上 下
147 / 181
第5章 闇の遺跡編

147話 城の空間

しおりを挟む
 私たちは白の姿の者と一緒に、先程通り過ぎた城まで戻ったのだ。 

 ブロム達黒翼人の後に続いたが、私はどうしてもこの白の姿の者を信用する事が出来なかった。
 いくら、本に書かれている白の魔法使いと同じ風貌だとしても、そこに書かれている事が真実かはわからないのだ。
 それに、やはり何か引っかかる・・・
 
「この空間は、私が知っているかつて存在した村や城を作り出したものなのです。
 太古から存在する者・・・あなた方で言う黒の魔法使いもこの場所に存在します。
 ある意味、この空間に閉じ込めていたようなものなのです。
 これ以上、外の世界を傷つけないように、私が見張っていたのですが・・・
 もう私だけでは難しくなってきました。
 ・・・どうか、皆さんに少しだけ力をもらえたらと思うのです。」

 白の姿の者はそう言うと、城の大きな扉に手のひらを向けたのだ。
 すると、低いギーッと言う音を立てながら、ゆっくりと扉が開いた。
 城の中はとても綺麗ではあったが、暖かみが全く感じられなかった。
 そして、驚く事に私が足を踏み入れると、誰かが頭の中に囁いてきたのだ。
 
 『・・・すぐに・・・この世界から出ていくのです。
 今なら間に合います。
 早く・・・』

 私はアクアとスピネルの顔を見ると、それは私だけではなくどうやら二人にも聞こえたようなのだ。
 だが、ブロム達黒翼人や白の姿の者には聞こえていないようであった。

 太古から存在する、黒の魔法使いなのだろうか・・・
 その思念は、こちらを排除や威嚇するものでは無く、私達に何かを知らせるように語りかけてきたのだ。
 魔力探知を働かせると、城の奥の方に何やら弱々しい気配を感じたのだ。
 白の姿の者は、黒の魔法使いの力が抑えられなくなったと言っていたはず。
 そうだ・・・引っかかっていたのは、この事なのだ。
 太古からいるという黒の魔法使いが、抑えられないような力を持っているなら、この空間に入った時から気配を感じるはずなのだ。
 ところがこの城の中まで来ても、私達以外はその弱々しい気配しか感じられないのだ。
 もしこの白の姿の者が偽りを言っているとしたら・・・とても危険であると感じたのだ。
 
 私はアクアとスピネルに警戒するように思念で伝えたのだ。
 いざとなったら、黒翼人を連れてこの空間に入った時の入り口に、瞬時に移動して外に出るように伝えたのだ。
 先程聞こえた声の言う事が正しければ、今ならまだこの空間から出れると言う事なのだろう。
 だが、場合によっては出られなくなるという事なのか・・・

「では、こちらでお待ちください。」

 そう言って白の姿の者は奥に進み、後をついて行った私達にある部屋に入るように促したのだ。
 ブロム達黒翼人達は何も気にする事なく部屋に入ろうとしていたので、私はブロムを呼び止めたのだ。

「ブロム殿、ちょっと待ってください。
 気になることがあるのですが・・・」

「どうしました?
 部屋の中で話しましょうか?」
 
 私は声をかけたのだが、ブロムはそう言いながらそのまま部屋に入ってしまったのだ。
 仕方なく私もその部屋に一歩足を踏み入れると、不安が的中したのだ。
 その部屋は二重空間となっており、その部屋のみがあの白い姿の者が本当に作った別の空間である事を悟ったのだ。
 私はすぐにアクアとスピネルにさっき話した事を行動するように思念で伝えたのだ。
  
 アクアとスピネルは、まだ部屋に入っていない黒翼人の兵士達に触れると瞬時に城の中から一瞬で消えたのだ。
 私はブロムの腕を掴み、同じように空間把握は出来ていたので、移動しようと思ったのだ。
 だが予想通り、部屋に入った私達は移動する事が出来なかった。
 部屋の扉が勢いよくバタンと閉まり、私達二人は閉じ込められてしまったのだ。
 空間移動も出来ず、外の様子も伺う事が出来なくなったのだ。
 ここはあの白い姿の者が支配する場所に違いなかった。
 という事は、やはり忠告してくれたのは黒の魔法使いか?

「これはいったい・・・
 黒の魔法使いによるものですか?  
 白の魔法使いはどこに?」

 ブロムは急に我にかえったようで、頭を抱えたのだ。
 そして、ドアを叩いたり蹴ったりしていたが、もうすでにこの部屋自体が結界のようなもので囲われていて、この空間の支配者の許しがない限り、何も出来ない状況となっていたのだ。
 ブロムは腰元の炎の剣を出してドアに斬りつけだが、結界に阻まれ、影響を及ぼす事は出来なかった。

「私達二人は閉じ込められたようですね。」

 私はブロムにため息混じりにそう言って、私に囁いた声と私の考え、兵士達の脱出について話したのだ。

「ブラック殿にはいち早く兵士達を守ってもらい、ありがとうございます。
 自分は何も出来ずに、本当に情けないですね。」

 ブロムは初め驚いていたが、私の話す事に納得し、そして落胆したのだ。
 今まで、全く疑いもしなかった事がブロム自身も不思議に感じたようなのだ。
 やはり思考誘導があったかもしれない。

 黒翼人の兵士とアクア達は問題なく外に出た事だろう。
 いずれ助けが来るのも時間の問題か。
 だが、簡単に入る事はすでに出来なくなっているかもしれない。

 やはり・・・彼の助けを借りるしか無いのだろう。
 きっと、アクアとスピネルなら彼のいる森に今頃向かっているに違いない・・・


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

異世界に転生!堪能させて頂きます

葵沙良
ファンタジー
遠宮 鈴霞(とおみやりんか)28歳。 大手企業の庶務課に勤める普通のOL。 今日は何時もの残業が無く、定時で帰宅途中の交差点そばのバス停で事件は起きた━━━━。 ハンドルを切り損なった車が、高校生3人と鈴霞のいるバス停に突っ込んできたのだ! 死んだと思ったのに、目を覚ました場所は白い空間。 女神様から、地球の輪廻に戻るか異世界アークスライドへ転生するか聞かれたのだった。 「せっかくの異世界、チャンスが有るなら行きますとも!堪能させて頂きます♪」 笑いあり涙あり?シリアスあり。トラブルに巻き込まれたり⁉ 鈴霞にとって楽しい異世界ライフになるのか⁉ 趣味の域で書いておりますので、雑な部分があるかも知れませんが、楽しく読んで頂けたら嬉しいです。戦闘シーンも出来るだけ頑張って書いていきたいと思います。 こちらは《改訂版》です。現在、加筆・修正を大幅に行っています。なので、不定期投稿です。 何の予告もなく修正等行う場合が有りますので、ご容赦下さいm(__)m

呪われた子と、家族に捨てられたけど、実は神様に祝福されてます。

光子
ファンタジー
前世、神様の手違いにより、事故で間違って死んでしまった私は、転生した次の世界で、イージーモードで過ごせるように、特別な力を神様に授けられ、生まれ変わった。 ーーー筈が、この世界で、呪われていると差別されている紅い瞳を宿して産まれてきてしまい、まさかの、呪われた子と、家族に虐められるまさかのハードモード人生に…! 8歳で遂に森に捨てられた私ーーキリアは、そこで、同じく、呪われた紅い瞳の魔法使いと出会う。 同じ境遇の紅い瞳の魔法使い達に出会い、優しく暖かな生活を送れるようになったキリアは、紅い瞳の偏見を少しでも良くしたいと思うようになる。 実は神様の祝福である紅の瞳を持って産まれ、更には、神様から特別な力をさずけられたキリアの物語。 恋愛カテゴリーからファンタジーに変更しました。混乱させてしまい、すみません。 自由にゆるーく書いていますので、暖かい目で読んで下さると嬉しいです。

【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I
ファンタジー
★本編完結しました! ★150万字超の大長編!  何らかの理由により死んでしまったらしい【俺】は、不思議な世界で出会った女神に請われ、生前やり込んでいたゲームに酷似した世界へと転生することになった。  転生先はゲームで使っていたキャラに似た人物との事だったが、しかしそれは【俺】が思い浮かべていた人物ではなく……  結果として転生・転性してしまった彼…改め彼女は、人気旅芸人一座の歌姫、兼冒険者として新たな人生を歩み始めた。  しかし、その暮らしは平穏ばかりではなく……  彼女は自身が転生する原因となった事件をきっかけに、やがて世界中を巻き込む大きな事件に関わることになる。  これは彼女が多くの仲間たちと出会い、共に力を合わせて事件を解決し……やがて英雄に至るまでの物語。  王道展開の異世界TS転生ファンタジー長編!ここに開幕!! ※TS(性転換)転生ものです。精神的なBL要素を含みますので、苦手な方はご注意ください。

【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!

猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」 無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。 色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。 注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします! 2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。 2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました! ☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。 ☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!) ☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。 ★小説家になろう様でも公開しています。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

処理中です...