには、桜井さんも「すごい」と言って驚いていた。



次に見たのが、レイプもの。

処女の女の子が、複数の男達に襲われてしまうものだ。

こちらはストーリーらしきものはなく、ドキュメンタリー風に撮られている。

みんな、時々飲み物を口に運ぶだけで、言葉を発せずに見ている。

桜井さんもなんかもじもじしている。

見終わって、「なんか、すごかったな」
みんな興奮しながらも、うまく思ったことが言えず黙っていた。


「今の女の子、処女だったみたいだけど、桜井って、処女なの?」
宮本さんがズケズケと聞く。

桜井さんは「どうせ、処女ですよ」とふくれっ面で答える。

ちょっと、ホッとした。

「恵美ちゃんも、智花ちゃんも、綾ちゃんも、一緒にバイトしてる女の子達はみんな処女じゃないのに、私だけ処女なんです……」

え、あの女優さんみたいに美女な恵美さんも、真面目で男っ気がなさそうだけどすごく綺麗な智花さんも、アイドルグループにいそうな綾さんも、みんな処女じゃなかったのか……。

聞いていた中山も宮本さんも少なからずショックを受けているようだ。


男は3人とも、その女の子達がどこかの男に抱かれているシーンを想像していた。



「次は、もっとソフトなのにしましょう。これなんかどうですか?」

みんなが妄想している間に桜井さんが選んだのは、『不倫旅情』というタイトルだった。

温泉をバックに、キレイな女性が憂いを帯びた表情で立っている。
タオルを前に当てているが、胸は隠していない。

これも半分ドラマ仕立てで、不倫をしている男女が温泉に行く話しだ。

DV夫から恋人に救出されて二人で逃避行する話に、

「私もこんら風ならされてみたいれす」
と桜井さんが寄りかかってくる。
なんだかロレツも回っていない。

「さっきのレイプものとどっちがいい?」と宮本さん。

「こっちれすよ。レイプは嫌れす」

「でも、なんか食い入るように見てたじゃん」

「まあ、ちょっとドキドキはしちゃっらけろ……」ともじもじしている。

画面では、主役の女優さんが不倫相手の男性と部屋で抱き合っている。

「れも、やっぱり、こっちの方がいいれす」

「それならやってみる? 俺と」と宮本さん。

「いやれす。れも……颯太先輩ならいいかな……」

「……!?」

「おっ、それならやってみろよ」
と宮本さんがけしかけると、中山も一緒になってはやし立てる。

桜井さんもその気になって、画面の女優さんと同じように、目を閉じてキスを迫る。

「桜井さん、酔ってるでしょう」

「全然酔ってなんからいれすお」

さらにぐいぐい体を寄せてくる。

(いったい、どうするればいいんだ……!?)
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