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大統領を滅ぼす刀
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———ジジジジジ
アスカの家に緊急事態を告げるサイレンが鳴る。
「ユミ! ヒビト君からコード999が発令されたわ」
「ソイニー師匠、発信場所は魔専です」
ソイニー師匠とユミ姉は魔道具を取ると、瞬時に駆け出す。
玄関から外に出て、ユミ姉のバイクが駐輪してある方向に走り出した——が、ソイニー師匠とユミ姉は行手を阻まれる。
「久しぶりです。ソイニー先輩!」
「また会えるとは思いませんでしたよ。ソイニー」
ソイニー師匠とユミ姉の前に現れたのは、お気に入りのおもちゃを目の前にした子どものようにはしゃぐナタリーとアーシャ。
「まさかアスカ達に何かをしたのですか!?」
「アスカ? ああ、初代魔導具士の生まれ変わりか。別に私たちは関係ないですが——、私たちはソイニー様を殺せと仰せ使っているだけです。天界大統領から」
「天界大統領から? まさか、アスカ達が相対しているのは……」
ソイニー師匠の顔色がみるみる青ざめていく。天界大統領と対峙して、アスカが生き残れるのか。不安感でいっぱいになる。
「あはは、ソイニー先輩が青ざめてる。愛しすぎる~」
ナタリーがケラケラと笑いながら、頬を少し赤らめている。生粋のサディスト。
「多分もう死んじゃってるんじゃないですか?なんせ相手は天界大統領ですし」
「黙りなさいナタリー。そして去りなさい。私はアスカの元に行かなければなりません」
「それは、無理な約束ですね」
「もう一度言います。二人とも去りなさい。あなた達は今は敵でもかつての戦友。殺したくありません。しかし、もし立ちはだかるのであれば、もう容赦はしません」
「私は、再びソイニー先輩に精神支配の魔導をかけられることを楽しみにしていたので。それは聞けぬ話です」
「そうだソイニー、今窮地に追いやられているのはお前の方だぞ。許し助けを乞うのはお前だ」
「じゃあ、早速始めましょうか。殺し合いを。我が命は、自我を犯し精神を蝕む『精神制御《メンタルコントロール》」
ナタリーは間髪入れず、精神支配の魔導をソイニー師匠に向けて放つ。
「我が神聖な身を守りて現界せよ、『絶対防……」
ユミ姉が絶対防壁を咄嗟に発動しようとしたが、それをソイニー師匠が手をユミ姉の前に出し止めた。
「ソイニー師匠!」
「安心しなさい。同じ轍は踏まないわ。それに終わらせます。この戦いを」
そういうとソイニー師匠は手をかざす。
「来い!『一徹』」
ソイニー師匠の家の二階から窓ガラスを突き破り、『一徹』がソイニー師匠に向かって突っこんでくる。ソイニー師匠は、タイミングよく『一徹』の柄を掴み取ると、鞘から抜き、刀身をあらわにする。そして、振る。
一徹から眩い青い光が放たれ周囲に散乱する。
たちまち、ナタリーが放った魔導がたち消える。
「あれ?魔導が消えた?なんで?? 私の魔導がかき消された?ソイニー先輩が持ってるその刀は、確か——あの小僧が持っていた刀」
動揺するナタリー。何が起きたのか全くわからない様子である。そして、アーシャも同様であった。
「この刀が家に置いてあって良かった。この刀は、天界大統領の弟であり、そして私の兄でもある、初代魔導具士が作成した刀。そして、この刀は、我が一族を滅ぼすために作成された。ただ、私は『一徹』を覚醒までに至らしめることができなかった。しかし、我が弟子、アスカがこの刀の覚醒させた。覚醒した『一徹』は所有者の魔導を高めるだけにあらず。この刀の真の力は、『魔導無効化』。それは初代魔導具士の血統を継ぐ者が唯一扱える技」
ソイニー師匠は刀を構え直すと、眼光を光らせる。
