異世界ネクロマンサー

珈琲党

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24 スケルトンの再編成

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 スケルトンの構成をどうしたものかな。

 今までうちにいたのが、
  汎用     …… 10
  ナイト    …… 1
  ウォーリアー …… 2
  ファランクス …… 3
  ウィザード  …… 3
  ビショップ  …… 3
  スナイパー  …… 6
  ニンジャ   …… 3
 合計で三十一体。

 チュートリアルダンジョンの攻略で、ナイト二体とウォーリアー一体をなくし、代わりにアーチャー三体を得た。アーチャーはその後クラスチェンジしてスナイパーにした。
 といった経緯があって、現在スケルトンの構成に若干の偏りが出来てしまっている。

 といっても、特に問題があるわけではない。
 日常生活を送る上では、これでも十分すぎるほどなのだった。

 そうではあるが、この機会に今の平穏な生活を盤石なものにしておきたい、という思いもある。たいしたことなかったとは言え、侵入事案もあったわけだし。

 幸いなことに、この森にはパウム師匠が設置した強力な結界が張られている。この結界のおかげで、外から覗き見られることもなく、遠慮なく好きなことができるのだった。
 俺が大幅な戦力増強をしたとしても、周辺の貴族などに緊張が走ったりはしないはずだ。


 マクド墓地から連れてきたスケルトンは四十九体。
 こいつらは新品の汎用スケルトンだ。どう成長させて、どう割り振ろうかな。

 リサとベロニカも交えて、ああでもないこうでもないと三人で意見を出し合ったが、そんなことをしても話がまとまるはずもなかった。


 結局俺の独断で、全種類が均等になるように割り振ることにした。
 こんな感じ。

  汎用     …… 10+0 = 10
  ナイト    ……  1+9 = 10
  ウォーリアー ……  2+8 = 10
  ファランクス ……  3+7 = 10
  ウィザード  ……  3+7 = 10
  ビショップ  ……  3+7 = 10
  スナイパー  ……  6+4 = 10
  ニンジャ   ……  3+7 = 10
 合計で八十体。


「汎用スケルトンが一体も増えてない……」

 リサは少々不満顔だ。

「汎用はもともと余り気味だったじゃないか。これ以上増やしても仕方ないよ」

「むぅ……」

「こんなに戦力を増やして、あなたどこかの貴族と戦争でもするつもり?」

 ベロニカが皮肉を言う。

「いや、あくまでも自衛のためだよ。またどこかのマヌケな吸血鬼が浸入してくるかもしれないだろ?」

「ぐぬ……」

 単純にスケルトンの数を把握しやすくしたかっただけ、とは言えない。


 ついでに、リサのご機嫌をとるために、汎用スケルトンたちに名前を付けてやることにした。
 今まではリサが勝手に付けていたのだが、ステータス上は名無しのままだったのだ。

 術者:イチロウ・トオヤマ
 名前:ジョニー
 種類:スケルトン
 用途:汎用
 状態:良好
 熟練:極
 特記:なし

 こんな感じに、汎用スケルトン十体にそれぞれ名前を設定した。

「これで名前にも反応するようになったぞ」

「やったー! イチロウありがとう」

「ふ~ん、リサには優しいのね」

 ベロニカが横目でジロリと俺を見る。

「そりゃあ、リサは将来の嫁候補予定だからな」

「何よ急にぃ、エヘヘ……、あ! 候補予定って何よ!」

 リサが俺の脇腹をグイっとつねりあげる。

「ぎゃぁ!」


 ともかく、編成し直したスケルトンたちは、森の中にまんべんなく配置した。
 どこから何が来ても、それなりの対応ができるようにしたのだった。

 入口のゲートには出入り管理の汎用スケルトンの他に、ナイト二体をあえて目立つように配置。これでゴロツキ除けになるはずだ。まぁ、あの件以降は変な嫌がらせはパッタリとなくなったが、念には念を入れておかないとな。

 
 これは数人の行商人から直接聞いた話。
 行商人たちに渡している入場パスは、どうやら野盗除けのお守りになっているらしい。
 俺の所の関係者に手を出すと酷い目に遭うということが、ゴロツキどもの間ですっかり共通認識として定着しているようなのだ。だから、入場パスをしている行商人には野盗でも手を出さないのだと。
 そして困ったことに、その入場パスの偽物がすでに出回っているらしい。


「ハハハ、でも森の外で起きたことは俺にはどうにもできんぞ」

「しかし、効果は確かにありますよ。私はいつも見えるようにこの札(ふだ)を下げています。以前は町で妙なのに絡まれることもありましたが、今では全然ありませんし」


 行商人たちの俺に対する評価が、ここ最近でかなり上がってきている。
 以前は、森の中で商売をしているどこの馬の骨ともわからない怪しい奴、という感じでかなり警戒もしていたようだし言葉遣いもぞんざいだったのだ。
 しかし俺の凄さ、というかヤバさが知れ渡るに連れて、彼らの態度はかなり軟化しており、言葉遣いも丁寧になってきている。

 なにせあの大魔導師パウムの後継者であり、この辺りの領主カステルハイム伯のお墨付きも得ているのだ。つまらない騙しやケチな取引をするはずもないし、客としてみれば割高な商品を大量に購入してくれる超お得意様なのだ。


「ふ~ん、でも札の偽物はちょっとなぁ」

「いつの間に作ったのか分かりませんが、知らない商人が偽の札を下げているのを見ましたよ。ところで、偽の札で門をくぐれたりはしないのですか?」

「いや、ないよ。顔と札と両方一致しないと通さないようにしてあるから」

 スケルトンたちは出入りの行商人の全員の顔を覚えているのだ。空っぽの頭のどこにその情報を収納しているのかは知らないが……。
 そして札の裏には、札ごとに日本語で別々の文章を掘り込んである。その文章がIDナンバーとして機能している。この世界の人間には、日本語は暗号にしか見えないだろう。寸分たがわず複製するのは難しいと思う。

「はぁ、そういうものなんですね」

「仮に通ってきたところで、俺は知らん奴とは取引をしないしな」

「なるほど。はははは」
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