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第3話 魔狼との出会い2

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「神獣……まさか夢であったことって?!」

 確か夢では魔族もいたはずだ。

「やっぱり、あの夢はただの夢じゃなかったのか」
「ライト!」

 夢で聞いた声?いったい誰が?

「詳しいことは後で話すわ。それより、魔族はまだ生きてる」
「生きてる?」
「後ろ!」

 突如、右横腹の方にとてつもない痛みを感じ、木に激突した。

「がはっ!」

 大量の血を吐き出す。
 訳も分からないまま自分の血をただ眺めている。
 え?何が起こったの?

「ライト!」

 体中が痛い。
 魔狼が僕を呼んでる。
 なんでだろう?体中痛いはずなのに、気持ちがいい。

「くそ!あの魔狼、素直に死んでおけばいいものの!」
「まさかこの俺が不意打ちで気絶していたとはな」

 魔族の声か?

「それにしても、まさか人間がこんなこところに来るとはな」
「いや、待てよ?ここに人間が来たということは……」

 そう言って、魔族が近づいてくる。

「お前も運が悪かったな」

 僕って死んじゃうのかな?

「ライト!しっかりしなさい!」
「まさかこんなにも早く出てくるとは思わなかったが。あの爺さんも、教えろよな」

 魔族が刃を首元にあてる。
 冷たい。
 親孝行もできてないのに…… 
 
「ライト!あなたはここで死ぬような人じゃない!」
「あなたも気づいているはずよ!自分の力に!あなたの力は魔王を倒すために必要なの!」

 魔狼の声が頭の中に流れてくる。
 僕が死んだって、世界は変わらない……ただの農民だから……
 こんな僕に勇者の力が与えられたのはなんでなんだろう。それだけでも知りたかったな……
 勇者か……今思えば、ロイヤルナイトよりもかっこいいな。もし、生まれ変われたら、その時は勇者に……
 視界が薄れていく。

「なんだこいつ?死んだのか?まっ、念のためにとどめは刺しておくか」

 魔族が刀を引こうとした。

「ライトぉぉぉおおお!!」

 その瞬間!

「なんだ!?」

 凄まじい金属音がした!
 生きてる?一体何が起こったんだ?
 血のせいで視界はっきりしない。が、彼には何が起こったのか、一瞬にして理解できた。

「あれは?!」

 そこには、村長からもらった刀があった。
 
「俺の刀が魔素化しただと?!」

 刀が浮いている?しかも戦ってるだなんて。

「ライト!」

 魔狼の声だ。

「いい?ライト今から言うことをよく聞きなさい!」
「あなたはあなたの力は勇者様の力と同じ!たとえ農民でも、きっとあなたには勇者様の意思が引き継がれているはず!」

 勇者の意思が引き継がれている?

「今こそ覚悟を決めなさい!そうすれば、あなたは真の力をてにいれることができる!」

 僕は勇者?
 僕が勇者?
 だって僕は農民のはず……いや、今はそんなことはどうだっていい。
 僕に足りないのは覚悟。
 もし僕が本当に勇者なのならば、きっと神はきっと力をくれるはずだ。
 僕には守らなければいけない人たちがいる。
 いや、僕にしか守れないんだ。だって僕は……

「――勇者――なんだから」

 突如白い光が、天から雷のごとくライトに落ちてきた。

「次から次へと!どうなってんだ!」
「痛みが……なくなってる」
「それに体も軽く……」
「お前は瀕死の状態で倒れてたはずじゃ!?」

 危険を察知したのか、思わず後ずさりしている。

「なんだこの感じは?無限にパワーが湧き出してくるような」
「ステータスを見てみよう」

 体力が132
 魔力が110
 攻撃力が57
 守備力が64
 素早さが34
 神聖力が……91?!
 神聖力が3倍以上に増えてる!

「それにこのスキル……」

 スキル 勇者の意思
 Lv.1 ホーリーショット...神聖力を相手に向かって放つ(魔素にのみ有効)
 Lv.2  神 の 羽 衣...常時神聖力を纏う

「新しいスキルが追加されている」
「よそ見するとはずいぶん余裕なっこった!」

 魔族のこぶしが迫ってくる。
 間に合わない!
 避けようとするが、顔をかすってしまった。

「っ!かすっただけでこの威力……油断はできない!」

 すぐさま刀を呼ぶ。
 なんだろう?まるで戦ったことがあるかのように、体が勝手に動く!

「ぐっ!ぐあああぁぁぁぁぁぁああ!!」

 突如魔族が叫びだした。
 
「か、かだがああああああああ!」

 いきなりどうしたんだ?!
 急いで距離を取り、構える。
 どうなっているんだ!?魔族が魔素化を始めている。

「俺が死んでも……いずれお前は殺される!」
「せいぜい……あがいて……み……ろ……」
 
 そう言うと、魔族は跡形もなく消え去った。

「なんだったんだ……今のは」
「あっ!それよりも!」

 急いで魔狼のもとへと駆け寄る。

「どうしよう!回復魔法が使えれば!」
「ライト。倒すことができたのね」
「魔族の攻撃のせいで神経が魔素に汚染されてるみたいなの。ライトの浄化で魔素にを取り除いてくれないかな?」
「わかりました!」

 魔狼に手を当てると。

「浄化!」
「……どうですか?」
「ありがとう」
「しゃべった!」

 それは、脳にではなく直接耳から聞こえた。

「ヒール!」

 魔狼の傷がどんどん治っていく。

「すごい回復力!」
「ふぅ、やっと動けるようになったわね」
「改めてお礼を言うわね。ありがとうライト」
「い、いえ」
「この姿で話すの少し違和感あるよね}

 そう言うと魔狼は姿を変えた。

「ええ!魔狼が人間に!?」
「これはただの擬人化よ。それよりさっきから魔狼魔狼って!私は白狼!魔狼みたいな魔物と一緒にしないでよね」
「すみません……それより、服を……」

 ライトは目をつむっている。

「おこちゃまなのね」

 そう言って、白狼は笑っている。

「服なんてないわよ」
「それじゃあどうすれば!?」
「とりあえず狼の姿でいましょうか」

 するとみるみるうちに、白狼の姿へと変わっていく。

「そういえば、自己紹介まだだったわね。」
「私は、神獣である白狼のネロ」
「僕は、ライトです」
「知ってるわよ。私はライトのお手伝いをするために来たの」
「お手伝い?」
「そう。白狼は勇者に付き添い、ともに魔王討伐を目指すのがルールなの」

 改めて、勇者って言葉を聞くと違和感がある。

「本来、もう少ししてから出会うはずだったんだけど、どうやらあなたの近くに魔族が潜んでるみたいでね」
「それって、もしかしてさっきの?」
「そう。それとあと一匹いるわよ」
「あと一匹?!一体どこにあ?」
「それは、セリア村よ」

 衝撃の発言に思わず目を見開いた。
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