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討伐までのカウントダウン

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 ——コンコン

 ソイニー師匠達との話がひと段落した時に、ドアがノックされた。
「はいどうぞ」

 姫様が答えると、3人組の見覚えのある人物が入ってきた。それは、ヒビトとナオミ、マミだった。

「アスカ。無事で良かった。姫様から一報を聞いた時には、慌てふためいたよ」
 ヒビトは僕の手を握りながら語りかけてくる。ヒビトの慌てふためくところは少し見てみたかったかなと思いもしたが、それは口には出さない。
「もう、ちゃんと999魔導具は肌身離さずいなさいよね」
 ナオミは、目を赤くしながら怒りながらこちらを見る。
「アスカ君、本当に無事で良かった」
 優しく語りかけてきたのはマミ。マミはすでに泣いていた。

「ごめん、みんな、迷惑かけて」
 僕は、一人一人の目を見ながら謝る。

 ——ドン
 僕の謝罪で少し暗くなった雰囲気が吹き飛ぶほどの大きな音が窓の外のバルコニーから聞こえてきた。
 皆の視線がそちらに向く。

「あははは、主役は遅れて登場ってか」
 そう言いながら部屋に入ってきたのは、ロージェ先生だった。その後ろにはユミ姉もいる。
 初めに口を開いたのはユミ姉だった。ユミ姉は僕を抱きしめる。
「アスカ。良かった無事で。私がちゃんとしていれば、こんなことにはならずに済んだのに」
 ユミ姉は、アスカが拉致されたのは自分がしっかりしていなかったからと罪悪感に苛まれていたらしい。
「ユミ姉のせいじゃないよ。心配してくれてありがとう」
「アスカ。今度は絶対守るから」
 そういうとユミ姉はもう一度僕を優しく包み込む。
 その状態で今度はロージェ先生が話しかけてくる。
「アスカも災難だったのう。あのニールに拉致されるとは。しかし、五体満足で帰ってくるとは強くなったなアスカ。それでニールはどうしたんだ」
「ニールはなんとか倒しました」
「え? なんだって!? あのニールを倒しただって?」
「はい、この明幸を使って」
「この刀は、一徹と並ぶ、もう一つの伝説の刀。アスカ、お前はこの刀を使えたのか?」
「はい。なんとか使いこなせて、ニールを討つことができました」
「そうか、そうか。それはすごいことだ。明幸を使いこなせるなんて、さすがは初代魔導具士の生まれ変わりといったところか」
 ロージェ先生は自分の教え子の成長がたまらなく嬉しいようで、笑みが溢れている。
「それとアスカ、もう一つの刀はなんじゃ、その刀は見たことがないんじゃが」
 ロージェ先生は二本目の刀に気が付く。アスカもロージェ先生に指さされた方向を見るともう一つの刀が横にあった。
「夢じゃなかったんだ」
 アスカはその刀をとる。それは母から譲り受けた死導だった。
「死導です。この刀は」
「そんな、まさか実在したのか。神をも殺せる刀。一体どこでその刀を」
 ロージェ先生は目を丸くして驚く。
「この刀は母から譲り受けました」
「母から? しかしアスカの母は、もうすでに」

「我々は天界からの転移途中に天国に放り出され、そこでアスカの母にお会いしました」
 口を挟んだのはエレン。エレンの言葉にロージェ先生は「確かに、それはありうるな」と言いながら納得したようだった。
「まさか、アスカの母が持っていたとは。色々謎が解けたわ。それで、全員揃ったみたいだし、本題を話し合いましょう。姫様」
「本題?」

 僕が先生に聞き返すと、隣に座っていた姫様がベッドから降り立ち上がった。
「はい、今宵は皆さんを召集させていただきましたが、今から天界大統領討伐作戦会議を開きたいと思います」

 天界大統領を討伐しなければ地球に未来はない。これは全員の共通認識。だが、どうやって討伐するかその手段がとにかく難しい。相手は、神級魔導士でもあり天界を統べる王でもあり、そして初代魔導具士の兄で、不死身である。そんな奴をどう倒せばいいのか。

「もし、天界大統領が地球に襲来した場合、ここにいる全員で対処しなければならないと考えているわ。まず、ロージェとソイニーには天界大統領の足止め、ヒビト君やナオミさん、マミさんエレン君には、アスカの護衛を任せます」
「「はい」」
「そして、本当は危険な目に遭って欲しくないのだけれど、やはり天界大統領を討伐するにはあなたの力が必要なの。アスカ」
 姫様は、残念そうな顔でこちらを見る。
「大丈夫ですわかってます。僕も皆を守りたい」
「ありがとう。最後にはあなたに天界大統領を討伐してもらいます」
「はい」
 僕は静かに頷く。

「今度の戦いがおそらく世界にとっての最後の戦いになるでしょう。かのシルベニスタ大戦を越すかもしれません。誰かが命を落とすかもしれません。しかし、我々は力を持っています。魔導という力を。今こそこの力で持って王国、さらに世界を救いましょう。そして、後世にこの世界を残すのです。それが我々の使命だと私は思います」

 姫は最後に感情の昂りを見せながら語った。自らの考えを。自らの信念を。
 その言葉を、この場に集まった全員が固唾を飲んで聞き入り、そして覚悟を決める。

「それでは、運命の日まで各々鍛錬を重ね、備えましょうか」
 ソイニー師匠の言葉に皆頷き、今日のところはお開きとなった。

「あの、アスカ、ちょっといい?」
 皆が帰路につこうとしたときに、姫様は僕を引き留めた。僕は皆に、先に帰っていてと伝え、部屋に二人きりになる。
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