3 / 91
#1 中世 イリア編
#1.2 根性曲げずに膝曲げろ (1/3)
しおりを挟む
「おい、ユウキ。裏に行って商品をそこの棚に並べてくれ」
早速、働けってか。ん?
「なんで俺の名前を? おじさん、ただ者じゃないな?」
「バカ言ってんじゃねー。お前の着てる服に書いてあるだろうが、ツアーレ? ユウキって」
自分の胸の部分に、変な文字が書いてある。何で名前が? これもサービスなのか?
「イリア。そいつに商品の場所と仕事の仕方を教えてやんな」
「えー、私がー。まあ、いいけど。おいで、ユウキ」
何だか犬を呼んでいるような言い方だ。
「さあ、ユウキ。この箱を持って行って」
「へいへい、これか」
小さな箱を持ち上げようとすると、見た目以上に重い。
「ちょっと、ユウキ。そんなも落ち方したら腰が悪くなるわよ。ほら、こうやって持つのよ」
そう言って、イリアは軽々と持ち上げた。
「いい、膝を曲げて腰を落としてから持ち上げるのよ。
腕の力だけでやろうとすると、腰を痛めるだけよ。分かった?、ユウキ」
言われた通りに持ち上げてみると、あら不思議。以外と簡単に持ち上がった。
「なんだ、イリアの方が力持ちだと思ったよ」
イリアは俺が持っている箱の上に両肘を付け、顔を近づける。
「イリアですって? 私はあなたの雇い主なのよ」
「顔が、顔が近いって!」
顔も近いが、イリアは両肘に力を入れて下げている。重い、頭に血がのぼる~、もう、手を離しそうだ。
「さあ、なんて言うの? 言っていいのよ」
「イリアさん~」
「はあ?」
「イリア様、お嬢様~」
イリアは力を抜くと俺から離れた。
教訓その1 根性曲げずに膝曲げろ。
おかしい。絶対におかしい。働かせられるのもあれだが、何でこんなに疲れるんだ? ここは仮想世界じゃないのか?ここまで本気で再現しなくても、いいだろう。全く人使いの荒い親子だ。こんなことを毎日二人でやっているのか? いや、そう思うと大したものだ。これならまだ、コンビニの方がマシかもしれない。いや、待てよ。そういう設定なんだろうな。再現度、半端無し。
「おう、ユウキ。日も暮れたから店じまいだ。もう、上がっていいぞ。疲れただろう、先に風呂に入っときな」
風呂かあ、いいねー。もう汗びっしょりだ。
「お疲れ様でした。じゃあ、お先に」
「そうだ。先にイリアが入ってるかもしれないから、入る前に気を付けてな」
キター、イベント、キター。
そういうことか。あのおっさんの言い方。何かを期待しているのか? ハプニングとか。起きるのか? ハプニング。起きるといいな。
何となく、自分の顔が緩んでいるのが分かる。別に…期待しているわけじゃ…してる、かな?。
風呂に入れって言っても、その風呂場はどこだ? 俺は大して広くもない家の中を探し続ける。部屋の角を曲がったところでイリアが前から歩きて来た。どうも、さっきから姿を見ないと思ったら、こんなところにいたのか。
「どこ行くの? ユウキ。もう仕事は終わったの?」
「終わったよ。それで、風呂に入ろうかと」
「あ、そう。ふーん」
この反応は、どう解釈すればいいんだ?
「あー。ところで、お風呂って、どこ?」
「この先の奥よ。ゆっくり、入ってらっしゃいな」
「そうするよ。じゃあ」
何事もなくイベントは終了した。
もっと勇気が欲しい。それに ちなんで名前を付けたのにな。まあ、いいさ。まだ初日だ。まだまだチャンスはある、はず。
「ユウキ?」
「ん?」
「一緒に入る? お風呂」
「えええええええええええええええええええええええええええええええ」
もし、ここで”Yes”と答えたら、入るのか? 本当か? 入るのか? 入るのか? まだ、知り合ってから半日しか経ってないぞ。それでか、いいのか? どうする俺? チャンスなのか? チャンスだよな。ここで断ったりしたら彼女に恥を掻かせてしまうかも。それはいけないよな、男として。それも女性に恥を掻かせるなんで。
でも、でも、でも。ぐうーーーーーーーーーーーーーー。
「やっぱり、一人で入りたいわよね」
えええええええええええええええええええええええええええええええ。
俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、バカか?
「い、いや、構わないけど?(もっと大きい声で)」
「いいのよ、遠慮しなくても。お父さんとイキナリ一緒じゃ、いやだよね」
あの親父?
「お父さんも、もう少しで、こっちに来るから、男同士、いいかもって思っただけよ。気にしないでいいわよ。お風呂、行ってらっしゃい」
千の言葉をもってしても、俺の気持ちを表すには、足りないと、思った。
教訓その2 人の話は最後まで聞け。
◇
早速、働けってか。ん?
「なんで俺の名前を? おじさん、ただ者じゃないな?」
「バカ言ってんじゃねー。お前の着てる服に書いてあるだろうが、ツアーレ? ユウキって」
自分の胸の部分に、変な文字が書いてある。何で名前が? これもサービスなのか?
