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#14 冒険する風
#14.4 長閑な風
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夜が開け日が昇る頃、大海原を行く『おっちゃんの船』は豪華客船から半分以下の大きさのクルーザーに変わっていました。でも、船の内部は全然変わっていないようです。
そうして大海原から、どこかの海岸線をズンズンと進んで行きます。そして、ヒョイっと川に入ると、そこを上り始めました。そうして更にズンドコ・ズンドコと進み、風の子たちが起きる頃には、どこかの小川になっていました。勿論、その頃には川幅に合わせるて、クルーザーから小舟に変わっています。
ポコポコポコポー。
自然豊かな風景の中、緩やかな風が吹いて参りました。この世界では時間もゆっくりと流れている、そう思いたくなりそうな長閑なところです。流れる小川は川幅も狭く、エイっと一跨ぎ出来そうな気がしてきます。
ポンポンポンポーン。
良い天候に恵まれ、空はどこまでも高く蒼く、そよぐ風が世界のあらゆるものに触れ合いながら、それぞれの音色を奏でていきます。そんな陽気に誘われたのでしょう、小舟の上でグテーンと空を見上げるケイコ、その脇で座っているマチコ、まだ部屋から出てこないエリコです。
「なんか、懐かしいのう。どこかで見たような光景じゃわい。落ち着くのじゃぁぁぁ」と欠伸をしながらのケイコ、それに、
「あっそぅ」のマチコです。
チョロチョロと流れる小川は、もう極端に狭くなり、用水路と言っても良いくらいです。その両岸をスタッスタッと軽快に移動する怪獣のようなものが、風の子たちが乗る小舟を追いかけ始めました、スタッスタッっとです。
「あれぇ、なにかしら、ねえぇ」と最初に気付いたマチコ、その声に起き上がり、
「むむっ、何奴じゃ。むむっ、あれは」と見覚えがありそうなケイコです。そして、右側後方から迫ってくる怪獣に、「むっ、あれは、ニャージロウではないか」と懐かしい再会に心躍らせます。しかし、左側後方から不敵な笑みを浮かべている、ように見える怪獣、覚えているような無いような、です。
怪獣のスタッスタッという地響きにも似た足音に、何事? と部屋から飛び出してきたエリコ、早速プルプルです。そんなエリコを引き寄せ、
「大丈夫。あれがニャージロウなら、遊びに来ただけだから」とエリコをあやすマチコです。その横で、見知らぬ怪獣を迎え撃とうと構えるケイコ、どっからでもかかってこいやー、です。
そして、威嚇するかのように急接近してきた怪獣です。その、目と目でバチバチと火花を飛ばす怪獣とケイコ、勝てるのかー、です。
しかし、よく見たおかげで、その怪獣は大きくなったニャーゴ、じゃないかなと思い始めたケイコ、なんの心配もしていないマチコと、プルプルの治ったエリコです。
小舟は、そのままニャーゴとニャージロウを従えるように、用水路をチョロチョロと進んで行きます。そうして用水路が分岐し、その先が広い湖に繋がっているのが見えた頃、サッと、どこかに消えたニャーゴとニャージロウ。そこから周囲の光景が一変して参ります。
そして水路に沿って小舟が湖に入ると、すぐに桟橋が見えてきました。そこに誰かが立っていて、小舟に向かって手を振っていました。その桟橋の先に小舟が横付けして止まると、先程の誰かが近づいて来ます。それを見つめるケイコたち、和服姿の美しい女性、いえ、あの、普通のノリコのようです、にこやかに出迎えています。そして、
「いらっしゃいませ」とペコリのノリコ、
「久しぶり、よねぇ、と言っても直接会うのは初めて、よねぇ」とマチコ、その後ろに隠れて無言のエリコに、
「大きく……立派になりましたね、エリコ」と声を掛けたノリコです。以前、見たときよりも背が伸びていると思っていましたが、そうそう大きくはならない風の子です。そんな様子を、
