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#6 中世 イズナ編
#6.3 闘技場。そこは戦う場所 (1/2)
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魔法使い見習い・選抜試験会場。
何故か会場は闘技場になっていて、おまけに観客までいる。そこに集まったのは、自分こそは魔法使いだと言わんばかりの、奇妙な格好をした連中ばかり。普段着の俺とは、既に差がついている。これが、コスプレ大会だと言ったら、信じる人が多そうだ。
試験はバトルロイヤルでやるらしい。要は互いに潰しあって、生き残れば合格だ。幸い、こっちにはイズナがいる。イズナと組めば、向かうところ敵なしだ。
「師匠! お互い、正々堂々、勝って称号を手に入れましょう」
ん? 正々堂々? 組む気は無いのか?
『試験! 始め!』
試験が始まって、しまった。
イズナは倒す相手を探しに行って、しまった。
俺は一人になって、しまった。
派手な格好の奴が、俺の前に来て。しまった。
しまった! 俺の大切な手札が。ちゃんと打ち合わせをしておけば、良かった。
「どうしよう」
「(大丈夫です。練習の通りやれば、上手くいきますよ)」
イオナが励ましてくれた。でも、今日のイオナは姿が見えない。それになんとなく、”そわそわ”しているような気がした。
派手な格好の奴が、これまた派手なアクションで攻撃を仕掛けてくる。自信を取り戻した俺は、自慢の魔法で迎え撃つ。派手な格好の奴は、これまた派手なアクションで倒れる。実に簡単な勝利だった。
もしかしてこれは、俺の持って生まれた、隠された真の能力が解放されたのか? フフフ。今更かよ。どうやら俺は、窮地に追い込まれないと、能力が発揮できないタイプのようだ。そして、覚醒した俺は強いぞ。さあ、どっからでも掛かってこい。俺の前に敵なし、俺の後に屍あり。
無双状態の俺は勝ち進み、余裕も出てきた。生き残った人数を数えると、既に30人を切っている。おかしい。これなら試験が終了してもいいはずだ。それなのに、一向に終わる気配が無い。
「師匠! やはり、勝ち進んでいましたか」
「イズナもやるじゃないか」
「はい。これも師匠のおかげです」
「ところで、何で試験が終わらないんだ?」
「え? 最後の一人になるまで終わらないですよ」
「一人まで?」
「ええ。勝者は一人って、決まってるじゃないですか」
「じゃあ、試験は?」
「もちろん、僕達は合格ですよ。合格。やりましたね」
「じゃあ、もう、やらなくていいんじゃないのかな?」
「ええ? ここまできて、優勝を狙わない手は無いですよ」
「そうなの?」
「そうです。では、師匠! 優勝を目指して頑張りましょう」
あの、詠唱が下手くそなイズナが、
あの、怖がりなイズナが、
あの、すぐに挫けてしまうイズナが、
眩しい。
◇◇
俺の嫌な予感が的中してしまった。
最後まで生き残ったのは、俺とイズナの二人だけ。とうとう、師匠対師匠同士の対決となった。今まで騒がしかった観衆も、息を呑むように静まりかえる。最後まで立っているのは、どっちだ?
「師匠! さすがです。やっぱり僕の師匠です」
「イズナ」
「でも、いくら師匠でも手加減はしませんよ」
「ああ、分かってるよ」
「では、行きます!」
「(ユウキ。どうするんですか?)」
「どうするって、女の子に手を上げるなんて、出来ないよ」
「(なら、負けを認めるのですね)」
「いや、それだとイズナが納得しないだろう。適当な所で、膝を付くよ」
「(彼女は本気ですよ。今までは相当、手を抜いていたように見えました)」
「イズナに、そんな細かいことが出来るかな?」
「(彼女なりに、少し分かって来ているんですよ)」
「なら、この勝負も手を抜いてくれるんじゃないかな。相手は俺だよ?」
「(だからこそです。彼女は本気です。全力できますよ)」
「それは……まずいかも」
「(彼女の本気。ユウキも知っていますよね。飛ばされるだけでは済みそうにありませんよ」
「それは……やばいかも。どうしよう?」
「師匠! 覚悟!」
イズナが、いつもより冷静に詠唱を……してない。これは、本格手にやばい、かも。
「師匠に教わった最終奥義。これで師匠に恩返し出来ます!」
「ちょっと、まっ……」
「しろいねこはおもしろい!」
「……」
「しろいねこはおもしろい!」
「……」
「しろいねこはおもしろい!」
「……」
何も起こらない。起こるはずが無い。
イズナが膝を付き倒れる。
「師匠! 僕の負けです! まだ僕は、僕は、師匠に遠く及びませんでした!」
『勝者、ユウキ!』
観衆からブーイングの嵐が、巻き起こった。
◇◇
何故か会場は闘技場になっていて、おまけに観客までいる。そこに集まったのは、自分こそは魔法使いだと言わんばかりの、奇妙な格好をした連中ばかり。普段着の俺とは、既に差がついている。これが、コスプレ大会だと言ったら、信じる人が多そうだ。
試験はバトルロイヤルでやるらしい。要は互いに潰しあって、生き残れば合格だ。幸い、こっちにはイズナがいる。イズナと組めば、向かうところ敵なしだ。
「師匠! お互い、正々堂々、勝って称号を手に入れましょう」
ん? 正々堂々? 組む気は無いのか?
