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第20話 デート
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待ち合わせの30分前には着いてしまった。
チラチラと改札の方を見ながらスマホのゲームをやっていると、麻衣が現れた。約束の10分前だ。
「お腹は?」と麻衣が聞いてくるので、
「遅れちゃまずいと思って、何も食べないで出てきちゃった」と答えると、
麻衣はニコッと笑って、「よかった。行こう」と言って歩き出した。
一応、駅周辺の、女の子が喜びそうな店をチェックしておいたのだが、どんな店に連れて行け
ばいいのか全然分からなくて心配だった。
でも、麻衣は行きたい店があるらしく、スタスタと歩いて行く。
少しホッとした。
麻衣は道に迷うことなく、一件の店の前に到着した。
(知ってる……)
『バッファローステーキ』
この辺のプロレスファンの間では有名な店だ。
元プロレスラーのコージーさんが始めた店で、現役レスラーはもちろん、プロレスファン達の聖地とも言われている店だ。
「ここで一度食べてみたかったんだ」と嬉しそうに店を見上げる。
店の前までは何度か来たことがあるが、中に入ったことはないのだという。
そんなことを話しているうちに、11時の開店時間になって、店が開いた。
ボリュームのあるメニューが中心だが、女性のプロレスファンが来ることも多いので、小さいサイズのメニューも充実している。
「おなかすいちゃった」
麻衣は嬉しそうにメニューを眺める。
「こういうの食べてみたいけど……」
メニューのトップに出ている大きなステーキを指さす。
「いいじゃん、それにすれば」
「えー、絶対食べきれないよ。それにこれ頼むの恥ずかしいし」
「それじゃ、俺がそれを頼むから、白戸さんはレディスセットを頼んで。それで、料理が来たら、チェンジしよう。もし食べきれなかったら、その分は俺が食べるから」
「え、いいの? それやってみたい」
と嬉しそうに言う。
注文したステーキが届くと、思っていた以上のボリュームだった。
店員さんが両方のメニューを並べてくれるのを待って、それからそっと肉の皿を交換した。
「うわー」
肉を前に、麻衣が嬉しそうに目を輝かせる。
「いただきまーす」
と美味しそうに肉をほおばり始めた。
「おいひぃ!」
麻衣が嬉しそうに食べている。
レディスセットは、野菜がたっぷりだが、肉も150gと、それなりに食べ応えがあった。
颯太がレディスセットを食べ終わった頃には、麻衣も肉を半分以上食べていた。
麻衣が「もう無理」と言ってギブアップした時に、皿の上に残っていたのは、油の塊の部分だけだった。
1ポンドが450gくらいだから、400gくらいは食べてしまったようだ。
「すげー、ほとんど食べ切っちゃったじゃん」
「普段はこんなに食べないんだよ。今日は美味しかったから……」と少し恥ずかしそうに言う。
もう無理かなと思いながら、レディスセットのデザートのシャーベットを渡すと、
「さっぱりして美味しい!」とそれもペロリと平らげた。
やっぱり、根が大食いらしい。
店を出てから、「他の人には、1ポンドステーキを食べたのは、絶対内緒にしておいてね」と念を押された。
会場に着くと、既に入場は始まっていた。
まずはグッズ売り場に行こうと話していると、声をかけられた。
同じクラスの松本と宮城だ。
この二人はゲームの中にも登場していて、一緒にミッションに行ったトマスとミックだ。
背後の麻衣に気づき。
「あれ、白戸じゃね? お前ら付き合ってるの?」
「いや、そういうわけじゃ……。白戸さんが、生でプロレスを見たことがないって言うから」
「そうか」
「宮城達も、プロレス好きだったんだ」
これまで彼らとプロレスの話しなどしたことがなかった。
「好き、と言えば好きだけど…、な」
ニヤニヤしながら松本が答える。
「今日も出てるビガロって選手いるだろ。親戚なんだよ、宮城の。」
「えーっ」麻衣も驚いている。
「宮城の母さんの兄貴らしいぞ。つまり、叔父さんってヤツか」
松本は自分のことのように自慢げに話す。
「それで、よくチケットとか貰って見に来るんだよ」
今日もそれで見に来たらしい。
彼らはリングサイドの席らしく、そこで別れた。
「すごいね、親戚だなんて」
「そんなことあるんだね」
などと、二人で変に感心しながらグッズ売り場に向かった。
買い終わって先に席で待っていると、麻衣は早速、買ったTシャツに着替えてきたらしい。
ワンサイズ大きいダボッとしたTシャツが可愛さを増す。
2階の奥の方の席だったが、やはり生で伝わってくる迫力はすごく、声をからして応援してしまった。
麻衣も、「いけー!」「やっちゃえ!」「なにやってんだ!」と、普段学校で見せるキャラとはほど遠い叫び声を上げて応援していた。
これも学校では内緒らしい。
試合は、ビガロ・アーチャー組の勝利に終わった。
興奮もさめやらぬまま、出口に向かっていると、さっきの松本と宮城が階段下に立っていた。
「いやー、すごかったな」と興奮気味に感想を話していると、
「このあと、打ち上げがあるんだけど、よかったら、お前らも来ないか?」
「え、いいの?」
「いつも、友達連れてこいって言われてるんだけど、なかなかプロレス見に来るやつっていないしな」
「行く行く!」麻衣も乗り気だ。
「それじゃ、こっち」と裏口に向かった。
久しぶりに試合を見れただけじゃなくて、麻衣とデートして、憧れのビガロ選手とも会えるなんて。なんていい日なんだろう。