「イリア。そいつに商品の場所と仕事の仕方を教えてやんな」
「えー、私がー。まあ、いいけど。おいで、ユウキ」
何だか犬を呼んでいるような言い方だ。
「さあ、ユウキ。この箱を持って行って」
「へいへい、これか」
小さな箱を持ち上げようとすると、見た目以上に重い。
「ちょっと、ユウキ。そんなも落ち方したら腰が悪くなるわよ。ほら、こうやって持つのよ」
そう言って、イリアは軽々と持ち上げた。
「いい、膝を曲げて腰を落としてから持ち上げるのよ。
腕の力だけでやろうとすると、腰を痛めるだけよ。分かった?、ユウキ」
言われた通りに持ち上げてみると、あら不思議。以外と簡単に持ち上がった。
「なんだ、イリアの方が力持ちだと思ったよ」
イリアは俺が持っている箱の上に両肘を付け、顔を近づける。
「イリアですって? 私はあなたの雇い主なのよ」
「顔が、顔が近いって!」
顔も近いが、イリアは両肘に力を入れて下げている。重い、頭に血がのぼる~、もう、手を離しそうだ。
「さあ、なんて言うの? 言っていいのよ」
「イリアさん~」
「はあ?」
「イリア様、お嬢様~」
イリアは力を抜くと俺から離れた。
教訓その1 根性曲げずに膝曲げろ。
おかしい。絶対におかしい。働かせられるのもあれだが、何でこんなに疲れるんだ? ここは仮想世界じゃないのか?ここまで本気で再現しなくても、いいだろう。全く人使いの荒い親子だ。こんなことを毎日二人でやっているのか? いや、そう思うと大したものだ。これならまだ、コンビニの方がマシかもしれない。いや、待てよ。そういう設定なんだろうな。再現度、半端無し。
「おう、ユウキ。日も暮れたから店じまいだ。もう、上がっていいぞ。疲れただろう、先に風呂に入っときな」
風呂かあ、いいねー。もう汗びっしょりだ。
「お疲れ様でした。じゃあ、お先に」
「そうだ。先にイリアが入ってるかもしれないから、入る前に気を付けてな」
キター、イベント、キター。
そういうことか。あのおっさんの言い方。何かを期待しているのか? ハプニングとか。起きるのか? ハプニング。起きるといいな。
何となく、自分の顔が緩んでいるのが分かる。別に…期待しているわけじゃ…してる、かな?。
風呂に入れって言っても、その風呂場はどこだ? 俺は大して広くもない家の中を探し続ける。部屋の角を曲がったところでイリアが前から歩きて来た。どうも、さっきから姿を見ないと思ったら、こんなところにいたのか。
「どこ行くの? ユウキ。もう仕事は終わったの?」
「終わったよ。それで、風呂に入ろうかと」
「あ、そう。ふーん」
この反応は、どう解釈すればいいんだ?
「あー。ところで、お風呂って、どこ?」
「この先の奥よ。ゆっくり、入ってらっしゃいな」
「そうするよ。じゃあ」
何事もなくイベントは終了した。
もっと勇気が欲しい。それに ちなんで名前を付けたのにな。まあ、いいさ。まだ初日だ。まだまだチャンスはある、はず。
「ユウキ?」
「ん?」
「一緒に入る? お風呂」
「えええええええええええええええええええええええええええええええ」
もし、ここで”Yes”と答えたら、入るのか? 本当か? 入るのか? 入るのか? まだ、知り合ってから半日しか経ってないぞ。それでか、いいのか? どうする俺? チャンスなのか? チャンスだよな。ここで断ったりしたら彼女に恥を掻かせてしまうかも。それはいけないよな、男として。それも女性に恥を掻かせるなんで。
でも、でも、でも。ぐうーーーーーーーーーーーーーー。
「やっぱり、一人で入りたいわよね」
えええええええええええええええええええええええええええええええ。
俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、バカか?
「い、いや、構わないけど?(もっと大きい声で)」
「いいのよ、遠慮しなくても。お父さんとイキナリ一緒じゃ、いやだよね」
あの親父?
「お父さんも、もう少しで、こっちに来るから、男同士、いいかもって思っただけよ。気にしないでいいわよ。お風呂、行ってらっしゃい」
千の言葉をもってしても、俺の気持ちを表すには、足りないと、思った。
教訓その2 人の話は最後まで聞け。
◇
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
♡ちゅっぽんCITY♡
x頭金x
大衆娯楽
“旅人”が〈広い世界を見る〉ために訪れた【ちゅっぽんCITY】、そこにはちょっと不思議でエッチな人達が住んでいて、交流する度に”旅人”が下半身と共にちゅっぽんする物語です。
(今までに書いてきたショートショート を混ぜ合わせたりかき混ぜたり出したり入れたりくちゅくちゅしたりして作ってイキます)
トワイライト・クライシス
幸田 績
SF
仮想現実が現実世界を侵食するサイバーテロ〈黄昏の危機〉。その脅威に妄想、もとい想像力で立ち向かうのは物書き志望の女子高校生だった――!
桜咲く街を舞台に、すこしふしぎな青春群像劇が満を持して花開く。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜
アーエル
ファンタジー
女神に愛されて『加護』を受けたために、元の世界から弾き出された主人公。
「元の世界へ帰られない!」
だったら死ぬまでこの世界で生きてやる!
その代わり、遺骨は家族の墓へ入れてよね!
女神は約束する。
「貴女に不自由な思いはさせません」
異世界へ渡った主人公は、新たな世界で自由気ままに生きていく。
『小説家になろう』
『カクヨム』
でも投稿をしています。
内容はこちらとほぼ同じです。
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる