9 / 117
【クシェル】天使なのかもしれない
しおりを挟む
「ニヤニヤして、何か良いことでもあったのか?」
コハクが俺の瞳と似ていると言う空について語り、こんな俺のことを優しい魔王なんて言ってくれたあの場面を何度も頭の中で繰り返し再生し、幸せに浸っているとジークの声がして、我にかえる。
外を見ると空は赤く染まり、いつのまにか夕方の空になっていた。
随分長い時間トリップしていたようだ。
机の上を見ると書類の束は昼間の状態から半分も減っていない。が、まぁそんな事よりも!
「聞いてくれジーク!なんとコハクが俺のこの目を一番好きな空に似て、神秘的でとても綺麗だと言ってくれたんだ。母さんの赤は暖かく親父の青は涼やかな色だと、その空を見ると優しい気持ちになれて、俺みたいなんだって!俺のことを優しい魔王って!」
この喜びを早く語りたかった。
他でもない、俺の数少ない理解者で心から信頼出来る親友のジークに。
俺が語りながら、声を震わせて涙目になっているのを見てジークも「良かったな」って目を潤ませて、まるで自分の事のように一緒に喜んでくれた。
魔王は代々金髪青眼であり、身体が大きいほど強き偉大な魔王と言われる。
しかし、俺の髪は金茶色で、目も青に赤が混じり、身体も平均くらいしかない。
ーー醜く、燻んだ出来損ないの望まれない存在。
コハクが俺の瞳を綺麗だと言ってくれたのは、コハクが異世界人で、こちらの世界とは常識や価値観が違うからだと分かっている。でも、それでもコハクの言葉と笑顔にーー何か許された気がしたんだ。
もしかしたらコハクは神が俺の元に遣わしてくれた天使『救い』なのかもしれない!
「良い子だな」
「あぁ、それでなあの小さな口で一生懸命に食事を頬張る姿がまた可愛いんだ!」
「ーーん?」
「もともと少しぷにっとした柔らかそうな可愛い頰が更に膨らんでまるで小動物のようで突きたい衝動を抑えるのが大変だった」
ジークの表情が固まり、目をそらされたが気にせずに語る。
「クシェルと呼んで欲しいと頼んだら一度だけ「クシェル?」なんて小首を傾げながらあどけなく呼んでくれたんだ。可愛かったなぁ…。その後は敬称を付けられてしまったが、困ったように上目遣いで俺の名前を呼ぶコハクもたまらなく可愛かった!つい抱きしめたくなってしまった」
あそこで冷静に衝動を押さえ込んだ自分を褒めてやりたい。きっと今の俺はコハクに見せられない顔をしているはずだ。
息が上がり、表情筋が緩みきっているのが自分でも分かる。
「好きなものを語るコハクも可愛かったなぁ」
「よ、良かったな」
好きなものを語る時コハクは目を輝かせて楽しそうに話す。本当に好きなのが伝わってきて、聞いているこっちまで楽しい気持ちになれる。
コハクは自然の風景が好きで、趣味は食べることだと言っていた。こちらの料理も好きになってくれたら、この世界を好きになってくれるかもしれない!
そしたら帰りたいなんて思わなくなるかもーー
「夕食を共にする約束をしたんだ。迎えに行くからコハクの部屋へ案内してくれ!」
ジークに案内されて着いた部屋は最上階の角部屋。
「おい、ジークここはっ!「彼女の安全のためだ」
言われて気づく。
昼間の使用人のコハクへの態度を見るに、人族というだけでコハクの命を狙う奴がいてもおかしくない。早くにそれに思い至ったジークは客室ではなくこの部屋にコハクを案内したのだ。
この部屋は部屋の主人に危害を与えようとする者は入れないような結界が張ってある。
ちなみに俺の部屋は俺の許可した者しか入れないようになっている。
つまり、この部屋は俺の部屋の次に安全な部屋ということだ。
もしコハクをなんの結界も張ってない客室に案内していたら今頃どうなっていたかーー
「良い判断だジーク!よくやった」
扉をノックするとコハク付きの使用人が扉を開き俺たちを中へと案内する。
「お、遅くなってすみません」
と、そこには森の妖精がいた。
淡い緑のワンピースに身を包んだコハクはまるで自然を愛する森の妖精のようで……可憐だ。
しかし、急遽子供服を用意したらしくサイズが合っていない。ワンピースの長さは良さそうだが、少し胸のあたりがキツそうに見える。
明日にでも仕立て屋を呼ばないとな。
「いや、こちらが時間前に来ただけだ気にするな」
慌てて頭を下げようとするコハクを止めるジーク。それを見て使用人は眉をひそめるが、俺はあえてコハクの手を引く。
「一緒に食堂に行こうと思ってな、迎えに来た」
これで馬鹿でも分かるだろう。俺たちはコハクを気に入っている。これ以上コハクを蔑視し続けるなら
ーーどうなるか、分かるだろ?