でも、そこで待っていたのは、あの瞬間だった。
チラチラと改札の方を見ながらスマホのゲームをやっていると、麻衣が現れた。約束の10分前だ。
「お腹は?」と麻衣が聞いてくるので、
「遅れちゃまずいと思って、何も食べないで出てきちゃった」と答えると、
麻衣はニコッと笑って、「よかった。行こう」と言って歩き出した。
一応、駅周辺の、女の子が喜びそうな店をチェックしておいたのだが、どんな店に連れて行け
ばいいのか全然分からなくて心配だった。
でも、麻衣は行きたい店があるらしく、スタスタと歩いて行く。
少しホッとした。
麻衣は道に迷うことなく、一件の店の前に到着した。
(知ってる……)
『バッファローステーキ』
この辺のプロレスファンの間では有名な店だ。
元プロレスラーのコージーさんが始めた店で、現役レスラーはもちろん、プロレスファン達の聖地とも言われている店だ。
「ここで一度食べてみたかったんだ」と嬉しそうに店を見上げる。
店の前までは何度か来たことがあるが、中に入ったことはないのだという。
そんなことを話しているうちに、11時の開店時間になって、店が開いた。
ボリュームのあるメニューが中心だが、女性のプロレスファンが来ることも多いので、小さいサイズのメニューも充実している。
「おなかすいちゃった」
麻衣は嬉しそうにメニューを眺める。
「こういうの食べてみたいけど……」
メニューのトップに出ている大きなステーキを指さす。
「いいじゃん、それにすれば」
「えー、絶対食べきれないよ。それにこれ頼むの恥ずかしいし」
「それじゃ、俺がそれを頼むから、白戸さんはレディスセットを頼んで。それで、料理が来たら、チェンジしよう。もし食べきれなかったら、その分は俺が食べるから」
「え、いいの? それやってみたい」
と嬉しそうに言う。
注文したステーキが届くと、思っていた以上のボリュームだった。
店員さんが両方のメニューを並べてくれるのを待って、それからそっと肉の皿を交換した。
「うわー」
肉を前に、麻衣が嬉しそうに目を輝かせる。
「いただきまーす」
と美味しそうに肉をほおばり始めた。
「おいひぃ!」
麻衣が嬉しそうに食べている。
レディスセットは、野菜がたっぷりだが、肉も150gと、それなりに食べ応えがあった。
颯太がレディスセットを食べ終わった頃には、麻衣も肉を半分以上食べていた。
麻衣が「もう無理」と言ってギブアップした時に、皿の上に残っていたのは、油の塊の部分だけだった。
1ポンドが450gくらいだから、400gくらいは食べてしまったようだ。
「すげー、ほとんど食べ切っちゃったじゃん」
「普段はこんなに食べないんだよ。今日は美味しかったから……」と少し恥ずかしそうに言う。
もう無理かなと思いながら、レディスセットのデザートのシャーベットを渡すと、
「さっぱりして美味しい!」とそれもペロリと平らげた。
やっぱり、根が大食いらしい。
店を出てから、「他の人には、1ポンドステーキを食べたのは、絶対内緒にしておいてね」と念を押された。
会場に着くと、既に入場は始まっていた。
まずはグッズ売り場に行こうと話していると、声をかけられた。
同じクラスの松本と宮城だ。
この二人はゲームの中にも登場していて、一緒にミッションに行ったトマスとミックだ。
背後の麻衣に気づき。
「あれ、白戸じゃね? お前ら付き合ってるの?」
「いや、そういうわけじゃ……。白戸さんが、生でプロレスを見たことがないって言うから」
「そうか」
「宮城達も、プロレス好きだったんだ」
これまで彼らとプロレスの話しなどしたことがなかった。
「好き、と言えば好きだけど…、な」
ニヤニヤしながら松本が答える。
「今日も出てるビガロって選手いるだろ。親戚なんだよ、宮城の。」
「えーっ」麻衣も驚いている。
「宮城の母さんの兄貴らしいぞ。つまり、叔父さんってヤツか」
松本は自分のことのように自慢げに話す。
「それで、よくチケットとか貰って見に来るんだよ」
今日もそれで見に来たらしい。
彼らはリングサイドの席らしく、そこで別れた。
「すごいね、親戚だなんて」
「そんなことあるんだね」
などと、二人で変に感心しながらグッズ売り場に向かった。
買い終わって先に席で待っていると、麻衣は早速、買ったTシャツに着替えてきたらしい。
ワンサイズ大きいダボッとしたTシャツが可愛さを増す。
2階の奥の方の席だったが、やはり生で伝わってくる迫力はすごく、声をからして応援してしまった。
麻衣も、「いけー!」「やっちゃえ!」「なにやってんだ!」と、普段学校で見せるキャラとはほど遠い叫び声を上げて応援していた。
これも学校では内緒らしい。
試合は、ビガロ・アーチャー組の勝利に終わった。
興奮もさめやらぬまま、出口に向かっていると、さっきの松本と宮城が階段下に立っていた。
「いやー、すごかったな」と興奮気味に感想を話していると、
「このあと、打ち上げがあるんだけど、よかったら、お前らも来ないか?」
「え、いいの?」
「いつも、友達連れてこいって言われてるんだけど、なかなかプロレス見に来るやつっていないしな」
「行く行く!」麻衣も乗り気だ。
「それじゃ、こっち」と裏口に向かった。
久しぶりに試合を見れただけじゃなくて、麻衣とデートして、憧れのビガロ選手とも会えるなんて。なんていい日なんだろう。
でも、そこで待っていたのは、あの瞬間だった。
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