異世界ネクロマンサー

珈琲党

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34 ゲートのセキュリティ

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 ある日の王都。


「おい、ボーマンじゃないか! 久しぶりだな、今までどうしてたんだ?
 え!? うわぁぁぁぁぁぁぁ! だっ、誰かぁ! ゾゾゾ、ゾンビだぁ!」


 俺は操っていたゾンビとのつながりを切った。

「さすがに、知り合いにはバレてしまうか、しくじったな……。惜しいがコイツはこれで廃棄だ。」

『ゾンビの扱いも上手くなったもんじゃのぉ』

『まぁな、やっぱり自分で作ったゾンビは操りやすい。マクド村のはやっぱり特殊なんだな』

「あのゾンビ退治されちゃうのかな」

 リサがどこか安心したような顔で言う。リサはゾンビが苦手なのだ。スケルトンと比べて気持ち悪いのは確かだからな。

「街中で見つかったから、そうなるだろうな。いろいろと実験も出来たし、それなりに成果はあったから、もういいよ。大商人たちへの警告にもなっただろうし……」


 一カ月くらい前に、俺は盗んだ札でゲートをくぐろうとした奴を捕まえたのだった。
 スケルトンたちはセキュリティとして非常に優秀で、出入りの行商人たちの顔をしっかり覚えているのだ。彼らは絶対に顔を見間違えることがないので、たとえ本物の札を持っていても、顔が違えばすぐにバレてしまうのだった。

 捕らえた奴に話を聞くと、どうやら大商人の一人らしく、「俺を誰だと思ってるんだ」とか「金をやるから中に入れろ」とか横柄な口調で好きなことを言っていた。こういう奴に下手にぬるいことをすれば、なめられてしまう。うっかりかかわりをもってしまうと、彼らの政治力を使って、ズルズルと連中の良いように持っていかれる恐れもある。
 それに不法に侵入しようとしたわけだから、間違いなく敵なのだ。俺は容赦しなかった。

 スナイパーに命じて、心臓に一撃。たぶん、そいつ自身も気が付かないうちに昇天したはず。俺なりの恩情だ。
 すぐさま俺は死体を回収して、偽りの魂を吹き込んだ。人間のゾンビを一から作るのは久々だったが、要領はスケルトンと何も変わらない。

 ここ最近は、新しく作ったそのゾンビを操って。周辺の村や街の情報を集めて回っていたのだった。やはり情報は直に目で見て(といっても、ゾンビの目を通してだけど)集めるのが良い。諜報要員のベロニカはいまいち熱心さに欠けるからなぁ。


 札の本来の持主は、俺が侵入者を始末した直後に、真っ青な顔でゲート前にやって来た。

『本当に申し訳ございません。必死に探し回ったんですが、見つからなくて……』

『あぁ、札なら回収してあるから大丈夫だ。ほら、これだな。もう失くすなよ』

 まぁ、スられたんだから、ほとんど不可抗力だけどな。

『あ、ありがとうございます!』

 何か札に代わるものがないものかと考えてみたが、なかなかないんだよなぁ。パスワードにしても何にしても、完ぺきなものは元の世界にもなかったしな。とりあえず、入場管理は今のままで行こう。


 家の周りの石畳工事は、リサとその手下のスケルトンたちによって、着々と進んでいる。
 リサはスケルトンたちに名前を付けていて、俺がちゃんと設定してやったので、名前で個別に命令できるようになっている。
 俺はスケルトンたちとテレパシー的なものでつながることができるので、そういったものは不要なのだが、リサは口頭でしか命令できないので名前があった方が便利なのだろう。リサはアレックスだのボブだの名前を呼んで作業させているのだが、よく見わけが付くもんだと感心する。

「名前を付けるのは汎用スケルトンだけだからな。戦闘用の奴らはペットじゃないんだから、付けたらダメだぞ。情が移ると、いざという時に迷いが出る」

「うん、わかってるよ」

 口ではそう答えるが、リサは全てのスケルトンに名前を付けているのだった。

 ちなみに命令の優先順位は、当たり前だが俺が一番で、次にリサ、それからベロニカ。ただ、汎用以外のスケルトンたちはベロニカの言うことを聞かない。

「なんでよ!」

「お前はただ飯ぐらいの居候なんだから、当たり前だろうが。雑用をやってもらえるだけ、ありがたいと思え。というか、ありがとうございますと言うべきだろうが」

「ぬぅぅぅ……。ありがとうございます、マスター。……くぅぅぅ」

 探索能力に秀でたスケルトン・ニンジャもクロゼルの存在には気が付かないので、当然クロゼルはスケルトンたちに命令を出すことはできない。ただクロゼルは、俺の心を読むことで、スケルトンたちが見ているものを見たり、彼らのステータスを見たりできるのだ。

『私も長く生きておるが、まだまだ知らぬことがあるもんじゃの。イチロウのおかげでそれに気づくことができたわぃ』

 クロゼルの姿は基本俺にしか見えない。リサは夢うつつ状態の時に、生前のクロゼルの姿を見ることがたまにある。

「イチロウの守護霊様は、いつもイチロウのそばにいるの?」

「あぁ、今もここにいるぜ」

 俺はクロゼルを指さして言う。

「ふ~ん。今は私には見えないなぁ」

『フフフ……』

「それって、本当なの? 私も見えないけど」

 ベロニカは俺の話が信じられない、といった様子だ。

「まぁ、お前の目は節穴だから仕方ないな」

「ぬぅぅ」

『吸血鬼もいろいろじゃが、こやつにはあまりその種の才能はなさそうじゃの』

「なるほどなぁ」

「何がなるほどよ!」

「いや、こっちの事だから気にするな」

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