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#5 古代 セイコ編
#5.2 エルフの里 (2/2)
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”おもてなし”を受けるセリスと違って、蚊帳の外の俺とイリア。
そのイリアが、俺の裾を引っ張る。
「ねえ。ユウキ」
「使い込んだのか? イリア」
「そうじゃなくて、その……」
「白状する気になったのか?」
「バカ! トイレ……行きたい」
”その辺で”と言いそうになった。言ったが最後、きっとグーを見舞われただろう。せっかくなので、例のコンビニに行ってみることにした。あそこなら、時代は違っても、サービスは同じだろう。イリアを連れて、早速、コンビニに GO!
◇◇
「シャッセー」
毎度おなじみの洗礼を受けた。
「すみません。トイレ……」
「奥っす」
すっ飛んで行くイリア。その間に確認しよう。雑誌コーナーには、最新の雑誌が置かれている。ふむふむ。一体ここで誰が読むんだろう。客は俺達以外、誰もいない。これは想定内だ。
レジの横には”おでん”まで売っている。
「ここは、旅行社もやっているんですか?」
店員が帽子を被っている。いいんだろうか? だがしかし、それよりも帽子から長い髪が見えるじゃないか!
「そっすね」
言葉遣いはあれだが。
せっかく来たのだから、何か食べる物でも買っていくか、と思ったが、肝心のお金が無い。持っているのはパスポートぐらいだ。まさかと思って、聞いてみた。
「あのー、これ、ここで使えますか?」
「大丈夫っす」
すっきり顔のイリアが戻ってきたので、適当に買い込み、コンビニ袋を下げて帰る。この場所には不釣合いでも、便利なものは、時代を超えて便利であった。
◇◇
セリスの従者として扱われた俺とイリアは、納屋のような部屋が用意された。そこにベットのような贅沢品は無く、ただ、床に茣蓙が敷いてあるだけだ。まあ、これならベットから落とされる心配も無い。冷たい床に横になり、待遇の違いに悲しくなった。
◇◇
エルフの里の朝は早い。というか、よく眠れなかった。部屋を出て朝日を浴びると、池のほとりに、怪しい影を発見。寝ぼけた目をこすってみると、セイコがブツブツと何かを言っているようだ。池に何かクレームでも付けているのだろうか。
「おーい、セイコ。朝っぱらから何をブツブツと」
「何だ、ユウキか」
答える気は無いようだ。
「おっはようー、ユウキ」
セリスが起きてきた。昨夜はさぞかし楽しかったんだろうな。うらめしや。
「お早よう御座います、お姉様」
「セイコも起きてたのか」
「はい。実は、空の様子がおかしいので、見ていたんです」
セリスとは、会話するのね。
「そうなのか? いつもと変わらないけどな」
セリスは火山が噴火しても、いつものことだろうな。
「胸騒ぎがするんです。それで、さっきからドラゴンを呼んでいるんですが、誰も来てくれないんです」
「それじゃあ、俺が呼んでやろうか?」
ドランゴマスターの俺が言うんだ。間違いない。
「ケケケ。どうやって呼ぶつもり? ユウキが。へえー」
この見下した態度。これは、お灸が必要です。俺は、ドラゴンホイホイの笛を口に咥え、目一杯吹き込んだ。吹いた。吹いた。吹いた。吹いた。吹いた。息が切れた。
お腹を抱えて笑うセイコ。
だが、その憎たらしい笑顔もそこまでだ。
そこまでだ……
そこまでだ……
そこまでだ……
までだ……
でだ……
だ……
……
キター。
明るかった空が、急に暗くなり、俺の呼び掛けに応えた多数のドラゴンが、宙を舞う。俺の心も舞っている。
「ユウキ……」
セイコの、その顔が、見たかった。
ドラゴンが一体、俺達の目の前に舞い降りた。セイコは、”たまたま・偶然”だという顔を俺に向ける。どこまでも、可愛くない奴。
「お姉様。待っててくださいね。ちょっと様子を見てきますから」
「オレも行く」
「お姉様。急にはドラゴンに乗れないのです。心が通じ合ってないと」
「なら、ポチでいいよ」
「ポチ丸様は、ここには来られていないようです」
「オレも呼んでみるか」
俺は、セリスにドラゴンホイホイを貸してやろうとすると、”いらん”と手を振り、口笛を吹き始めた。それでくれば、俺も苦労はしない。それでくれば……
来てしまった。ポチの裏切り者め。
「じゃあ、ユウキ。ちょっくら行ってくるから。あっ、ユウキも一緒に行くか?」
俺は手を振って断った。落ちたら死ぬ自信がある。
舞い上がるドラゴン達。ここはまさしく、ドラゴンの里だ。
そのイリアが、俺の裾を引っ張る。
「ねえ。ユウキ」
「使い込んだのか? イリア」
「そうじゃなくて、その……」
「白状する気になったのか?」
「バカ! トイレ……行きたい」
”その辺で”と言いそうになった。言ったが最後、きっとグーを見舞われただろう。せっかくなので、例のコンビニに行ってみることにした。あそこなら、時代は違っても、サービスは同じだろう。イリアを連れて、早速、コンビニに GO!
