12☆ワールド征服旅行記

Tro

文字の大きさ
上 下
90 / 91
#13 征服完了編

#13 ”ツアーレ” 12人の陰謀 (1/2)

しおりを挟む
真っ白な空間で、いきなり手を引かれた。見ると、ツアーレの制服を着た綺麗なお姉さんだ。

「お帰りなさいませ。お客様」
「ここは?」
「ここは、別荘の中ですよ」

「えっ、別荘って王女様の結婚式をしたところですか? それにしては何も無いような」

「ここは、別荘の中の、特別な部屋になります」
「もう、旅行の時間が終わったってことですよね」
「はい、そうです。次のゲートまでご案内いたします」
「ゲートって何ですか?」
「ゲートとは、各世界を繋ぐ扉のようなものです」
「ここは、仮想現実じゃないんですか?」

「お客様も、お気づきかと思いますが、ここは仮想の世界ではなく、実在する世界なんですよ」

「じゃあ」

「はい。誰かに言われませんでしたか? この世界での死亡は現実での死亡になると」

「うーん。聞いたような」

「”ツアーレ”は、疑似体験では満足せず、実在する異世界への旅行を実現してしまいました。しかし、それでは世間が騒ぎますので、便宜上、仮想現実として宣伝しているんですよ」

「どうりで、痛いし疲れるしって、本当に死ぬところでしたよ」
「良かったですね、運が良くて」
「そういう問題ですか」
「でも、大丈夫でしたよね」
「それは、そうですけど」
「私達が、しっかりとサポートしていましたから」
「私達って? …」
「もう、お忘れですか?」
「えっ、まさか! ココナ?」
「はい、ココナです。ユウキ」
「服装が全然違うから、気がつかなかった…というより別人みたいですね」
「女性には、いろんな仮面があるんですよ」
「よく見れば、確かにココナだ」
「では、そろそろ次のゲートにご案内いたします」
「そのゲートを通れば元の世界に戻るんですか?」
「いいえ。通ってきた世界を逆に辿るようにゲートを通過して現実に戻ります」
「面倒ですね。一気に戻れればいいのに」
「……さあ、行きましょう」

突然現れたドアを開け、俺は次のゲートへと向かう。

「また来てくださいね」
「破産しちゃいますよ」

「いい夢を、ありがとう」
「……」



「お帰りなさいませ。お客様」
「ヨーコさん?」
「そうかも、ですね」
「余り、話をしませんでしたね」
「出会ってから、お別れまでの時間が、短かったですからね」

「そう言えば俺は、溺れたんですか?」
「はい、びっくりしました。ちょっと予定外でした」
「予定外?」
「さあ、次に行きましょう。こちらにどうぞ」

俺は、そこにあるドアを開け、次のゲートへと向かう。

「また来てくださいね」
「死んじゃいますよ」



「お帰りなさいませ。お客様」
「隊長!」
「リリスで~す」
「異星人の侵略って、本当だったんですか?」
「ニャンのことかな~。分かんな~い」
「それ、ちょっと無理がありますよ」
「このぼけなすがー」

「ところで、ウララはどうなりました?」
「ううう」

俺の携帯が鳴った。いつの間にか俺のポケットに戻っている。
知らない番号からだ。

「出てみれば~」

「もしもし」
「ユウキ?」
「その声は、ウララ!」
「びっくりした? 今ね…」突然、切れた。死に癖は治らなかったのか?

「さあ、次に行きましょう。こちらにどうぞ」

俺は、そこにあるドアを開け、次のゲートへと向かう。

「また来てくださいね」
「無理ですよ~」



「お帰りなさいませ。お客様」
「クミコ?」
「覚えておったのか。責任は取って貰うぞ」
「分かったよ。責任を取ろう」
「ご冗談ですよ。お客様」
「本気だったのに」

俺の携帯が鳴った。ウララからだ。

「もしもし」
「ユウキ?」
「生きてた?」
「携帯、落としちゃって。生きてるよ」
「じゃあ、運命は変わったんだね」
「もちろんよ。それでね…」突然、切れた。

「さあ、次に行きましょう。こちらにどうぞ」

俺はドアを開け、次のゲートへと向かう。

「また来てくださいね」
「責任は取れませんよ」



「お帰りなさいませ。お客様」
「お姉さんですね」
「隠せないものだね、私の天才が」
「一目でわかりますよ」
「おお、それは良かった」
「本当、過労死するところでしたよ」
「あれも、これも、あのイカれ野郎のせいだ」

「そうですね。行き先ざきでケンジに出会うなんて、いい迷惑でしたよ」
「ほお、君は気付いていないのかね」
「はあ、何がです?」
「あれが、偶然ではなく、必然だったのを」
「はあ?」

「今の君になら、話しても許してくれるだろう。君がイカれ野郎と、ことごとく出会ったのは、全て私の筋書き通りだったと」

「筋書き? 何故何故?」
「始めに謝罪しておこう。すまぬことをした」
「いいですよ。もう済んだことですから」
「なら、次に進みたまえ。こちらにどうぞ」
「ええ!」

「冗談だ。真実を語ろう。しかし、ここを出たら忘れてくれて構わないぞ」
「続けてください」
「あのイカれ野郎ことケンジは、客としては最低なのだ」
「それは、分かります」
「しかし、私達はもう、我慢の限界を超えていたのだ。分かるかね」
「何となく」
「だが、どうであれ、客は客だ。私達がどうのこうのする訳にはいかぬ」
「左様で」

「そこでだ。私達の代わりに、あのイカれ野郎を成敗してくれる者を探しておったのじゃ」

「ほお」

「そこで君だ。初めての客で、他の客に面識がない。若いから、そうそう死なないだろう、ということで君が選ばれた」

「死んだらどうすんですか?」
「それは心配無い……した。君は私達の手厚い保護下にあったのだ。思い出してくれたまえ。君がどんなに危険な目にあっても、大丈夫だっただろう?」

「確かに。でもイリアにオールで叩かれた時は、死んだと思いましたよ」

「あれはハプニングだ。旅にハプニングは付きものだ。スパイスのようなものと考えてくれればいい」

「スパイスですか?」
「安心したまえ。君を引き上げ、ココナのいる世界に無事届けたであろう」
「海岸で伸びてましてけど」

「さあ、次に行きましょう。こちらにどうぞ」

俺はドアを開け、次のゲートへと向かう。

「また来てくださいね」
「次は確実に死にますよ」
「その時は、私の名を呼びたまえ。天才の……」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

玲眠の真珠姫

紺坂紫乃
ファンタジー
空に神龍族、地上に龍人族、海に龍神族が暮らす『龍』の世界――三龍大戦から約五百年、大戦で最前線に立った海底竜宮の龍王姫・セツカは魂を真珠に封じて眠りについていた。彼女を目覚めさせる為、義弟にして恋人であった若き隻眼の将軍ロン・ツーエンは、セツカの伯父であり、義父でもある龍王の命によって空と地上へと旅立つ――この純愛の先に待ち受けるものとは? ロンの悲願は成就なるか。中華風幻獣冒険大河ファンタジー、開幕!!

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

♡ちゅっぽんCITY♡

x頭金x
大衆娯楽
“旅人”が〈広い世界を見る〉ために訪れた【ちゅっぽんCITY】、そこにはちょっと不思議でエッチな人達が住んでいて、交流する度に”旅人”が下半身と共にちゅっぽんする物語です。 (今までに書いてきたショートショート を混ぜ合わせたりかき混ぜたり出したり入れたりくちゅくちゅしたりして作ってイキます)

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

アラフォー料理人が始める異世界スローライフ

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
ある日突然、異世界転移してしまった料理人のタツマ。 わけもわからないまま、異世界で生活を送り……次第に自分のやりたいこと、したかったことを思い出す。 それは料理を通して皆を笑顔にすること、自分がしてもらったように貧しい子達にお腹いっぱいになって貰うことだった。 男は異世界にて、フェンリルや仲間たちと共に穏やかなに過ごしていく。 いずれ、最強の料理人と呼ばれるその日まで。

【ダンジョン・ニート・ダンジョン】 ~ダンジョン攻略でお金が稼げるようになったニートは有り余る時間でダンジョンに潜る~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、松井秀喜は現在ニート。 もちろんあの有名なアスリートではない。ただの同姓同名の二十六歳の男だ。 ある日の晩、愛犬ポチとアニメ鑑賞をしていたら庭の物置が爆発しその代わりにダンジョンが出来ていた! これはニートが有り余る時間でダンジョンに潜ったり潜らなかったりするお話。

処理中です...