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#2 原始 セリス編
#2.2 初陣〜○○で泣いてみよう (1/2)
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女神イリア様降臨の宴が始まった。
高台に鎮座するイリア様は膝にポチを乗せ、高笑いが止まらない。
そりゃあそうだろう。マッチ一本で瞬時に最高の地位にまで上り詰めたんだから。
「女神様は、何の神様でいらっしゃいますか?」
誰かが鋭い質問を投げかける。
「えっ? 何それ。それは~その~」
返答に困るイリア。どうやら考えていなかったようだ。俺も考えていなかった。神といえば神じゃいけないのか?
「無礼者! 神様になんてことを聞くんだ! 謝れ! この愚か者め! 全知全能に決まっているだろうが」
セリスはすっかり、イリアの信徒となっていた。
「それ、それよ。オーホホホ」
降臨の宴が盛り上がって来た頃、酒に酔ったセリスが絡んでくる。
「おい、ユウキ! 飲んでるか?」
「俺は未成年だから飲めないんだよ」
「アアーン? 未成年だと? お前、歳は?」
「18だよ」
「オレと同じじゃないか。なら、大丈夫だ。飲め」
「酔ってるのか?、セリス」
「なにー? 酒を飲んでもゲロ吐くなってな」
絡まれれると面倒だ。飲んだ振りをしておこう。
「セリス。なんで一人暮らしなんだ? 隣にお母さんがいるって」
「親父が死んだからに決まってるだろう」
「そういうものか」
「そうだ、ヒク。男が死んだら女は生きていけねー。そうだろう? ヒク。誰が獲物を狩ってくるんだよ~。喰うもんが無いだろうが~ヒク。女はな~、獲物を狩れる男について行くしかないんだよ~ヒク」
そう言うとセリスは泣き始めた。忙しい奴だ。
「セリスは一人で大丈夫なのか?」
「オレか~、オレのこと心配してくれるのか? なら、オレの男になれ…無理だな」
「すみません、無理で」
急に真顔になるセリス。いっちょ前のことを言い出しそうだ。
「オレ達はな、狩って食って寝る。それが出来て一人前って言われるんだ」
「随分とシンプルだな」簡単っていうと角が立ちそうだ。カタカナ万歳。
「本当は、それだけじゃねーんだ」
「うん? 何だ?」
「エー? おめえ~それを聞くのか?」
急に真っ赤になるセリス。何か変なことを聞いたのか?
「こ、こ、こ。バッキャヤロー、言わせんな!」
セリスは軽く俺を小突いた。その勢いで俺は後ろに吹き飛んだ。
地面に横たわる俺を見下ろすように立つセリス。
「ユウキ、オレ達の部族に入れ」
「部族?」
「今日も、何人も狩りで死んだ。人手がいる。お前でも何かの役に立つだろう。そうしたら、考えてやる」
「何を?」
「オレの、オ、オ。バッキャヤロー、言わせんな!」
◇
原始時代の夜明けゼよ。
セリスの洞窟の前から風景を眺める。手前に森があって、その先に草原が続く。そのもっと先は山が火を噴いている。紛れもなく原始の時代。とんでもない所に来てしまった。
そんな中、この時代に相応しくない物があった。ピラミッド。森と草原の境にそれはある。多分、あれが旅行社だと思う。
「綺麗だろう」
セリスが朝日で白く輝くピラミッドを指差す。
「あれは何だ?」
「神殿だ。オレ達は中には入れないが、時々、”神の使い”って人が来て、オレ達に言葉を教えてくれんだ」
「それは親切だな」
「何でも、その方が便利になるとか、都合がいいとか言っていたな」
旅行社は神の使だったのか。
都合がいいというのは、旅行者対応なのか? まあ、現地人と会話が出来ないと困るよな。でも、教育はしないんだな。
「あの森がオレ達”モリモリ族”の縄張りだ。その先の原っぱが”ハラッパ族”のだ。ハラッパ族は凶暴で最低の奴らの部族だ。間違っても森を抜けるなよ」
「森が縄張りなら、こっちが有利なんじゃないか?」
「そうじゃねーんだ。ほら見えてみろ。原っぱには大きな恐竜は余りいねえ。だがな、小さいのがゴロゴロいるんだ。オレ達の森には大きい恐竜がたまに来るだけだ。分かったか?」
「全然」
「これだから余所もんは生きていけねーんだ。いいかー、ガタイは小さくても沢山狩れるから、原っぱは、食うのに困らねえ。それに引き換えこっちは、いつ来るか分からん獲物を狩るんだ。来たとしても狩るのは大変だ。死人も沢山出る。何日も食えない時だってあるんだ。分かったか?」
「なんとなく、分かった」
見ただけじゃ分からないこともあるんだと感心した。
「おはよう」
女神イリア様の登場だ。どことなく神々しい。きっと気のせいだ。イリアの後をポチが付いてくる。どうやら、本能的に、ここのボスを識別したようだ。
「おはよう御座います、神様」
セリスは膝をついて挨拶をする。いいのか? セリス。お前は騙されているんだぞ。
「気を遣わなくていいのよ、セリスちゃん」
”ちゃん”付け? セリスはお前より年上だぞ。恐るべし、神々の誘惑。
俺はそっとイリアに直訴した。
「イリア。化けの皮が剥がれたらどうするつもりだ? 何か策はあるんだろうな?」
「私は神様よ。それも全知全能の神。そんな私に、不可能はないわ」
「おい!ユウキ。神様に馴れ馴れしいぞ。控えろ」
「いいのよセリスちゃん。ユウキは大切な”アレ”何だから。今日は許してあげて」
何だよ? ”アレ”って。
「そうだな。……じゃあ行くか、ユウキ。狩りに行くぞ」
セリスも、なに納得してるんだ?
◇
高台に鎮座するイリア様は膝にポチを乗せ、高笑いが止まらない。
そりゃあそうだろう。マッチ一本で瞬時に最高の地位にまで上り詰めたんだから。
「女神様は、何の神様でいらっしゃいますか?」
誰かが鋭い質問を投げかける。
「えっ? 何それ。それは~その~」
返答に困るイリア。どうやら考えていなかったようだ。俺も考えていなかった。神といえば神じゃいけないのか?
「無礼者! 神様になんてことを聞くんだ! 謝れ! この愚か者め! 全知全能に決まっているだろうが」
セリスはすっかり、イリアの信徒となっていた。
「それ、それよ。オーホホホ」
降臨の宴が盛り上がって来た頃、酒に酔ったセリスが絡んでくる。
「おい、ユウキ! 飲んでるか?」
「俺は未成年だから飲めないんだよ」
「アアーン? 未成年だと? お前、歳は?」
「18だよ」
「オレと同じじゃないか。なら、大丈夫だ。飲め」
「酔ってるのか?、セリス」
「なにー? 酒を飲んでもゲロ吐くなってな」
絡まれれると面倒だ。飲んだ振りをしておこう。
「セリス。なんで一人暮らしなんだ? 隣にお母さんがいるって」
「親父が死んだからに決まってるだろう」
「そういうものか」
「そうだ、ヒク。男が死んだら女は生きていけねー。そうだろう? ヒク。誰が獲物を狩ってくるんだよ~。喰うもんが無いだろうが~ヒク。女はな~、獲物を狩れる男について行くしかないんだよ~ヒク」
そう言うとセリスは泣き始めた。忙しい奴だ。
「セリスは一人で大丈夫なのか?」
「オレか~、オレのこと心配してくれるのか? なら、オレの男になれ…無理だな」
「すみません、無理で」
急に真顔になるセリス。いっちょ前のことを言い出しそうだ。
「オレ達はな、狩って食って寝る。それが出来て一人前って言われるんだ」
「随分とシンプルだな」簡単っていうと角が立ちそうだ。カタカナ万歳。
「本当は、それだけじゃねーんだ」
「うん? 何だ?」
「エー? おめえ~それを聞くのか?」
急に真っ赤になるセリス。何か変なことを聞いたのか?
「こ、こ、こ。バッキャヤロー、言わせんな!」
セリスは軽く俺を小突いた。その勢いで俺は後ろに吹き飛んだ。
地面に横たわる俺を見下ろすように立つセリス。
「ユウキ、オレ達の部族に入れ」
「部族?」
「今日も、何人も狩りで死んだ。人手がいる。お前でも何かの役に立つだろう。そうしたら、考えてやる」
「何を?」
「オレの、オ、オ。バッキャヤロー、言わせんな!」
◇
原始時代の夜明けゼよ。
セリスの洞窟の前から風景を眺める。手前に森があって、その先に草原が続く。そのもっと先は山が火を噴いている。紛れもなく原始の時代。とんでもない所に来てしまった。
そんな中、この時代に相応しくない物があった。ピラミッド。森と草原の境にそれはある。多分、あれが旅行社だと思う。
「綺麗だろう」
セリスが朝日で白く輝くピラミッドを指差す。
「あれは何だ?」
「神殿だ。オレ達は中には入れないが、時々、”神の使い”って人が来て、オレ達に言葉を教えてくれんだ」
「それは親切だな」
「何でも、その方が便利になるとか、都合がいいとか言っていたな」
旅行社は神の使だったのか。
都合がいいというのは、旅行者対応なのか? まあ、現地人と会話が出来ないと困るよな。でも、教育はしないんだな。
「あの森がオレ達”モリモリ族”の縄張りだ。その先の原っぱが”ハラッパ族”のだ。ハラッパ族は凶暴で最低の奴らの部族だ。間違っても森を抜けるなよ」
「森が縄張りなら、こっちが有利なんじゃないか?」
「そうじゃねーんだ。ほら見えてみろ。原っぱには大きな恐竜は余りいねえ。だがな、小さいのがゴロゴロいるんだ。オレ達の森には大きい恐竜がたまに来るだけだ。分かったか?」
「全然」
「これだから余所もんは生きていけねーんだ。いいかー、ガタイは小さくても沢山狩れるから、原っぱは、食うのに困らねえ。それに引き換えこっちは、いつ来るか分からん獲物を狩るんだ。来たとしても狩るのは大変だ。死人も沢山出る。何日も食えない時だってあるんだ。分かったか?」
「なんとなく、分かった」
見ただけじゃ分からないこともあるんだと感心した。
「おはよう」
女神イリア様の登場だ。どことなく神々しい。きっと気のせいだ。イリアの後をポチが付いてくる。どうやら、本能的に、ここのボスを識別したようだ。
「おはよう御座います、神様」
セリスは膝をついて挨拶をする。いいのか? セリス。お前は騙されているんだぞ。
「気を遣わなくていいのよ、セリスちゃん」
”ちゃん”付け? セリスはお前より年上だぞ。恐るべし、神々の誘惑。
俺はそっとイリアに直訴した。
「イリア。化けの皮が剥がれたらどうするつもりだ? 何か策はあるんだろうな?」
「私は神様よ。それも全知全能の神。そんな私に、不可能はないわ」
「おい!ユウキ。神様に馴れ馴れしいぞ。控えろ」
「いいのよセリスちゃん。ユウキは大切な”アレ”何だから。今日は許してあげて」
何だよ? ”アレ”って。
「そうだな。……じゃあ行くか、ユウキ。狩りに行くぞ」
セリスも、なに納得してるんだ?
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