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残酷
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小学3年生の頃だろうか、私にも学校で友達が出来た。
その子の両親が私の両親と働き方が似ていたことが共通点だった。
私の両親は小料理屋で共働き、友達の両親は雀荘で共働きだった。
学校では休み時間になるとよく遊んだものだ。
夏休みに入っていつものように祖父母の家に長期滞在が始まった。
夏になると町内では自宅のある駅前通りをちょっとした山車を子供たちが引いて歩くイベントが催されていた。
山車が終われば近所の広場で盆踊りやイベントが開催され屋台まで出店される。
私はイベント嫌いではあったのだが、祖父母の喜ぶ姿が嬉しくて参加をしていた。
今年のイベントまでは一週間の時間がある。
その間は親せきや近所のお兄さんたちと遊んでいたのだがお祭りイベント当日、残酷なことが起こる。
親戚の話を聞くと一緒に遊んでいる近所のお兄さんが、他のグループとの取り合いになっているらしい。
そのグループと勝負をして勝った方がそのお兄さんをグループに入れるという内容だった。
子供というのは残酷である。
一人の人間の所有権を本人以外で決めるのだから。
勝負は自転車競走だ。
駅通りを自転車リレー方式で3人で往復するというシンプルなものになった。
私はまだ小学3年生、みんな1~3歳程離れている。
この差は大きく私の自転車にはウルトラマンのお面が付いている子供用の自転車だ。
私は勝負を断ったのだが人がいないので強制参加させられた。
もちろん近所のお兄さんの為に頑張ろうと本気で思った。
私は第二走者に決まった。
第一走目は親戚で勢いよく漕ぎ出した。
こちらからは折り返し地点は見えないから固唾をのんで見守った。
するとさほどの差の開きがないままデッドヒートして戻ってきた。
私にバトンが渡され勢いよく発進。
下を向き必死に立ちこぎをしていたその瞬間、並走していた子に接触した。
私は誰よりも体格は小さく自転車も小さい。
接触した瞬間、まるでダンプに軽自動車が衝突したぐらいの衝撃を受けただろう。
私は吹っ飛ばされ、道路にたたきつけられた。
みんな駆け寄ってきて「大丈夫!大丈夫?」と声をかける。
私は気まずくなるのが申し訳なく思い「大丈夫だよ」と答えた。
勝負は取りやめになったので、それはそれでよかった。
自転車のウルトラマンの顔はめちゃくちゃに壊れ、祖母に申し訳ないことをしたと悲しくなったのだが、それ以上にまずいことになった。
私の左腕が曲がらないのである。
まっすぐになったまま肘が曲がらない。
今日は祭りだ。
祖母を喜ばせる事を、普段お世話をしてくれている事へのお礼の日なのだ。
夕方になり最悪なことに痛さのあまり血の気が引いてきて起き上がることすらできず、仏間に横になってしまった。
山車の準備が整ったのであろう、祖母が「お祭りだよ」と私に話しかけてくる。
私は事の顛末を話すと祖母が心配すると思い、具合が悪いということにした。
しかし、誰が見ても顔色が真っ青だったようで執拗にどうしたのかを聞いてくる。
腕が曲がらないことを話すともはやお祭りどころではなくなった。
祖父が私を車に乗せ、私の自宅方面に車を走らせた。
見慣れた大橋を超えると整骨院に連れてこられた。
診断すると骨がずれ、少し骨折していた。
先生は祖父母に「体を押さえていてください」と言い、私の体を押さえつけた。
「いきますよ」という先生の声と同時に私の腕の関節を戻した。
「ボキッ」という乾いた音とともに少しは腕が曲がるようになったが、直角までも曲がらない。
祖母を喜ばせる日に心配させるという残酷で長かった一日が終わった。
そこからしばらく通院することになる。
この通院という事が私をどんどん悪の道に進ませていくことになる。
その子の両親が私の両親と働き方が似ていたことが共通点だった。
私の両親は小料理屋で共働き、友達の両親は雀荘で共働きだった。
学校では休み時間になるとよく遊んだものだ。
夏休みに入っていつものように祖父母の家に長期滞在が始まった。
夏になると町内では自宅のある駅前通りをちょっとした山車を子供たちが引いて歩くイベントが催されていた。
山車が終われば近所の広場で盆踊りやイベントが開催され屋台まで出店される。
私はイベント嫌いではあったのだが、祖父母の喜ぶ姿が嬉しくて参加をしていた。
今年のイベントまでは一週間の時間がある。
その間は親せきや近所のお兄さんたちと遊んでいたのだがお祭りイベント当日、残酷なことが起こる。
親戚の話を聞くと一緒に遊んでいる近所のお兄さんが、他のグループとの取り合いになっているらしい。
そのグループと勝負をして勝った方がそのお兄さんをグループに入れるという内容だった。
子供というのは残酷である。
一人の人間の所有権を本人以外で決めるのだから。
勝負は自転車競走だ。
駅通りを自転車リレー方式で3人で往復するというシンプルなものになった。
私はまだ小学3年生、みんな1~3歳程離れている。
この差は大きく私の自転車にはウルトラマンのお面が付いている子供用の自転車だ。
私は勝負を断ったのだが人がいないので強制参加させられた。
もちろん近所のお兄さんの為に頑張ろうと本気で思った。
私は第二走者に決まった。
第一走目は親戚で勢いよく漕ぎ出した。
こちらからは折り返し地点は見えないから固唾をのんで見守った。
するとさほどの差の開きがないままデッドヒートして戻ってきた。
私にバトンが渡され勢いよく発進。
下を向き必死に立ちこぎをしていたその瞬間、並走していた子に接触した。
私は誰よりも体格は小さく自転車も小さい。
接触した瞬間、まるでダンプに軽自動車が衝突したぐらいの衝撃を受けただろう。
私は吹っ飛ばされ、道路にたたきつけられた。
みんな駆け寄ってきて「大丈夫!大丈夫?」と声をかける。
私は気まずくなるのが申し訳なく思い「大丈夫だよ」と答えた。
勝負は取りやめになったので、それはそれでよかった。
自転車のウルトラマンの顔はめちゃくちゃに壊れ、祖母に申し訳ないことをしたと悲しくなったのだが、それ以上にまずいことになった。
私の左腕が曲がらないのである。
まっすぐになったまま肘が曲がらない。
今日は祭りだ。
祖母を喜ばせる事を、普段お世話をしてくれている事へのお礼の日なのだ。
夕方になり最悪なことに痛さのあまり血の気が引いてきて起き上がることすらできず、仏間に横になってしまった。
山車の準備が整ったのであろう、祖母が「お祭りだよ」と私に話しかけてくる。
私は事の顛末を話すと祖母が心配すると思い、具合が悪いということにした。
しかし、誰が見ても顔色が真っ青だったようで執拗にどうしたのかを聞いてくる。
腕が曲がらないことを話すともはやお祭りどころではなくなった。
祖父が私を車に乗せ、私の自宅方面に車を走らせた。
見慣れた大橋を超えると整骨院に連れてこられた。
診断すると骨がずれ、少し骨折していた。
先生は祖父母に「体を押さえていてください」と言い、私の体を押さえつけた。
「いきますよ」という先生の声と同時に私の腕の関節を戻した。
「ボキッ」という乾いた音とともに少しは腕が曲がるようになったが、直角までも曲がらない。
祖母を喜ばせる日に心配させるという残酷で長かった一日が終わった。
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