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高等諮問会

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 姫様とのキスの後、僕は、高等諮問会の会場に向かった。
 僕が入廷して、席に着くとすぐに日本代表代理である姫様が入廷し、高等諮問会は始まった。
 まず、軍長官が話し始める。

「アスカ君、まずは先の戦闘では、姫様ならびに東京防衛に尽力してくれたことを、私から感謝したい。ありがとう。そして、私たちが知りたいことはただ一つ、君の放った、あの大規模魔導はなんなのか、それについて教えて欲しい」

 僕は姫様の方を一瞥すると、姫様は黙って一度だけ頷く。
 先ほど姫様は、魔導具士の力であることは隠した方がいいとおっしゃっていた。
 やはり、僕が尽力したところで、まだまだ魔導具士の風評を解するには至らないわけで、もっと活躍しなければならないというわけか。

「はい、申し訳ありませんが、私も詳細な理由が分かりません。ただ、はっきりしていることは、皆を守りたいと一身に願ったところ、あのような魔導を現界させることができました」
「そうですか、現界条件などが分かれば、他の魔導士にも現界可能かと思ったのですが、わからなければ仕方ありませんね。何か、分かった場合には、また教えていただけませんか?」
「それは、もちろんです」

 高等諮問会は、参考人を招致し、国の重要事項について話し合う機会だが、僕に対しての質問はあっけないほど単純なものだった。
 僕は、このまま高等諮問会が終わるならば、緊張した意味がないじゃないかと、少しばかり安堵と不安が入り混じった感情でいると、急に軍の国防部長が立ち上がり、話し始める。

「長官、やはり彼にはあれを任せたいのですが‥‥‥」
「国防部長、その話はすでに済んだ話ではないか。こんなまだ13歳の子どもに任せる話ではない」
「ですが、ユーリ・シルベニスタ様がいない今では、彼が一番適任かと存じます。彼の力なしでは、もはや日本王国は守りきれないということは長官にもご理解いただけるかと存じます」
「それは、理解している。しかし、子どもが戦場に出る社会、そんなことをしなければ社会を維持できなければ、私は、その国はもうおしまいだし、滅びてしまえばいいとさえ思っている」

 長官と国防部長が何を話しているのか検討がつかない、しかし、長官の最後の言葉が放たれた時、会場は静寂に包まれた。
 はたから見れば、行き過ぎた言葉でもあり、今は、日本王国代表代理の姫様の御前である。流石に不敬に匹敵するのでは。
 そんな考えが、会場に静かに広がる。
 その空気感を察してか、姫様は淡々と話し始めた。

「みなさん、私にそんなに気を使わなくても構いません。長官の言うことはもっともです。子どもを戦場に送り出さなければならなくなった社会は、もはや正常とは言えません。アスカ、何を言っているかわからないかもしれませんが、国防部では、ユーリ・シルベニスタが亡き今、国防の要としてアスカを起用し、アスカに国防の前線に立ってもらおうとしていたのです」
「そんな話があったのですね」
「ただ、様々な人から反対意見が上がりました。その中には、ユミさんも含まれています。そして、私もそれには反対です。確かに、先の戦争で、日本王国の防衛力は大きく削がれました。しかし、まだ、かろうじて体裁を保っていますし、今後再建することも可能です。まだ、アスカに頼るときではないと考えています」

 姫様が、必死に僕を守ってくれようとしていた。
 そのことは純粋に嬉しい。
 しかし、僕自身は、僕の力を皆のために使えるならば、それでいいとも思っている。
 あと、僕の最終目標は、天界大統領を打破することだから、いづれ、僕は前線に立たなくてはいかなくなる。
 そうなれば、日本王国の防衛の最前線に立つことと、天界大統領を打破することは50歩100歩である。

 そして、今、日本王国が僕の力を必要としてくれているならば、今が僕から提案するチャンスかもしれない。
 日本王国のピンチを打破するためには、やはり最終的には天界大統領を倒さなければならない。
 僕は、意を決して発現する。

「すみません、僕から一つ提案してもよろしいですか?」

 僕のいきなりの発言に、長官や姫様は目を丸くして驚く。

「どうぞ」

 と長官が述べる。

「私には、目標がありまして‥‥‥」
「目標ですか? それはどんなですか?」
「それは‥‥‥天界大統領を討ち取ることです」
「え!?」

 会場が急にざわつく。
 まるで僕の正気を疑うように。
 そんなことは御構い無しに、僕は話し続ける。

「私たちは、今回運よく、天界魔導士を追い返すことに成功しました。しかし、このような危機はいづれ再来すると思います。ならば、元凶を断つ必要があります。その元凶とは天界大統領です。天界大統領さえいなくなれば、事態は一変すると考えます」
「そうかもしれないが‥‥‥」

 今度は、国防部長があっけにとられながら、つぶやく。
 そして、僕は、姫様の目を見据えながら、思いの丈を伝える。

「天界大統領の打破は、私の悲願でもあります。そのため、私は、これから天界へのルートを探索し、実際に天界に潜り込もうと考えています。王国の重鎮のみなさんが一堂に会している丁度良い機会ですので、どうか、天界への潜入を許可していただけないでしょうか」

 僕は、真剣な面持ちで、言い切った。
 すると、国防部長が僕に問いかける。

「天界へのルートを探索って当てでもあるのですか? 前国王が使用していたルートは誰も知りませんよ」
「はい、それは僕も皆目見当がついていません。ですので、一から地道に探します。ただ、やるだけの価値はあると考えています」
「それこそ、危険すぎますし、絵空事すぎます。我々が使用できる天界へのルートがあるとも限らないのに‥‥‥」

 国防部長の言い分ももっともだが、僕はこのチャンスを逃すわけにはいかない。
 天界への故意の接触は、法律で禁止されている。
 だから、ここで特例を認めてもらう必要がある。

「アスカ、あなたはもっと自分を大切にしてください」

 姫様が悲しそうな顔で、僕に告げる。
 姫様は、僕が危険に合わないようにこれまで尽力してきてくれた。姫様の、優しさを全て無下にしてしまうことを僕は言っているのだが、これだけは僕は、姫様に理解して欲しかった。
 僕は、天界大統領を倒さなければならないんだ。
 それが、この世界に平和をもたらす唯一の手段だから。
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