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第1章 洞窟出現編

50話 お別れ

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 森を出た後、私はブラックにカクの家まで送ってもらったのだ。
 洞窟を出た後はブラックにつかまり、一瞬でカクの家の前まで移動でき、相変わらず魔人の凄さに圧倒されるのであった。
 予想外に森の精霊に出会ったことに、少し動揺したが、それはブラックも同じようであった。
 だが、今回の事は2人だけの秘密にしておこうと約束し、いつになるかわからないが、また私がこちらの世界に来た時に一緒にあの森を訪れることにしようと話をしたのだ。

 私はもう、ブラックに会えなくなるのは少し名残惜しい気がした。
 しかし、ブラックはハナさんに似ている私に優しくしてくれるだけであり、彼は魔人であり、異世界の住人なのだ。
 私はその事について、考えるのをやめた。

「送ってくれてありがとうございます。
 自分の世界に戻る時に、また皆さんに挨拶に行きますね。
 ・・・多分、もうそろそろ準備が整うと思うので。」

「わかりました。
 私の仲間にも伝えておきますね。
 せっかくお話しできたのに、みんな残念がりますね。
 私もその1人ですが。」

 そう言って、残念そうな顔をしたのだ。
 まあ、社交辞令なのはわかるのだが、言われて悪い気はしなかった。
 私は笑顔でブラックに手を振って別れた。
 
 カクの家のドアを開けようとした時、勢いよくドアが開いてカクが出て来たのだ。

「舞、遅かったね。
 心配したよ。
 魔人の国で何かあったのかと思ったよ。
 家の者から、魔人の迎えが来たって聞いたからさ。
 あ、あと光の鉱石がそろったらしいよ。
 もうすぐ届けられるって。」

「ああ、ごめんね。
 急に向こうの城から招待をうけたから、伝言しか出来なくて。
 お茶をして話をして来ただけだから、心配ないわよ。
 それに、シンブの事を聞いたわ。
 拘束はされているけど、好きな本を読ませてもらっているみたい。
 元気だって言ってたわ。
 後でヨクにも伝えるわ。」
 
 そう言うと私は自分の部屋に行き、ベッドに横になった。
 この世界にいられるのもあと少し。
 やり残したことがないか考えたのだ。

 次の日、私はオウギ王に挨拶するために城にむかった。
 王室の薬師の取りまとめであったシンブがいなくなったため、今はヨクが仕事に返り咲き、忙しい毎日を送っているようだ。
 シンブに加担して、王様に反抗した他の薬師達は何人かは辞める事になり、何人かは王様の許しを得て復帰したものもいたようだ。
 何にせよ、魔人の襲撃以降、城は落ち着かない状況が続いていたのだ。
 しかし、何故かカクだけは家にいることも多く、暇そうに見えたのだ。
 カク曰くは、私の面倒を見るように言われているからとのことだが、本当のところは不明であった。

 久しぶりにオウギ王に面会した。
 
「ご無沙汰しております。
 そろそろ元の世界に戻る時が来ました。
 あまりお役に立てず、申し訳ありません。」

「ああ、舞来てくれたのだね。
 いやいや、大変な働きであったよ。
 マサユキも喜んでいると思うよ。」

 オウギ王は嬉しそうに話してくれたのだ。
 シウン大将のところにも挨拶に向かった。
 相変わらず、非番の日でも剣の稽古をしている真面目な人なのだ。
 そして勘も鋭く、私が声をかける前に振り向いて声をかけてくれたのだ。
 
「ああ、舞殿。
 そろそろ自宅に帰られると、王様から聞きましたよ。」

 あ、そうだ。
 この人は私が異世界から来た事は知らないはずだった。

「ええ。
 もう、こちらの国も落ち着いたようなので。
 色々お世話になりました。」

「いえ、とんでもないです。
 お元気で。」

 そう言うと、また剣の稽古に励むのだった。

 さあ、帰る準備をしないと。
 私はカクの家に着くとヨクが家に戻っていた。

「舞、光の鉱石の粉末が届いておるぞ。
 もう、いつでも転移できる状況になっておるからな。」

 ヨクは嬉しそうに教えてくれた。

「ありがとうございます。
 本当に色々お世話になりました。
 何もわからない私に優しくしていただき、ほんと感謝しています。」

「はは、世話になったのはこちらの方だよ。
 マサユキよりも助けになったと思うぞ。
 また、会うことができるといいのだが。」

 ヨクは寂しそうな目をしたのだ。

「またすぐに来ますよ。
 じゃあ、明日戻ろうと思います。」

 私がそう言うと、奥からカクが慌てて出て来たのだ。

「え?明日なの。
 じゃあ、今日の夜はご馳走にするように頼むから。
 舞の好きなもの言うといいよ。」

 夜はカクとヨクと今までの事や私が住んでいる世界について、遅くまで話し合った。
 本当に楽しい食事になったのだ。

 自分のベッドに着くと、ブラック達魔人の事が頭に浮かんだのだ。
 自分の世界に戻る時にまた連絡するとは言ったが、何となく気が重かったのだ。
 正直、またブラックに会うと戻るのをためらってしまうのではと、怖かったのだ。
 だから、私が帰った後に魔人の国に連絡をしてもらうように、カクやヨクに頼んだのだ。
 
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