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第1章 洞窟出現編

52話 元の世界

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 それにしても、異世界との時間の流れが違うのであれば、こちらでの1日が向こうでは3日くらい経っていると言う事。
 それって、早く歳をとってしまうと言う事では。
 3倍速で体の老化が起きると考えたら、ゾッとするのだ。
 ただ、ずっと異世界にいるなら気にすることでは無いのだろうが。

 私はベッドに転がりながら、ふと思ったのだ。
 この薬華異堂薬局の名前はもしかしたら、ハナさんの華なのでは。
 考えすぎか・・・
 まあ名前の由来なんてどうでもいいけど。
 何だか、疲れたかも・・・
 私はそのまま眠りについたのである。

 次の日、目が覚めると真っ先に首にかかっているペンダントを見たのだ。
 今までのことが夢ではない事の証なのだ。
 
 予定より早く戻って来たので、仕事に出る日まで、まだ数日あった。
 少しのんびりすることにしたのだ。
 一階の本店の方に行くと、そこは静まりかえっていた。
 今日は漢方の予約の患者さんは来ないらしく、私がウロウロしていても問題ないようだ。
 まだ、異世界から帰って1日だが、向こうの世界にとっては3日くらいたっているはず。
 もしかしたら、カクからの手紙があるかと思い、秘密の扉を開けたのである。
 すると、私が思った通り本棚の奥にあった扉を鍵で開けると、古びた布袋の中に新しい封筒が入っていたのだ。
 そう言えば、ヨクはカタカナを知っていたけど、カクはこっちの文字を知っていただろうか?
 私は異世界の文字を勉強しなかったことに少し後悔した。
 話したことが思念で上手く伝わっていたので、必要が無かったのだ。
 ただ、手紙を書くとなると読み書きが出来なければ、困るのだ。

 封筒を開けると、カクからの手紙であった。
 上手とは言えない文字だが、一生懸命さが伝わる手紙だった。
 きっとヨクから怒られながら習って書いてくれたのだろう。
 そこにはカタカナで、またこの世界に来てほしいとか、寂しくなったとか、カクらしい言葉が並んでいた。
 私も急いで手紙を書いたのだ。
 今の時代、メールやSNSでのやりとりが多い中、手紙を書くのは久しぶりであって、とても新鮮であった。
 また光の鉱石が採掘されたら呼んでほしいこと、
 私も仕事を頑張るから、カクも頑張るようにと、
 そして、ヨクを大事にするようにと書いたのだ。

 全てカタカナで書くのはとても奇妙だった。
 書いた手紙を見ると、暗号のように感じたのだ。
 カクには今度、ひらがなを覚えてもらおうと思った
のだ。

 そして、書いた手紙を同じように、古い布袋に入れて扉を閉じたのである。
 カクのことだから、毎日扉を確認していそう。
 すぐに手元に届くだろう。

 私は本棚を元に戻すと、久しぶりの仕事に向けて準備をする事にした。
 そして、胸にはブラックから貰ったペンダントが光っていた。

            ○

            ○

            ○

 ・・・あれから2ヶ月くらい経っただろうか。
 私はいつも通りの薬華異堂薬局の仕事に着いていた。
 カクからは週に一回くらい手紙が届いていた。
 私も手紙を返しているが、よく考えると時間の流れが3倍だと、届いた時には3週間くらいたっているのだろう。
 そのためか、手紙を心待ちにしていると言うような文面が多かった。
 流石にそんなに暇でもないので、週に一回が限度であるのだ。

 そんな時、カクからいつもの王室での話や愚痴ではなく、気になる事を書いてきたのだ。
 それは魔人の王ブラックからの伝言のようだ。
 カクは意味がわからないと書いてあったが、私に伝えてほしいと言われたようだ。

     モリ ガ アブナイ

 そして、一緒に光の鉱石の粉末も入っていたのだ。

 ・・・行かなくては。

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