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第1章 薬師大学校編
48話 侵食された集団
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舞は少し離れた場所で学長の演説や、外から聞こえる学長を支持する声に耳を傾けていた。
学長が演説を行った後には、他の者も学校外に向けて何かを話すように促されていた。
だが、よく見ると彼等の表情は学長と違い曇っていたのだ。
緊張や不安からなのか、とても今から何かを話そうとする表情には見えなかったのだ。
私はこの温室の入口にいる武器を持った兵士達をどうにかしなければと思ったのだ。
そして精霊からもらった弓矢を大きくすると、温室の入口の床に狙いをつけた。
勢いよく矢が放たれると、さっきも使用した薬を到達させる事が出来たのだ。
床でその薬が破裂すると、明るい光の霧が舞い上がり、あっという間にその周辺にいた人達に吸収されたのだ。
すると、入口にいた武器を持った兵士達を中心に、ゆっくりと倒れ出したのだ。
彼等に少し眠ってもらうことにしたのだ。
それを見た周りの人達は驚いてこちらを振り向き、ざわつきだしたのだ。
その状況に学長も私に気付き、声をかけて来たのだ。
「これはこれは、お嬢さん、どうしてここに?
地下で大人しくしていると思っていたのですがね。
まだ、お嬢さんの出番では無いですよ。」
学長はそう言い、驚く表情をするどころか、私を見て微笑んだのだ。
つまりは、私があの場所から抜け出す事は予想していたのだろう。
「残念ながらあの場所は好きになれなかったので、外に出させてもらいました。
仮面の人物はあなただったのですね。
・・・その方達は望んでここにいるようには見えませんが。」
私はそう言って、演説を促されていた人達をチラッと見たのだ。
彼等は思い詰めたような顔で、下を向いていたのだった。
「ここにいるのは、私の考えに賛同してもらった人達だけですよ。
学内の人達にも、先程わかってもらったのだよ。
無理にこちらに来ている人など、一人たりともおりませんよ。
それに、下を見てみなさい。
外でも私に賛同する者達が沢山いるでは無いかね。
今こそ、変化をもたらす時なのだよ。
そして、お嬢さん・・・あなたの力が必要なのですよ。
魔人に災いをもたらす娘さん。」
学長はそう言って私に手を差し出したのだ。
そう言う学長の顔は、不気味に微笑んでいたのだ。
「私が賛同する事が無いのは、わかっているはずでしょう?
だから、手を貸すこともないわ。
これが本当にあなたの希望なの?」
私はそう言って学長を睨んだのだ。
しかしその時、そのやりとりを見ていた周りの人達の冷たい視線を感じたのだ。
彼等は急に、まるで誰かに操られているかのように、ブツブツと何か言いながら私の近くに集まりだしたのだ。
そしてさっきまで別の場所で感じた嫌な気配を、彼等の中に感じたのだ。
『お前は間違っている』
『我らが指導者の指示に従うのだ・・・』
そこにいる多くの者がそう言いながら、私を囲みだしたのだ。
胸ポケットにいた精霊は肩に移動し辺りを見回したのだ。
「舞、気をつけて。
一瞬で暗闇から黒い影が現れ、この人達に入り込んだみたいだ。」
精霊はそう言って、周りを囲みだした人達に何か仕掛けようとしたのだ。
「ダメ、この人達は普通の人間よ。」
私は精霊に待つように話したのだ。
やはり黒い影の集団は、この世界にまだ存在していたのだ。
学長を見ると、この状況になる事がわかっていたかのように、驚くどころか顔を緩めていたのだ。
まさか・・・
とにかく私は彼等に捕まりたくは無かったが、傷つけることもしたくなかった。
どうしたものかと考えていた時、バサっと大きな音を立てて何かが頭上に現れたのだ。
見上げると、ドラゴンの翼を持ったアクアだったのだ。
アクアは集団に囲まれている私の元に急降下し、私を抱えるとすぐに上昇して空中に止まったのだ。
「舞、なんで相変わらず危ないところにいるのだ?」
私を抱えながらアクアは不思議な顔をしたのだ。
「アクアこそなんで?」
「ユークレイスと仕事でこっちに来たのだ。
人間の城に行く途中で、気になる事があってな。」
真面目そうに答えるアクアを見ると、とてもおかしかったのだ。
「アクアも仕事をしているのね。」
「当たり前だ。
舞は失礼だな。」
こんな状況であったが、アクアとそんな会話が出来て、私はとても安心したのだった。
学長が演説を行った後には、他の者も学校外に向けて何かを話すように促されていた。
だが、よく見ると彼等の表情は学長と違い曇っていたのだ。
緊張や不安からなのか、とても今から何かを話そうとする表情には見えなかったのだ。
私はこの温室の入口にいる武器を持った兵士達をどうにかしなければと思ったのだ。
そして精霊からもらった弓矢を大きくすると、温室の入口の床に狙いをつけた。
勢いよく矢が放たれると、さっきも使用した薬を到達させる事が出来たのだ。
床でその薬が破裂すると、明るい光の霧が舞い上がり、あっという間にその周辺にいた人達に吸収されたのだ。
すると、入口にいた武器を持った兵士達を中心に、ゆっくりと倒れ出したのだ。
彼等に少し眠ってもらうことにしたのだ。
それを見た周りの人達は驚いてこちらを振り向き、ざわつきだしたのだ。
その状況に学長も私に気付き、声をかけて来たのだ。
「これはこれは、お嬢さん、どうしてここに?
地下で大人しくしていると思っていたのですがね。
まだ、お嬢さんの出番では無いですよ。」
学長はそう言い、驚く表情をするどころか、私を見て微笑んだのだ。
つまりは、私があの場所から抜け出す事は予想していたのだろう。
「残念ながらあの場所は好きになれなかったので、外に出させてもらいました。
仮面の人物はあなただったのですね。
・・・その方達は望んでここにいるようには見えませんが。」
私はそう言って、演説を促されていた人達をチラッと見たのだ。
彼等は思い詰めたような顔で、下を向いていたのだった。
「ここにいるのは、私の考えに賛同してもらった人達だけですよ。
学内の人達にも、先程わかってもらったのだよ。
無理にこちらに来ている人など、一人たりともおりませんよ。
それに、下を見てみなさい。
外でも私に賛同する者達が沢山いるでは無いかね。
今こそ、変化をもたらす時なのだよ。
そして、お嬢さん・・・あなたの力が必要なのですよ。
魔人に災いをもたらす娘さん。」
学長はそう言って私に手を差し出したのだ。
そう言う学長の顔は、不気味に微笑んでいたのだ。
「私が賛同する事が無いのは、わかっているはずでしょう?
だから、手を貸すこともないわ。
これが本当にあなたの希望なの?」
私はそう言って学長を睨んだのだ。
しかしその時、そのやりとりを見ていた周りの人達の冷たい視線を感じたのだ。
彼等は急に、まるで誰かに操られているかのように、ブツブツと何か言いながら私の近くに集まりだしたのだ。
そしてさっきまで別の場所で感じた嫌な気配を、彼等の中に感じたのだ。
『お前は間違っている』
『我らが指導者の指示に従うのだ・・・』
そこにいる多くの者がそう言いながら、私を囲みだしたのだ。
胸ポケットにいた精霊は肩に移動し辺りを見回したのだ。
「舞、気をつけて。
一瞬で暗闇から黒い影が現れ、この人達に入り込んだみたいだ。」
精霊はそう言って、周りを囲みだした人達に何か仕掛けようとしたのだ。
「ダメ、この人達は普通の人間よ。」
私は精霊に待つように話したのだ。
やはり黒い影の集団は、この世界にまだ存在していたのだ。
学長を見ると、この状況になる事がわかっていたかのように、驚くどころか顔を緩めていたのだ。
まさか・・・
とにかく私は彼等に捕まりたくは無かったが、傷つけることもしたくなかった。
どうしたものかと考えていた時、バサっと大きな音を立てて何かが頭上に現れたのだ。
見上げると、ドラゴンの翼を持ったアクアだったのだ。
アクアは集団に囲まれている私の元に急降下し、私を抱えるとすぐに上昇して空中に止まったのだ。
「舞、なんで相変わらず危ないところにいるのだ?」
私を抱えながらアクアは不思議な顔をしたのだ。
「アクアこそなんで?」
「ユークレイスと仕事でこっちに来たのだ。
人間の城に行く途中で、気になる事があってな。」
真面目そうに答えるアクアを見ると、とてもおかしかったのだ。
「アクアも仕事をしているのね。」
「当たり前だ。
舞は失礼だな。」
こんな状況であったが、アクアとそんな会話が出来て、私はとても安心したのだった。
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