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第2章 森再生編
68話 黒翼人
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「舞、ではまた私に会いに来るのだぞ。
忘れるなよ。」
そう偉そうにアクアは言うのだが、見た目が子供のため、そのギャップに笑いそうになった。
ブラックを見ると呆れた顔をしていたが、怒る気配はなかった。
「ええ。
わかりました。
自分の世界に帰る前に伺いますね。」
「では、舞・・・今回は戻る前に必ず会いに来てくださいね。
約束ですからね。」
ブラックは私に念押しした。
前回は内緒で帰ろうとしたからだろう。
そして、ブラックとアクアは私をカクの家まで送ると、魔人の国に向かったのである。
あちらの世界でも、アクアはブラックを悩ませることが想像できたのだ。
そう言えば、アクアの事があったので、すっかり黒い翼の人物について聞くのを忘れてしまったのだ。
まあ、ブラックが何も言わないのだから、今のところ問題は無いのだろう。
また帰る時に聞いてみようと思った。
私はアクアが魔人の国に行ったので、カクとヨクに死の大地の話をしたのだ。
地下に、ドラゴンの血を引く者が存在しており、その大地のエネルギーを吸収していた為、死の大地と化していたと話したのだ。
「なるほど。
では、今はその者がいないのであれば、あの大地は生き返ると言うことであるな。」
「舞、そんな怖い事があったなら、あの時言ってくれれば良かったのに。」
「ごめんなさい。
カクが怖がると思って。」
「ははは。
カクなら怖がって二度と行かないと言いそうだしのう。」
ヨクが笑いながら言うとカクは少しだけ反論した。
「仕事なら行きますよ。
そんなに怖がりでは無いですよ。」
これからはあの大地はきっと植物も問題なく成長できるはずなのだ。
次に訪れる時に草木が茂っているのを見たいと思った。
ただ、まだ地下に魔人の城の一部が存在するのであれば、その大地の使い道も難しいのかもしれない。
その辺りは、国同士の話し合いだろうから、私が心配する事ではないのだが。
私はそろそろ帰り支度をすることにした。
魔人の国の森も今は問題無いようであるし、偶然にもアクアを見つけ魔人の国に行ってもらえたことで、あの大地も生き返るだろう。
○
○
○
次の日私は洞窟に向かった。
前回と同じように通行証を持参し、通行管理人に確認してもらった。
今回は問題なく洞窟を通る事が許されたのだ。
流石に、前回シウン大将に言われた事を忘れることは無かったようだ。
洞窟を抜けると、春のような気候のためローブを脱ぎ、薄着になった。
どうも真冬から春に一瞬で気候が変わる事に慣れないのだ。
洞窟を出たところに馬車があり、魔人の街や城に用事がある場合は乗せてもらう事ができるのだ。
しかし私は城に着く前に、森の精霊にも挨拶がしたかったので、まずは歩いて行くことにした。
森までは1キロも無かったし、ブラックのペンダントもあるので、危険な事は無いと考えたのだ。
遠くからも、森の生き生きとしたエネルギーを感じる事が出来たので、ホッとしたのだ。
少し歩くと森の入り口に着いた。
真っ直ぐに小道を進むとあの大きな木が出迎えてくれたのだ。
私が何も言わなくても、大木の横に小さなトンネルが作られたのだ。
精霊はもちろん私が来た事がすぐにわかっていたようだ。
木で出来た小さなトンネルを抜けると、以前と同じように精霊が待っていてくれたのだ。
そして、また優しく輝いていたのだ。
「舞、また来てくれたのですね。
もう、向こうに帰るのですか?」
「ええ。この森も落ち着いたし、そろそろ自分の世界に戻ろうと思います。
また遊びに来ますから、私を忘れないでくださいね。」
私はそう言って精霊の手をとった。
すると、私の手の中に3粒の小さなタネを精霊は置いたのだ。
「私からのお土産です。
舞の助けになると思います。」
「ありがとう。
でもどう使えばいいのかしら?」
「必要な時にわかるから大丈夫ですよ。
お守りと思っていつでも持っていて下さい。」
私はブラックのペンダントと同じように、そのタネを小さな袋に入れて身につけることにした。
「無くさないようにしないとね。
大事にしますね。」
私はそう言って、精霊に別れを告げた。
そして、トンネルを抜け森の小道を出口に向かい歩いた。
城までは歩くとかなり時間がかかるので、また洞窟まで戻り馬車で行こうと森を出たのだ。
その時、私の前を大きな羽音を立てて、黒い物が通り過ぎたのだ。
鳥?
魔獣?
