絶対零度の王子さま(アルファポリス版)

みきかなた

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~高校生編~

第13章 合格祈願

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期末テストが終わって、冬休みに突入しました!

なのに、通い始めた予備校の冬期講習が毎日のようにあって、机に向かって勉強してばかりです。空いた日に、同じクラスの千夏ちゃんこのみちゃんと買い物に出掛けただけ。潤くんは医学部進学の冬期講習が私よりもいっぱい詰まっていて、薫ちゃんは家族でハワイに行くと言っていたので、冬休みの間は逢えそうにありません。一佳の予定は、聞けませんでした。

お風呂上がりに自分の部屋で携帯を取り出してぼんやりと眺めていました。一佳にメールしたい……でも、何の用事も無いのに、メールしたら変ですよね。

「藤原くんと仲がイイね」って千夏ちゃんには言われるけど、それは学校にいる間だけ……用が無ければ電話やメールもしないし、休みの日に遊びに行くこともありません。

「どうしているかな…」

一佳に逢いたがっている自分に戸惑います。迷惑だと思われるかも?と連絡を取る勇気が出ません。

突然ブルルと震えて、液晶画面に「藤原一佳」の文字が!慌てて応答したら、最初に一佳の「ムッ」と唸るような声が聞こえました。

「な、何ですか?」

「元旦の日、ヒマ?」

「う、うん、あ、でも、家族で初詣に行くかも……」

「……じゃあ、いいよ。」

「元旦の日、何かあるの?」

「初詣に行くんだ……潤も来るから、だから、お前も来るかなって……でも、家族で出掛けるなら……」

「行く!行きます!」

「分かった。潤も来るから、アイツに伝えておく。」

なんで「潤も来るから」って二回も言うんだろ?もしかして、私が潤くんを好きだと思い込んでて、それでまたくっつけようとか企んでいるのかな?

「詳しいことはまた連絡する。」

それだけ言って、ぷつりと電話は切れました。素っ気ない……でも、一佳から誘ってくれた……嬉しくて飛び上がって、お母さんに元旦は友達と初詣に行くと伝えたら、「彼氏と行くの?」としつこく追求されました。違います、彼氏じゃなくて、友達だよ!



年が明けて一月一日、お母さんが作ったおせち料理とお雑煮を食べてお年玉をもらって、ちょっとだけお洒落しようとお姉ちゃんに洋服を借りたらめちゃくちゃ冷やかされ、初詣に向かいました。

家からは少し遠くにある、受験の神様が祀ってある神社です。

駅で待ち合わせしたら、一佳と潤くんは先に待っていました。二人は家が近いから一緒に来たそうです。私服姿を見るのは初めて!潤くんはジャケットの下はセーターとシャツにチノパン姿。一佳はダウンコートにジーンズです。制服姿もイイですが、私服は更にカッコイイ!

「お、七海の私服、可愛いな!」

潤くんがすかさず誉めてくれました。

「アハハ、お姉ちゃんに借りちゃった。」

「似合ってるよ、凄く。」

「ありがとー!」

そんな会話を潤くんとしていたら、一佳にムッと睨まれました。何か気に入らないことをしたのかなぁ。

二人は私を間に挟んで歩き出しました。見上げると首が折れるほど背の高い二人に挟まれ、「凹」って言う字のへこんだ部分になった気分です。だけど、右も左も超が付くイケメンで眼福ですよ!

長い参道は参拝客でギュウギュウ詰め、警備員の誘導に従って少しずつ進みます。大きな森の中にある神社なので、凍えるほど寒い。手を擦り合わせて暖を取っていました。

「大丈夫?」

心配そうに潤くんが聞いてくれました。

「寒いよー!」

「じゃあ、おしくらまんじゅうでもするか!」

そう言うと、私にドンと身体をぶつけて来ました。ケラケラ笑ってまるでいたずらっ子みたいに可愛い!よろけて一佳にぶつかったらムッとされました。

「周りの迷惑になることはするなよ。」

「ククク、一佳も照れないで、もっと七海にくっつけよ。」

「バカなのお前。」

一佳はプイっと前を向き、そのまま黙ってしまいました。機嫌が悪いのかな……私は潤くんと他愛も無い話をして列が進むのを待ち続けました。

一時間くらいして、やっと賽銭箱の前に到着しました。お賽銭を投げてお祈りします。

「家族が健康で無事に過ごせますように。学校で友達と楽しく過ごせますように。潤くんや薫ちゃんと仲良く過ごせますように。一佳と……もっと親しくなれますように。」

ふと横を見たら、潤くんが真剣にお祈りしていました。私が祈り終わっても身動き一つしません。

「先に出よう。」

後ろから一佳に促され、私たちは潤くんを置いて参拝の列を離れ、先におみくじやお守りの販売所に向かいました。

「悪い、遅れて……」

御守りを選んでいたら、潤くんが駆け寄って来ました。そして、真っ先に「合格御守」を手にしたのです。私たちはまだ高二で受験じゃないのになぜ合格御守?と疑問に思いましたがふとひらめきました。受験生と言えば……

「それ、もしかして、眞子さんの?」

「うん、こんなことぐらいしか、力になれないからさ。」

潤くんは照れくさそうに微笑みました。さっき真剣にお祈りしていたのも、眞子さんのためなんだ!私はつられて微笑んでしまいました。

おみくじは、私と潤くんがそろって『大吉』、一佳は『小吉』だったので悔しがっていました。一佳って子供っぽくないですかー?

境内のお供え所に願掛けに行こうとしたら、突然、潤くんが足を止めました。視線の先には……眞子さんがいました。真剣な顔で絵馬に願いを書き込む彼女のその横には……坂本先生が居たのです!見なかったことにして、その場を去ろうと思ったのに、潤くんはダッと二人に近づいて行ってしまいました!

「よぉ、デート?」

「きゃ、潤じゃない!びっくりしたー!デートじゃないよ!」

屈託なく眞子さんは笑います。

「こんなところで、先生と生徒がイチャイチャしているところを誰かに目撃されたら、マズイんじゃない?」

「イチャイチャなんてしていないでしょ!坂本先生がクラスの子に御守りを渡したいっていうから、私も付き合ったの!」

坂本先生は、生徒会執行部の顧問でもありますが、三年生の眞子さんのクラス担任でもあるのです。御守りがぎっしり入った紙袋を持っていました。

「いや、誤解を受けるようなことはしていませんから……」

消え入りそうな小さな声で、坂本先生は言い訳しました。

「これ、先生に買ってもらっちゃった!」

エヘヘと嬉しそうに眞子さんは笑い、潤くんが買ったのと同じ合格御守を見せてくれました。潤くんは持っていた御守りをこっそりポケットに押し込みました。え、そんな!あんなに願掛けしていたのに渡さないつもりでしょうか?

「おい。ビビってんじゃねーぞ。」

いきなり一佳が潤くんの腕を掴み、ポケットの中で握りしめていた御守りを、眞子さんに差し出させました。

「眞子、これは潤の分。いっぱいお願いしているから、相当強力な御利益があるぞ!」

「わあ、嬉しい!ありがとうね、潤!」

躊躇うことなく眞子さんは潤くんの御守りを受け取り、頬を赤らめました。うう、可愛い!破壊的な可愛さです!



眞子さんと坂本先生は御守りを持って先に帰りました。

「サンキュー、一佳。まさかこんなところで逢うなんて……」

しょんぼりしたように俯きながら潤くんが呟きました。せっかくあんなにお願いしていたのに……潤くんの気持ちは眞子さんに届くのかな?

「潤って、眞子に関してはヘタレだよな。」

「……うるせー、てめーだって恥ずかしがって誘えないから俺を巻き添えにしやがったくせに!」

潤くんがニヤニヤ笑う一佳に回し蹴りを喰らわせました。逃げ損ねてぐらりと揺れて、一佳は私にドスンと倒れ掛って来ました。

「痛ーい!」

「あ、すみません……」

なぜか一佳が敬語で私に謝りました。

「ククク、ラーメンでも喰って帰ろうぜ!」

朗らかに潤くんは笑い、私と一佳を引っ張って駅へと急いだのです。

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