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#9 未来 リリス編
#9.1 お前達の愛で、世界を救ってこい! (2/3)
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俺達は更衣室のような部屋を出て、作業服の人に連れられ、長い廊下を歩く。
「おい、貴様。貴様のせいで、こんな目になったのだ。責任を取れ!」
「責任?」
俺に坊主にでもなれとでも言うのか?
作業服の人が、あるドアの前に立つと、ノックもせずにドアを開けた。その瞬間、中から聞こえていた ざわめきが静まりかえった。
『起立!』
中から男の図太い声が聞こえる。
一緒に中に入れと、作業服の人が合図をしてきた。部屋の中は講堂のような感じで、同じような作業服の男達で埋まっている。その圧倒的な雰囲気に押された俺は、足が止まってしまった。作業服の人はそのまま、右手を上げながら歩き、中央付近で手を降ろした。
『着席!』
男達が一斉に座った。男、男、男。男ばっかりだ。
「諸君! これまでの訓練を達成した諸君らにとって、初の出陣である」
作業服の人は、偉い人だったようだ。それとも、途中で入れ替わったのか。
「その前に、新たな仲間を紹介する。ユウキとクミコだ。訓練が間に合わなかったため、暫くは私と行動を共にする」
男達の熱い眼差しが一気に注がれ、俺の背筋が伸びてしまった。しかし、その視線は間違いなく俺ではなくクミコだろう。その位は分かるぞ。
「新人がいるので、再度同じ話をする。この世界は今、異星人の侵略を受け、人類存亡の危機にある。それに立ち向かった勇敢な”地球防衛軍”は、残念ながら、もう存在しない。そこで、各地で優雅に遊びほうけていた旅行者を招集、訓練し、”地球救世軍”を組織した。それが諸君らだ!」
「イエス・マム」x n。
男達が一斉に叫んだ。旅行者を捕まえて訓練しただと? 俺は優雅に遊んでなんかいなかったぞ。
「諸君ら48名が、この地球に残された、最後の砦、最後の希望だ!」
「イエス・マム」x 46
「それでは、我々が倒すべき敵、異星人の画像を再度確認する」
照明が暗くなり、大きなスクリーンに異星人が写しだれる。
「おう!」x 47
驚愕する男達。お前達は何度も見ているだろう。しかし、俺も驚いた。
「これが、侵略してきた異星人だ! 頭に叩き込め!」
「イエス・マム」x 46
「グ、ハハハハハハハハハハハハハハハハハ、ハー」x 1
俺は思わず、スクリーンを見て笑ってしまった。その時一斉に、94の白い目が俺に向けられた。
しかし、これが笑わずにいられるだろうか。スクリーン一杯に映る、猫の写真だ。
そんな間違いを、何事も無かったかのようにスルーするとは。こんな事態も訓練されているのだろう。
「今から、世界各国の首脳による共同宣言が発表される。スクリーンをよく見ておけ。これが侵略された者達の末路だ」
スクリーンには、各国首脳の映像が複数に分割されて映し出された。さて、世界はどうなってしまったのだろう。
『我が国と、その友好国の共通認識として、ここに発表します。
我々は、彼等の提案が人類の未来にとって、重要かつ有効であることを認め、受け入れることを全会一致で可決しました。よって、未だ彼等を敵視し、敵対行動をとる、通称”地球救世軍”を非難し、即時活動の停止を要求するものである。
今後、”地球救世軍”の活動は、彼等のみならず、人類への敵対行動と見なす。”地球救世軍”に関わる者全てに通達する。彼等と和解せよ! 繰り返す。彼等と和解せよ!』
ここで、スクリーンの映像は切られてしまった。世界各国首脳のおじちゃん、おばちゃん。みんな猫を抱いていたよ。マジですか?
「見たか! 尊厳を無くし家畜化された人類の末路を!」
「イエス・マム」x 47
隣りのクミコも応えている。感化されやすいタイプのようだ。
「諸君ら、第95救済部隊だけが最後の望みだ。諸君らの前には希望は無い。絶望が広がっているだけだ。しかし、諸君らの後には、人類の尊厳と希望が芽生えていくだろう。さあ、野郎ども。お前達の愛で、世界を救ってこい!」
「イエス・マム」x 48
満場一致のようだ。
◇
俺達は、作業服の人と黒塗りのバンに乗り込み、戦場に向かった。
「私は~部隊長のリリスで~す。君達は~訓練を受けていないので~、暫く~私と~行動を共に~しま~す。私の~指示は~命令だから~絶対~服従すること~。もし~命令に~従わなかったり~、背いた~場合は~、その場で~銃殺で~す。そこんとこ宜しくね~」
「貴様!」
「俺はユウキだ」
「貴様。お勤めに しくじったら責任を取って貰うぞ」
「その前に死んじゃうかも」
「貴様は死なん! 責任を取らずに死ねると思っているのか! 私がお前を守る!」
「そこ~仲良くね~」
◇
「おい、貴様。貴様のせいで、こんな目になったのだ。責任を取れ!」
「責任?」
俺に坊主にでもなれとでも言うのか?
