異世界ネクロマンサー

珈琲党

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23 墓荒らしをする

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 翌日。

 吸血鬼のベロニカはやはり太陽が苦手らしく、地下室で眠っている。
 ちなみに太陽光を浴びてもバラバラになったりはしないらしい。ベロニカが言うには、「ちょっと肌がピリピリして痛いから嫌」ってことだった。

 他にも何か弱点がないのか訊いてみたが、特にこれといってないらしい。
 十字架もニンニクも銀も、「何それ?」って感じだった。
 前の世界の映画の知識は役に立たないのだった。

 リサは少々飲み過ぎたのか、朝から食欲がない。今日は一日大人しくしているとのことだ。

「だから飲み過ぎるなって言ったのに……」

「だって、話が盛り上がったんだから、しかたないじゃない。うぅ、頭痛い」

 リサとベロニカは女同士、話が弾んで楽しそうだった。
 俺には何が面白いのか、さっぱりだったが。
 まぁ、二人仲良くしてくれるようでなによりだ。
 ベロニカも他に行き場所がないみたいだから、むげに追い出すのもなぁ。

「修復の魔法は使えないのか?」

「無理。集中できないから、全然魔法が使えない」

「ふ~ん。じゃぁなんで、ビショップに頼まないんだ?」

 ビショップは回復の魔法が使えるのだ。回復の魔法は生き物専用だが、なぜスケルトンが使えるのかは知らん。
 ちなみにリサの修復の魔法は、物の修理にも使える汎用的な魔法だ。
 俺は朝起きてすぐに、ビショップに回復の魔法をかけてもらっていたのだった。

「あ! それを先に言ってよ!」

 言うと同時に俺の脇腹をつねりあげた。

「ぎゃぁ!」

 やはり握力がアップしている。そのうち俺の脇腹がむしり取られる気がする。

「か弱い乙女が苦しんでるのに、なんで放っておくのよ!」

「別にお前はか弱くもないし、二日酔いくらい放っておいても治るだろ?」(乙女でもないしな)

 ビショップを呼んできて、リサに回復の魔法をかけてもらった。

「もぅ! ガツガツ、むぐむぐ……」

 二日酔いから回復したリサは、朝飯を勢いよくかきこんでいる。

「……お元気そうでなにより」


「ちょっと、旧道沿いの墓場に行ってくるよ」

「えぇ!? 何しに?」

「スケルトンの材料がまだ埋まってるかもしれないだろ?」

「うわ……」

「何かあった時のために手駒を増やしておきたいからな。じゃ、留守番を頼む」

「……分かった、いってらっしゃい」

 俺は護衛のニンジャを連れて家を出た。
 護衛にはいつもニンジャを連れている。なにかと小回りが利くので使いやすいのだ。
 汎用スケルトンも一応何でもできるが、戦闘になった時にはちょっと頼りない。

 ナイトやウォーリアーはとにかく強いが、逆に強すぎて護衛には不向き。
 ファランクスは中距離攻撃特化だから、使いどころが限られているし……。
 この三種はガチの戦闘がないと出番があまりない。

 ビショップ、ウィザード、スナイパーは盾役がいてこその後衛専門職だから、そもそも護衛には向かない。普段のビショップは常備薬として、スナイパーは狩猟要員、ウィザードは……、全然出番がない。ウィザードも戦時要員だな。

 やっぱり増やすならニンジャかなぁ、とか考えながら小道を延々と歩く。
 家から三時間くらいでゲートにたどり着いた。小道をきれいに整備したおかげで行き来がだいぶ楽になっているのだ。
 
 ゲートから旧道をたどって約一時間、マクド墓地に到着した。
 ここで初めてリサと野宿をしたんだな。ちょっと感慨に浸っていると、リサの白い尻を不意に思い出してしまう。プッとふき出してしまい、力が抜ける。

「さてさて、仕事を始めるかな」

 俺は誰に言うともなく声を出し、気を引き締めて、墓石のあるあたりに立って、意識を集中する。なんとなく、地中にいる何かと意識がつながった。

「よぉし、出てこい!」

 地面がボコッと盛り上がって、スケルトンが出てきた。

「幸先が良いぞ!」

「ネクロマンサーとしての本領発揮じゃな、フフフ……」

「まぁな。そういえば、クロゼルはアンデッドじゃないよな?」

「……ふぅむ、それは私にもよく分からん。お主から見るとどうなのじゃ?」

「ステータスが確認できないから、違うと思う」

「なるほどのぉ……」

「お前にも分からないことがあるんだなぁ」

「何を言うか、世の中分からないことだらけじゃ」

「ふ~ん。じゃぁ、分かることをとっとと片付けてしまおうか」

「うむ、そうじゃの」


 墓場の端から端までしらみつぶしに術を使いまくって、スケルトンを次々に作った。
 それから一時間もしないうちに、五十体余りのスケルトンが俺の前に整列していた。

「おぉ! 大量大量。日が暮れる前に家に帰ろう」

 適当な三体を選んで、頭の中のイメージを伝える。
 三体のスケルトンは腕を組み合わせて、騎馬戦の騎馬の形になった。こういうことは口で説明するのが難しいが、イメージなら簡単に間違いなく伝わるのだ。
 俺はその騎馬にまたがって、スケルトンたちに指示を出す。

「よぉし。全体進め!」

 ザッザッザッザッザッザッザッザッ……。
 五十体余りのスケルトンが家に向かって行進を始めた。

「座り心地はあんまり良くないけど、楽は楽だな」

「面白いことを考えるのぉ」

「馬車でもあれば引かせるんだけどな。荷車は車軸が直付けだから、乗り心地が最悪だしな。……そうか、人力車みたいなものを作らせれば良いかもしれない」

「ふむ、いっそのこと馬のスケルトンでも作ったらどうじゃ?」

「なるほど! しかし、馬の墓なんてないよなぁ。馬の全身の骨って買えるのかな……」

 何だかんだと話しをしながら、スケルトンの騎馬に揺られて道を行くのだった。
 夕方ごろには家に着いた。


「ひぇぇ~!」
「うわぁ……」

 突然湧いたスケルトン軍団を見て、リサもベロニカもちょっと呆れ気味だった。

「なんだよ。もっと喜んでくれてもいいのに」

「こんなにどうするのよ」

「そうだなぁ……。全部ニンジャにして森にばらまいとけば安心じゃね?」

「何よそれぇ。ちゃんと考えないと勿体ないよ」

「フン! こんな弱っちぃスケルトンばっかり増やしても役に立たないわ!」

「お前なぁ……。ニンジャ一体に抑え込まれてただろうが」

「あれは結界のダメージがあったし、不意打ちだったしぃ」

「じゃぁ、あそこのナイトを倒してみろよ」

「うぬぅ……。あ、あれはスケルトンじゃないから」

「いやいや、スケルトン・ナイトだから。スケルトンの一種なの!」

「そんなのズルいわ」

「はぁ? なんだそりゃ」

「もぅ! ちゃんと考えてよ!」

 リサが俺の脇腹をグイっとつねりあげた。

「ぎゃぁ! 何で俺だけ……」

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