私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ

柚木 潤

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第1章 薬師大学校編

15話 舞の思い

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 舞はオウギ王やヨク達が議論している間、色々な事を思い出していた。

 私は以前から少し思う事があった。
 黒い影の集団は、魔人の森を侵食してエネルギーを吸い取っていた時、なぜか魔獣は操るという選択をしたのだ。
 そして、黒翼人のクロルの中に入り込んだ時も、エネルギーを吸い取り消滅の方向ではなくあえて操り、兄であるブロムと戦わせたような気がしてならなかった。
 もしかすると植物と違って、上手くエネルギーを吸い取れないのか?
 もしくは、誰かの意図が存在したのだろうか?
 今回教室に現れた黒い影達も、今まで見たものと同じ選択であったのだ。

 そう考えると、この黒い影達を動かしている者がいるのかもしれない。
 それはとても恐ろしい存在だと思うのだ。
 黒い影は人を操る事もでき、姿形などもコピーする事もできるはず。
 力や能力までは無理でも、誰かの記憶にある者の姿にはなる事が出来るのだ。
 人間の世界でそんな事が起きてしまったら・・・
 考えただけで恐ろしく、私はこの場で発言する事は出来なかった。
 やはり、あの洞窟の閉鎖が一番良いのかもしれない。
 そう思っていた時、オウギ王が口を開いた。

「今回の件は再度対策を練ることにしよう。
 魔人のお二人がいたおかげで大事には至らなかった事、大変感謝しておりますぞ。
 ブラック殿に状況をお伝え願いたい。」

 そう言って、オウギ王はユークレイスを見たのだ。

「かしこまりました。
 すぐに状況を報告いたします。
 では、我々はここで失礼いたします。」

 そう言うと、二人は執務室を出たのだ。
 
「私も失礼します。
 二人と少し話したい事があるので。」

 私はそう言ってみんなに頭を下げると、急いで二人の後を追ったのだ。

「二人とも待って。
 話したい事があるのよ。」

 追いかけて来た私を見るなり、アクアが噛みついてきた。

「舞、あの偏屈な老人は何だ。
 王が立派であっても、あんな奴が近くにいるなんて、問題だな。
 我々が来なければもっと大変なことになったと言うのに。」

「ええ、その通りだわ、アクア。
 あの学長の言い方はひどいわね。
 でも、王様は感謝していると思うわ。」

「ああ、王があんな奴でなくて良かったよ。」

 そんなことをアクアが言っている横でユークレイスが私に目を向けたのだ。

「舞殿、私達からも聞きたいことがありました。」

「そうだ、舞は何であんなところにいたんだ?
 ブラックは知っているのか?」

 アクアにそう言われ、私は一瞬言葉に詰まったのだ。
 そして、ゆっくりと二人を見つめた後言ったのだ。

「ええと・・・まだブラックにはここに来ている事は言わないでほしいの。」
 
 それを聞くと、二人の魔人は顔を見合わせ不思議な顔をしたのだ。

 私達はカクとヨクのお屋敷で、少し話をすることにした。
 アクアの腕に掴まると、私達は一瞬でお屋敷の前に移動したのだ。
 魔人の力は本当にすごいと、いつも感心するばかりなのだ。
 お屋敷の中に入ると、二人にお茶を出しながら自分の思うことを話したのだ。
 さっきは言えなかった事・・・あの黒い影達が人間の世界に来ることの恐ろしさを伝えたのだ。

「それこそ、ブラックと相談するのがいいのでは無いか?」

 アクアはそう言って、目の前のお菓子を貪っていた。
 ユークレイスもお茶を置くと、私を見て口を開いた。

「ブラック様にどうしてこちらに来ていることを言わないのですか?
 何かお考えでも?」

「大したことでは無いのよ。
 こっちでの生活が軌道に乗ったら、会いに行こうかとは思っているの。
 今ブラックに会ってしまったら、こっちでの勉強がおろそかになりそうで・・・怖いのよ。
 だから、もう少し黙っていてくれないかしら?
 ちゃんとそのうち会いに行くから。」

 私は二人に今の気持ちをそう伝えたのだ。
 本音は今すぐ会いに行きたいのだ。
 でも、頑張れた自分のご褒美として、取っておこうと思ったのだ。

「わかりました。
 そう言うことなら・・・ただ、アクアが黙っていられるかは不明ですが。」

 ユークレイスはそう言ってアクアを見たのだ。

「ブラックに隠し事は面白いから問題ないぞ。」

 アクアはそう言ってニヤついたのだ。
 
 とにかく、今は黒い影の対策なのだ。
 シウン大将は他に侵食された者はいないと言っていたが、私は不安でならなかった。
 あの黒い影達が、すでに別の人間に移っているかもしれないのだ。
 
 
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