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苦手
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母親は遠方から嫁いできたのだが、そのせいなのか友人と呼べる存在は皆無であった。
そんな母親にも友達のような存在が出来たようである。
お店の定休日である月曜日、外食に出かけるか父が自宅で料理を振舞うのが習慣であったわけだが、ある日の月曜日、母親は私を車に乗せて出かけることになった。
見たこともない狭い住宅地を走らせると立派なつくりの家に着いた。
中にお邪魔するとニコニコした大人の女性と私より年下の姉妹二人が出迎えてくれた。
母親は今まで見たことがないように弾んだ声でおしゃべりをはじめ、私は姉妹の面倒をみることになった。
おやつも出てきてジュースまであり、相手の母親はとても気の利く感じの人だ。
そのうちこの家の主が返ってきた。
主もニコニコした感じの良い印象である。
大人の会話を聞いていると、どうやらお店のお客さんらしい。
それでも母に話し相手ができて、少しは気分転換になるだろうと子供ながらに思ったものだ。
何度かお邪魔していくうちに、この家の住人とすっかり打ち解けてきた。
姉妹は私がくるのを楽しみにしているようで、お邪魔すると姉妹で私の取り合いを始める。
私は年下の子供と接する機会がなかったのですごく可愛がった。
「私が将来お兄ちゃんのお嫁さんになる、お姉ちゃんずるい私がお嫁さんになるの」
このようなよくあるじゃれ合いもあり私の心が優しさと温かさに包まれていくのがはっきりと感じ取れた。
ある日の事、この家の主が「パチンコに行こう」と私を連れだした。
今ではパチンコ業界は衰退産業だが昭和当時は右肩上がりであった。
令和の時代では大人の娯楽は多岐に渡るが、昭和の時代はパチンコや映画、スナックに行ってカラオケなんかが娯楽だったのだろう。
私の祖父も暇さえあればパチンコ屋に通っていた。
私ははじめてパチンコ屋さんに入ったのだが実にうるさい。
私は騒音に敏感だったのだが、それ以上に煌びやかな世界がそこにはあった。
見たこともないパチンコ台。
主はそんなことお構いなしにパチンコに集中している。
私もお金をもらい、主の指示に従ってパチンコ台のハンドルを指で固定しながらパチンコ玉が通過していくのを眺めていた。
不思議な感覚だったのだが、パチンコ玉を見ているだけ、ただそれだけでも暇には感じなかった。むしろ心地良ささえ感じていたように記憶している。
少し時間がたったころ、そんな私に「ビギナーズラック」が訪れる。
なにやらパチンコ台から「ピロリン、ピロピロリーン」のような大きな音が鳴った瞬間ピカピカと台が光り始めた。
周りの大人たちが一斉に私を注目し始めたのが怖くなり、主に声をかけると、主は自分のパチンコ台は放っておいて私のもとに駆け寄ってきた。
激しく興奮している。
あれよあれよのうちに、パチンコ玉が溢れてきた。
パチンコ玉が出てこなくなると満面の笑みを主は私に注いでいる。
主は好きな景品を私に選ばせてくれた。
本当にうれしかった。
そんなささやかな幸福はその後終焉を迎えた。
母親はある日を境にこの家には行かなくなったのだ。
私はこの家族ととても仲良くしていたので、その幸福をはぎ取られた時、私の心には
ぽっかりと穴が開いた。
母親は人付き合いが苦手である。
どうしても相手の事を考えた行動がとれない人だったし現在でもそうである。
まさに三つ子の魂百までとは母親のことだろう。
相手の話を聞いて会話を返すという単純作業が出来ない。
常に自分の興味のあることを一方的話してしまう。
そして相手が話していることを否定したり、自分の方が知っていると言わんばかりに相手に勝とうとしてしまう。
これでは人と人との関係など長続きはしない。
母親は苦手なことは多いのだが、特に対人関係は苦手である。
そして令和の現在、悲劇的な老後を迎えている。
そんな母親にも友達のような存在が出来たようである。
お店の定休日である月曜日、外食に出かけるか父が自宅で料理を振舞うのが習慣であったわけだが、ある日の月曜日、母親は私を車に乗せて出かけることになった。
見たこともない狭い住宅地を走らせると立派なつくりの家に着いた。
中にお邪魔するとニコニコした大人の女性と私より年下の姉妹二人が出迎えてくれた。
母親は今まで見たことがないように弾んだ声でおしゃべりをはじめ、私は姉妹の面倒をみることになった。
おやつも出てきてジュースまであり、相手の母親はとても気の利く感じの人だ。
そのうちこの家の主が返ってきた。
主もニコニコした感じの良い印象である。
大人の会話を聞いていると、どうやらお店のお客さんらしい。
それでも母に話し相手ができて、少しは気分転換になるだろうと子供ながらに思ったものだ。
何度かお邪魔していくうちに、この家の住人とすっかり打ち解けてきた。
姉妹は私がくるのを楽しみにしているようで、お邪魔すると姉妹で私の取り合いを始める。
私は年下の子供と接する機会がなかったのですごく可愛がった。
「私が将来お兄ちゃんのお嫁さんになる、お姉ちゃんずるい私がお嫁さんになるの」
このようなよくあるじゃれ合いもあり私の心が優しさと温かさに包まれていくのがはっきりと感じ取れた。
ある日の事、この家の主が「パチンコに行こう」と私を連れだした。
今ではパチンコ業界は衰退産業だが昭和当時は右肩上がりであった。
令和の時代では大人の娯楽は多岐に渡るが、昭和の時代はパチンコや映画、スナックに行ってカラオケなんかが娯楽だったのだろう。
私の祖父も暇さえあればパチンコ屋に通っていた。
私ははじめてパチンコ屋さんに入ったのだが実にうるさい。
私は騒音に敏感だったのだが、それ以上に煌びやかな世界がそこにはあった。
見たこともないパチンコ台。
主はそんなことお構いなしにパチンコに集中している。
私もお金をもらい、主の指示に従ってパチンコ台のハンドルを指で固定しながらパチンコ玉が通過していくのを眺めていた。
不思議な感覚だったのだが、パチンコ玉を見ているだけ、ただそれだけでも暇には感じなかった。むしろ心地良ささえ感じていたように記憶している。
少し時間がたったころ、そんな私に「ビギナーズラック」が訪れる。
なにやらパチンコ台から「ピロリン、ピロピロリーン」のような大きな音が鳴った瞬間ピカピカと台が光り始めた。
周りの大人たちが一斉に私を注目し始めたのが怖くなり、主に声をかけると、主は自分のパチンコ台は放っておいて私のもとに駆け寄ってきた。
激しく興奮している。
あれよあれよのうちに、パチンコ玉が溢れてきた。
パチンコ玉が出てこなくなると満面の笑みを主は私に注いでいる。
主は好きな景品を私に選ばせてくれた。
本当にうれしかった。
そんなささやかな幸福はその後終焉を迎えた。
母親はある日を境にこの家には行かなくなったのだ。
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ぽっかりと穴が開いた。
母親は人付き合いが苦手である。
どうしても相手の事を考えた行動がとれない人だったし現在でもそうである。
まさに三つ子の魂百までとは母親のことだろう。
相手の話を聞いて会話を返すという単純作業が出来ない。
常に自分の興味のあることを一方的話してしまう。
そして相手が話していることを否定したり、自分の方が知っていると言わんばかりに相手に勝とうとしてしまう。
これでは人と人との関係など長続きはしない。
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