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第1章 薬師大学校編
45話 演説
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サイレイ国の王の執務室ではオウギ王が深刻な顔をしてヨクと話していたのだ。
その時、扉がノックされシウン大将とリョウが中に入ってきたのだ。
「ああ・・・シウン、状況は?
彼は?」
オウギ王は二人を見てそう話したのだ。
「彼から今回学校を占拠した集団について、情報がありましたので連れて来た次第です。」
そう言って、シウン大将はリョウを紹介し話してもらったのだ。
それを聞いたオウギ王もヨクも顔を見合わせ驚いていたのだ。
「まさか学長とは・・・信じられん。
一緒に大学校に通っていた頃も、そんな話は聞いた事はなかった。」
ヨクはそう言って何か考えているようだった。
「それと・・・ヨク殿。
先程まで舞殿も一緒だったのですが・・・
後から来ると言っておられたのですが、まだいらっしゃらないのが少し気になるのです。」
心苦しそうにシウン大将は伝えたのだ。
「うむ、舞のことだから学校の中に行こうとしているかもしれない。
自分を襲った者達を、自分自身で突き止めたそうだったからのう。
シウン大将、気に病むことはないですぞ。
大人しくしてる性格ではないですしのう。
まあ、精霊も一緒であろうし、ペンダントや指輪の加護もあるから心配は無いであろう。
ただ、我々もどうにか中に入る事を考えなければ。
学生や教職員方が人質のような状況であるのだしのう。」
ヨクはそう言ってシウン大将に話した後、オウギ王を見たのだ。
「シウン、ある程度この騒動の本質がわかったところで、対策会議を開くとしよう。
軍幹部を集めるように。」
オウギ王はそう言って、シウン大将に指示をしたのだ。
そして、リョウの処分については持ち越しとなったのだ。
○
○
○
舞はそっと学内に入ると、上の階へと向かったのだ。
どうも一階や二階は静まり返っており、階上の方に人の気配があったのだ。
舞が四階の階段を上がろうとした時である。
「あれ?光ってるって事はアクアがいるみたい。」
私の胸元のペンダントが青く光ったのだ。
アクアの額にも同じ石があるため、お互いが近づくと青く光り反応し合うのだった。
何でここにアクアがいるかはわからなかったが、私はそれを見てとても安心したのだ。
私は慎重に階段を登っていくと、兵士が辺りを警備しているのが見えたのだ。
しかし、すぐに多くの人たちが廊下を通り始めたのだ。
方向的には薬草が栽培されている温室に向かっていると思われた。
その集団が移動するのをそっと見ていると、最後には兵士達もいなくなったので、私は四階に移動したのだった。
右奥を見ると、以前あった立ち入り禁止の立て札が消えているのに気付いた。
だが、明らかに以前感じた嫌な雰囲気を、その奥の部屋から感じる事が出来たのだ。
今は集団の動向が心配だったので、気になりながらも温室に向かったのだ。
温室には多くの人達が集まっていた。
その中にはもちろん魔人排除の考えに同意して集まった人達と、学校に残っていた事で拘束されてしまった人達がいたのだ。
今回占拠した集団はフードを深く被ったり、顔を隠している人達が多かったので、明らかに学校内の人とは雰囲気が違っていたのだ。
その中には武器を持っている現役の兵士達もおり、学生や教職員は静かに従うしかなかったのだ。
そして彼らの前に一人の老人が現れると、誰もが注目したのだ。
それはこの薬師大学校の校長であった。
夜ではあったが温室の屋根と壁が折り畳まれ、その場所は屋上のような状態となり、外の様子が見渡せる場所となっていたのだ。
もう日も落ちていたが、学校の周りに待機している兵士達がいたため、いつもより周りは明るかったのだ。
そして温室では、小さな光の鉱石からなる照明のみが光っており、学長を怪しく照らしていたのだ。
学長は一番前に立つと、彼らに向かって話すのではなく、外を向いたのだ。
そして、そこから学校の外に待機している兵士たちや、状況を見に来ていた街の人々を眺めて、満足気な顔をしたのだ。
「皆さん、このような手段をとった事をお許しください。
ですが、どうしても皆さんにお伝えしたい事があるのです。」
学長はそう力強く話し始めたのだ。
そして自分達は魔人排除を掲げる集団である事を熱弁したのだ。
五百年前のことから、最近の魔獣の襲撃について。
そして、今また魔人の世界から新たな影の集団による脅威がある事を話し出したのだ。
正直、黒い影の集団の件は機密扱いの事項であったため、今まで一般の人が知る事では無かったのだ。
その為、その話を初めて聞いた人達に不安や恐怖が広がって行ったのだ。
そして、この考えに賛同する者達には、軍関係者、有識者、大学校関係者などがいる事を話したのだ。
すると、この演説を聞いていた一般の人からは、それだけの人物が賛同するのであればと、この学長の考えに賛成と声を上げる者が出て来たのだ。
もしかすると、その人達はもともとその集団の関係者なのかもしれないが、一般の人の心を掴むには十分であったのだ。
学校の周りでそんな声が多く上がりだすと、待機していた兵士達にも不満をぶつけ出したのだ。
そして徐々に王の政策への批判も出て来たのだ。
学長はまんまと世論を味方につける事に成功したのだ。
私はそれを見て、この嫌な流れを変える事は簡単では無いと感じたのだ。
その時、扉がノックされシウン大将とリョウが中に入ってきたのだ。
「ああ・・・シウン、状況は?
