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第3章 翼国編
97話 アルゴンの望み
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私がアルゴンに薬を使うと、あっという間に焼け焦げた身体がもとに戻っていったのだ。
しかし意識は戻っておらず、眠っているようだった。
目が覚めた時に、昔の気持ちに戻っていてほしいと心から願った。
そしてアルゴンを城に運び、様子を見る事としたのだ。
ブロムとその父である王は、大臣達と今後の国の方針を決める事にしたのだ。
アルゴンについては、その後考える事として魔人の王であるブラックに一時預けることとしたのだ。
偵察に行った兵士によると、白翼人の国の集まっていた兵士達は、国境沿いでの待機は変わらないままであったが、今のところ攻撃の気配は無いと報告してきた。
こちらからの攻撃が無い限り、動く事はないと思われたのだ。
そのため偵察部隊のみ国境沿いに残し、他の兵士は城に戻る事になった。
そして、私やブラックも城に行きアルゴンが運ばれた部屋に向かったのだ。
すでに、ユークレイスとトルマが先に着いており様子を見ていたのだ。
「どうですか、ユークレイス?」
ブラックがアルゴンの顔を見ながら確認するとユークレイスはため息をつきながら答えた。
「身体は舞殿の薬で問題ないはずです。
ですが、目を覚さないのは本人の意思かもしれません。」
私にはまだ聞きたいことがあったのだ。
ブロムの妹のリオさんの事だ。
王家の娘が早く亡くなっている事やリオさんの病について、アルゴンの関与があるかを確認したかったのだ。
王家を恨むアルゴンであれば、手を下すことがあるのかもしれないが、私は不思議とそれに関しては違和感を感じたのだ。
○
○
○
アルゴンは城に運ばれた後、実は意識を戻しつつあった。
自分のやってきた事が全て無駄になるくらいなら、周りを道連れにして命を絶とうと思っていたのだ。
しかし、炎の渦に巻き込まれたのは結局自分だけであったのだ。
所詮は弱い魔人であり、魔人の王達に敵うわけはないのだ。
少しでもあがいてみたかったが、何も出来ずに終わったのだ。
カレンの無念をはらす事はできなかったと、炎の中で落胆した時、あの人間の娘が駆け寄ってくるのが見えたのだ。
明るい光が見えた後、何故だかわからないが怒りが消えて
、心が少しずつ落ち着いてきている事に気付いたのだ。
このまま眠るように消えてしまうのなら、それが一番なのだろうと思ったのだ。
しかし突如、私の頭の中は懐かしい風景で満たされたのだ。
それはカレンと初めて会った場所。
水辺がキラキラと光ってとても穏やかな湖、その周りの木々や岩場。
昔、よく絵を描きに行った場所が頭に浮かんできたのだ。
もう、何百年も行ったことは無いはずなのだが、頭の中では不思議と鮮明なのだ。
その懐かしい風景を感じている時、私はカレンが最後に話したことを思い出した。
あの時、すでに私のことをわかってはいなかったが、私とあの湖で過ごした時間を楽しげに話していたではないか。
そして、最後まで恨み言一つ言っていなかったではないか。
彼女の無念をはらすと思って生きてきたが、あの人間の娘が言ったように、すべては私の怒りや悲しみによる行動だったのだ。
そう、昔の幸せな時に戻れることが彼女の本当の望みだったのだ。
私は何をしていたのだろう。
私がゆっくりと目を開けると、そこには私を心配そうに見る女性がいたのだ。
カレン?
いや、そんな訳はないのだ。
あの人間の娘だったのだ。
私はあの炎の中から生き残ってしまったようだ。
身体は痛むところもなく、火傷すら無かったのだ。
よくわからないが、この人間の娘が救ってくれたように思えたのだ。
私は全てを受け入れようと思った。
そして、許されるなら、またあの湖で絵を描いてみたいと思ったのだ。
しかし意識は戻っておらず、眠っているようだった。
目が覚めた時に、昔の気持ちに戻っていてほしいと心から願った。
そしてアルゴンを城に運び、様子を見る事としたのだ。
ブロムとその父である王は、大臣達と今後の国の方針を決める事にしたのだ。
アルゴンについては、その後考える事として魔人の王であるブラックに一時預けることとしたのだ。
偵察に行った兵士によると、白翼人の国の集まっていた兵士達は、国境沿いでの待機は変わらないままであったが、今のところ攻撃の気配は無いと報告してきた。
こちらからの攻撃が無い限り、動く事はないと思われたのだ。
そのため偵察部隊のみ国境沿いに残し、他の兵士は城に戻る事になった。
そして、私やブラックも城に行きアルゴンが運ばれた部屋に向かったのだ。
すでに、ユークレイスとトルマが先に着いており様子を見ていたのだ。
「どうですか、ユークレイス?」
ブラックがアルゴンの顔を見ながら確認するとユークレイスはため息をつきながら答えた。
「身体は舞殿の薬で問題ないはずです。
ですが、目を覚さないのは本人の意思かもしれません。」
私にはまだ聞きたいことがあったのだ。
ブロムの妹のリオさんの事だ。
王家の娘が早く亡くなっている事やリオさんの病について、アルゴンの関与があるかを確認したかったのだ。
王家を恨むアルゴンであれば、手を下すことがあるのかもしれないが、私は不思議とそれに関しては違和感を感じたのだ。
○
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○
アルゴンは城に運ばれた後、実は意識を戻しつつあった。
自分のやってきた事が全て無駄になるくらいなら、周りを道連れにして命を絶とうと思っていたのだ。
しかし、炎の渦に巻き込まれたのは結局自分だけであったのだ。
所詮は弱い魔人であり、魔人の王達に敵うわけはないのだ。
少しでもあがいてみたかったが、何も出来ずに終わったのだ。
カレンの無念をはらす事はできなかったと、炎の中で落胆した時、あの人間の娘が駆け寄ってくるのが見えたのだ。
明るい光が見えた後、何故だかわからないが怒りが消えて
、心が少しずつ落ち着いてきている事に気付いたのだ。
このまま眠るように消えてしまうのなら、それが一番なのだろうと思ったのだ。
しかし突如、私の頭の中は懐かしい風景で満たされたのだ。
それはカレンと初めて会った場所。
水辺がキラキラと光ってとても穏やかな湖、その周りの木々や岩場。
昔、よく絵を描きに行った場所が頭に浮かんできたのだ。
もう、何百年も行ったことは無いはずなのだが、頭の中では不思議と鮮明なのだ。
その懐かしい風景を感じている時、私はカレンが最後に話したことを思い出した。
あの時、すでに私のことをわかってはいなかったが、私とあの湖で過ごした時間を楽しげに話していたではないか。
そして、最後まで恨み言一つ言っていなかったではないか。
彼女の無念をはらすと思って生きてきたが、あの人間の娘が言ったように、すべては私の怒りや悲しみによる行動だったのだ。
そう、昔の幸せな時に戻れることが彼女の本当の望みだったのだ。
私は何をしていたのだろう。
私がゆっくりと目を開けると、そこには私を心配そうに見る女性がいたのだ。
カレン?
いや、そんな訳はないのだ。
あの人間の娘だったのだ。
私はあの炎の中から生き残ってしまったようだ。
身体は痛むところもなく、火傷すら無かったのだ。
よくわからないが、この人間の娘が救ってくれたように思えたのだ。
私は全てを受け入れようと思った。
そして、許されるなら、またあの湖で絵を描いてみたいと思ったのだ。
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