◇◇
「シャッセー」
毎度おなじみの洗礼を受けた。
「すみません。トイレ……」
「奥っす」
すっ飛んで行くイリア。その間に確認しよう。雑誌コーナーには、最新の雑誌が置かれている。ふむふむ。一体ここで誰が読むんだろう。客は俺達以外、誰もいない。これは想定内だ。
レジの横には”おでん”まで売っている。
「ここは、旅行社もやっているんですか?」
店員が帽子を被っている。いいんだろうか? だがしかし、それよりも帽子から長い髪が見えるじゃないか!
「そっすね」
言葉遣いはあれだが。
せっかく来たのだから、何か食べる物でも買っていくか、と思ったが、肝心のお金が無い。持っているのはパスポートぐらいだ。まさかと思って、聞いてみた。
「あのー、これ、ここで使えますか?」
「大丈夫っす」
すっきり顔のイリアが戻ってきたので、適当に買い込み、コンビニ袋を下げて帰る。この場所には不釣合いでも、便利なものは、時代を超えて便利であった。
◇◇
セリスの従者として扱われた俺とイリアは、納屋のような部屋が用意された。そこにベットのような贅沢品は無く、ただ、床に茣蓙が敷いてあるだけだ。まあ、これならベットから落とされる心配も無い。冷たい床に横になり、待遇の違いに悲しくなった。
◇◇
エルフの里の朝は早い。というか、よく眠れなかった。部屋を出て朝日を浴びると、池のほとりに、怪しい影を発見。寝ぼけた目をこすってみると、セイコがブツブツと何かを言っているようだ。池に何かクレームでも付けているのだろうか。
「おーい、セイコ。朝っぱらから何をブツブツと」
「何だ、ユウキか」
答える気は無いようだ。
「おっはようー、ユウキ」
セリスが起きてきた。昨夜はさぞかし楽しかったんだろうな。うらめしや。
「お早よう御座います、お姉様」
「セイコも起きてたのか」
「はい。実は、空の様子がおかしいので、見ていたんです」
セリスとは、会話するのね。
「そうなのか? いつもと変わらないけどな」
セリスは火山が噴火しても、いつものことだろうな。
「胸騒ぎがするんです。それで、さっきからドラゴンを呼んでいるんですが、誰も来てくれないんです」
「それじゃあ、俺が呼んでやろうか?」
ドランゴマスターの俺が言うんだ。間違いない。
「ケケケ。どうやって呼ぶつもり? ユウキが。へえー」
この見下した態度。これは、お灸が必要です。俺は、ドラゴンホイホイの笛を口に咥え、目一杯吹き込んだ。吹いた。吹いた。吹いた。吹いた。吹いた。息が切れた。
お腹を抱えて笑うセイコ。
だが、その憎たらしい笑顔もそこまでだ。
そこまでだ……
そこまでだ……
そこまでだ……
までだ……
でだ……
だ……
……
キター。
明るかった空が、急に暗くなり、俺の呼び掛けに応えた多数のドラゴンが、宙を舞う。俺の心も舞っている。
「ユウキ……」
セイコの、その顔が、見たかった。
ドラゴンが一体、俺達の目の前に舞い降りた。セイコは、”たまたま・偶然”だという顔を俺に向ける。どこまでも、可愛くない奴。
「お姉様。待っててくださいね。ちょっと様子を見てきますから」
「オレも行く」
「お姉様。急にはドラゴンに乗れないのです。心が通じ合ってないと」
「なら、ポチでいいよ」
「ポチ丸様は、ここには来られていないようです」
「オレも呼んでみるか」
俺は、セリスにドラゴンホイホイを貸してやろうとすると、”いらん”と手を振り、口笛を吹き始めた。それでくれば、俺も苦労はしない。それでくれば……
来てしまった。ポチの裏切り者め。
「じゃあ、ユウキ。ちょっくら行ってくるから。あっ、ユウキも一緒に行くか?」
俺は手を振って断った。落ちたら死ぬ自信がある。
舞い上がるドラゴン達。ここはまさしく、ドラゴンの里だ。
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