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第1話 憂国のグリーデ
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世界屈指の軍事・経済大国として名を馳せたグリーデ公国は、建国から1200年、建国史上最大とも言える栄華を誇っている。全てが金で解決できると盲信する金の盲従者が跋扈し、金こそ正義、命は金の二の次。金さえあれば、地位も名誉も、人も、殺しだって思い通りにできた。一方、金がない奴は、蔑まされ、下等にあしらわれ、人権なんて、風の前の塵に同じであった。
そんな知性のない獣達が蔓延り、驕り高ぶる雰囲気が包み込む首都エクセルシオールの中央凱旋通り。この通りには中央省庁が集中しており、通りの終点には今はなき王政時代の遺物である王宮が鎮座している。
かつて、隣国ギルア共和国に攻め入られた時、英雄エクセルシが、この凱旋通りで敵の攻撃から踏み留まり、そのまま反転攻勢でギルア共和国に勝利した起点となる地。
グリーデ公国の象徴たる中央凱旋通りは、その当時の面影もなく、道にはゴミが散乱し、誇り高きグリーデ公国とは名ばかりの中身のないハリボテであることを象徴しているかのようである。
——内面に理念がない。
中央凱旋通りを国防省の方面に向かい颯爽と歩くメユ中尉。この公国の未来を憂ながらも、自らの手ではどうすることもできない歯痒さを噛み殺しながら、省舎に入る。
国防省が嫌いだった。いや、正確には、国防省で関わる人が嫌いだ。
父親である、コリト・ザック中将の娘、コリト・メユ。若干13歳にて国防省にスカウトされ軍学校に入学、明晰な頭脳により16歳で中尉に昇進。その結果、親の七光りと揶揄され妬みの目で見られたり、口説き落とせば将来出世間違いなしと、己が非望のための道具としての見られたりと、全くもって心地よくない。
「メユ少尉、来る必要もないのにわざわざ国防省まで赴くとは、何かやらかしましたか? それだけの美貌を有しているならば、軍人ではなく、貴族同士で結婚して愛玩動物として過ごせばいいのに。もう、この強大なグリーデ公国に攻め入ろうなんて国はないのだから。あ、これは失敬、もう中尉でしたね。この親の七光りが」
同じ時期に入省した同期が、通りすがりに、悪態をつく。しかし、もう慣れた。これまで散々言われ続け、相手にしても仕方がないと悟った
無視し続け、歩みを進める。これが唯一の対抗手段。
気にせず歩みを進め、国防省の一室の大扉の前で足を止める。
「コリト・メユ中尉であります!」
少し鼻にかかった幼げが残る高めの声が、廊下に響き渡る。
「入りたまえ」
低く、威圧的で、これから入って来る者を明らかに萎縮させるために発せられた声が部屋の内側から聞こえてくる。
——ギーー
音を立てながら、ゆっくりと大扉が開け、目を真っ直ぐと見据えながら、部屋の中へと歩みを進める。
そんな知性のない獣達が蔓延り、驕り高ぶる雰囲気が包み込む首都エクセルシオールの中央凱旋通り。この通りには中央省庁が集中しており、通りの終点には今はなき王政時代の遺物である王宮が鎮座している。
かつて、隣国ギルア共和国に攻め入られた時、英雄エクセルシが、この凱旋通りで敵の攻撃から踏み留まり、そのまま反転攻勢でギルア共和国に勝利した起点となる地。
グリーデ公国の象徴たる中央凱旋通りは、その当時の面影もなく、道にはゴミが散乱し、誇り高きグリーデ公国とは名ばかりの中身のないハリボテであることを象徴しているかのようである。
——内面に理念がない。
中央凱旋通りを国防省の方面に向かい颯爽と歩くメユ中尉。この公国の未来を憂ながらも、自らの手ではどうすることもできない歯痒さを噛み殺しながら、省舎に入る。
国防省が嫌いだった。いや、正確には、国防省で関わる人が嫌いだ。
父親である、コリト・ザック中将の娘、コリト・メユ。若干13歳にて国防省にスカウトされ軍学校に入学、明晰な頭脳により16歳で中尉に昇進。その結果、親の七光りと揶揄され妬みの目で見られたり、口説き落とせば将来出世間違いなしと、己が非望のための道具としての見られたりと、全くもって心地よくない。
「メユ少尉、来る必要もないのにわざわざ国防省まで赴くとは、何かやらかしましたか? それだけの美貌を有しているならば、軍人ではなく、貴族同士で結婚して愛玩動物として過ごせばいいのに。もう、この強大なグリーデ公国に攻め入ろうなんて国はないのだから。あ、これは失敬、もう中尉でしたね。この親の七光りが」
同じ時期に入省した同期が、通りすがりに、悪態をつく。しかし、もう慣れた。これまで散々言われ続け、相手にしても仕方がないと悟った
無視し続け、歩みを進める。これが唯一の対抗手段。
気にせず歩みを進め、国防省の一室の大扉の前で足を止める。
「コリト・メユ中尉であります!」
少し鼻にかかった幼げが残る高めの声が、廊下に響き渡る。
「入りたまえ」
低く、威圧的で、これから入って来る者を明らかに萎縮させるために発せられた声が部屋の内側から聞こえてくる。
——ギーー
音を立てながら、ゆっくりと大扉が開け、目を真っ直ぐと見据えながら、部屋の中へと歩みを進める。
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