7 / 164
第1章 薬師大学校編
07話 授業初日
しおりを挟む
舞の学生生活が始まった。
基本、この学校を卒業するためには必要な単位のようなものがあるのだが、舞はそれとは関係なかったので、興味がある授業を受ける事が出来たのだ。
自分の受けるカリキュラムは自分で決める事になっているので、誰もが同じように受けるわけではなかった。
昨日説明会でもらった資料を見ながら、私はどの講義を受ける事にするか悩んでいた。
まずは人間学、その名の通り人間の体についてだ。
舞の知っている情報とどれだけの差があるかをまずは知りたかった。
この世界はCTやMRIはないのだ。
レントゲンで見たり血液検査すら出来ないのだ。
ここでの常識が実際とは違う事があっても、それを証明するすべを持たないのだ。
だから、体の作りや病気について自分が知っている事と違っても、口を出す事や否定するべき事では無いと思った。
もちろん、その時の状況にもよるのだが。
薬草学も興味があった。
内容もそうであるが、これはカクが教壇に立つと言うので、それを見るだけでも楽しみであった。
普段とは違う、仕事をするカクを見たかったのだ。
そして、いくつか気になる授業があったが、中でも気になったのが魔鉱力学・・・
この世界で採掘される不思議な鉱石やそれを用いた武器や道具などの技術について学んでみたかったのだ。
なぜあの魔法陣が光の鉱石と加わる事で、異世界に転移出来るか知りたかったのだ。
公にはなっていないが、ハナさんが五百年前には作り出していたもの。
本当はその研究資料があれば良かったのだが、ケイシ家にもそれは残っていなかったのだ。
あえて、残さなかったのかもしれないのだが・・・
私は授業初日早めに登校し、資料を見ながら学校内を歩き回っていた。
学内は本当に城と同じようなヨーロッパ調の内装で、美術館や博物館を思わせるものであった。
しかも、廊下には高価そうな置物や絵画が飾られていたのだ。
そして各教室の出入り口は趣のある大きな扉で出来ていた。
私は目に映る物全てが興味深く、歩いているうちにいつの間にか四階まで上がっていたのだ。
奥には植物園の様な明るい温室があり、そこには薬草が栽培されているようだった。
そして廊下を少し歩いた時である。
ふと嫌な気配を感じたのだ。
振り向くと、他と同じような大きな扉があるのだが、そこには立て札があり、関係者以外立ち入り禁止と書いてあったのだ。
カクに読み書きを習って良かったと思った。
自分には特殊な能力があるわけでは無いが、嫌な雰囲気には敏感なのは確かなのだ。
それも、この感覚・・・
そう思った時である。
何かが私の肩に触れたのだ。
私は驚いて振り向くと、そこにはカクがいたのだ。
「カク、驚かさないでよ。
心臓が止まるかと思ったわ。」
「ああ、ごめん、ごめん。
真剣に立て札を読んでいたから、声をかけない方がいいかと思ってね。」
「カク・・・ここは何?
何だか嫌な気配を感じるんだけど。
私だけかな・・・」
「いや、以前からここに来ると何だか寒気がして、不快な感じがしてたから、なるべく近づかないようにしていたんだよ。
僕は危機回避能力は結構あるからね。」
カクが自慢げにそう話すのが少しおかしかった。
どうもこの部屋はカクがここで講師をする前から立ち入り禁止であり、何の部屋なのかもわからないと言う。
学生の時にはこんな立て札は無かったようで、特に気になる部屋では無かったようだ。
そして今回もらった学内の施設地図にもこの部屋の詳細は載ってないのだ。
その時、授業を知らせる鐘が鳴ったのだ。
「舞、遅れるよ、行かないと。」
私は後ろ髪惹かれる思いではあったが、授業に遅れるわけにはいかなかった。
だが、これから始まる授業はカク先生の薬草学であったから、まだ先生がここにいる訳で遅刻にはならないのだ。
私達は急いで教室に向かう為、階段へと走り出したのだ。
○
○
○
授業開始の鐘の音が鳴り終わる頃、ギーッと重そうな扉が開く音が四階の廊下に響いた。
それはちょうど、舞とカクが急いで階段をかけ降りて行くところだった。
立ち入り禁止の扉を少しだけ開けて、部屋から二人を静かに見ている者がいたのだ。
基本、この学校を卒業するためには必要な単位のようなものがあるのだが、舞はそれとは関係なかったので、興味がある授業を受ける事が出来たのだ。
自分の受けるカリキュラムは自分で決める事になっているので、誰もが同じように受けるわけではなかった。
昨日説明会でもらった資料を見ながら、私はどの講義を受ける事にするか悩んでいた。
まずは人間学、その名の通り人間の体についてだ。
舞の知っている情報とどれだけの差があるかをまずは知りたかった。
この世界はCTやMRIはないのだ。
レントゲンで見たり血液検査すら出来ないのだ。