「ソイニー、冗談はよしなよ……あんたが、大統領一族出身だって冗談がすぎるよ」
アーシャは少し後退りながら苦笑いする。
「アーシャ、元々騙すつもりはなかったわ。まあ、今となってはそんなことどうでもいいわね」
「まあ、嘘か本当かは今は関係ないわね。それじゃあソイニー殺し合いを始めましょうか」
昼と夜の狭間、マジックアワーに差し掛かった空が不気味な雰囲気を醸し出す。
風が強く吹き始め、民家の窓ガラスを揺らした時、アーシャは一気にソイニー師匠に詰め寄った。しかし、アーシャは魔導を使わない。
——カキン
金属同士がぶつかり合ったときに発せられる乾いた音が響き渡る。
「ソイニー、あなたの誤算は、私が剣術使いでもあることを考慮していなかったことよ」
「アーシャ、噂には聞いていましたが、本当に剣術が使えたのですね。しかもあなたの杖の中に剣を隠していたとは」
ソイニー師匠は、一徹を前に押し出し、アーシャを押し返すが、アーシャは一旦重心を後ろに傾けると、そのまましゃがみ込み、今度は体勢を低くしながらソイニー師匠に切り掛かる。
「我を守れ『シールド』」
ソイニー師匠は咄嗟に、一徹で魔導増幅しながら、防御壁を発動し、アーシャからの攻撃を防ぐが、アーシャは左手を腰の後ろに回すと、拳銃を取り出し全弾をそのシールドに打ち込んだ。その結果、脆くなるシールド。そのシールドに思い切り、切り掛かるアーシャ。シールドは撃ち負わされ、ソイニー師匠の首めがけて剣が振られる。
しかし、ソイニー師匠は防御を取ろうとしない。
——グサ
肉が切られた鈍音が微かに響いた。
「やった?ソイニー師匠を殺した?」
ナタリーが嬉しそうに尋ねるが、返答はない。そして、膝から崩れ落ちたのは、アーシャの方だった。
アーシャの剣はソイニー師匠の首を正確に狙っていた。しかし、その刃は、首には届いていなかった。ソイニー師匠の首と剣の間には、黄金に輝く魔法陣が小さく展開されていた。その魔導は、『絶対防御』。ユミ姉が、発動させたその魔導が、アーシャの刃がソイニー師匠に到達することを防いでいた。
一方、ソイニー師匠が持っていた一徹はアーシャの腹を突き抜いていた。
ソイニー師匠はユミ姉のことを信じて、あえて防御を捨て、攻撃に全集中し、アーシャの隙をついた結果だった。
アーシャの腹から一徹を抜くと、アーシャは静かに倒れる。
「そんな、マジですか」
急に叫び出し、目の前の状況が受け入れられずに取り乱し始めるナタリー。
「ナタリー、アーシャは死にました。しかし、あなたまで死ぬ必要はありません。今すぐ天界に帰りなさい」
ソイニー師匠は宙に浮くナタリーの方を見ながら諭すが、ナタリーは一切引くそぶりを見せない。
「私はですね、ソイニー先輩を手中に収めたいのです。そして、到底人が経験しないような、精神が崩壊するまで拷問したいのです。だから、必ず今日、ソイニー先輩は天界に連れて帰ります。あと、ソイニー先輩に殺されるならそれはそれで楽しいかもしれません」
「あなたは本当に狂っているのですね」
「ソイニー先輩、それは褒め言葉ですよ」
「前に立ちはだかるならば、切ります」
ソイニー師匠は、突きの構えを見せると、ナタリーは叫びながら突っ込んでくる。
勝敗は一瞬だった。精神系魔導を得意としていたナタリーは、魔導を無効化してしまう一徹を装備したソイニー師匠を前に無力だった。
ナタリーは目眩しの魔導を放ったが、一瞬でソイニー師匠に無効化され、そして一徹がナタリーの心臓を突き破る。
「グフ」
ナタリーは、地に落ち、うつ伏せになる。
「やっぱり刺されると痛いですね。だけど、ソイニー先輩に殺されるなら本望です。愛してますソイニー先輩。地獄で待ってます」
「ソイニー師匠は地獄に落ちません」
ナタリーの言葉に反応したのはユミ姉。
その言葉に対して、薄気味悪い笑みを浮かべながらナタリーは目を閉じた。
アスカの家に緊急事態を告げるサイレンが鳴る。
「ユミ! ヒビト君からコード999が発令されたわ」
「ソイニー師匠、発信場所は魔専です」
ソイニー師匠とユミ姉は魔道具を取ると、瞬時に駆け出す。
玄関から外に出て、ユミ姉のバイクが駐輪してある方向に走り出した——が、ソイニー師匠とユミ姉は行手を阻まれる。
「久しぶりです。ソイニー先輩!」
「また会えるとは思いませんでしたよ。ソイニー」
ソイニー師匠とユミ姉の前に現れたのは、お気に入りのおもちゃを目の前にした子どものようにはしゃぐナタリーとアーシャ。
「まさかアスカ達に何かをしたのですか!?」
「アスカ? ああ、初代魔導具士の生まれ変わりか。別に私たちは関係ないですが——、私たちはソイニー様を殺せと仰せ使っているだけです。天界大統領から」
「天界大統領から? まさか、アスカ達が相対しているのは……」
ソイニー師匠の顔色がみるみる青ざめていく。天界大統領と対峙して、アスカが生き残れるのか。不安感でいっぱいになる。
「あはは、ソイニー先輩が青ざめてる。愛しすぎる~」
ナタリーがケラケラと笑いながら、頬を少し赤らめている。生粋のサディスト。
「多分もう死んじゃってるんじゃないですか?なんせ相手は天界大統領ですし」
「黙りなさいナタリー。そして去りなさい。私はアスカの元に行かなければなりません」
「それは、無理な約束ですね」
「もう一度言います。二人とも去りなさい。あなた達は今は敵でもかつての戦友。殺したくありません。しかし、もし立ちはだかるのであれば、もう容赦はしません」
「私は、再びソイニー先輩に精神支配の魔導をかけられることを楽しみにしていたので。それは聞けぬ話です」
「そうだソイニー、今窮地に追いやられているのはお前の方だぞ。許し助けを乞うのはお前だ」
「じゃあ、早速始めましょうか。殺し合いを。我が命は、自我を犯し精神を蝕む『精神制御《メンタルコントロール》」
ナタリーは間髪入れず、精神支配の魔導をソイニー師匠に向けて放つ。
「我が神聖な身を守りて現界せよ、『絶対防……」
ユミ姉が絶対防壁を咄嗟に発動しようとしたが、それをソイニー師匠が手をユミ姉の前に出し止めた。
「ソイニー師匠!」
「安心しなさい。同じ轍は踏まないわ。それに終わらせます。この戦いを」
そういうとソイニー師匠は手をかざす。
「来い!『一徹』」
ソイニー師匠の家の二階から窓ガラスを突き破り、『一徹』がソイニー師匠に向かって突っこんでくる。ソイニー師匠は、タイミングよく『一徹』の柄を掴み取ると、鞘から抜き、刀身をあらわにする。そして、振る。
一徹から眩い青い光が放たれ周囲に散乱する。
たちまち、ナタリーが放った魔導がたち消える。
「あれ?魔導が消えた?なんで?? 私の魔導がかき消された?ソイニー先輩が持ってるその刀は、確か——あの小僧が持っていた刀」
動揺するナタリー。何が起きたのか全くわからない様子である。そして、アーシャも同様であった。
「この刀が家に置いてあって良かった。この刀は、天界大統領の弟であり、そして私の兄でもある、初代魔導具士が作成した刀。そして、この刀は、我が一族を滅ぼすために作成された。ただ、私は『一徹』を覚醒までに至らしめることができなかった。しかし、我が弟子、アスカがこの刀の覚醒させた。覚醒した『一徹』は所有者の魔導を高めるだけにあらず。この刀の真の力は、『魔導無効化』。それは初代魔導具士の血統を継ぐ者が唯一扱える技」
ソイニー師匠は刀を構え直すと、眼光を光らせる。
「ソイニー、冗談はよしなよ……あんたが、大統領一族出身だって冗談がすぎるよ」
アーシャは少し後退りながら苦笑いする。