視線をやっただけで震えだす使用人を置いて部屋を出る。
そいつの怯える姿がコハクの目に入らないようにさり気なくコハクの後ろに回るジーク。
さり気ないフォロー、流石だ。
コハクが俺の瞳と似ていると言う空について語り、こんな俺のことを優しい魔王なんて言ってくれたあの場面を何度も頭の中で繰り返し再生し、幸せに浸っているとジークの声がして、我にかえる。
外を見ると空は赤く染まり、いつのまにか夕方の空になっていた。
随分長い時間トリップしていたようだ。
机の上を見ると書類の束は昼間の状態から半分も減っていない。が、まぁそんな事よりも!
「聞いてくれジーク!なんとコハクが俺のこの目を一番好きな空に似て、神秘的でとても綺麗だと言ってくれたんだ。母さんの赤は暖かく親父の青は涼やかな色だと、その空を見ると優しい気持ちになれて、俺みたいなんだって!俺のことを優しい魔王って!」
この喜びを早く語りたかった。
他でもない、俺の数少ない理解者で心から信頼出来る親友のジークに。
俺が語りながら、声を震わせて涙目になっているのを見てジークも「良かったな」って目を潤ませて、まるで自分の事のように一緒に喜んでくれた。
魔王は代々金髪青眼であり、身体が大きいほど強き偉大な魔王と言われる。
しかし、俺の髪は金茶色で、目も青に赤が混じり、身体も平均くらいしかない。
ーー醜く、燻んだ出来損ないの望まれない存在。
コハクが俺の瞳を綺麗だと言ってくれたのは、コハクが異世界人で、こちらの世界とは常識や価値観が違うからだと分かっている。でも、それでもコハクの言葉と笑顔にーー何か許された気がしたんだ。
もしかしたらコハクは神が俺の元に遣わしてくれた天使『救い』なのかもしれない!
「良い子だな」
「あぁ、それでなあの小さな口で一生懸命に食事を頬張る姿がまた可愛いんだ!」
「ーーん?」
「もともと少しぷにっとした柔らかそうな可愛い頰が更に膨らんでまるで小動物のようで突きたい衝動を抑えるのが大変だった」
ジークの表情が固まり、目をそらされたが気にせずに語る。
「クシェルと呼んで欲しいと頼んだら一度だけ「クシェル?」なんて小首を傾げながらあどけなく呼んでくれたんだ。可愛かったなぁ…。その後は敬称を付けられてしまったが、困ったように上目遣いで俺の名前を呼ぶコハクもたまらなく可愛かった!つい抱きしめたくなってしまった」
あそこで冷静に衝動を押さえ込んだ自分を褒めてやりたい。きっと今の俺はコハクに見せられない顔をしているはずだ。
息が上がり、表情筋が緩みきっているのが自分でも分かる。
「好きなものを語るコハクも可愛かったなぁ」
「よ、良かったな」
好きなものを語る時コハクは目を輝かせて楽しそうに話す。本当に好きなのが伝わってきて、聞いているこっちまで楽しい気持ちになれる。
コハクは自然の風景が好きで、趣味は食べることだと言っていた。こちらの料理も好きになってくれたら、この世界を好きになってくれるかもしれない!
そしたら帰りたいなんて思わなくなるかもーー
「夕食を共にする約束をしたんだ。迎えに行くからコハクの部屋へ案内してくれ!」
ジークに案内されて着いた部屋は最上階の角部屋。
「おい、ジークここはっ!「彼女の安全のためだ」
言われて気づく。
昼間の使用人のコハクへの態度を見るに、人族というだけでコハクの命を狙う奴がいてもおかしくない。早くにそれに思い至ったジークは客室ではなくこの部屋にコハクを案内したのだ。
この部屋は部屋の主人に危害を与えようとする者は入れないような結界が張ってある。
ちなみに俺の部屋は俺の許可した者しか入れないようになっている。
つまり、この部屋は俺の部屋の次に安全な部屋ということだ。
もしコハクをなんの結界も張ってない客室に案内していたら今頃どうなっていたかーー
「良い判断だジーク!よくやった」
扉をノックするとコハク付きの使用人が扉を開き俺たちを中へと案内する。
「お、遅くなってすみません」
と、そこには森の妖精がいた。
淡い緑のワンピースに身を包んだコハクはまるで自然を愛する森の妖精のようで……可憐だ。
しかし、急遽子供服を用意したらしくサイズが合っていない。ワンピースの長さは良さそうだが、少し胸のあたりがキツそうに見える。
明日にでも仕立て屋を呼ばないとな。
「いや、こちらが時間前に来ただけだ気にするな」
慌てて頭を下げようとするコハクを止めるジーク。それを見て使用人は眉をひそめるが、俺はあえてコハクの手を引く。
「一緒に食堂に行こうと思ってな、迎えに来た」
これで馬鹿でも分かるだろう。俺たちはコハクを気に入っている。これ以上コハクを蔑視し続けるなら
ーーどうなるか、分かるだろ?
視線をやっただけで震えだす使用人を置いて部屋を出る。
そいつの怯える姿がコハクの目に入らないようにさり気なくコハクの後ろに回るジーク。
さり気ないフォロー、流石だ。
10
お気に入りに追加
190
あなたにおすすめの小説
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
【R18完結】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる