勇者でも渡り人でもないけど異世界でロリコン魔族に溺愛されてます

サイカ

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初めての外

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「明日俺の両親に会いに行くぞ」

 やっぱり、昨夜何かあったんだ!早急に両親に相談したい程の何かが!



 昨夜はお風呂から上がると何故かクシェル様が泣いていて、昼間難しい顔をしていたこともあり、何か嫌な事があったのではと思ったわたしは顔を覗き込んだ。すると、突然強く抱きしめられ、わたしはまともなセリフも喋れないくらいパニックになってしまった。

 あれは本当に何だったんだろうか?いつもみたいにわたしを幼い子供として、父親みたいな感覚で?それとは少し違うように感じた。

 でも、今日一日クシェル様に変わったところは見られなくて、いつも通りのように感じた。お風呂上がりもニコニコ笑顔で待ってくれていて、わたしが目の前まで行き目を閉じると、魔法で髪を乾かしてくれた。

 いつも通り……わたしの勘違いだったのかな?

 しかし、就寝直前ーー

「明日俺の両親に会いに行くぞ」
「明日か急だな」
「え?クシェル様出かけるんですか?」

 いつも通り……じゃない事が起きた!

「ん?コハクも行くんだぞ」
「え⁈わたしもですか?」

 え?人間で異世界人のわたしが王家の人にあって良いの?というか、ここから出て大丈夫なのかな?

「あー両親がコハクに合わせろとうるさくて……というのもあるが、コハクに俺の事を知って欲しいんだ」

 軽い雰囲気だったのが一瞬にして真剣な面持ちになる。

 ーーもしかして、ジーク様が手紙に書いていた事をクシェル様と話してくれたのかな?それで昨夜のあれ…?

 ジーク様を見るとゆっくりと頷いてくれた。
 これは、クシェル様がわたしを信じてくれたという事だ。
 わたしも真剣に答えた。

「はい、ありがとうございます!」
「……っハハありがとう」

 あれ?わたしの返事何か可笑しかった?
 クシェル様は数回瞬きをすると、笑い、潤んだ目を細めた。

「良かったな」

 そう言ってジーク様も微笑む。

「はい!」
「あー」

 わたしとクシェル様の返事が重なる。
 と今度はクシェル様とジーク様が見合い笑いあった。

 ーー?


 翌日、目的地までは馬車で5、6時間ほどで着くが、途中の街に寄りつつ向かうという事で朝食を終えるとすぐに城を出た。

 城の外にはすでに馬車が止まっていて、その前に二人の騎士が立っていた。

 二人はジーク様の部下らしく、ジーク様がわたしを魔王城に連れて来てくれたあの時の二人だった。

「お久しぶりですシイナ様、僕はアレクよろしくね」

 アレクさんはこの中で一番小柄で180cmくらい、栗色の髪にアーモンド型のクリッとした目で可愛い美少年という感じだ。

「俺はグレン、よろしく」

 グレンさんはクシェル様と同じくらいの身長だけど戦士だけあってクシェル様よりたくましい体つきだ。髪は赤みの強い茶色で目は鋭く……睨まれてる?

「椎名コハクです、こちらこそよろしくお願いします」

 二人は今日わたし達の護衛のために馬で同行してくれるらしい。

 二人との挨拶を済ませるとクシェル様に引かれるように馬車に乗り込む。
 わたしはクシェル様の隣に座り、その向かい側にはジーク様が座った。

「コハク昼は何を食べる?」

 クシェル様も魔王城から出るのは久しぶりらしく少し興奮気味だ。

「どういうのがあるんですか?」
「この辺だと肉料理が多いな」

 見回りで魔王城の周辺には詳しいジーク様がいくつかの店をリストアップしてくれた。
 わたしは聞き覚えのあるメニュー名があった店を希望した。

「じゃそこにしよう」
「良いんですか?お二人が食べたいものとか……」
「俺はいつでも食べれる」
「コハクの興味あるものに興味がある!」

 昼には少し早いので先にお土産を買い、お店に向かうことにした。
 馬車が止まるとジーク様が紺色のフート付きマント?を着せてくれた。

「コハクの髪は目立つからな暑いだろうが我慢してくれ」

 そういうジーク様の方が暑そうだ。
 今日は魔王様の護衛も兼ねているということで紺色の騎士服を着て、襟も一番上までキッチリと止めている。それに比べクシェル様はジャケットも着ず何の装備もないラフな格好で、一番涼しそう。

 最初はジーク様が降りてドアを支え、次にクシェル様が降りわたしの手を取り降りるのを手伝ってくれた。

 かっこいい!!

 名前を呼んで微笑み、手を差し伸べる姿はまるで御伽話に出てくる王子様みたいで、更に、陽に照らされた金茶色の髪はキラキラと輝きまるで陽にかざした琥珀ようだ。

 ーーって、クシェル様は王子様じゃなくて魔王様なんだけどね(笑)

 というか、もしかしなくても魔王様にこんな事させるなんて、わたし街の人たちに殺されない⁈

 案の定馬車から降りると街の人たちの視線が痛い。
 しかし、クシェル様はそれに構わず、わたしの手を取り、それに次いでジーク様ももう一方の手を取る。そして護衛の二人が少し離れて後ろについた。

「さぁーコハク、何か欲しいものはあるか?」

 クシェル様は子供の様にはしゃいで、わたしへのプレゼントを選んでいる。

「やはりお菓子屋がいいだろうか、あ!この髪飾りコハクに似合いそうだな、この服もいいな、あ、あれも!」

 仕事帰りにお土産を買って来てくれるジーク様によく「ずるい」と言っていたけど、本当にプレゼントしたくてたまらなかったみたいだ。

 ーーわたしだけ貰ってばかりだなぁ、わたしにはそんな価値ないのに

 今だって街の人たちがわたしを怪訝そうな目で見ている。そして、その目はわたしのせいでわたしを連れている二人にまで向けられる。
 馬車から出るまではわたしもクシェル様みたいに内心はしゃいでいた。だってここに来て初めての外なのだ!はしゃぐなって方が無理だ!
 しかし今はーー

「コハク気にするな」
「ジーク様……でもわたしのせいでお二人まで」
「コハクのせいじゃない、これはいつものことだ、そんな事よりコハクはどっちがいい?」

 クシェル様は本当になんでもない顔で黄色の小さなヒマワリに似た花形の髪飾りとピンクのコスモスに似た髪飾りをわたしの前に出した。

 ーーいつものこと⁈お二人ともいつも街の人たちにこんな扱いを受けてるの?

 もしかしたら、クシェル様が時々何かに怯えた様になるのはこれが原因なのかもしれない。
 目の色のことを気にしていたのも、この人達から悪く言われたからかも……
 クシェル様はきっとこの目で見られるのがトラウマで、だからわたしがイダル先生のことで反発した時酷く動揺していたんだ。
 そして、クシェル様は街の人たちに対して心を閉ざしてしまっているのだろう。
 わたしは街の人たちを憎まずにはいれなかった。

 ーークシェル様を傷ついたことが許せない

「こっちの方が好きです」

 わたしはピンクの髪飾りを指差し、クシェル様に笑いかけた。

 ーー今は二人との時間を楽しもう!

「そうか!」

 クシェル様はそういうと早々と会計を済ませてプレゼント用に包む様に店主に言う。

「付けて行ってはダメですか?」

 わたしはクシェル様が会計の為に離した方の手でクシェル様の袖を引っ張って尋ねる。

「もちろん!」

 クシェル様は包装されそうになっていた髪飾りをそのまま受け取る。
 それを確認したわたしは自らフードを取り、クシェル様を見上げた。
 するとクシェル様は軽く腰をおり右側に髪飾りをつけてくれた。
 わたしのフードが取れた瞬間周りのザワつきが増したが、わたしにはそんな事はもう気にしないことにした。

 クシェル様を害した存在の意思なんかに影響を受けている時間が勿体ない。

「ありがとうございます」
「「可愛い!!」」

 二人が可愛いと言ってくれるなら、今はそれだけでいい、二人の笑顔が見れるなら他人はどうでもいいーーそう思う事にした。

 ジーク様はわたしが傷つかない様にフード付きマントを着せてくれたらしく、わたしが周りの目を気にしないとわかると、マントを脱がしてくれた。

「自分で持ちます」
「コハクは両手がふさがっているだろ?」

 ジーク様は繋いだ手を持ち上げて、ニッとイタズラっぽく笑う。

「そうだぞー荷物を持ったら俺たちがコハクと手がつなげなくなる」

 そして、クシェル様は繋いだ手を軽く振ってみせる。

「そ、そうですね……じゃあすみません、お願いします」

 それに、わたしはギュッと二人と繋いだ手の力を少し強め、了承の意を伝えた。すると今度は二人がわたしの手を指で撫で微笑む。

「フフ、なんだがこれ、三人だけの秘密のメッセージみたいですね」

 三人が繋がっているからこそ出来る、わたし達にしか分からない秘密のやり取り。それは外に居ながら、いつもの三人だけの世界にいるみたいな感覚を与えてくれる。

 とても安心出来る優しい世界。

「待ってください!」

 その世界を壊す誰かの声。

 突然の声に驚き後ろを見ると、護衛の二人が慌てて駆け寄って来ていた。

「それなら僕が持ちます!」

 アレクさんが手を出すがジーク様はそっちを見る事なく「必要無い」とだけ言ってそのまま歩き出そうとする。

「荷物を持ったままだと、いざという時戦えません!」

 すると次はグレンさんが声を上げた。

「……そういう事なら俺が持つ」
「ま、魔王様にそんな事させられません!僕が持ちます!」
「お前たちもいざという時戦えないと困る」
「しかし!」
「俺なら手が塞がっていても魔法でコハクを守れる」
「「え⁈」」

 アレクさんはただ驚いた顔をしていたが、グレンさんはわたしを睨んでいた。
 多分護衛の二人はジーク様や魔王様が荷物持ちをする事自体を問題視しているんだと思う。
 しかも人間の荷物なんかを…。

「そういう事なら、頼んだ」

 ジーク様はそう言うとマントをクシェル様に渡す。

「すみません、クシェル様」
「謝る必要はない。俺が持ちたいから持っただけだ」

 そう言うと、クシェル様は呆気にとられている護衛を置いて歩き出した。
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