37 / 164
第1章 薬師大学校編
37話 舞の油断
しおりを挟む
的を射抜いていたのは、魔獣に対応してもらった弓の名手であった。
シウン大将が私に気付き、声をかけてくれたのだ。
「ああ、もういらしてたんですね。
・・・彼は会ったことありますよね。」
そう言ってその弓の名手を呼び、紹介してくれたのだ。
「ええ、魔獣の時にはお世話になりました。
そう言えば、その時はお名前を伺ってなかったですね。」
「お久しぶりです。
ハク=タイソウと申します。
舞さんも弓矢を使えると聞いて驚きましたよ。
あの時、私でなくても問題なかったのでは?」
そう言って笑ったのだ。
彼は以前、洞窟から魔獣が現れた時に私の薬を上手く到達させる為に、急遽対応してくれた人なのだ。
「彼に習うと上達も早いですよ。」
シウン大将はそう言って、その場を離れたのだ。
今日は彼から色々教わる事になった。
今まで私がやってきたアーチェリー は、静かな場所で定位置から遠くの的を射抜いたわけだが、実戦で使うものは全くそんな場所では無い事はよくわかっているのだ。
つまり動きながら、確実に、そして連続して扱える事が重要なのだ。
まさに、さっき彼がやっていた事なのだ。
そんな簡単で無い事はわかっているが、私は誰かの助けになるならばと、色々教わる事にしたのだ。
日も暮れたので、私はカクと一緒に帰ろうと城の正門の所で待っていた。
すると、前からある男の人が歩いてきたのだ。
私はチラッと顔を見ると、向こうも目線を合わせてきたのだ。
「舞さん?
やっぱり。」
声をかけて来たのは、ケイトとライトの兄のリョウ=コウカであった。
噂をすれば・・・であるのだ。
「あ、お久しぶりです。
ケイトとライトのお兄さんだったのですね。
今日聞きましたよ。
全く気付きませんでした。」
「ああ、実はケイトから黒髪の女性が学校にいる話は聞いていたのです。
カク先生の親戚っていうから、舞さんかと。
まさか、隣で学生をやっているとは驚きましたよ。
もちろん、あの時の事は話してませんがね。」
確かに魔獣への対応は軍によるものであり、家族と言えどその詳細を一般市民に話す事はタブーであるのだろう。
そうなると、私の事も話してないのも納得であるのだ。
「カク殿を待っているのですか?
まだ王室の薬師の方々は話し合いをされてましたよ。
先に帰った方がいいのでは?
私が送りますよ。」
いつ終わるかわからないのに、ここで待っていても仕方ないかも知れない。
私はリョウに送ってもらう事にしたのだ。
正直、一人で帰るのは心細かったのだ。
多分、リョウには私が誰かに狙われている事は知らされてないはず。
軍の捜査は一部の者のみで行われているはずなのだ。
それに、前回ケイトがいた時に現れた三人組も、目的は不明のままで処理されているはず。
かえって心配させるのも良く無いし、何で狙われているかの話になると面倒でもあるのだ。
だから、私は特にその件については何も話さなかった。
私達は歩きながら、ケイトやライトの話、また学校で習っていることなど話した。
馬車で帰ろうと思ったが、先日精霊と歩いた時意外と遠く無い事がわかったので、今回も歩く事にしたのだ。
だが、街中を抜けた時である。
前から顔を隠し、腰元に剣を携えた二人組がこちらに向かって歩いてきたのだ。
リョウもその怪しい気配に気付き足をとめたのだ。
薬師とは言え軍に従事しているので、最低限の訓練は受けているようだ。
だが今は丸腰の為、武器を持った者に対抗する手段は無かった。
「舞さん、こっちに。」
そう言って、私の手を掴み走り出したのだ。
すると、その二人組も追ってきたのだ。
私達は街中に戻り、細い入り組んだ路地を走り回ったのだ。
リョウはこの場所に詳しいらしく、あっという間に二人を巻いて、ある街外れの館の前に着いたのだ。
「ここで少し隠れよう。
確かここは今は空き家だったはず。
しばらく様子を見ましょう。」
そう言って私の手を掴み、地下に駆け降りたのだ。
私は言われるがまま、リョウの後をついて地下の部屋に入ったのだ。
そして、リョウは外を見て来ると言って部屋を出たのだ。
しかし・・・数分経っても戻ってこないリョウが心配になり、私も上に行こうとしたのだ。
ところが、いつの間にかその地下の部屋には鍵がかかっており、外に出る事が出来なかったのだ。
部屋の中を見回すと、空き家にしては綺麗に整頓されており、奥には人が住めるような設備があったのだ。
私はまさかと思った。
ケイトやライトの兄である彼が、私を陥れるはずがないと思い込んでいたのだ。
もちろん、軍の関係者の可能性は考えてはいた。
しかし、久しぶりに会ったリョウは以前と変わらなかったので、私は警戒を解いてしまったのだ。
シウン大将が私に気付き、声をかけてくれたのだ。
「ああ、もういらしてたんですね。
・・・彼は会ったことありますよね。」
そう言ってその弓の名手を呼び、紹介してくれたのだ。
「ええ、魔獣の時にはお世話になりました。
そう言えば、その時はお名前を伺ってなかったですね。」
「お久しぶりです。
ハク=タイソウと申します。
舞さんも弓矢を使えると聞いて驚きましたよ。
あの時、私でなくても問題なかったのでは?」
そう言って笑ったのだ。
彼は以前、洞窟から魔獣が現れた時に私の薬を上手く到達させる為に、急遽対応してくれた人なのだ。
「彼に習うと上達も早いですよ。」
シウン大将はそう言って、その場を離れたのだ。
今日は彼から色々教わる事になった。
今まで私がやってきたアーチェリー は、静かな場所で定位置から遠くの的を射抜いたわけだが、実戦で使うものは全くそんな場所では無い事はよくわかっているのだ。
つまり動きながら、確実に、そして連続して扱える事が重要なのだ。
まさに、さっき彼がやっていた事なのだ。
そんな簡単で無い事はわかっているが、私は誰かの助けになるならばと、色々教わる事にしたのだ。
日も暮れたので、私はカクと一緒に帰ろうと城の正門の所で待っていた。
すると、前からある男の人が歩いてきたのだ。
私はチラッと顔を見ると、向こうも目線を合わせてきたのだ。
「舞さん?
やっぱり。」
声をかけて来たのは、ケイトとライトの兄のリョウ=コウカであった。
噂をすれば・・・であるのだ。
「あ、お久しぶりです。
ケイトとライトのお兄さんだったのですね。
今日聞きましたよ。
全く気付きませんでした。」
「ああ、実はケイトから黒髪の女性が学校にいる話は聞いていたのです。
カク先生の親戚っていうから、舞さんかと。
まさか、隣で学生をやっているとは驚きましたよ。
もちろん、あの時の事は話してませんがね。」
確かに魔獣への対応は軍によるものであり、家族と言えどその詳細を一般市民に話す事はタブーであるのだろう。
そうなると、私の事も話してないのも納得であるのだ。
「カク殿を待っているのですか?
まだ王室の薬師の方々は話し合いをされてましたよ。
先に帰った方がいいのでは?
私が送りますよ。」
いつ終わるかわからないのに、ここで待っていても仕方ないかも知れない。
私はリョウに送ってもらう事にしたのだ。
正直、一人で帰るのは心細かったのだ。
多分、リョウには私が誰かに狙われている事は知らされてないはず。
軍の捜査は一部の者のみで行われているはずなのだ。
それに、前回ケイトがいた時に現れた三人組も、目的は不明のままで処理されているはず。
かえって心配させるのも良く無いし、何で狙われているかの話になると面倒でもあるのだ。
だから、私は特にその件については何も話さなかった。
私達は歩きながら、ケイトやライトの話、また学校で習っていることなど話した。
馬車で帰ろうと思ったが、先日精霊と歩いた時意外と遠く無い事がわかったので、今回も歩く事にしたのだ。
だが、街中を抜けた時である。
前から顔を隠し、腰元に剣を携えた二人組がこちらに向かって歩いてきたのだ。
リョウもその怪しい気配に気付き足をとめたのだ。
薬師とは言え軍に従事しているので、最低限の訓練は受けているようだ。
だが今は丸腰の為、武器を持った者に対抗する手段は無かった。
「舞さん、こっちに。」
そう言って、私の手を掴み走り出したのだ。
すると、その二人組も追ってきたのだ。
私達は街中に戻り、細い入り組んだ路地を走り回ったのだ。
リョウはこの場所に詳しいらしく、あっという間に二人を巻いて、ある街外れの館の前に着いたのだ。
「ここで少し隠れよう。
確かここは今は空き家だったはず。
しばらく様子を見ましょう。」
そう言って私の手を掴み、地下に駆け降りたのだ。
私は言われるがまま、リョウの後をついて地下の部屋に入ったのだ。
そして、リョウは外を見て来ると言って部屋を出たのだ。
しかし・・・数分経っても戻ってこないリョウが心配になり、私も上に行こうとしたのだ。
ところが、いつの間にかその地下の部屋には鍵がかかっており、外に出る事が出来なかったのだ。
部屋の中を見回すと、空き家にしては綺麗に整頓されており、奥には人が住めるような設備があったのだ。
私はまさかと思った。
ケイトやライトの兄である彼が、私を陥れるはずがないと思い込んでいたのだ。
もちろん、軍の関係者の可能性は考えてはいた。
しかし、久しぶりに会ったリョウは以前と変わらなかったので、私は警戒を解いてしまったのだ。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説