彼は?」
オウギ王は二人を見てそう話したのだ。
「彼から今回学校を占拠した集団について、情報がありましたので連れて来た次第です。」
そう言って、シウン大将はリョウを紹介し話してもらったのだ。
それを聞いたオウギ王もヨクも顔を見合わせ驚いていたのだ。
「まさか学長とは・・・信じられん。
一緒に大学校に通っていた頃も、そんな話は聞いた事はなかった。」
ヨクはそう言って何か考えているようだった。
「それと・・・ヨク殿。
先程まで舞殿も一緒だったのですが・・・
後から来ると言っておられたのですが、まだいらっしゃらないのが少し気になるのです。」
心苦しそうにシウン大将は伝えたのだ。
「うむ、舞のことだから学校の中に行こうとしているかもしれない。
自分を襲った者達を、自分自身で突き止めたそうだったからのう。
シウン大将、気に病むことはないですぞ。
大人しくしてる性格ではないですしのう。
まあ、精霊も一緒であろうし、ペンダントや指輪の加護もあるから心配は無いであろう。
ただ、我々もどうにか中に入る事を考えなければ。
学生や教職員方が人質のような状況であるのだしのう。」
ヨクはそう言ってシウン大将に話した後、オウギ王を見たのだ。
「シウン、ある程度この騒動の本質がわかったところで、対策会議を開くとしよう。
軍幹部を集めるように。」
オウギ王はそう言って、シウン大将に指示をしたのだ。
そして、リョウの処分については持ち越しとなったのだ。
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舞はそっと学内に入ると、上の階へと向かったのだ。
どうも一階や二階は静まり返っており、階上の方に人の気配があったのだ。
舞が四階の階段を上がろうとした時である。
「あれ?光ってるって事はアクアがいるみたい。」
私の胸元のペンダントが青く光ったのだ。
アクアの額にも同じ石があるため、お互いが近づくと青く光り反応し合うのだった。
何でここにアクアがいるかはわからなかったが、私はそれを見てとても安心したのだ。
私は慎重に階段を登っていくと、兵士が辺りを警備しているのが見えたのだ。
しかし、すぐに多くの人たちが廊下を通り始めたのだ。
方向的には薬草が栽培されている温室に向かっていると思われた。
その集団が移動するのをそっと見ていると、最後には兵士達もいなくなったので、私は四階に移動したのだった。
右奥を見ると、以前あった立ち入り禁止の立て札が消えているのに気付いた。
だが、明らかに以前感じた嫌な雰囲気を、その奥の部屋から感じる事が出来たのだ。
今は集団の動向が心配だったので、気になりながらも温室に向かったのだ。
温室には多くの人達が集まっていた。
その中にはもちろん魔人排除の考えに同意して集まった人達と、学校に残っていた事で拘束されてしまった人達がいたのだ。
今回占拠した集団はフードを深く被ったり、顔を隠している人達が多かったので、明らかに学校内の人とは雰囲気が違っていたのだ。
その中には武器を持っている現役の兵士達もおり、学生や教職員は静かに従うしかなかったのだ。
そして彼らの前に一人の老人が現れると、誰もが注目したのだ。
それはこの薬師大学校の校長であった。
夜ではあったが温室の屋根と壁が折り畳まれ、その場所は屋上のような状態となり、外の様子が見渡せる場所となっていたのだ。
もう日も落ちていたが、学校の周りに待機している兵士達がいたため、いつもより周りは明るかったのだ。
そして温室では、小さな光の鉱石からなる照明のみが光っており、学長を怪しく照らしていたのだ。
学長は一番前に立つと、彼らに向かって話すのではなく、外を向いたのだ。
そして、そこから学校の外に待機している兵士たちや、状況を見に来ていた街の人々を眺めて、満足気な顔をしたのだ。
「皆さん、このような手段をとった事をお許しください。
ですが、どうしても皆さんにお伝えしたい事があるのです。」
学長はそう力強く話し始めたのだ。
そして自分達は魔人排除を掲げる集団である事を熱弁したのだ。
五百年前のことから、最近の魔獣の襲撃について。
そして、今また魔人の世界から新たな影の集団による脅威がある事を話し出したのだ。
正直、黒い影の集団の件は機密扱いの事項であったため、今まで一般の人が知る事では無かったのだ。
その為、その話を初めて聞いた人達に不安や恐怖が広がって行ったのだ。
そして、この考えに賛同する者達には、軍関係者、有識者、大学校関係者などがいる事を話したのだ。
すると、この演説を聞いていた一般の人からは、それだけの人物が賛同するのであればと、この学長の考えに賛成と声を上げる者が出て来たのだ。
もしかすると、その人達はもともとその集団の関係者なのかもしれないが、一般の人の心を掴むには十分であったのだ。
学校の周りでそんな声が多く上がりだすと、待機していた兵士達にも不満をぶつけ出したのだ。
そして徐々に王の政策への批判も出て来たのだ。
学長はまんまと世論を味方につける事に成功したのだ。
私はそれを見て、この嫌な流れを変える事は簡単では無いと感じたのだ。
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