「アーシャ、元々騙すつもりはなかったわ。まあ、今となってはそんなことどうでもいいわね」
「まあ、嘘か本当かは今は関係ないわね。それじゃあソイニー殺し合いを始めましょうか」
昼と夜の狭間、マジックアワーに差し掛かった空が不気味な雰囲気を醸し出す。
風が強く吹き始め、民家の窓ガラスを揺らした時、アーシャは一気にソイニー師匠に詰め寄った。しかし、アーシャは魔導を使わない。
——カキン
金属同士がぶつかり合ったときに発せられる乾いた音が響き渡る。
「ソイニー、あなたの誤算は、私が剣術使いでもあることを考慮していなかったことよ」
「アーシャ、噂には聞いていましたが、本当に剣術が使えたのですね。しかもあなたの杖の中に剣を隠していたとは」
ソイニー師匠は、一徹を前に押し出し、アーシャを押し返すが、アーシャは一旦重心を後ろに傾けると、そのまましゃがみ込み、今度は体勢を低くしながらソイニー師匠に切り掛かる。
「我を守れ『シールド』」
ソイニー師匠は咄嗟に、一徹で魔導増幅しながら、防御壁を発動し、アーシャからの攻撃を防ぐが、アーシャは左手を腰の後ろに回すと、拳銃を取り出し全弾をそのシールドに打ち込んだ。その結果、脆くなるシールド。そのシールドに思い切り、切り掛かるアーシャ。シールドは撃ち負わされ、ソイニー師匠の首めがけて剣が振られる。
しかし、ソイニー師匠は防御を取ろうとしない。
——グサ
肉が切られた鈍音が微かに響いた。
「やった?ソイニー師匠を殺した?」
ナタリーが嬉しそうに尋ねるが、返答はない。そして、膝から崩れ落ちたのは、アーシャの方だった。
アーシャの剣はソイニー師匠の首を正確に狙っていた。しかし、その刃は、首には届いていなかった。ソイニー師匠の首と剣の間には、黄金に輝く魔法陣が小さく展開されていた。その魔導は、『絶対防御』。ユミ姉が、発動させたその魔導が、アーシャの刃がソイニー師匠に到達することを防いでいた。
一方、ソイニー師匠が持っていた一徹はアーシャの腹を突き抜いていた。
ソイニー師匠はユミ姉のことを信じて、あえて防御を捨て、攻撃に全集中し、アーシャの隙をついた結果だった。
アーシャの腹から一徹を抜くと、アーシャは静かに倒れる。
「そんな、マジですか」
急に叫び出し、目の前の状況が受け入れられずに取り乱し始めるナタリー。
「ナタリー、アーシャは死にました。しかし、あなたまで死ぬ必要はありません。今すぐ天界に帰りなさい」
ソイニー師匠は宙に浮くナタリーの方を見ながら諭すが、ナタリーは一切引くそぶりを見せない。
「私はですね、ソイニー先輩を手中に収めたいのです。そして、到底人が経験しないような、精神が崩壊するまで拷問したいのです。だから、必ず今日、ソイニー先輩は天界に連れて帰ります。あと、ソイニー先輩に殺されるならそれはそれで楽しいかもしれません」
「あなたは本当に狂っているのですね」
「ソイニー先輩、それは褒め言葉ですよ」
「前に立ちはだかるならば、切ります」
ソイニー師匠は、突きの構えを見せると、ナタリーは叫びながら突っ込んでくる。
勝敗は一瞬だった。精神系魔導を得意としていたナタリーは、魔導を無効化してしまう一徹を装備したソイニー師匠を前に無力だった。
ナタリーは目眩しの魔導を放ったが、一瞬でソイニー師匠に無効化され、そして一徹がナタリーの心臓を突き破る。
「グフ」
ナタリーは、地に落ち、うつ伏せになる。
「やっぱり刺されると痛いですね。だけど、ソイニー先輩に殺されるなら本望です。愛してますソイニー先輩。地獄で待ってます」
「ソイニー師匠は地獄に落ちません」
ナタリーの言葉に反応したのはユミ姉。
その言葉に対して、薄気味悪い笑みを浮かべながらナタリーは目を閉じた。
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