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第5章 闇の遺跡編
159話 違和感
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その古くから存在する者の話を聞くと、やはり魔人の国の森の精霊と同じように感じたのだ。
しかし黒翼国に伝わる絵本の話と、事実はだいぶ違っていたようだ。
ただ私はその話を聞いた時、なんだか釈然としなかった。
私も精霊が言ったように、白の存在であるパラシスと魔人の森を侵食した黒い影が同じような存在に思えたのだ。
エネルギーを吸い取ることで存在を維持する者であるならば、それを吸い尽くすとまた新たな場所を求めて移動するのが本来の姿なのだろう。
なぜこの森にこだわり、ずっとこの場所から移動しなかったのか・・・
そして今、この弱り果てた者のために、なぜ新たなエネルギーを集めようとしているのかが、私にはわからなかったのだ。
「どうしても理解出来ませんね。
なぜあなた達が共存しているかが・・・
それに、黒翼国に伝わる本に書かれている事とだいぶ違いますね。」
精霊がそう話すのを聞いて、私は思ったのだ。
そのパラシスという白の存在は、村人に別の顔を見せていたのではないかと。
だから、あの本に書かれた事と、古くからの存在が話すことが違っているのかも知れない。
村人にとっては黒の魔法使いによる病を治し、さらに飛び立てる翼を授けてくれたすばらしい存在。
だが本当は森のエネルギーを吸い尽くし、消滅に導く存在。
私にはわからない事が多かった。
どうであれ、私はブラック達二人の居所が知りたかった。
「それで、ブラック達はどこなの?」
私は真っ直ぐに、その古くから存在する者を見つめて言ったのだ。
するとその者は目を閉じて何か探っているようだった。
「・・・二人はパラシスの作った空間に居ます。
だが、私にはパラシスの言う事に逆らう勇気がありません。
パラシスが私の邪なエネルギーを吸い取ってくれる事で、私自身を保つ事が出来ているのです。」
精霊はその言葉を聞いた時、意外なことを言ったのだ。
「もし村人を追い出すように仕向け、あなたに邪なエネルギーを持つように操作した者がいたとしたらどうしますか?」
その言葉を聞いて、古くから存在する者は下を向き、震えた声で言ったのだ。
「まさか・・・」
○
○
○
スピネルとアクアはこの城を上へと向かった。
広間は吹き抜けとなっており、二人とも自由に飛ぶことが出来たので、問題なく最上階まで行くことが出来た。
ただ外から見た時は、こんなに高層の城では無かったはずなのだ。
二人は最上階まで行くには、思ったより上がらなければ到着する事ができなかった。
「この城はそんなに高くなかったと思うけどな・・・」
スピネルは不思議に感じていたが、アクアは特に何も感じることなくあっという間に最上階まで移動していたのだ。
「スピネル、遅いぞ。
まあ、そんな事もあるのだろう。」
最上階は温室のようになっており、優しい光が差し込んでいた。
そして色々な植物が植えられており、綺麗な薔薇もたくさん咲き乱れていたのだ。
「綺麗なところだね・・・」
スピネルがそう呟いた時、二人の背後にある気配を感じたのだ。
その者は、静かに左手を向けエネルギーを吸い取ろうとしていたのだ。
二人は瞬時に身をかわし、その者と距離を置いたのだ。
それは白の存在であったのだ。
スピネルは手を上げて、白の存在をドームで包み隔離しようとしたのだ。
そうする事で、ブラック達の居所を喋らせるつもりだった。
しかし白の存在は冷酷な表情をしたかと思うと、黒い煙のように変わりあっという間にドームの外に出てしまい、また元の姿に戻ったのだ。
すかさず、アクアが炎を吐き出し、スピネルが炎の流れをコントロールしたのだ。
そして白の存在が煙となっても逃げ出せないように炎で包み込んだのだ。
だが、その炎のエネルギーを吸い取ったかのように、白の存在の周りの炎が小さくなり始めたのだ。
この存在は、強い攻撃を仕掛けるわけでは無いが、エネルギーを吸い取ることに長けているようなのだ。
二人は油断できないと思った。
しかし次の攻撃が来るかと思った瞬間、白の存在は急に動きを止め、悔しそうな顔をして一瞬でその場から消えてしまったのだ。
アクア達は何が起こったのかわからなかったが、きっと白の存在にとって問題が起きたのだと思ったのだ。
「アクア、みて。
精霊の蔓がここまで伸びてきているよ。
いなくなったのは、これが原因かもね。」
スピネルが言ったように、先程精霊が出した蔓が最上階まで伸びていたのだ。
何本かの太い蔓はうねりながら進み、すでにこの城の全体を網羅しているかのようだった。
しかし、白の存在のパラシスがその場からいなくなったのは、それだけでの理由ではなかった。
もちろん、精霊によるブラック達の捜索も気がかりではあった。
あの精霊の気配が至る所に感じられた事から、何かしらの力を発揮しているのはわかっていたようだ。
しかし、パラシスはこの森の主として古くからいる存在の変化に気付いたのだ。
その者は久しぶりに邪なエネルギーを内に溜め始めていたのだ。
それは、白の存在にとって見過ごせないものであったのだ。
しかし黒翼国に伝わる絵本の話と、事実はだいぶ違っていたようだ。
ただ私はその話を聞いた時、なんだか釈然としなかった。
私も精霊が言ったように、白の存在であるパラシスと魔人の森を侵食した黒い影が同じような存在に思えたのだ。
エネルギーを吸い取ることで存在を維持する者であるならば、それを吸い尽くすとまた新たな場所を求めて移動するのが本来の姿なのだろう。
なぜこの森にこだわり、ずっとこの場所から移動しなかったのか・・・
そして今、この弱り果てた者のために、なぜ新たなエネルギーを集めようとしているのかが、私にはわからなかったのだ。
「どうしても理解出来ませんね。
なぜあなた達が共存しているかが・・・
それに、黒翼国に伝わる本に書かれている事とだいぶ違いますね。」
精霊がそう話すのを聞いて、私は思ったのだ。
そのパラシスという白の存在は、村人に別の顔を見せていたのではないかと。
だから、あの本に書かれた事と、古くからの存在が話すことが違っているのかも知れない。
村人にとっては黒の魔法使いによる病を治し、さらに飛び立てる翼を授けてくれたすばらしい存在。
だが本当は森のエネルギーを吸い尽くし、消滅に導く存在。
私にはわからない事が多かった。
どうであれ、私はブラック達二人の居所が知りたかった。
「それで、ブラック達はどこなの?」
私は真っ直ぐに、その古くから存在する者を見つめて言ったのだ。
するとその者は目を閉じて何か探っているようだった。
「・・・二人はパラシスの作った空間に居ます。
だが、私にはパラシスの言う事に逆らう勇気がありません。
パラシスが私の邪なエネルギーを吸い取ってくれる事で、私自身を保つ事が出来ているのです。」
精霊はその言葉を聞いた時、意外なことを言ったのだ。
「もし村人を追い出すように仕向け、あなたに邪なエネルギーを持つように操作した者がいたとしたらどうしますか?」
その言葉を聞いて、古くから存在する者は下を向き、震えた声で言ったのだ。
「まさか・・・」
○
○
○
スピネルとアクアはこの城を上へと向かった。
広間は吹き抜けとなっており、二人とも自由に飛ぶことが出来たので、問題なく最上階まで行くことが出来た。
ただ外から見た時は、こんなに高層の城では無かったはずなのだ。
二人は最上階まで行くには、思ったより上がらなければ到着する事ができなかった。
「この城はそんなに高くなかったと思うけどな・・・」
スピネルは不思議に感じていたが、アクアは特に何も感じることなくあっという間に最上階まで移動していたのだ。
「スピネル、遅いぞ。
まあ、そんな事もあるのだろう。」
最上階は温室のようになっており、優しい光が差し込んでいた。
そして色々な植物が植えられており、綺麗な薔薇もたくさん咲き乱れていたのだ。
「綺麗なところだね・・・」
スピネルがそう呟いた時、二人の背後にある気配を感じたのだ。
その者は、静かに左手を向けエネルギーを吸い取ろうとしていたのだ。
二人は瞬時に身をかわし、その者と距離を置いたのだ。
それは白の存在であったのだ。
スピネルは手を上げて、白の存在をドームで包み隔離しようとしたのだ。
そうする事で、ブラック達の居所を喋らせるつもりだった。
しかし白の存在は冷酷な表情をしたかと思うと、黒い煙のように変わりあっという間にドームの外に出てしまい、また元の姿に戻ったのだ。
すかさず、アクアが炎を吐き出し、スピネルが炎の流れをコントロールしたのだ。
そして白の存在が煙となっても逃げ出せないように炎で包み込んだのだ。
だが、その炎のエネルギーを吸い取ったかのように、白の存在の周りの炎が小さくなり始めたのだ。
この存在は、強い攻撃を仕掛けるわけでは無いが、エネルギーを吸い取ることに長けているようなのだ。
二人は油断できないと思った。
しかし次の攻撃が来るかと思った瞬間、白の存在は急に動きを止め、悔しそうな顔をして一瞬でその場から消えてしまったのだ。
アクア達は何が起こったのかわからなかったが、きっと白の存在にとって問題が起きたのだと思ったのだ。
「アクア、みて。
精霊の蔓がここまで伸びてきているよ。
いなくなったのは、これが原因かもね。」
スピネルが言ったように、先程精霊が出した蔓が最上階まで伸びていたのだ。
何本かの太い蔓はうねりながら進み、すでにこの城の全体を網羅しているかのようだった。
しかし、白の存在のパラシスがその場からいなくなったのは、それだけでの理由ではなかった。
もちろん、精霊によるブラック達の捜索も気がかりではあった。
あの精霊の気配が至る所に感じられた事から、何かしらの力を発揮しているのはわかっていたようだ。
しかし、パラシスはこの森の主として古くからいる存在の変化に気付いたのだ。
その者は久しぶりに邪なエネルギーを内に溜め始めていたのだ。
それは、白の存在にとって見過ごせないものであったのだ。
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