(誰じゃ、この娘は)のケイコ、目を細めてジロジロと変化したノリコを観察、(なんじゃ、ノリコではないかい)と分かったところで、プイッと背中を見せられてしまいました。そして、
「どうぞ、こちらへ」と、御一行を案内するノリコ、その後に続くマチコと、マチコに手を引かれて歩くエリコです。そのマチコに、
「ねえねえ、どこに、行くの?」と、突っ立っているだけのケイコが尋ねると、
「さあ、取り敢えず付いて行きましょうかねえぇ。それにぃ、気になるなら直接、聞いてみればぁ」のマチコ、
「だって、あれ、偽物かもしれないじゃん」と、以前とは違う雰囲気のノリコに気後れするケイコ、それが聞こえなかったかのように、エリコと手を繋いで歩いて行くマチコです。それで、「待ってよー」と小さな声で付いていきます。
そうして桟橋を進んでいくと、その先に小さな家が見えて参りました。そこの扉をノリコが開き、
「履物を脱いでから、お上りください」と案内するノリコです。
「お邪魔するわね」とペコリのマチコ、続いて、
「お邪魔です」のエリコです。そして、
「ここがノリコの家なのじゃな。随分と、う~む、狭いのう」と辺りをキョロキョロするケイコに、
「ここは玄関です。勘違いしないでください」と、ケイコにキッパリのノリコです。
そして、小さな家と見間違えた玄関から長い廊下を歩いて行くと、左右に広がる日本庭園、白い壁と黒い瓦屋根の塀に囲まれた、お屋敷と呼びたくなるような建物が見えてきました。
しかし、その長い廊下を歩いていると、やけにギシギシという音が気になってきます。そこで、
「ねえねえ、この廊下、壊れてるんじゃないの? 底が抜けそうだよ」と小声でマチコに声を掛けるケイコです。すると、
「賊が侵入しても、すぐに分かるようにと、ワザと大きな音がするように出来ているのです」と、聞こえていたノリコ、忍者屋敷でしょうか。
こうして、広い和式の部屋に案内されたケイコたちです。卒業旅行の最初の目的地は、豊かな自然に囲まれたノリコの住む町、そして宿泊先としてノリコの家になっていたようです。
ニャーゴとニャージロウが闊歩する長閑な世界、お屋敷の住人らしく振舞うノリコ、長旅でも疲れ知らずのケイコたち、スタッスタッと優雅に時は流れて参ります。
そうして大海原から、どこかの海岸線をズンズンと進んで行きます。そして、ヒョイっと川に入ると、そこを上り始めました。そうして更にズンドコ・ズンドコと進み、風の子たちが起きる頃には、どこかの小川になっていました。勿論、その頃には川幅に合わせるて、クルーザーから小舟に変わっています。
ポコポコポコポー。
自然豊かな風景の中、緩やかな風が吹いて参りました。この世界では時間もゆっくりと流れている、そう思いたくなりそうな長閑なところです。流れる小川は川幅も狭く、エイっと一跨ぎ出来そうな気がしてきます。
ポンポンポンポーン。
良い天候に恵まれ、空はどこまでも高く蒼く、そよぐ風が世界のあらゆるものに触れ合いながら、それぞれの音色を奏でていきます。そんな陽気に誘われたのでしょう、小舟の上でグテーンと空を見上げるケイコ、その脇で座っているマチコ、まだ部屋から出てこないエリコです。
「なんか、懐かしいのう。どこかで見たような光景じゃわい。落ち着くのじゃぁぁぁ」と欠伸をしながらのケイコ、それに、
「あっそぅ」のマチコです。
チョロチョロと流れる小川は、もう極端に狭くなり、用水路と言っても良いくらいです。その両岸をスタッスタッと軽快に移動する怪獣のようなものが、風の子たちが乗る小舟を追いかけ始めました、スタッスタッっとです。
「あれぇ、なにかしら、ねえぇ」と最初に気付いたマチコ、その声に起き上がり、
「むむっ、何奴じゃ。むむっ、あれは」と見覚えがありそうなケイコです。そして、右側後方から迫ってくる怪獣に、「むっ、あれは、ニャージロウではないか」と懐かしい再会に心躍らせます。しかし、左側後方から不敵な笑みを浮かべている、ように見える怪獣、覚えているような無いような、です。
怪獣のスタッスタッという地響きにも似た足音に、何事? と部屋から飛び出してきたエリコ、早速プルプルです。そんなエリコを引き寄せ、
「大丈夫。あれがニャージロウなら、遊びに来ただけだから」とエリコをあやすマチコです。その横で、見知らぬ怪獣を迎え撃とうと構えるケイコ、どっからでもかかってこいやー、です。
そして、威嚇するかのように急接近してきた怪獣です。その、目と目でバチバチと火花を飛ばす怪獣とケイコ、勝てるのかー、です。
しかし、よく見たおかげで、その怪獣は大きくなったニャーゴ、じゃないかなと思い始めたケイコ、なんの心配もしていないマチコと、プルプルの治ったエリコです。
小舟は、そのままニャーゴとニャージロウを従えるように、用水路をチョロチョロと進んで行きます。そうして用水路が分岐し、その先が広い湖に繋がっているのが見えた頃、サッと、どこかに消えたニャーゴとニャージロウ。そこから周囲の光景が一変して参ります。
そして水路に沿って小舟が湖に入ると、すぐに桟橋が見えてきました。そこに誰かが立っていて、小舟に向かって手を振っていました。その桟橋の先に小舟が横付けして止まると、先程の誰かが近づいて来ます。それを見つめるケイコたち、和服姿の美しい女性、いえ、あの、普通のノリコのようです、にこやかに出迎えています。そして、
「いらっしゃいませ」とペコリのノリコ、
「久しぶり、よねぇ、と言っても直接会うのは初めて、よねぇ」とマチコ、その後ろに隠れて無言のエリコに、
「大きく……立派になりましたね、エリコ」と声を掛けたノリコです。以前、見たときよりも背が伸びていると思っていましたが、そうそう大きくはならない風の子です。そんな様子を、
(誰じゃ、この娘は)のケイコ、目を細めてジロジロと変化したノリコを観察、(なんじゃ、ノリコではないかい)と分かったところで、プイッと背中を見せられてしまいました。そして、
「どうぞ、こちらへ」と、御一行を案内するノリコ、その後に続くマチコと、マチコに手を引かれて歩くエリコです。そのマチコに、
「ねえねえ、どこに、行くの?」と、突っ立っているだけのケイコが尋ねると、
「さあ、取り敢えず付いて行きましょうかねえぇ。それにぃ、気になるなら直接、聞いてみればぁ」のマチコ、
「だって、あれ、偽物かもしれないじゃん」と、以前とは違う雰囲気のノリコに気後れするケイコ、それが聞こえなかったかのように、エリコと手を繋いで歩いて行くマチコです。それで、「待ってよー」と小さな声で付いていきます。
そうして桟橋を進んでいくと、その先に小さな家が見えて参りました。そこの扉をノリコが開き、
「履物を脱いでから、お上りください」と案内するノリコです。
「お邪魔するわね」とペコリのマチコ、続いて、
「お邪魔です」のエリコです。そして、
「ここがノリコの家なのじゃな。随分と、う~む、狭いのう」と辺りをキョロキョロするケイコに、
「ここは玄関です。勘違いしないでください」と、ケイコにキッパリのノリコです。
そして、小さな家と見間違えた玄関から長い廊下を歩いて行くと、左右に広がる日本庭園、白い壁と黒い瓦屋根の塀に囲まれた、お屋敷と呼びたくなるような建物が見えてきました。
しかし、その長い廊下を歩いていると、やけにギシギシという音が気になってきます。そこで、
「ねえねえ、この廊下、壊れてるんじゃないの? 底が抜けそうだよ」と小声でマチコに声を掛けるケイコです。すると、
「賊が侵入しても、すぐに分かるようにと、ワザと大きな音がするように出来ているのです」と、聞こえていたノリコ、忍者屋敷でしょうか。
こうして、広い和式の部屋に案内されたケイコたちです。卒業旅行の最初の目的地は、豊かな自然に囲まれたノリコの住む町、そして宿泊先としてノリコの家になっていたようです。
ニャーゴとニャージロウが闊歩する長閑な世界、お屋敷の住人らしく振舞うノリコ、長旅でも疲れ知らずのケイコたち、スタッスタッと優雅に時は流れて参ります。
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