ここでの常識が実際とは違う事があっても、それを証明するすべを持たないのだ。
だから、体の作りや病気について自分が知っている事と違っても、口を出す事や否定するべき事では無いと思った。
もちろん、その時の状況にもよるのだが。
薬草学も興味があった。
内容もそうであるが、これはカクが教壇に立つと言うので、それを見るだけでも楽しみであった。
普段とは違う、仕事をするカクを見たかったのだ。
そして、いくつか気になる授業があったが、中でも気になったのが魔鉱力学・・・
この世界で採掘される不思議な鉱石やそれを用いた武器や道具などの技術について学んでみたかったのだ。
なぜあの魔法陣が光の鉱石と加わる事で、異世界に転移出来るか知りたかったのだ。
公にはなっていないが、ハナさんが五百年前には作り出していたもの。
本当はその研究資料があれば良かったのだが、ケイシ家にもそれは残っていなかったのだ。
あえて、残さなかったのかもしれないのだが・・・
私は授業初日早めに登校し、資料を見ながら学校内を歩き回っていた。
学内は本当に城と同じようなヨーロッパ調の内装で、美術館や博物館を思わせるものであった。
しかも、廊下には高価そうな置物や絵画が飾られていたのだ。
そして各教室の出入り口は趣のある大きな扉で出来ていた。
私は目に映る物全てが興味深く、歩いているうちにいつの間にか四階まで上がっていたのだ。
奥には植物園の様な明るい温室があり、そこには薬草が栽培されているようだった。
そして廊下を少し歩いた時である。
ふと嫌な気配を感じたのだ。
振り向くと、他と同じような大きな扉があるのだが、そこには立て札があり、関係者以外立ち入り禁止と書いてあったのだ。
カクに読み書きを習って良かったと思った。
自分には特殊な能力があるわけでは無いが、嫌な雰囲気には敏感なのは確かなのだ。
それも、この感覚・・・
そう思った時である。
何かが私の肩に触れたのだ。
私は驚いて振り向くと、そこにはカクがいたのだ。
「カク、驚かさないでよ。
心臓が止まるかと思ったわ。」
「ああ、ごめん、ごめん。
真剣に立て札を読んでいたから、声をかけない方がいいかと思ってね。」
「カク・・・ここは何?
何だか嫌な気配を感じるんだけど。
私だけかな・・・」
「いや、以前からここに来ると何だか寒気がして、不快な感じがしてたから、なるべく近づかないようにしていたんだよ。
僕は危機回避能力は結構あるからね。」
カクが自慢げにそう話すのが少しおかしかった。
どうもこの部屋はカクがここで講師をする前から立ち入り禁止であり、何の部屋なのかもわからないと言う。
学生の時にはこんな立て札は無かったようで、特に気になる部屋では無かったようだ。
そして今回もらった学内の施設地図にもこの部屋の詳細は載ってないのだ。
その時、授業を知らせる鐘が鳴ったのだ。
「舞、遅れるよ、行かないと。」
私は後ろ髪惹かれる思いではあったが、授業に遅れるわけにはいかなかった。
だが、これから始まる授業はカク先生の薬草学であったから、まだ先生がここにいる訳で遅刻にはならないのだ。
私達は急いで教室に向かう為、階段へと走り出したのだ。
○
○
○
授業開始の鐘の音が鳴り終わる頃、ギーッと重そうな扉が開く音が四階の廊下に響いた。
それはちょうど、舞とカクが急いで階段をかけ降りて行くところだった。
立ち入り禁止の扉を少しだけ開けて、部屋から二人を静かに見ている者がいたのだ。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説

【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

即席異世界転移して薬草師になった
黒密
ファンタジー
ある日、学校から帰ってきて机を見たら即席異世界転移と書かれたカップ麺みたいな容器が置いてある事に気がついた普通の高校生、華崎 秦(かざき しん)
秦は興味本位でその容器にお湯と中に入っていた粉を入れて三分待ち、封を開けたら異世界に転移した。
そして気がつくと異世界の大半を管理している存在、ユーリ・ストラスに秦は元の世界に帰れない事を知った。
色々考えた結果、秦は異世界で生きることを決めてユーリから六枚のカードからスキルを選んだ。
秦はその選んだスキル、薬草師で異世界を生きる事になる。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

貴方のために
豆狸
ファンタジー
悔やんでいても仕方がありません。新米商人に失敗はつきものです。
後はどれだけ損をせずに、不良債権を切り捨てられるかなのです。
※子どもに関するセンシティブな内容があります。

転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる