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#9 未来 リリス編
#9.1 お前達の愛で、世界を救ってこい! (1/3)
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ここは何処だ? 俺は誰?
目の前に作業服を着た人が見える。手にはモップのような棒を持っている。足には長靴のような長靴。肩には、その作業服に似合わない星形の飾りが、ノーセンスで散りばめられている。
その顔はスマイル。何処か、あどけない、というか無邪気。被っている帽子は、ただの帽子。そこからはみ出る、長い髪。ロング、ロング、パーン。そして、俺はユウキ。
更衣室のような部屋。時々、点滅する天井の明かり。並ぶロッカー。空いてる扉には鍵が刺さっている。整理整頓、一撃必殺、諸行無常、室内飲食禁止。そんな張り紙が、とれ掛かっていて、気になる。
「ようこそ! 旅行者の皆さん」
「……」
「びっくりしたかな~、驚いちゃった?」
「貴様は誰だ! ここは何処だ?」
「あっれ~、変なのが混ざっちゃったね~。まあ、いっか。
君はユウキだよね」
「そうです」
「そっちの巫女さんは、誰かな~」
「私は、悪霊退散組の者だ! 拐かしたな! 容赦はせぬぞ」
「はい、は~い。分かったよ」
作業服の人が、モップのようなモップで悪霊退散組の者を軽く、突いた。
「君はクミコだね」
「何故、私の名を!」
「私はね、召喚士なの。そうね~、クミコとは正反対の存在? ってとこかな」
「召喚士? 聞き慣れぬ お役目。その方は私に何の用だ」
「クミコはオマケなんだけどね~。説明するの面倒だから、これ読んどいて」
俺達は一枚の紙を作業服のような人から受け取った。
―― 地球救世軍にようこそ 【はじまり】
地球より遙か彼方の星。その輝きは神秘に満ち、青く青く光っていた。しかしその星より、我が母なる地球を脅かす存在が襲来。その星、ケンジ星からの異星人は、我々人類に対し侵略行為を開始。人類は、直ちに”地球防衛軍”を結成し、これらに立ち向かった。初戦では拮抗した戦況だったものの、その抵抗も虚しく敗れ去った。
現在、彼ら異星人により、人類の99.999999%が侵略され、人類家畜化計画によって、人類の存亡は壊滅状態に陥った。
しかし、そこに一滴の希望が残されていた。一滴は集結し、希望を糧に、愛という名の下に人類を救う組織が結成された。
それが我が”地球救世軍”である。パチパチ。
これは人類を異星人から取り戻し、人類の尊厳を奪還するための戦いである。ガツーン。
―― 地球救世軍にようこそ 【おわり】
「読んでくれた~。事態は深刻なんだ。分かったら付いて来てくれるかな」
「あの~」
「なにかな~」
「俺、こいつに用があるんですけど」
「”こいつ”とは何だ! お前に”こいつ”呼ばわりされる筋合いはない!」
「そこ~、静かにしてね~ユウキ。君の事は知ってるよ~。調べたからね。イオナの事だよね」
「何でそれを! ストーカーですか?」
「そうだよ~。君を召喚したってことは、全てお見通しさ~。で、そこのクミコに拉致られたんだよね~」
「私は、そんな事は知らんぞ」
「ユウキ~。君にはご褒美をあげるね。私の言うことを聞いてくれたら、イオナを取り戻してあげるよ。これでも召喚士だからね~、簡単なのよ~。どうする~、ユウキ」
「やらせて頂きます! こんな奴、当てに出来ませんから」
「”こんな奴”とは、言わせておけば、何という下劣な奴だ」
「あ~、そこ。クミコはどうするのかな~」
「どうするもこうするも無いだろう。私を元の場所に戻して貰おう」
「それは、ダメ~。ここに来た以上、ここがクミコのいるところだよ~」
「人を勝手に連れ出しておいて、その言い草。我慢ならん」
「じゃあ、どうするのかな~。どこに行くの~」
「それは……」
「ほらね~。行くとこ無いじゃん。ここはね~、クミコがいた世界から、ずっとずっと先の未来。あんたを知っている人なんて、だ~れも居ないんだよ~。じゃあ、私にすがるしか、ないんじゃな~い?」
「卑怯なり!」
「まあまあ。クミコにもチャンスを上げるよ。この世界で生き延びたら、元の世界に戻してあげても、いいかも~」
「クク。仕方……あるまい」
「いいね、いいね~。人の弱みにつけ込むって」
「約束だぞ!」
「まあ、頑張ってね~。それじゃあ、そこの空いてるロッカーに戦闘服が入っているから、ちゃちゃっと着替えてくれる~」
空いているロッカーを開くと、確かに戦闘服のような戦闘服が入っていた。
「あの~、着替えるので、その~」
「さっさと着替えてね~」
「あの~、そこで見てるんですか?」
「そうだよ~。あれ~、もしかして恥ずかしいとか~。さっきも言ったけど、全てお見通しって言ったよね」
「俺はいいとしても、あれが~」
「見るな! 馬鹿者!」
◇
目の前に作業服を着た人が見える。手にはモップのような棒を持っている。足には長靴のような長靴。肩には、その作業服に似合わない星形の飾りが、ノーセンスで散りばめられている。
その顔はスマイル。何処か、あどけない、というか無邪気。被っている帽子は、ただの帽子。そこからはみ出る、長い髪。ロング、ロング、パーン。そして、俺はユウキ。
更衣室のような部屋。時々、点滅する天井の明かり。並ぶロッカー。空いてる扉には鍵が刺さっている。整理整頓、一撃必殺、諸行無常、室内飲食禁止。そんな張り紙が、とれ掛かっていて、気になる。
「ようこそ! 旅行者の皆さん」
「……」
「びっくりしたかな~、驚いちゃった?」
「貴様は誰だ! ここは何処だ?」
「あっれ~、変なのが混ざっちゃったね~。まあ、いっか。
君はユウキだよね」
「そうです」
「そっちの巫女さんは、誰かな~」
「私は、悪霊退散組の者だ! 拐かしたな! 容赦はせぬぞ」
「はい、は~い。分かったよ」
作業服の人が、モップのようなモップで悪霊退散組の者を軽く、突いた。
「君はクミコだね」
「何故、私の名を!」
「私はね、召喚士なの。そうね~、クミコとは正反対の存在? ってとこかな」
「召喚士? 聞き慣れぬ お役目。その方は私に何の用だ」
「クミコはオマケなんだけどね~。説明するの面倒だから、これ読んどいて」
俺達は一枚の紙を作業服のような人から受け取った。
―― 地球救世軍にようこそ 【はじまり】
地球より遙か彼方の星。その輝きは神秘に満ち、青く青く光っていた。しかしその星より、我が母なる地球を脅かす存在が襲来。その星、ケンジ星からの異星人は、我々人類に対し侵略行為を開始。人類は、直ちに”地球防衛軍”を結成し、これらに立ち向かった。初戦では拮抗した戦況だったものの、その抵抗も虚しく敗れ去った。
現在、彼ら異星人により、人類の99.999999%が侵略され、人類家畜化計画によって、人類の存亡は壊滅状態に陥った。
しかし、そこに一滴の希望が残されていた。一滴は集結し、希望を糧に、愛という名の下に人類を救う組織が結成された。
それが我が”地球救世軍”である。パチパチ。
これは人類を異星人から取り戻し、人類の尊厳を奪還するための戦いである。ガツーン。
―― 地球救世軍にようこそ 【おわり】
「読んでくれた~。事態は深刻なんだ。分かったら付いて来てくれるかな」
「あの~」
「なにかな~」
「俺、こいつに用があるんですけど」
「”こいつ”とは何だ! お前に”こいつ”呼ばわりされる筋合いはない!」
「そこ~、静かにしてね~ユウキ。君の事は知ってるよ~。調べたからね。イオナの事だよね」
「何でそれを! ストーカーですか?」
「そうだよ~。君を召喚したってことは、全てお見通しさ~。で、そこのクミコに拉致られたんだよね~」
「私は、そんな事は知らんぞ」
「ユウキ~。君にはご褒美をあげるね。私の言うことを聞いてくれたら、イオナを取り戻してあげるよ。これでも召喚士だからね~、簡単なのよ~。どうする~、ユウキ」
「やらせて頂きます! こんな奴、当てに出来ませんから」
「”こんな奴”とは、言わせておけば、何という下劣な奴だ」
「あ~、そこ。クミコはどうするのかな~」
「どうするもこうするも無いだろう。私を元の場所に戻して貰おう」
「それは、ダメ~。ここに来た以上、ここがクミコのいるところだよ~」
「人を勝手に連れ出しておいて、その言い草。我慢ならん」
「じゃあ、どうするのかな~。どこに行くの~」
「それは……」
「ほらね~。行くとこ無いじゃん。ここはね~、クミコがいた世界から、ずっとずっと先の未来。あんたを知っている人なんて、だ~れも居ないんだよ~。じゃあ、私にすがるしか、ないんじゃな~い?」
「卑怯なり!」
「まあまあ。クミコにもチャンスを上げるよ。この世界で生き延びたら、元の世界に戻してあげても、いいかも~」
「クク。仕方……あるまい」
「いいね、いいね~。人の弱みにつけ込むって」
「約束だぞ!」
「まあ、頑張ってね~。それじゃあ、そこの空いてるロッカーに戦闘服が入っているから、ちゃちゃっと着替えてくれる~」
空いているロッカーを開くと、確かに戦闘服のような戦闘服が入っていた。
「あの~、着替えるので、その~」
「さっさと着替えてね~」
「あの~、そこで見てるんですか?」
「そうだよ~。あれ~、もしかして恥ずかしいとか~。さっきも言ったけど、全てお見通しって言ったよね」
「俺はいいとしても、あれが~」
「見るな! 馬鹿者!」
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