勇者でも渡り人でもないけど異世界でロリコン魔族に溺愛されてます

サイカ

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作って良かったメンチカツ!

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 その後もう一つプレゼントがあるんだとクシェル様に手を引かれて王妃用の部屋に移動した。
 扉を開けると大幅に模様替えが行われていて、煌びやかなデザインだった家具やベッドは落ち着いたデザインのものに変わっていて、ソファやカーテンなども黄色やピンクなど可愛い色合いのものに変わっていた。

「可愛い……えと、もしかしてこれもわたしのために?」
「もちろん!気に入ってくれたか?」
「はい!ありがとうございます!」
「良かった。実はプレゼントはこれだけじゃないんだ」

 そう言うとクシェル様はわたしの手を引きリビングルームだった扉を開ける。とそこには調理機具一式が揃えられていた。

「こ、これは……」
「コハク専用の調理場だ!」

 イダル先生に聞いて、わたしが料理に興味があると知り、改築してくれたらしい。
 更にこの部屋の中には人はもちろん物もわたしへの悪意のあるものは入ることが出来ないため、ここで作ったものはクシェル様の確認なしに安心して口にすることが出来る。

「あ、ありがとうございます」

 クシェル様の気持ちが嬉しくて声が震える。

 さっき貰った魔力石を使い調理機具の使い方を教わった。
 コンロはダイヤルを回すと火力を調節出来て、それに必要な魔力は魔道具が勝手に調節するから、魔力の流しすぎなどは無いとのこと。
 蛇口もコンロと同じ要領で、オーブンも温度はダイヤルで調節し、魔道具に埋め込まれた魔石に必要な魔力を流すことで長時間調理を可能にしている。



 その晩早速サアニャに手伝ってもらいながらコロッケを作ってみた。

「覚えててくれたのか!ありがとうコハク」

 クシェル様が「いつか作ってくれないか」と言ってくれたので、料理をするなら始めはコロッケを作ると決めていた。
 飴色玉ねぎに粗く潰したジャガイモ、塩コショウで炒めた挽肉ーーコロケより食べ応えがないかもしれないけどあえてレシピは変えずに作った。

「これコハクが作ったのか、すごいな」

 ジークお兄ちゃんにそんな感心した目で見られるとなんか照れる。

「口に合うといいんですけど」

 二人はコロッケを一口で頬張る。
 コロケより小さいとはいえ、気持ち大きめに作ったのに…すごい。

「うん、美味い!甘みがありイモの食感が残っていて、俺はコロッケの方が好きだな」

 クシェル様はそう言いながら二つ目を口に運ぶ。

「口に合って良かったです、ジークお兄ちゃんはこっちの方が好きかもです」

 どこか物足りなさそうなジークお兄ちゃんに別の皿のものを取り分け渡す。

「ん?これはコロッケとは違うのか?」
「はい、見た目は同じですが、こっちはメンチカツと言ってジャガイモを加えず、挽肉と玉ねぎだけで作ります」

 クシェル様はあまりパンチのあるものや重いものは好まない。でも逆にジークお兄ちゃんは食べ応えのあるものやパンチのある味付けを好む。だからコロッケはジークお兄ちゃんの好みではないかなと思ってメンチカツも作ってみた。

 ジークお兄ちゃんはまた一口で食べてしまう。

「美味い!」

 そう言うとジークお兄ちゃんはメンチカツを次々と口に運ぶ。

「良かったです」
「ありがとなコハク」

 4つ目を食べ終えると一旦水を飲み、わたしの頭を撫でる。

 ーー?

 なぜお礼を言われているのか分からず首を傾げるとジークお兄ちゃんはおかしげに笑う。

「これ、俺のためにわざわざ作ってくれたんだろ?」
「は、はい…」
「コハクが俺の好みを知っていてくれて、俺のことを思って作ってくれたのが嬉しい。だから、ありがとう」

 優しく微笑み撫で撫でを再開するお兄ちゃん。

 なんだか胸がポワポワ~となる。
 作って良かった、メンチカツ!

「ご馳走さま。ホント美味かった、また何か作ってくれ」
「ご馳走さまコハクの料理は最高だな!」

 改めて二人の食欲には驚かされる。
 それぞれ10はあったのにあっという間になくなってしまった。


 食事が終わるとちょっとしたデザートと飲み物が運ばれる。
 クシェル様は食後いつも紅茶を飲む。
 コロッケの後に紅茶って合わない気がするけど、今日もいつものように熱い紅茶を音を立てず飲む。その姿はとても優雅で紳士的だ。
 ジークお兄ちゃんは普通の水。
 そしてわたしは果実水…わたしだけお子ちゃまだ。

「あ!お菓子とかも作っていいですか?」
「ん?コハクは菓子も作れるのか⁈」

 また感心した目を向けるジークお兄ちゃん。

「か、簡単なのしか作れませんけど」
「もちろん!好きなだけ作っていいぞ欲しい食材があったらメイドに言うといい、すぐに用意させる」
「ありがとうございます!」

 自分の趣味のためにメイドさん達の仕事を増やすのは申し訳ないけど、敷地内から出られないんだから仕方ない…。


 クシェル様に貰ったネックレスのおかげで魔道具も使えるようになったし、部屋の結界もシェーンハイト様が「わたしに悪意のあるモノを拒む」というものに貼り直してくれたため、安全性も保障され、今晩から寝室が王妃用の部屋へと戻った。

 ちなみに、クシェル様の部屋の結界もシェーンハイト様が張ったものらしい。
 つまり、あの時はクシェル様の許可なしに部屋に入るとどうなるか知った上で感電した事になる。だからクシェル様もフレイヤ様も呆れていたのかな?
 ジークお兄ちゃんは「結界の効力を見直すためだったのではないか」と擁護していたけど、クシェル様は「単にコハクの気をひくためだろ」と否定していた。

 そして何故か今日からサアニャのわたし磨きが始まった。

「さ、サアニャこういうのはわたしには必要ないと思うんだけど」
「いいえ!来たる時のために必要な事です」

 来たる時って何だろう?

「あー、魔法なんかで乾かすから髪も傷んでるじゃないですか!肌も乾燥してる!」

 アロマオイル?ボディクリーム?なんかいい匂いのものをほぼ全身に塗り込まれる。
 自分磨きとかしたことないわたしは、勿論エステとかも行ったことがなく、ただただ恥ずかしい!

「男性のいる部屋で手入れなんて出来ませんからね。これからは毎日思う存分出来ますね!」

 サアニャの声が弾んでいる。

「……全然嬉しくない」
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