『試験! 始め!』
試験が始まって、しまった。
イズナは倒す相手を探しに行って、しまった。
俺は一人になって、しまった。
派手な格好の奴が、俺の前に来て。しまった。
しまった! 俺の大切な手札が。ちゃんと打ち合わせをしておけば、良かった。
「どうしよう」
「(大丈夫です。練習の通りやれば、上手くいきますよ)」
イオナが励ましてくれた。でも、今日のイオナは姿が見えない。それになんとなく、”そわそわ”しているような気がした。
派手な格好の奴が、これまた派手なアクションで攻撃を仕掛けてくる。自信を取り戻した俺は、自慢の魔法で迎え撃つ。派手な格好の奴は、これまた派手なアクションで倒れる。実に簡単な勝利だった。
もしかしてこれは、俺の持って生まれた、隠された真の能力が解放されたのか? フフフ。今更かよ。どうやら俺は、窮地に追い込まれないと、能力が発揮できないタイプのようだ。そして、覚醒した俺は強いぞ。さあ、どっからでも掛かってこい。俺の前に敵なし、俺の後に屍あり。
無双状態の俺は勝ち進み、余裕も出てきた。生き残った人数を数えると、既に30人を切っている。おかしい。これなら試験が終了してもいいはずだ。それなのに、一向に終わる気配が無い。
「師匠! やはり、勝ち進んでいましたか」
「イズナもやるじゃないか」
「はい。これも師匠のおかげです」
「ところで、何で試験が終わらないんだ?」
「え? 最後の一人になるまで終わらないですよ」
「一人まで?」
「ええ。勝者は一人って、決まってるじゃないですか」
「じゃあ、試験は?」
「もちろん、僕達は合格ですよ。合格。やりましたね」
「じゃあ、もう、やらなくていいんじゃないのかな?」
「ええ? ここまできて、優勝を狙わない手は無いですよ」
「そうなの?」
「そうです。では、師匠! 優勝を目指して頑張りましょう」
あの、詠唱が下手くそなイズナが、
あの、怖がりなイズナが、
あの、すぐに挫けてしまうイズナが、
眩しい。
◇◇
俺の嫌な予感が的中してしまった。
最後まで生き残ったのは、俺とイズナの二人だけ。とうとう、師匠対師匠同士の対決となった。今まで騒がしかった観衆も、息を呑むように静まりかえる。最後まで立っているのは、どっちだ?
「師匠! さすがです。やっぱり僕の師匠です」
「イズナ」
「でも、いくら師匠でも手加減はしませんよ」
「ああ、分かってるよ」
「では、行きます!」
「(ユウキ。どうするんですか?)」
「どうするって、女の子に手を上げるなんて、出来ないよ」
「(なら、負けを認めるのですね)」
「いや、それだとイズナが納得しないだろう。適当な所で、膝を付くよ」
「(彼女は本気ですよ。今までは相当、手を抜いていたように見えました)」
「イズナに、そんな細かいことが出来るかな?」
「(彼女なりに、少し分かって来ているんですよ)」
「なら、この勝負も手を抜いてくれるんじゃないかな。相手は俺だよ?」
「(だからこそです。彼女は本気です。全力できますよ)」
「それは……まずいかも」
「(彼女の本気。ユウキも知っていますよね。飛ばされるだけでは済みそうにありませんよ」
「それは……やばいかも。どうしよう?」
「師匠! 覚悟!」
イズナが、いつもより冷静に詠唱を……してない。これは、本格手にやばい、かも。
「師匠に教わった最終奥義。これで師匠に恩返し出来ます!」
「ちょっと、まっ……」
「しろいねこはおもしろい!」
「……」
「しろいねこはおもしろい!」
「……」
「しろいねこはおもしろい!」
「……」
何も起こらない。起こるはずが無い。
イズナが膝を付き倒れる。
「師匠! 僕の負けです! まだ僕は、僕は、師匠に遠く及びませんでした!」
『勝者、ユウキ!』
観衆からブーイングの嵐が、巻き起こった。
◇◇
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