勇者でも渡り人でもないけど異世界でロリコン魔族に溺愛されてます

サイカ

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【クシェル】引くわ!

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 コハクが目を覚ましたのは次の日の朝だった。
 体調もすっかり良くなったようで、良かった。朝食を済ませると今日は三人で執務室へと向かう。


「今日はジーク様も一緒なんですね」

 執務室に着くと、コハクは嬉しそうにジークに笑いかけた。

「あー…お兄ちゃんとは呼んでくれないのか?」
「え⁈あ、あれはその場の勢いというか、つい調子に乗ってしまったというか、わ、忘れてください!」

 赤面しアワアワと顔を隠すコハク

「可愛かったのに…もう呼んでくれないのか?」

 それにわざとらしく眉を下げて悲しげに呟くジーク、何だその表情!コハクの良心に訴えようって魂胆か⁈引くわ!

「え⁈あ、でも…えと、じ、ジーク、おにぃ」

『コンコン』

 タイミングよくドアが鳴る。
 コハクはドアの音にビックリして言葉を止め、慌ててドアの方を向いてしまう。
 そして現れたのは勿論俺が呼んだ奴らだ。

「「失礼します!」」

 呼ばれたから来ただけなのにジーク(上司)から睨まれる二人。二人の顔に緊張が走る。

「もう知ってると思うが、部下のアレクとグレンだ。今日から二人を護衛に付ける」

 そう、今日ジークも執務室に来てもらったのはこの話をするためだ。



 実は昨日帰りの馬車に乗り込む前再び母さんに俺だけ呼び止められていた。

「クシェル、コハクちゃんの事なんだけど」
「ん?」
「見張らせるのがいつもの事だっていうけど他には変な事して無いでしょうね?」
「変な事?コハクが何をしているか、困っていないか、何かされてないかと心配するのは当たり前だろ?」
「だからっていつも監視まがいなことしてるなんて普通じゃ無いわよ!される方の事を考えたことある?」

 ーー考えた事、無かった。

「そんな事されてるって知ったらコハクちゃん傷つくわよ、そしたらクシェル、あなた……」

 そしたら…き、嫌われる?


「クシェル様がそんな人だったなんて…」
「ち、違うんだ俺はコハクの事が心配で」
「ち、近づかないで下さい!クシェル様なんて嫌いです!」
「許してくれもうしないから!」
「信じられません!ーー帰りたい、もうこんな人の側になんて居たく無い」

 なんて事にーー嫌だ嫌だ嫌だ!


「お、俺はどうすれば!!」

 今までのコハクへの対応について他に変な事がないか一から母さんに話した。
 寝るのは三人同じ部屋であることは、「普通では無いが今のところコハクちゃんを守るためには仕方ない」と了承を得た。食事はいつも俺とジークどちらかが与える事もやはり普通では無い。しかし、コハクが受け入れているため今更直さなくていい。
 授業は俺の居る隣の部屋でルークの監視付き、昼食は俺の居る部屋、授業がない時も俺の居る部屋で、ジークを待って三人で夕食、後は俺の部屋で過ごし(風呂も俺の部屋のを交代で使用する)次の日も同じように…

「バっ、それじゃ軟禁じゃない!何してるの!」

 な、軟禁の自覚は無かった。確かに思い返してみるとーーコハクの行動を制限し過ぎている。

「よくコハクちゃんも反抗しないわね……」
「コハクが気にして無いなら別にこのままでも」
「いいわけないでしょ!兎に角、コハクちゃんを城の中に閉じ込めるのはやめなさい!今はいいかも知れないけどそのうち、今の生活に飽きが来て不満が出てくるわ!てか、コハクちゃんの健康に良くないわ!身体的にも精神的にも!」
「わ、分かった」
「あと、監視は今すぐやめなさい!その代わり護衛を付けて堂々と見張りなさい!多分コハクちゃんなら護衛を嫌がったりしないから、いいわね!」
「は、はい」



 ということで、早速今日からコハクに護衛をつけることにした。

「ご、護衛⁈」
「城内の者にはコハクが俺の婚約者であることを伝えた、これで危険性も減っただろうし、コハクも室内ばかりじゃ退屈だろう?」

 正確には外どころか室内も満足に歩けてないが、すまん。

「とは言っても、油断は出来ない!室内外共に俺がいない所でコハクに危害を加えようとする者がいないとも限らない、そこで護衛をつける事にした!城の外は、まだ無理だがーーすまない」

 本当はこのままずっと俺の側にいて欲しいが、コハクの為だと言われたら仕方ない。庭には庭園や噴水、広い芝生、様々な木々がある。取り敢えずこれでいっときは退屈しないだろう。

「い、いえ、ありがとうございます!えと、城内だったらどこに行ってもいいんですか?」

 すごく嬉しそうだ!すでに、不自由な代り映えのしない生活に飽きていたのか!

「そうだな、騎士寮や使用人の居住区など人の多い所は避けて欲しいがーー基本自由にしてもらって構わない」
「訓練場は?」

 訓練場⁈コハクはそういうのは苦手だと思っていたが、あちらでは戦いが身近では無かったと言っていたし、逆に興味があるのか?

「か、構わないが」

 目を輝かせてテンションが上がるコハク

「わたし、ジーク様の仕事姿も見てみたかったんです!」

 どうやら戦いそのものや騎士たちに興味があったわけではないようだ。

「ジーク様は魔法剣士なんですよね?剣に魔法を付与して戦うんですか?炎を纏った剣とか切っただけで相手を凍らせる剣とか!」
「いや、魔法を使いながら剣を振るう」

 それを聞き残念そうにするコハク。
 ジークは基本(身体強化して)剣を振るい、魔法は敵の攻撃を防いだり、離れた敵を倒すのに使う。

「や、やったことはないが、出来なくはないと思う!今度試してみよう!」

 ジークは慌ててフォローを入れる。
 ーー必死か!引くわ!

「はい!是非!」

 目に輝きが戻る。可愛い!

「クシェル様は?光魔法?以外は使えるんですよね、雷の虎とか出せますか?魔力波を打ったり!こう何々バスターみたいな!」

 雷のトラ⁈何々バスターて何だ⁈まぁやろうと思えばで、出来なくは無い、かな?

「あ、あーそんな感じだ」
「す、凄い!」

 痛い程の期待の眼差しーーマズい取り敢えず、練習しよう!
 やめてくれ、そんな哀れな者を見るような目で見ないでくれ!「必死か!引くわー」とか思ってすまなかった!
 俺はジークと目を合わすことが出来なかった。

 今日はこのまま午前中は自由に城内をみてわまる事にして、午後は授業だ。
 コハクが城内を散策している間に俺にはやらなければならないことが出来た!

「ルーク、あの学者を呼べ!」
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