不死身のバンパイアになった俺は、廃墟と化したこの世界で好きに生きようと思います

珈琲党

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37 お風呂タイム

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 ポチは路地裏で気を失っている少女を見つける。その少女は、魔術師見習いのクロエだった。クロエは追手から逃げている最中に異界震に遭遇したらしい。崖から足を滑らせて落ちたはずが、気が付いたらあの路地裏にいたと言う。
 ともかく、ホビットたちやジャンヌと同じく、クロエも庁舎に住まわせることにした。


 クロエは晩御飯のカレーを十分に堪能したらしい。腹を抱えて横になっている。

「ぅぅぅぅ、もう食べられません。ふぅぅぅ」

「やっぱりカレーはいつ食べても最高だ!
 クロエ、腹も膨れたし風呂に行こう。
 砂ぼこりや何かで体も汚れてるから、サッパリしないとな」

 すっかり風呂の魅力にやられているジャンヌは、クロエを公衆浴場に誘った。

「風呂って何ですか?」

 クロエもやはり、湯に浸かるという発想自体がないようだった。

「ともかく行けば分かる」

「は、はい……」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 脱衣所の棚の前で、クロエが固まる。

「えぇ⁉ こっ、ここで服を脱ぐんですか?」

「そうだ。この棚に脱いだ服を入れる」

「えぇぇぇ……」

 ジャンヌはさっさと服を脱いで素っ裸になってしまった。
 クロエは前を隠しながら、もたもたと服を脱ぐ。

「ほらほら、行くぞ!」

「ちょっ、ちょっと待ってください」

 恥ずかしそうに前かがみになりながら、ジャンヌの後を付いていく。

 二人は洗い場の椅子に並んで座る。

「こっ、ここで体を洗うんですか?」

「そうだ。この石鹸を泡立てて、このスポンジで体をこするんだ。
 で、ここの湯を手桶でくんで、ざっと浴びて泡を流す」

「こっ、こうですか?」

 ゴシゴシ……
 ざぱぁぁぁ

「ふはぁぁぁ」

「そうそう。髪はシャンプーで洗って、洗い終わったらリンスだ」

「はい」

 わしゃわしゃ……
 ざぱぁぁぁ

「ぶっはぁぁぁ……あぁ、サッパリしますね」

「だろ? フフフ」

 初めは恥ずかしがっていたクロエも、結局ジャンヌたちと同様、風呂の気持ちよさに目覚めたようだ。

「ふあぁぁぁぁ……」

「ふぅぅ、良い湯加減だ」

 ジャンヌもクロエも湯に浸かりすぎて、体が真っ赤になるのだった。


 二人は風呂から上がり、浴場入口の休憩コーナーで飲み物片手に涼む。

「っはぁぁ。この果実水、冷えててすごい美味しいです!」

「ぷっはぁ。だろ? 風呂上がりに冷たいワインも最高だ!」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 二人が浴場から庁舎に戻ってきた。

「おっ、風呂に入って来たのか。
 二人とも美人さんになったな、ハハハ」

「ブッ、ブラドは世辞が上手くて困る」

「エヘヘ、ありがとうございます」

 ジャンヌの顔がもっと赤くなり、クロエが少し照れる。

「クロエ、分からないことがあったら、ホビットたちかジャンヌに聞くんだぞ」

「はい、どうもありがとうございます、ブラドさん」

「ジャンヌもクロエにいろいろ教えてやってくれ」

「もちろんだ」


「……うん?」

「どうした、ブラド」

 ガゥガゥと何かを伝えにポチがやって来た。俺の超感覚も何かを捉えた。
 ホビットたちも俺たちの様子を見て、何かに感づいたのか表情を硬くする。

「殺気だ! 三つかな……」

「何!?」

「クロエは中にいろ。お前たちも外へ出てくるなよ」

「「「はい、領主さま!」」」

「ジャンヌは迎撃の準備をしてくれ」 

「承知!」

 ジャンヌはすぐに戦闘モードになり、風のように自室に消える。
 クロエは心配そうな顔だ。

「大丈夫。俺たちなら、ドラゴンをも撃退できるのだ」

「えぇ……」

 あまり信用してなさそうだったが、クロエの表情が少し柔らかくなる。

「ともかく中にいるんだ」

「はい」

「ブラド、準備出来たぞ!」

 ジャンヌがあっという間に服を着替えてきた。
 ドワーフ謹製ワイバーン革の赤い戦闘服に身を包み、これまたワイバーン革の兜とグローブを付けている。手にはドワーフが鍛えたロングソードを下げている。

 俺はいつもの通り靴を脱ぐ。上着は念のために着たままだ。手にはジャンヌと同じくドワーフのロングソードだ。

「よし。相手は正面駐車場にいる。数は三か四」

「分かった!」

「わふわふ」


「いくぞ!」

 俺は庁舎一階ホールの玄関扉を開けた。









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