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第5章 闇の遺跡編

154話 森の主の仕業

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 ブラックとブロムが中庭に行くと、そこにいた者が早くここから出て行くようにと忠告したのだ。
 
「あなたは一体誰ですか?
 この本に書いてある事は本当ですか?」

 ブロムは手に持っている本を見せて尋ねたのだ。

「・・・私は古くから存在する森の主とでも思ってください。
 この空間は私が作ったものです。
 ですが、私の力はもうこの空間を維持するくらいしかありません。
 その本の通り、この森を巨大化させたのは私です。
 今でも、その事を忘れる事はありません。
 ・・・とにかく早く出ないと。
 パラシスが戻ってくる前に。」

 パラシス・・・それが白の存在の名前である事は明らかであった。
 私がそう思った時、城の中に巨大な怒りと悲しみを備えた気配が入ってくるのがわかった。
 私はブロムの腕を掴み、城の外に出ようとしたのだが、一瞬遅かったのだ。
 この城自体がそのパラシスと言う白の存在が作る空間に変えられてしまったのだ。
 私達は再度、この白の存在の支配する空間に囚われる事となったのだ。

「いったい何故私達を捉えようとしているのですか?」

 私がその森の主に話したのだ。

「それは・・・」

 その主が話そうとした時、この中庭に強い気配の者が現れたのだ。
 それは先程見た白の存在であるが、全くと言うほど気配が違い、マントから見える風貌も綺麗ではあったがフードを取ると恐ろしいツノのような物が現れたのだ。
 古い書物に出てくる恐ろしい姿を持つ者は、白の存在の方であったのかもしれない。

「どうしてあの部屋から出られたのですか?
 まさか、手助けを?」

 パラシスと言う白の存在は森の主を睨んで叫んだのだ。
 森の主は黙ったままだった。
 私はこの二人の関係がよくわからなかった。
 
「あなた方には悪いがここに居てもらわないと困るのです。」

 そう言って私達に手のひらを向けたのだ。
 私は私達の前に結界を張ったのだが、やはり城自体がパラシスに作られた空間になっている為、影響を遮る事が出来なかった。
 左手でパラシスにむけて衝撃波や私が得意とする消滅の波動を放ったが、あっという間にうち消されたのだ。
 そしていつの間にか、私のエネルギーが少しずつ消失している事に気付いたのだ。
 どうもパラシスに向けられた手より、エネルギーが吸い取られているようなのだ。

 翼国人であるブロムは魔人とは違い、すぐに膝をついて立っていられなくなったのだ。
 私はブロムの肩を抱え、そのパラシスと言われる者を睨んだのだ。
 その時私は、この者が以前魔人の森を侵食した黒い集団に似ているように感じたのだ。
 侵食してエネルギーを吸い取っていくと言う力に。
 森の主を見ると苦々しい顔をしていたが、そのパラシスと言う白の存在を止めるつもりは無いようだった。
 そしてブロムを抱えながら、私もどんどんとエネルギーと魔力が低下し、ついに意識が遠のき始めたのだ。

 私はこんな時だが、いやこんな時だからか、考える事は一つだった。
 このまま舞に会う事が出来ないのか・・・
 もう、長らく生きる事自体に執着は無い。
 だが、舞の命が尽きるまで寄り添えるくらいの命はまだ惜しいのだ。
 このまま消えるわけにはいかない。
 核があっても復活した時には、既に舞のいない世界。
 それでは・・・意味が無いのだ・・・
 そして私はとても眠くなったのだ。
 

              ○

              ○

              ○


 ブラックが倒れたところで森の主がパラシスを止めたのだ。

「こんな事はやはりやるべきでは無いのでは・・・」

 そう言ってパラシスを見ると、森の主の所に駆け寄ってきたのだ。

「いえ、私の言う通りにするのです。
 そうすれば、上手くいくはずですから・・・」

 そう言って、パラシスは森の主を抱きしめたのだ。
 森の主は困った顔をした後、ブラックとブロムを見て目を閉じ、彼らをすぐ近くの部屋のベッドに移動させたのだ。
 そして森の主はニ冊の本を手に取ると、パラパラとページをめくり、懐かしい顔をしたのだ。
 森の主の気配は先程とは違い、少し力を取り戻したかのように、弱々しいものではなくなっていたのだ。
 それはまるで倒れた二人のエネルギーを吸い取ったかのようであったのだ。
 
「外の生き物も森から出ないようにしないといけないね。
 上への影響が大きすぎるからね。」

 そう言うと、森の主はこの空間の外の世界の森に意識を集中したのだ。
 そして森の巨大な生き物達が上の世界に行かないように、かつてと同じように上手く誘導する事にしたのだ。
 それには森の主にとってかなりのエネルギーを使うようで、先程得たエネルギーがまた少なくなり、弱い気配と変わってしまったのだ。
 そして森の主はため息をついたのだ。
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