勇者でも渡り人でもないけど異世界でロリコン魔族に溺愛されてます

サイカ

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そうか二人はロリコンなのか

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 あの日から、部屋にいる時以外は必ず二人又はどちらかが常に一緒にいてくれている。と言っても、ほぼ食事の時以外で部屋から出ることはないんだけど。

 初日の大男達からの殺気や、メイドさんや採寸の人の冷たい目と態度を思うと、自主的に部屋から出ようとは思えない。

 相変わらず移動の時はクシェル様に手を引かれ、食事はクシェル様に食べさせてもらっている。
 わざわざ送り迎えしてくれるのはわたしを守るためだと分かるけど(人とすれ違う時さりげなくジーク様が間に入ってくれる)やっぱり、手を繋いだり、あ、あーんはちょっと過保護?というかこれってもう完全に子供扱いだよね?

 そんな生活が約一週間ーー正直、暇です。

 二人も仕事がない時間はなるべくわたしの相手をしてくれるけど、逆に二人が仕事の時は(メイドさんは別の部屋で待機しているから)部屋にずっと一人だ。
 この世界にはテレビやゲーム、ネットなど暇を潰せるものがない。あるのは本くらい。
 しかし、なんのチートも持たないわたしはこの世界の文字が読めない。

 せめて文字が読めれば本を読んで暇が潰せるのに。

 そんな事を考えていた矢先のクシェル様の「何か欲しいものはないか」という問いにわたしは「勉強がしたいです!」と手をあげていた。

 因みに昼食はクシェル様が部屋まで迎えに来てくれて、食堂で一緒に食べてくれている。

「勉強?」
「はい、本が読みたいんですけど……こっちの世界の文字が読めなくて」
「え?あ、そうか!そうだったな」

 そう、クシェル様のおかげで言葉は理解出来るんだけど文字は読めないし書けない。

 クシェル様は数秒考えた後横を向き「おい、ルーク」と誰かを呼んだ。するとそこに突然人が現れた。

「はい、魔王様」

 その人は鮮やかな緑の長髪を一つにまとめ、瞳も髪と同じ色で、ある意味とても目を引く容姿をしている。
 同じ部屋にいたら気づかないはずないんだけど、まさか瞬間移動⁈

「コハクに字の勉強をさせてあげたい。手配してくれ」

 まばたきも忘れて驚くわたしに見向きもしなかったその人は、クシェル様の言葉を受け、初めてわたしに目線を向けた。

「こうして会うのは初めてですね。魔王様の補佐を務めさせて頂いております、ルークと申します」
「は、初めまして。椎名コハクです」
「魔王様、この方はずっとここに置いておくおつもりですか?」

 ルークさんは事務的な挨拶をするとすぐクシェル様へと視線を戻した。
 この人もわたしのことが嫌いなんだ。
 でも、挨拶をしてくれただけ全然マシだ。

「そのつもりだが?」
「……でしたら、文字だけでなく他の事も学ばせておいた方が良いかと、あちらの世界とこちらの世界の常識にはズレがあるようですし」

 何やら考え込むクシェル様。
 わたしが文字以外の事を勉強したら何かまずい事があるのかな?

 しかし、ルークさんの「こちらの世界のことを知らない方が返って危険かと」という言葉に「そうか、任せる!」とクシェル様はさっきまで考え込んでいたのが嘘のようにルークさんの意見に賛同し、あっさりわたしの勉強の件を承諾し、それをルークさんに一任した。

 偶然拾った異世界人をずっと城に置いてくれて、色々と面倒を見てくれるクシェル様。わたしの安全を優先してくれるクシェル様。
 いくら、チートも与えられず異世界に飛ばされて可哀想だからって、わたしが敵意を持っていないからって親切が過ぎる!




「俺もコハクに食べさせたいのだが…」
「っえ⁈」

 今日も例のごとくクシェル様に手を引かれて夕食の席へと着き、例のごとくクシェル様に食べさせてもらうーーと思ったら、席に着いて早々ジーク様が思いもよらないことを口にした。
 驚きのあまりジーク様を凝視するがその表情は真剣そのものだ。

 笑顔で話しかけてくれたり、見送りの時手を振り返してくれるから嫌われてはいないと思っていたけど、今までジーク様から(あーん)は勿論手を繋がれることもなかったから、ジーク様はそういうんじゃないと思ってた!……いや、そういえばこの室内用のスリッパはジーク様から頂いたものだった。いつも履いてるピンクのふわふわスリッパ。

 そういうことだったのかっ!

「嫌、か?」

 わたしが答えられずにいるとジーク様はわたしの顔を覗き込み、眉を悲しげに下げた。

「い、嫌とかじゃなくて、驚いたというか意外だったというか」

 ショックだったというかーー

 うぅ、クシェル様だけじゃなくジーク様までもがわたしのこと幼い子供としか思ってなかったなんて。だから二人ともわたしにあんなに親切にしてくれたんだ。

「わたし……もう子供じゃないんです。自分で食べられますよ?」
「それは……」

 何故かここで驚いたと言うように目を見開き、固まる二人。

 え?何で驚くの⁈初日にちゃんと年齢の話して、ちゃんと二人も納得してくれたよね⁈

「それは、クシェルは良いが俺はダメということだろうか」
「え?」

 数秒の沈黙の後発せられたジーク様の声は弱々しく、その表情は絶望に満ちていた。

「クシェルの時は直ぐに受け入れて、嬉しそうに食べていたのに……」

 それなのにジーク様の時は直ぐに答えず更には「わたしもう子供じゃないから自分で出来る」なんて急に言い出してーーあ、これじゃジーク様にはあーんして欲しくなくて遠回しに断っているように見える。

 だからジーク様は悲しくて、傷ついてーー
 あの時ジーク様はわたしが子供じゃないことに驚いたんじゃなくて、わたしがジーク様を傷つけてしまっていたんだ。

「ち、違います!ジーク様からのあーんが嫌なわけでは無いんです」
「あ、あーんっ⁈」

 視界の端でクシェル様が何故か手で顔を覆い天を仰いでいる。が、それより今は一刻も早くジーク様の誤解を解きたい!

「ただお二人がとても親切にしてくださるので、もしかしてわたしのこと幼い子供だと思って世話を焼いてくれているのかな?と思いまして。だから、えと、わたしはもう成人してる大人ですのでわざわざお二人の手を煩わせる必要はないかと!」

 子供ではないと、もう大人なんだと思ってもらえるようにわたしは敢えて力強く宣言した。

「お、お二人?という事は俺も⁈俺からのも嫌だったのかコハク!」
「煩わしいなんて思うわけないだろ!」

 宣言した瞬間二人は信じられないものでも見るかのような目でわたしを見て、声を上げた。

「そうか。コハクは子供みたいに扱われたと思って怒ってるんだな?大丈夫だちゃんとコハクは大人だ分かっている!18だろ?もう結婚も出来る立派なレディだ!」
「もしかして手を握るのも、か?」

 いつもより饒舌なジーク様と打ち拉がれたように力なく自分の手を見るクシェル様。

 どうやらジーク様はわたしの年齢も覚えていたようで、ちゃんとわたしのことを大人と認識してくれていたようだ。それならなんでわたしにあーんしたいなんて言い出したんだろう?子供と思っていたのなら構いたい世話を焼いてあげたいと思うのはわかるけど……

「大人なのに?」
「ゔっ……ね、年齢なんて関係無い!」
「嫌だなんて言わないでくれ!」

 この二人の必死さーー既視感がある。というか凄くある人を彷彿とさせる。

 あれは確かわたしが「もう子供じゃ無いんだから一人で寝たい」と言った時だ。あの時のお父さんも確かこんな感じで凄く焦ってて「何でだ⁈お父さんに一人で寝ろっていうのか!」って必死に反対して、それに「だってもうわたし10歳だよ?」って返したら今のジーク様みたいに「年齢なんて関係無い!」って言ってたっけ。
 結局お父さんの泣き落としに負けて布団を離す事で納得したけど、その晩隣からすすり泣く声が聞こえてた。


 ーーそうか二人はロリコンなのか……

 そう思うと今までの二人の反応も納得出来る。

 遠い目をしそうになるわたしをどうか許してほしい。

 わたしのお父さんは自他共に認める重度のロリコンだ。そのお父さんを彷彿とさせるという事はつまりそういう事、である。

「……わたしで良ければ」

 背がちっちゃくて童顔なだけで胸もあるし本物の幼女ってわけじゃないけど、それでも良いなら、こんな(わたしが子供扱いを受け入れる)事で二人が喜んでくれるなら。

「良いのか!」
「はい」

 わたしが了承した瞬間ジーク様は瞬時に自分の椅子を更にわたしの方へ寄せて、わたしの分の料理を自分の方へ寄せた。

「お、俺も良いんだよな?今まで通り手を繋いだり、あ、あーんしたりして」
「は、はい。すみません混乱させるようなことを言ってしまって、お二人が迷惑でないのなら」
「「迷惑なわけない!!」」

 ちゃんとわたしの年齢を理解したうえで納得し、義務感や仕方なくではなく、二人がそうしたいからわたしを子供扱いするのならなんの問題もない。いや、本当は少し引っかかるところはあるけど、それで二人が喜んでくれるならむしろ嬉しい。

 因みに、料理を取り分けて食べるスタイルはわたしが食べれる料理を断定するためだったらしく、次の日からは、一人一人料理が用意されている。
 今日は何らかの肉のソテーにグリル野菜の付け合わせ、野菜と卵のスープ、パンだ。

「コハク、あーん」

 ジーク様はあーんと口を開け、わたしに口を開けるようにジェスチャーで促す。

 戸惑いは若干残るが、促されるままそれを真似て口を開けると一口大に切り分けられた肉が口に入ってきた。

 ん、美味しい。

 この日から朝昼はクシェル様、夕食はジーク様が(あーん)してくれることになった。

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