66 / 91
#7 現代 フーコ編
#7.4 常勝無敗 (2/2)
しおりを挟む
第94開発室。24時間、眠らない部屋。屍がゾンビと化す、誰かが夢見た小部屋だ。
午前9時を過ぎても、部長は出社してこない。未来は変わった。それに合わせるように、現在が変わった。これは、勝利宣言しても、いいのではないだろうか。
見知らぬ男が入ってきた。こいつが、あれなのか?
「なんだ? ここは。暗いじゃないか。カーテンを開けろ」
どうやら、こいつが、あれらしい。
ゾンビ達がカーテンを開けると、部屋はパッと別世界に変わった。新世界にようこそ。
しかし、屍の山を見た途端、男はカーテンを閉めるように命令した。新世界はすぐに、闇の世界へと戻ってしまった。
「あ~、ケンジ部長は栄転された。代わりに俺が、お前達の主人となった。さっさと働け、手を休めるな、話すな、考えるな、命令に従え、以上」
薄暗い部屋で俺は、罵詈雑言を浴びながら、キーボートを叩き続ける。そこに、俺の新世界や勝利は無い。得体の知れない十字架を背負い、無の炎を燃やし続けた。
気がつくと、隣のお姉さんがいない。クンカクンカ。残り香も感知できない。それは希望なのか、絶望なのか。判断が付かない。ついでに、突然の停電。周囲が阿鼻叫喚で埋め尽くされる。
「停電くらいで騒ぐな! その分、死んでも取り戻せ!」
新しく来た部長が吠える。
「おい! 1031番はどこに消えた!? あいつはクビだ!
いや、例の部署に放り込んでやる!」
◇◇
薄暗い部屋で俺は、罵詈雑言を浴びながら、キーボートを叩き続ける。そこに、俺の光や闇は無い。得体の知れない十字架を背負い、愛の炎を燃やし続けた。
至福の時間が到来。さあ、餌の時間だ。
「おい! 474番。30秒で戻ってこい」
そのうち、俺の愛を教えてやる。
俺は部屋を出て、従業員食堂を目指す。エレベーターに乗り込み、51階で土石流に押し流される。券売機の行列に並ぶこと42分。カツ丼をチョイス。もう飽きた。
ボッチのお姉さんに接近。俺は向かいの席に座った。周囲から若干、騒めきが聞こえたような。
コーヒーカップを持つお姉さんの手が震えている。俺はカツ丼を頬張りながら、その食感を味合う。
「私は、絶望した!」
「俺も、カツ丼飽きました」
「15年後を確認した」
「それで停電したんですね」
「ニューフェースのブタ野郎が社長になっていた」
「未来は、変わったんですね」
「この会社は、誰がトップでも、潰れることには変わりは無かった。無念」
「それが、この国の宿命ですから」
「もう、こんな世界は嫌だ。そう思わないか? 君」
「カツ丼も飽きたんで、俺もそろそろ行こうかと思いまして」
「どこへ行こうというのかね?」
「それは。言っても信じて貰えないですから」
「異世界だな。君は異なる世界から来たのだろう?」
「信じるんですか? 俺の言っていることを」
「当然だ。私は最初から、君を信じている」
「お姉さん。貴方という人は」
「フフフ。私は……」
『すいません。相席、いいですか?』
無邪気な若者が無敗を信じ、勝利確定で挑んできた。
「どうぞ、空いてますから」
無邪気な若者が、椅子に座ることに勝利した。周囲から若干、羨望とため息が聞こえたような。
「さあ、君。行こうではないか。善は急げだ」
俺達は無邪気な若者を残し、席を去った。
◇
俺達は、購買部のゲートに踏み込んだ。
「いらっしゃいませ」
「旅行者なんですが、ここでいいですか?」
「はい、ようこそ”ツアーレ”へ」
「移動をしたいんですけど」
「はい、ご希望の行き先は御座いますか?」
「君。ここにしよう」
「こちらですね」
「お姉さん。そんなところで、いいんですか」
「もちろんだ。この世界でなければ、どこでもいい」
「そのわりには、指定するんですね」
「お客様? パスポートを拝見しても宜しいですか?」
「パスポート?」
「はい、確認できました。ユウキ様ですね。こちらの方は?」
「お姉さん。俺と一緒に行くには、俺の所有物として登録しないといけないんですけど。どうします? やっぱり、嫌ですよね」
「構わない。一時的な処置に異存はない。登録してくれたまえ」
「じゃあ、”お持ち帰り券”で、この方をアイテム登録してください」
「はい、承りました。それでは、フーコ様一式で宜しいでしょうか?」
「一式?」
「はい、一式になります」
「それでお願いします」
「はい。それでは、重量超過となりますので、その分、追加で費用が掛かりますが、宜しいでしょうか?」
重量オーバー? 確かに お姉さんは俺より背が高いけど、スラッとしているし、もしかして、着ている立派なスーツが、とんでもなく重いとか?
