不死身のバンパイアになった俺は、廃墟と化したこの世界で好きに生きようと思います

珈琲党

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11 頑丈な靴

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 屋上にいた俺たちはワイバーンの襲撃を受けた。
 塔屋や高架水槽が破損したものの、人的な被害がなかったのが幸いだった。

 
 倒したワイバーンはさっそく解体された。
 内臓はすぐさまポチ達魔狼の胃袋に収まり、各部の肉は切り分けられ、ホビットやドワーフたちに配られた。革と骨の多くはドワーフたちが回収していった。なにかの材料に使うらしい。

「それにしても、本当にドラゴンを倒すとはのぉ」

「ドラゴンっていうか、ワイバーンだけどな。
 でも、倒せるって自信満々に言ってたじゃないか」

「言うにはいったが、まぁアレじゃ……」

 投げやりを作ったドワーフ本人も半信半疑だったらしい。
 硬い鱗のない口の中に命中したのが良かったのかもな。

「大型の妖魔に効果があるのは間違いないよ。
 同じのを何本か作ってもらえるかな」

「うむ、承知した。
 それと、お前さんに合った服と靴も作った方がいいのぉ」

 ドワーフが俺のボロボロの恰好を見て言った。

「ああ、これな。
 ちょっと本気を出したら、すぐにこうだよ。
 全力疾走したら、たぶん丸裸になるな」

「お前さんも一応領主なんじゃから、それはいかんのぉ」

「一応ってなんだよ……」



 数週間後。

「ほれ、頼まれておったヤツメウナギじゃ。
 とりあえず五本もあれば十分じゃろ。
 それと、服と靴も出来ておるぞ」

「おぉ! かっちょいいな」

 服も靴もワイバーンの革で出来ている。
 ワイバーンの表皮はもともとは鮮やかは赤だが、なめすことで深くて暗い乾いた血のような色になった。表面の細かい凹凸と相まって実に渋い風合いだ。
 服は上下ともにライダースのように各部に補強が入ったデザイン。靴はくるぶしまでのハーフブーツだ。機能性と耐久性を重視した作りになっている。

 俺は待ちきれなくなって、さっそく着替えてみた。

「軽い! それに柔らかい!」

「そうじゃろう。
 ワイバーンは空を飛ぶのに特化した竜じゃからの。
 革も骨も軽くて丈夫なのじゃ」
 
「じゃあ、ちょっと試してみるか……」



 俺は学校のグラウンド跡地の真ん中に立ち、そこでおもむろに全力の反復横跳びを開始した。音速の往復運動によって地面はえぐれ、猛烈な砂嵐が巻き起こった。
 俺の動きに少し遅れて衝撃波が発生、衝撃波同士がぶつかり合って辺りにものすごい衝撃音が鳴り響いた。
 しばらくするとグラウンドには、すり鉢状の大きなくぼみができていた。

 遠くで様子を見ていたドワーフが、ゴーグルと耳栓を外して近づいてくる。
 
「お前さんの怪力は規格外すぎて出鱈目じゃわぃ……」

 俺の身体能力は妖魔の血を飲むごとに増大しているようなのだ。
 特にワイバーンの血を飲んだ時のパワーアップは段違いだった。

「服とズボンは問題ない。さすがドワーフが作っただけのことはあるな。
 問題は靴底だな……」

 穴が開いてしまった靴底を見せる。
 壊れたのではなく、すり減って底がなくなってしまったのだ。

「うむ、どんなに硬い素材でも摩耗は防げんよ。
 いくら頑丈に作っても、どうしても限界はある。
 それはそうと、お前さんの足の裏は大丈夫なのか?」

「うん。俺の体はやたらと丈夫だし、万一怪我をしてもすぐに治るからな。
 そうか! 全力で動くときだけ裸足になればいいんだよ」

「……逆転の発想とでもいうのかのぉ。
 滅茶苦茶な話じゃが、それで解決するなら、もうそれで良いわぃ」

 自分が作った物にプライドがあるドワーフが少しすねてしまう。

「まぁまぁ。
 この靴も普段履くには丁度いいし、格好いいからね。
 同じのを何足か作ってもらえる?」

「……お前さんが領主でなければ、叩き出しておるところじゃぞ。
 しかしまぁ、ワイバーンを倒したことに免じて作ってやるわぃ」

「いつもすまないねぇ」

「それは言わない約束じゃよ」






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