作業服の人が、あるドアの前に立つと、ノックもせずにドアを開けた。その瞬間、中から聞こえていた ざわめきが静まりかえった。
『起立!』
中から男の図太い声が聞こえる。
一緒に中に入れと、作業服の人が合図をしてきた。部屋の中は講堂のような感じで、同じような作業服の男達で埋まっている。その圧倒的な雰囲気に押された俺は、足が止まってしまった。作業服の人はそのまま、右手を上げながら歩き、中央付近で手を降ろした。
『着席!』
男達が一斉に座った。男、男、男。男ばっかりだ。
「諸君! これまでの訓練を達成した諸君らにとって、初の出陣である」
作業服の人は、偉い人だったようだ。それとも、途中で入れ替わったのか。
「その前に、新たな仲間を紹介する。ユウキとクミコだ。訓練が間に合わなかったため、暫くは私と行動を共にする」
男達の熱い眼差しが一気に注がれ、俺の背筋が伸びてしまった。しかし、その視線は間違いなく俺ではなくクミコだろう。その位は分かるぞ。
「新人がいるので、再度同じ話をする。この世界は今、異星人の侵略を受け、人類存亡の危機にある。それに立ち向かった勇敢な”地球防衛軍”は、残念ながら、もう存在しない。そこで、各地で優雅に遊びほうけていた旅行者を招集、訓練し、”地球救世軍”を組織した。それが諸君らだ!」
「イエス・マム」x n。
男達が一斉に叫んだ。旅行者を捕まえて訓練しただと? 俺は優雅に遊んでなんかいなかったぞ。
「諸君ら48名が、この地球に残された、最後の砦、最後の希望だ!」
「イエス・マム」x 46
「それでは、我々が倒すべき敵、異星人の画像を再度確認する」
照明が暗くなり、大きなスクリーンに異星人が写しだれる。
「おう!」x 47
驚愕する男達。お前達は何度も見ているだろう。しかし、俺も驚いた。
「これが、侵略してきた異星人だ! 頭に叩き込め!」
「イエス・マム」x 46
「グ、ハハハハハハハハハハハハハハハハハ、ハー」x 1
俺は思わず、スクリーンを見て笑ってしまった。その時一斉に、94の白い目が俺に向けられた。
しかし、これが笑わずにいられるだろうか。スクリーン一杯に映る、猫の写真だ。
そんな間違いを、何事も無かったかのようにスルーするとは。こんな事態も訓練されているのだろう。
「今から、世界各国の首脳による共同宣言が発表される。スクリーンをよく見ておけ。これが侵略された者達の末路だ」
スクリーンには、各国首脳の映像が複数に分割されて映し出された。さて、世界はどうなってしまったのだろう。
『我が国と、その友好国の共通認識として、ここに発表します。
我々は、彼等の提案が人類の未来にとって、重要かつ有効であることを認め、受け入れることを全会一致で可決しました。よって、未だ彼等を敵視し、敵対行動をとる、通称”地球救世軍”を非難し、即時活動の停止を要求するものである。
今後、”地球救世軍”の活動は、彼等のみならず、人類への敵対行動と見なす。”地球救世軍”に関わる者全てに通達する。彼等と和解せよ! 繰り返す。彼等と和解せよ!』
ここで、スクリーンの映像は切られてしまった。世界各国首脳のおじちゃん、おばちゃん。みんな猫を抱いていたよ。マジですか?
「見たか! 尊厳を無くし家畜化された人類の末路を!」
「イエス・マム」x 47
隣りのクミコも応えている。感化されやすいタイプのようだ。
「諸君ら、第95救済部隊だけが最後の望みだ。諸君らの前には希望は無い。絶望が広がっているだけだ。しかし、諸君らの後には、人類の尊厳と希望が芽生えていくだろう。さあ、野郎ども。お前達の愛で、世界を救ってこい!」
「イエス・マム」x 48
満場一致のようだ。
◇
俺達は、作業服の人と黒塗りのバンに乗り込み、戦場に向かった。
「私は~部隊長のリリスで~す。君達は~訓練を受けていないので~、暫く~私と~行動を共に~しま~す。私の~指示は~命令だから~絶対~服従すること~。もし~命令に~従わなかったり~、背いた~場合は~、その場で~銃殺で~す。そこんとこ宜しくね~」
「貴様!」
「俺はユウキだ」
「貴様。お勤めに しくじったら責任を取って貰うぞ」
「その前に死んじゃうかも」
「貴様は死なん! 責任を取らずに死ねると思っているのか! 私がお前を守る!」
「そこ~仲良くね~」
◇
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