「お姉さん。そんなに重い……」
「君。その先を言うつもりかね。そうなのかね」
「追加で、お願いします」
「はい、承りました。それでは、良い旅を引き続き、お楽しみください」
こうして俺と、お姉さん一式は、24時間働ける世界を、退社した。
午前9時を過ぎても、部長は出社してこない。未来は変わった。それに合わせるように、現在が変わった。これは、勝利宣言しても、いいのではないだろうか。
見知らぬ男が入ってきた。こいつが、あれなのか?
「なんだ? ここは。暗いじゃないか。カーテンを開けろ」
どうやら、こいつが、あれらしい。
ゾンビ達がカーテンを開けると、部屋はパッと別世界に変わった。新世界にようこそ。
しかし、屍の山を見た途端、男はカーテンを閉めるように命令した。新世界はすぐに、闇の世界へと戻ってしまった。
「あ~、ケンジ部長は栄転された。代わりに俺が、お前達の主人となった。さっさと働け、手を休めるな、話すな、考えるな、命令に従え、以上」
薄暗い部屋で俺は、罵詈雑言を浴びながら、キーボートを叩き続ける。そこに、俺の新世界や勝利は無い。得体の知れない十字架を背負い、無の炎を燃やし続けた。
気がつくと、隣のお姉さんがいない。クンカクンカ。残り香も感知できない。それは希望なのか、絶望なのか。判断が付かない。ついでに、突然の停電。周囲が阿鼻叫喚で埋め尽くされる。
「停電くらいで騒ぐな! その分、死んでも取り戻せ!」
新しく来た部長が吠える。
「おい! 1031番はどこに消えた!? あいつはクビだ!
いや、例の部署に放り込んでやる!」
◇◇
薄暗い部屋で俺は、罵詈雑言を浴びながら、キーボートを叩き続ける。そこに、俺の光や闇は無い。得体の知れない十字架を背負い、愛の炎を燃やし続けた。
至福の時間が到来。さあ、餌の時間だ。
「おい! 474番。30秒で戻ってこい」
そのうち、俺の愛を教えてやる。
俺は部屋を出て、従業員食堂を目指す。エレベーターに乗り込み、51階で土石流に押し流される。券売機の行列に並ぶこと42分。カツ丼をチョイス。もう飽きた。
ボッチのお姉さんに接近。俺は向かいの席に座った。周囲から若干、騒めきが聞こえたような。
コーヒーカップを持つお姉さんの手が震えている。俺はカツ丼を頬張りながら、その食感を味合う。
「私は、絶望した!」
「俺も、カツ丼飽きました」
「15年後を確認した」
「それで停電したんですね」
「ニューフェースのブタ野郎が社長になっていた」
「未来は、変わったんですね」
「この会社は、誰がトップでも、潰れることには変わりは無かった。無念」
「それが、この国の宿命ですから」
「もう、こんな世界は嫌だ。そう思わないか? 君」
「カツ丼も飽きたんで、俺もそろそろ行こうかと思いまして」
「どこへ行こうというのかね?」
「それは。言っても信じて貰えないですから」
「異世界だな。君は異なる世界から来たのだろう?」
「信じるんですか? 俺の言っていることを」
「当然だ。私は最初から、君を信じている」
「お姉さん。貴方という人は」
「フフフ。私は……」
『すいません。相席、いいですか?』
無邪気な若者が無敗を信じ、勝利確定で挑んできた。
「どうぞ、空いてますから」
無邪気な若者が、椅子に座ることに勝利した。周囲から若干、羨望とため息が聞こえたような。
「さあ、君。行こうではないか。善は急げだ」
俺達は無邪気な若者を残し、席を去った。
◇
俺達は、購買部のゲートに踏み込んだ。
「いらっしゃいませ」
「旅行者なんですが、ここでいいですか?」
「はい、ようこそ”ツアーレ”へ」
「移動をしたいんですけど」
「はい、ご希望の行き先は御座いますか?」
「君。ここにしよう」
「こちらですね」
「お姉さん。そんなところで、いいんですか」
「もちろんだ。この世界でなければ、どこでもいい」
「そのわりには、指定するんですね」