一瞬だったのではっきりとはわからなかったのだが、私にはブラックからもらったペンダントがあるので、何が来ても問題無いはずなのだ。
私は首にかかっているペンダントを掴み、辺りを警戒した。
そう思っていると、空から黒い影が目の前に舞い降りて来たのだ。
それは、黒い翼を持つあの者だったのだ。
漆黒の翼を持つが、それ以外は人間や魔人となんら変わらない風貌なのだ。
以前、黒い影の集合体が作り出した者に他ならなかった。
私は驚いて立ちすくんでいると、その者からは思念と一緒に深刻な気持ちが伝わって来たのだ。
「お願いがあります。
私と一緒に来て欲しいのです。」
何やらまた厄介な事が起きそうで、私は自分の世界にはまだ戻れそうに無いと感じたのだ。
忘れるなよ。」
そう偉そうにアクアは言うのだが、見た目が子供のため、そのギャップに笑いそうになった。
ブラックを見ると呆れた顔をしていたが、怒る気配はなかった。
「ええ。
わかりました。
自分の世界に帰る前に伺いますね。」
「では、舞・・・今回は戻る前に必ず会いに来てくださいね。
約束ですからね。」
ブラックは私に念押しした。
前回は内緒で帰ろうとしたからだろう。
そして、ブラックとアクアは私をカクの家まで送ると、魔人の国に向かったのである。
あちらの世界でも、アクアはブラックを悩ませることが想像できたのだ。
そう言えば、アクアの事があったので、すっかり黒い翼の人物について聞くのを忘れてしまったのだ。
まあ、ブラックが何も言わないのだから、今のところ問題は無いのだろう。
また帰る時に聞いてみようと思った。
私はアクアが魔人の国に行ったので、カクとヨクに死の大地の話をしたのだ。
地下に、ドラゴンの血を引く者が存在しており、その大地のエネルギーを吸収していた為、死の大地と化していたと話したのだ。
「なるほど。
では、今はその者がいないのであれば、あの大地は生き返ると言うことであるな。」
「舞、そんな怖い事があったなら、あの時言ってくれれば良かったのに。」
「ごめんなさい。
カクが怖がると思って。」
「ははは。
カクなら怖がって二度と行かないと言いそうだしのう。」
ヨクが笑いながら言うとカクは少しだけ反論した。
「仕事なら行きますよ。
そんなに怖がりでは無いですよ。」
これからはあの大地はきっと植物も問題なく成長できるはずなのだ。
次に訪れる時に草木が茂っているのを見たいと思った。
ただ、まだ地下に魔人の城の一部が存在するのであれば、その大地の使い道も難しいのかもしれない。
その辺りは、国同士の話し合いだろうから、私が心配する事ではないのだが。
私はそろそろ帰り支度をすることにした。
魔人の国の森も今は問題無いようであるし、偶然にもアクアを見つけ魔人の国に行ってもらえたことで、あの大地も生き返るだろう。
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○
次の日私は洞窟に向かった。
前回と同じように通行証を持参し、通行管理人に確認してもらった。
今回は問題なく洞窟を通る事が許されたのだ。
流石に、前回シウン大将に言われた事を忘れることは無かったようだ。
洞窟を抜けると、春のような気候のためローブを脱ぎ、薄着になった。
どうも真冬から春に一瞬で気候が変わる事に慣れないのだ。
洞窟を出たところに馬車があり、魔人の街や城に用事がある場合は乗せてもらう事ができるのだ。
しかし私は城に着く前に、森の精霊にも挨拶がしたかったので、まずは歩いて行くことにした。
森までは1キロも無かったし、ブラックのペンダントもあるので、危険な事は無いと考えたのだ。
遠くからも、森の生き生きとしたエネルギーを感じる事が出来たので、ホッとしたのだ。
少し歩くと森の入り口に着いた。
真っ直ぐに小道を進むとあの大きな木が出迎えてくれたのだ。
私が何も言わなくても、大木の横に小さなトンネルが作られたのだ。
精霊はもちろん私が来た事がすぐにわかっていたようだ。
木で出来た小さなトンネルを抜けると、以前と同じように精霊が待っていてくれたのだ。
そして、また優しく輝いていたのだ。
「舞、また来てくれたのですね。
もう、向こうに帰るのですか?」
「ええ。この森も落ち着いたし、そろそろ自分の世界に戻ろうと思います。
また遊びに来ますから、私を忘れないでくださいね。」
私はそう言って精霊の手をとった。
すると、私の手の中に3粒の小さなタネを精霊は置いたのだ。
「私からのお土産です。
舞の助けになると思います。」
「ありがとう。
でもどう使えばいいのかしら?」
「必要な時にわかるから大丈夫ですよ。
お守りと思っていつでも持っていて下さい。」
私はブラックのペンダントと同じように、そのタネを小さな袋に入れて身につけることにした。
「無くさないようにしないとね。
大事にしますね。」
私はそう言って、精霊に別れを告げた。
そして、トンネルを抜け森の小道を出口に向かい歩いた。
城までは歩くとかなり時間がかかるので、また洞窟まで戻り馬車で行こうと森を出たのだ。
その時、私の前を大きな羽音を立てて、黒い物が通り過ぎたのだ。
鳥?
魔獣?
一瞬だったのではっきりとはわからなかったのだが、私にはブラックからもらったペンダントがあるので、何が来ても問題無いはずなのだ。
私は首にかかっているペンダントを掴み、辺りを警戒した。
そう思っていると、空から黒い影が目の前に舞い降りて来たのだ。
それは、黒い翼を持つあの者だったのだ。
漆黒の翼を持つが、それ以外は人間や魔人となんら変わらない風貌なのだ。
以前、黒い影の集合体が作り出した者に他ならなかった。
私は驚いて立ちすくんでいると、その者からは思念と一緒に深刻な気持ちが伝わって来たのだ。
「お願いがあります。
私と一緒に来て欲しいのです。」
何やらまた厄介な事が起きそうで、私は自分の世界にはまだ戻れそうに無いと感じたのだ。
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