【完結】ある二人の皇女
つくも茄子
ファンタジー
美しき姉妹の皇女がいた。
姉は物静か淑やかな美女、妹は勝気で闊達な美女。
成長した二人は同じ夫・皇太子に嫁ぐ。
最初に嫁いだ姉であったが、皇后になったのは妹。
何故か?
それは夫が皇帝に即位する前に姉が亡くなったからである。
皇后には息子が一人いた。
ライバルは亡き姉の忘れ形見の皇子。
不穏な空気が漂う中で謀反が起こる。
我が子に隠された秘密を皇后が知るのは全てが終わった時であった。
他のサイトにも公開中。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

即席異世界転移して薬草師になった
黒密
ファンタジー
ある日、学校から帰ってきて机を見たら即席異世界転移と書かれたカップ麺みたいな容器が置いてある事に気がついた普通の高校生、華崎 秦(かざき しん)
秦は興味本位でその容器にお湯と中に入っていた粉を入れて三分待ち、封を開けたら異世界に転移した。
そして気がつくと異世界の大半を管理している存在、ユーリ・ストラスに秦は元の世界に帰れない事を知った。
色々考えた結果、秦は異世界で生きることを決めてユーリから六枚のカードからスキルを選んだ。
秦はその選んだスキル、薬草師で異世界を生きる事になる。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

貴方のために
豆狸
ファンタジー
悔やんでいても仕方がありません。新米商人に失敗はつきものです。
後はどれだけ損をせずに、不良債権を切り捨てられるかなのです。
※子どもに関するセンシティブな内容があります。

転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる