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第4章 火山のドラゴン編

118話 炎と大蛇

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 スピネルは炎や風を操る事を得意としているのに、その部屋の中の炎は全く変わる事は無かったのだ。

 スピネルが出現させた炎だけでなく、全ての炎の操作が出来たはずなのに、この場所の炎は全く勢いを変えず、スピネルに襲いかかるようであった。
 スピネルは風やこの部屋の空気を操りドームを作ったのだが、それすらも突き抜けて炎は勢いを増しているようにも見えたのだ。

「こんなに大好きな炎が言う事をきかないのは初めてだよ。
 なんでだろう。」

 スピネルは悔しそうにその炎を見たのだ。
 多分この炎に何か操作する事は出来ないのだろう。
 ブラックがこの部屋自体を消滅する事は出来るかもしれないが、その先に進めなくなる可能性があるため、簡単に考えるわけにはいかなかった。
 その時、シウン大将が口を開いた。

「実はトルマ殿からお借りしていた剣があるのです。
 これを使ってみるのはどうでしょうか?」

 シウン大将は腰元に2本の剣を携えていた。
 よく見ると何処かで見たことがある剣なのだ。

「その剣何処かで・・・」

 私は思い出したのだ。
 それは、黒翼人のブロムとクロルが持っていた剣と同じに他ならなかった。
 なるほど、氷の刃を放つ剣であれば対抗できるかもしれない。
 刃の通った場所は全てを凍らせ、炎の剣でも簡単には消滅する事はなかったのだ。
 ただ、あの草原での事を思い出すと、まだ心が少し痛かったのだ。

「舞、大丈夫ですか?」

 ブラックは私の顔色を見て声をかけてくれたのだ。

「大丈夫よ。 
 ただ、ちょっと思い出しただけだから。」

 私はそう答えるとシウン大将に目を向けたのだ。
 シウン大将は氷の剣を鞘から抜くと、剣を素早く左右に振り回し八の字を描くように動かしたのだ。
 そしてその炎に向けて剣を何振りかすると、渦を巻いたような氷の刃を放ったのだ。
 すると、氷のトンネルのような状態となり、炎が広がってくるのを抑えたのだ。
 しかし炎の勢いも強いため、長くは持たないように見えたのだ。

「急いで行きましょう。」

 私達はその氷のトンネルと言うべきものを急いで通り抜け、次の石の扉の場所に着いたのだ。
 通っている間にポタポタと水滴が落ちてきたので、いつトンネルが炎で消滅されてもおかしく無かった。
 だがその剣のおかげで、無事に次の扉の前に来ることが出来たのだ。

 これも人間であるシウン大将と魔人のトルマが良い関係を築いてきたからこそ、今この場にこの剣があるのだと思う。
 何だか私は嬉しかった。

 そして次の扉を目にしたアクアは、そこに書かれている文字を読むと不思議な顔をしたのだ。

「ええと次は、眠りを妨げる者は先に進めずって。
 ・・・ああ、わからないな。
 どう言うことかな。」

 アクアが力を込めて石の扉を開けると、そこは洞窟の中であるにも関わらず、草木が茂ったジャングルのようだった。
 まるで石の扉を開ける事で、別の空間に繋がった感じであったのだ。
 眠りを妨げるなって事は、静かにしていればいいのだろうか。
 何かが眠っているのかもしれないが、見える範囲には生物らしき物は存在しなかった。
 そして草木の間からさっきと同じように、奥に石の扉があることだけは見えたのだ。

 私達はそっと石の扉に向かって進む事にした。
 とは言えいくら静かにしていても、草木をかき分けていくため無音というわけにはいかなかった。
 すると、だんだんと何かが近づいてくる気配を感じたのだ。
 草木を踏み潰す音と共にシャーっという音が混ざり合っていたのだ。
 ただ、不思議な事に私達が進みを止めると何者かの動きも止まり、また私達が動き出すと、その者の動く音が聞こえ出したのだ。

 とにかく急いで扉に向かおうとしたのだが、目前に大きな何かがウネウネと動いているのが見えたのだ。
 何処かで見た事がある生き物であったが、それは私が知っているものの何十倍も大きいものであった。
 それは巨大な蛇であり、もちろん苦手な物の一つでもあったのだ。
 だが先程と同じで、自分達が止まれば大蛇も動きが止まるのだった。
 するとユークレイスもそれを理解していたようで、小声でみんなに伝えたのだ。

「動かないでくださいね。」

 そう言うと、ユークレイスはその巨大な蛇に向かって歩いて行ったのだ。
 もちろん、ユークレイスの動きに合わせて大蛇も動き出したのだが、ユークレイスの前に大きな頭が現れ威嚇したかと思うと、動きを止めたのだ。
 ユークレイスは青い目を光らせて、大蛇を見つめていたのだ。
 そして、ユークレイスが歩いて私達のところに戻っても大蛇は動くことがなかったのだ。

「今、私達が止まった映像を見せているので大丈夫ですよ。」

 なるほど、ユークレイスの力で偽の映像を見せて動きを止める事ができたようだ。
 私達は今のうちに奥の石の扉へと急いだのだ。
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