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旅日記 秩父にて 壱 始まり

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 これは僕が夏に秩父に行った話。

 始発の電車に揺られ、乗り換えること三回。三時間程かけてようやく辿り着いた場所。友人の後ろに付いて向かったのは駅の中にあるフードコート。少し早い昼飯(秩父ラーメン)を堪能しながら予定を立てる。それぞれの行きたい所を重ね合わせ、一つのルートが出来上がると二人は席を立ち、近くのレンタルサイクルへ向かった。

 慣れない小さなタイヤの自転車に乗りながら秩父橋へ漕ぎ始める。外を出歩くには少し暑過ぎる太陽の日差しを浴びながら傾斜のある橋の真ん中で撮影会が開かれた。自然豊かな町並みは人付き合いに疲れていた僕の心を癒やしてくれる。

 再び走り出す自転車は、これから始まる過酷な旅へと向かっていた。

 どれだけの時間漕いだのだろう。終わりの見えない山登り。僕は早いうちに漕ぐのを辞めた。己の身と動きたがらない自転車を引きずり、やっと到着した中間地点。

 駐車場の角の柵に二重の鍵を通し、再び歩き出す二人。その横を何台もの車が平気な顔をして通り過ぎて行った。僕はこの時初めて免許を持っていないことを後悔した。

 山の上の方から「旅立ちの日に」が聞こえていた。どれだけ歩いてみてもその音はずっと遠くで響いていた。

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