1 / 9
旅日記 秩父にて 壱 始まり
しおりを挟む
これは僕が夏に秩父に行った話。
始発の電車に揺られ、乗り換えること三回。三時間程かけてようやく辿り着いた場所。友人の後ろに付いて向かったのは駅の中にあるフードコート。少し早い昼飯(秩父ラーメン)を堪能しながら予定を立てる。それぞれの行きたい所を重ね合わせ、一つのルートが出来上がると二人は席を立ち、近くのレンタルサイクルへ向かった。
慣れない小さなタイヤの自転車に乗りながら秩父橋へ漕ぎ始める。外を出歩くには少し暑過ぎる太陽の日差しを浴びながら傾斜のある橋の真ん中で撮影会が開かれた。自然豊かな町並みは人付き合いに疲れていた僕の心を癒やしてくれる。
再び走り出す自転車は、これから始まる過酷な旅へと向かっていた。
どれだけの時間漕いだのだろう。終わりの見えない山登り。僕は早いうちに漕ぐのを辞めた。己の身と動きたがらない自転車を引きずり、やっと到着した中間地点。
駐車場の角の柵に二重の鍵を通し、再び歩き出す二人。その横を何台もの車が平気な顔をして通り過ぎて行った。僕はこの時初めて免許を持っていないことを後悔した。
山の上の方から「旅立ちの日に」が聞こえていた。どれだけ歩いてみてもその音はずっと遠くで響いていた。
始発の電車に揺られ、乗り換えること三回。三時間程かけてようやく辿り着いた場所。友人の後ろに付いて向かったのは駅の中にあるフードコート。少し早い昼飯(秩父ラーメン)を堪能しながら予定を立てる。それぞれの行きたい所を重ね合わせ、一つのルートが出来上がると二人は席を立ち、近くのレンタルサイクルへ向かった。
慣れない小さなタイヤの自転車に乗りながら秩父橋へ漕ぎ始める。外を出歩くには少し暑過ぎる太陽の日差しを浴びながら傾斜のある橋の真ん中で撮影会が開かれた。自然豊かな町並みは人付き合いに疲れていた僕の心を癒やしてくれる。
再び走り出す自転車は、これから始まる過酷な旅へと向かっていた。
どれだけの時間漕いだのだろう。終わりの見えない山登り。僕は早いうちに漕ぐのを辞めた。己の身と動きたがらない自転車を引きずり、やっと到着した中間地点。
駐車場の角の柵に二重の鍵を通し、再び歩き出す二人。その横を何台もの車が平気な顔をして通り過ぎて行った。僕はこの時初めて免許を持っていないことを後悔した。
山の上の方から「旅立ちの日に」が聞こえていた。どれだけ歩いてみてもその音はずっと遠くで響いていた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
どっきりわくわく残念な俺物語!
ポテトメーン
エッセイ・ノンフィクション
私の恥ずかしい日常を開示し、読者を笑わせたい!腕前はポンコツですが書いて投稿し、磨いてく所存です。
誰も傷つけない笑をコンセプトにしてます!
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
「私はまた、失う」
うた子
エッセイ・ノンフィクション
私の身の上に起こった「東日本大震災」による「原発事故」での避難、被災生活中の出来事を書いた、ノンフィクションの話です。
2011年3月11日、東日本大震災により、原発は事故を起こした。
放射能を巻き散らかした福島第一原子力発電所のある町からの被災者である私や家族たち、町の人々への偏見や差別。
私たちは、すぐには故郷へと戻ることは許されなかった。
すぐには、ではない。
永遠に、だ。
何もかもに絶望し、私は生きる気力を失いかける。
救ってくれようとしてくれている人の手や、助けようとしてくれている人の声が、私には届かなかった。
ひどい惨状を見た。
全てが虚しく感じた。
私はまだ、もっと、何もかもを、失うの。
これは、「私にだけ起こりえること」じゃなかった。
誰にでも、起こりえることだった。
何度も諦めようとした。
もう無理だと思った。
私には何もなくなってしまったのだと思った。
それでも生きた理由がある。
生きることをなんとか選択出来た理由がある。
私が「失って失って失って」「傷ついて傷ついて傷ついて」も、生きて行くことを諦めず、「生きなければ」と思わせてもらうことが出来たのは、ただの小さな日々の積み重ね。
私を今、生かすものは、何だろう。
Webコンテンツ大賞の戦い方【模索してみよう!】
橘花やよい
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスのWebコンテンツ大賞。
読者投票もあるし、うまく戦いたいですよね。
●応募作、いつから投稿をはじめましょう?
●そもそもどうやったら、読んでもらえるかな?
●参加時の心得は?
といったことを、ゆるふわっと書きます。皆さまも、ゆるふわっと読んでくださいませ。
30日と31日にかけて公開します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる