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第1章 薬師大学校編
51話 意図せず生まれた者
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人間の国で騒動が起きる少し前の事である。
魔人の国ではブラックが、自分の『指輪に宿りし者』に直接この世界やあの黒い影の集団について話を聞こうと考えていた。
私は舞と対になる指輪を触りながら、会って話したい事があると心から念じたのだ。
舞から話は聞いてはいたが、再度確認したかったのだ。
すると、指輪が温かくなったかと思うと優しく光りだして、大きな光の集合体が現れたのだ。
そして以前見た時と同じ、見た目は男性を思わせる姿の者が現れたのだ。
「ブラック、久しぶりだねー
もっと早く呼んでほしかったのに、冷たいなぁ。
あ、ここが魔人の城なんだね。
実際に来るとイメージが違うなー
何だかブラック・・・部屋が地味だね。
もっと明るくした方がいいよー」
ああ・・・この人、以前もこんな感じだったと、ブラックは何だか気が抜けたのだ。
『指輪に宿りし者』はブラックの執務室の中をウロウロしながら、興味深そうに部屋の中の物を眺めていた。
「あの、実は教えて欲しい事があって、お呼びしたのですが・・・」
ブラックは早速本題に入ったのだ。
「ああ、聞きたい事はわかってるよ。
でも、舞から聞いたんじゃない?
僕の片割れの言っている事以上の話は無いけどね。」
『指輪に宿りし者』はそう言いながらも、この世界の成り立ちや『大地と闇から生まれし者』について話してくれたのだ。
聞き終わると、やはり舞から聞いた話と何も変わる事は無かったのだ。
しかし、聞いていた情報以上の事はないかと思った時だった。
『指輪に宿りし者』は少し悩みながら付け加えたのだ。
「一つ、心配な事があるんだよねー。
僕の片割れは舞にはきっと言ってないと思うんだけど・・・。
僕はブラックに付いているものだから、遠慮なく言っちゃうね。
でも・・・舞には言ってはいけないよ。
それを約束できる?
約束出来ないなら教えてあげないよー。」
舞に関係する事なのだろうか?
ここまで言われて、聞かないわけにはいかなかった。
「もちろん、約束します。
ただ、それを告げない事で舞が危険になるのなら、私は言ってしまうでしょう。
それを許していただけるなら・・・」
『指輪に宿りし者』は少し考えて、頷いたのだ。
「そうだね、その時は伝えるべきかもね。」
そう言って微笑んだのだ。
「必ずそうなる訳ではないと言う事を前置きしとくね。
『大地と闇から生まれし者』は、長い間何もない大地で眠るように暗闇に息を潜めていたんだ。
ところが、その世界に誰も意図せず現れたものがあってね。
その存在により、今の人間がいる世界のように緑あふれる素敵な世界になったんだよ。
ただ、それは『大地と闇から生まれし者』と、そこに注がれた光によって出来た特殊な存在だと思うんだ。
それは『光』『大地』『闇』から作られたものとは少し違ったんだよね。
まあ、存在自体はこの世界を豊かにしてくれた訳で、何ら問題ないのだけど、心配なのは『大地と闇から生まれし者』と少しだけ似たようなオーラを持ち合わせている事だよ。
多分、ブラック達にはわからないと思うけどね。」
それを聞いた時、何故舞には言わない方がいいと言ったかが理解できたのだ。
「しかし・・・彼はどう見ても善良ですよ。
心配な点など・・・」
「・・・今はね。
ただ、もしも昔から存在する『大地と闇から生まれし者』に遭遇したら、何かしらの影響を受けるかもしれない。
もしかしたら、利用されてしまうかも・・・
多分まだ主たる者には、直接会った事がないのだと思うけどね。
もちろん、彼は何も変わらないかもしれない。
可能性だけで、舞に伝える事は良くないからね。
だから、舞の指輪にいる僕の片割れは言わなかったのだと思うよ。
舞がどれだけ彼を信頼しているかは知っているだろう。
ただ、彼の舞への執着も気になる要因の一つなんだけどね。
ああ、それは言われなくても、ブラックはわかっているか。」
そう言って、執務室の窓からこの世界を眺めたのだ。
「そうそう、僕の片割れは舞からは話の代償に可愛らしい物をもらったと聞いているよ。
ブラックは僕に何をくれるのかな?」
『指輪に宿りし者』は振り向くと、満遍の笑みで私を見たのだ。
舞のように可愛いものなど持っていなかったので、私はとても困った。
「何を差し上げて良いかわからないのですが・・・
ご希望はありますか?」
『指輪に宿りし者』は少し考えて、口を開いたのだ。
「じゃあ、舞に同じ物が欲しいと頼んでくれる?
僕も可愛らしい物が好きなんだよ。」
私はこれで舞に会いに行く口実が出来たので、少し嬉しかった。
しかし、今聞いた内容が、思った以上に重い話であったため、話して良いと言われたとしても、やはり私も舞に話す事は無いだろうと思った。
ただ、舞が彼により危険に晒される時・・・
そんな事が起きるとは思えないが、その時は話すべきだと思ったのだ。
魔人の国ではブラックが、自分の『指輪に宿りし者』に直接この世界やあの黒い影の集団について話を聞こうと考えていた。
私は舞と対になる指輪を触りながら、会って話したい事があると心から念じたのだ。
舞から話は聞いてはいたが、再度確認したかったのだ。
すると、指輪が温かくなったかと思うと優しく光りだして、大きな光の集合体が現れたのだ。
そして以前見た時と同じ、見た目は男性を思わせる姿の者が現れたのだ。
「ブラック、久しぶりだねー
もっと早く呼んでほしかったのに、冷たいなぁ。
あ、ここが魔人の城なんだね。
実際に来るとイメージが違うなー
何だかブラック・・・部屋が地味だね。
もっと明るくした方がいいよー」
ああ・・・この人、以前もこんな感じだったと、ブラックは何だか気が抜けたのだ。
『指輪に宿りし者』はブラックの執務室の中をウロウロしながら、興味深そうに部屋の中の物を眺めていた。
「あの、実は教えて欲しい事があって、お呼びしたのですが・・・」
ブラックは早速本題に入ったのだ。
「ああ、聞きたい事はわかってるよ。
でも、舞から聞いたんじゃない?
僕の片割れの言っている事以上の話は無いけどね。」
『指輪に宿りし者』はそう言いながらも、この世界の成り立ちや『大地と闇から生まれし者』について話してくれたのだ。
聞き終わると、やはり舞から聞いた話と何も変わる事は無かったのだ。
しかし、聞いていた情報以上の事はないかと思った時だった。
『指輪に宿りし者』は少し悩みながら付け加えたのだ。
「一つ、心配な事があるんだよねー。
僕の片割れは舞にはきっと言ってないと思うんだけど・・・。
僕はブラックに付いているものだから、遠慮なく言っちゃうね。
でも・・・舞には言ってはいけないよ。
それを約束できる?
約束出来ないなら教えてあげないよー。」
舞に関係する事なのだろうか?
ここまで言われて、聞かないわけにはいかなかった。
「もちろん、約束します。
ただ、それを告げない事で舞が危険になるのなら、私は言ってしまうでしょう。
それを許していただけるなら・・・」
『指輪に宿りし者』は少し考えて、頷いたのだ。
「そうだね、その時は伝えるべきかもね。」
そう言って微笑んだのだ。
「必ずそうなる訳ではないと言う事を前置きしとくね。
『大地と闇から生まれし者』は、長い間何もない大地で眠るように暗闇に息を潜めていたんだ。
ところが、その世界に誰も意図せず現れたものがあってね。
その存在により、今の人間がいる世界のように緑あふれる素敵な世界になったんだよ。
ただ、それは『大地と闇から生まれし者』と、そこに注がれた光によって出来た特殊な存在だと思うんだ。
それは『光』『大地』『闇』から作られたものとは少し違ったんだよね。
まあ、存在自体はこの世界を豊かにしてくれた訳で、何ら問題ないのだけど、心配なのは『大地と闇から生まれし者』と少しだけ似たようなオーラを持ち合わせている事だよ。
多分、ブラック達にはわからないと思うけどね。」
それを聞いた時、何故舞には言わない方がいいと言ったかが理解できたのだ。
「しかし・・・彼はどう見ても善良ですよ。
心配な点など・・・」
「・・・今はね。
ただ、もしも昔から存在する『大地と闇から生まれし者』に遭遇したら、何かしらの影響を受けるかもしれない。
もしかしたら、利用されてしまうかも・・・
多分まだ主たる者には、直接会った事がないのだと思うけどね。
もちろん、彼は何も変わらないかもしれない。
可能性だけで、舞に伝える事は良くないからね。
だから、舞の指輪にいる僕の片割れは言わなかったのだと思うよ。
舞がどれだけ彼を信頼しているかは知っているだろう。
ただ、彼の舞への執着も気になる要因の一つなんだけどね。
ああ、それは言われなくても、ブラックはわかっているか。」
そう言って、執務室の窓からこの世界を眺めたのだ。
「そうそう、僕の片割れは舞からは話の代償に可愛らしい物をもらったと聞いているよ。
ブラックは僕に何をくれるのかな?」
『指輪に宿りし者』は振り向くと、満遍の笑みで私を見たのだ。
舞のように可愛いものなど持っていなかったので、私はとても困った。
「何を差し上げて良いかわからないのですが・・・
ご希望はありますか?」
『指輪に宿りし者』は少し考えて、口を開いたのだ。
「じゃあ、舞に同じ物が欲しいと頼んでくれる?
僕も可愛らしい物が好きなんだよ。」
私はこれで舞に会いに行く口実が出来たので、少し嬉しかった。
しかし、今聞いた内容が、思った以上に重い話であったため、話して良いと言われたとしても、やはり私も舞に話す事は無いだろうと思った。
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