「お客様? パスポートを拝見しても宜しいですか?」
「パスポート?」
「はい、確認できました。ユウキ様ですね。こちらの方は?」
「お姉さん。俺と一緒に行くには、俺の所有物として登録しないといけないんですけど。どうします? やっぱり、嫌ですよね」
「構わない。一時的な処置に異存はない。登録してくれたまえ」
「じゃあ、”お持ち帰り券”で、この方をアイテム登録してください」
「はい、承りました。それでは、フーコ様一式で宜しいでしょうか?」
「一式?」
「はい、一式になります」
「それでお願いします」
「はい。それでは、重量超過となりますので、その分、追加で費用が掛かりますが、宜しいでしょうか?」
重量オーバー? 確かに お姉さんは俺より背が高いけど、スラッとしているし、もしかして、着ている立派なスーツが、とんでもなく重いとか?
「お姉さん。そんなに重い……」
「君。その先を言うつもりかね。そうなのかね」
「追加で、お願いします」
「はい、承りました。それでは、良い旅を引き続き、お楽しみください」
こうして俺と、お姉さん一式は、24時間働ける世界を、退社した。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
金眼のサクセサー[完結]
秋雨薫
ファンタジー
魔物の森に住む不死の青年とお城脱走が趣味のお転婆王女さまの出会いから始まる物語。
遥か昔、マカニシア大陸を混沌に陥れた魔獣リィスクレウムはとある英雄によって討伐された。
――しかし、五百年後。
魔物の森で発見された人間の赤ん坊の右目は魔獣と同じ色だった――
最悪の魔獣リィスクレウムの右目を持ち、不死の力を持ってしまい、村人から忌み子と呼ばれながら生きる青年リィと、好奇心旺盛のお転婆王女アメルシアことアメリーの出会いから、マカニシア大陸を大きく揺るがす事態が起きるーー!!
リィは何故500年前に討伐されたはずのリィスクレウムの瞳を持っているのか。
マカニシア大陸に潜む500年前の秘密が明らかにーー
※流血や残酷なシーンがあります※
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ガーディアンと鎧の天使
イケのモ
ファンタジー
山本智は学校の帰り道ふと気がつくと寝巻き姿で異世界にいた。
その世界で特別な力を持つ鎧を操りその力を行使することができるガーディアンと呼ばれる存在となっていた。
ガーディアンとは鎧の天使とも呼ばれる特別な力を持つ鎧を与えられた主人公の物語です。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ブレイブエイト〜異世界八犬伝伝説〜
蒼月丸
ファンタジー
異世界ハルヴァス。そこは平和なファンタジー世界だったが、新たな魔王であるタマズサが出現した事で大混乱に陥ってしまう。
魔王討伐に赴いた勇者一行も、タマズサによって壊滅してしまい、行方不明一名、死者二名、捕虜二名という結果に。このままだとハルヴァスが滅びるのも時間の問題だ。
それから数日後、地球にある後楽園ホールではプロレス大会が開かれていたが、ここにも魔王軍が攻め込んできて多くの客が殺されてしまう事態が起きた。
当然大会は中止。客の生き残りである東零夜は魔王軍に怒りを顕にし、憧れのレスラーである藍原倫子、彼女のパートナーの有原日和と共に、魔王軍がいるハルヴァスへと向かう事を決断したのだった。
八犬士達の意志を継ぐ選ばれし八人が、魔王タマズサとの戦いに挑む!
地球とハルヴァス、二つの世界を行き来するファンタジー作品、開幕!
Nolaノベル、PageMeku、ネオページ、なろうにも連載しています!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる