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#11 世界に吹く風(出会い編)
#11.3 マチコの風
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ゴロゴロコローン・プシュー、プシュー、ドカーン。
ケイコを乗せたバスが都会に到着し、その扉が開いたところです。長旅による疲れでしょうか、乗客は皆フラフラしながら降りていきます。そしてケイコもフラフラと飛びながら扉の外へ、という時、ケイコが運転手に声を掛けました。
「ご苦労じゃったな、ちと休むがよいぞ。ところで、私の歌に聴き惚れてしまったようじゃから、また聴かせてしんぜよう。では、さらばじゃ」
ケイコの挨拶に、少々驚いている様子のおっちゃん、
「元気でな、お嬢ちゃん。それと、歌は……、……、……、だな」と締め括りました。
こうして、都会という大海原に飛び出したケイコです。陽は疾うに暮れ、辺りは真っ暗、ではなく、至る所にある照明で明るく輝いています。そんな光に戸惑いながら夜空を見上げました。しかし地上が明るいため、黒っぽい空しか見えません。
「なんなんじゃ、ここは」
星の見えない空、初めて見る多くの人たち、騒がしい音の洪水。それらに圧倒されてキョロキョロするばかりのケイコです。そこでマチコの声を拾おうと耳を澄ましましたが雑音ばかりで判別不能です。そこで高いところから眺めようと、風を掴んで飛び上がっても、短く乱れる風で思うように飛べず、すぐに諦めたケイコです。
それに、周囲が明るいと言っても夜です。すっかり弱気になったケイコは、
「仕方ないのぉ、一度、帰ってから出直すとするかの~」と久しぶりに帰宅を思い立ったようです。そうして一歩を踏み出すと——
ケイコと一緒にバスに乗り込んだ女性が、ケイコの様子を『たまたま』見ていました。それは、初めての都会で驚いた自身の経験と重ねながら思うところがあったのでしょう。それで、大丈夫だろうかと少し心配しながら見ていたところ、ケイコの姿がスーッと消えてしまったことに驚いたのでした。
「あっ、あああああ」
思わず声を上げてしまった女性です。その直後、世間からの視線がグサグサと刺さりまくった女性です。その視線を気にしたのは、ケイコが消える瞬間を目撃したのは、おそらく自分だけだろうと思えたからです。それは、日常で起こりえない事は、特に都会では起きないからだからです。
そうして女性は、それが錯覚だったのか、それとも実際に有ったことなのかは確認のしようがないため、考え方を変えることにしたようです。それは、都会に戻って来たことで本来の自分を取り戻した、または、現実に生きている自分には現実しか見えないのだと。それはつまり、『大人なのだから』と言い聞かせた女性です。
◇
自宅に戻ったケイコは、すぐに葉っぱベッドでスヤスヤです。きっと、あれやこれやで疲れていたのでしょう。そこにヨシコがたまたま(というより、しょっちゅうですが)通りかかり、ケイコの寝姿を見て、「あれまっ!」と驚き、思わず、
「ケイコ戻りし、探しに行ったマチコは、今何処」と声に出して言ってしまう程でした。
そして、そのままケイコの家を出て、マチコの部屋を覗きますが、案の定、留守であることを確認しました。それでも、取り敢えずケイコが戻って来たことだし~、ということで消えてしまったヨシコです。
◇◇
「ふあ~」
目覚めたケイコです。そして身支度を整えると、都会へ向けて第一歩を踏み出します。目的は迷子のマチコを探すこと。その実現まであと少しと思うと士気が上がります。いざ行かん、都会へ、トウォォォ。
昨夜、ケイコが消えた場所から出現したケイコ、早速、人混みに押されて行きます。そこで道の脇に避け、耳を澄まします。それでマチコの泣き声を聴き分け、居場所を特定するのです、やっほー。
ところが、都会の雑音でマチコの声どころか煩くて断念せざるを得ません。そこで、行き交う人よりも高い位置まで飛び上がり、キョロキョロと探しますが、そんなことで見つかるものではありません。
焦り始めたケイコは大きな声で「マチコー、どこじゃー、迎えに来たぞー」と呼び掛けましたが、それも都会の喧騒で掻き消されてしまいます。
でも、まだまだ諦めるケイコではありません。今度は行き交う忙しい風に声を掛けていきます。
「マチコをー、知らんかねー」
「いまー、忙しいからー、またー、あとでねー」
忙しい風は、その名通り忙しく通り過ぎていくだけでした。それでも返事をしてくれるだけマシでしょう。中にはチラッと見るだけで通り過ぎる風も居るのです、ああ~。
そうして、だんだんと弱っていくケイコです。でも、その前にケイコの目的を整理しておきましょう。都会に行ったまま、なかなか戻らないマチコを迎えに行ったケイコです。そして遂に、その都会に辿り着いたケイコです。それはそれは長い旅路でした。
でも、でもですよ。都会って、世界中のあちこちに在るじゃありませんか。そんな数ある都会の中で、マチコの居る都会は『ここ』なんでしょうか? まあ、そんな細かいことは考えないようにしましょう。きっと、『ここ』のはずなんです、きっと。
気力の低下が著しいケイコです。おまけに、探すことに飽きてしまったのか、そのままゆっくりと降下して行きます。そして人の波に流され、フラフラ・ヒラヒラと舞い始め、その風は地下鉄の入り口へと誘われていきます。
そして人の流れに沿って、流されるだけ流され、風の吹くまま身を委ねるるケイコです。そうして気がつくと、あれっ、地下鉄に乗って移動するケイコ、モダンです。
◇◇
「なんじゃあああ、ここはあああ」
地下鉄の轟音で正気を取り戻したケイコです。明るい車内なのに、窓の外は真っ暗です。それは異次元の世界を思わせるには十分な光景、都会から一気に別世界に転送された気分のケイコです。
そこでケイコがどんなに叫んでも物凄い騒音で掻き消されてしまいます。そして、ケイコの姿は誰の目にも入らず、存在感が気薄になっています。
しかーし、これまでの冒険で鍛えられたケイコです、この位のことで挫けるようなケイコではありません。早速、空いている席に直行、そこに座り、フンフンと寛ぎます。快適な列車の旅が始まりました。
ゴゴゴー、ゴトンゴトン。
窓の外は何も見えないので、車内の人物観察を堪能するケイコです。そして、「結局、皆、暇なんじゃなー」という感想を抱いたようです。こうして快適な地下鉄の旅が続くと思っていたケイコです。
しかし、電車が次の駅で停車した時、乗り込んできた男性がケイコの座っている座席めがけて、大きなお尻を向けてきました。そうです、その男性にはケイコは見えていないのです。
「こらあああ、なにすんじゃあああ」とケイコが苦情を叫んでも、その男性には聞こえていません。仕方なくヒョイと避けたケイコですが、そのまま飛び上がり、男性の頭の上に陣取りました。もちろん、ケイコが見えない男性は、それを意識することはありません。しかし、
「なんじゃあああ、この匂いはあああ」と頭髪の匂いに苦悩するケイコです。
ゴゴゴー、ゴトンゴトン、ピカピカー。
地上に姿を現した地下鉄です。暗闇から突如出現した陽の光に、
「なんじゃあああ、ピカピカじゃあああ」と、驚きと感激が入り混じった魂の叫びを披露するケイコです。
◇◇
そうこうしているうちに座席を立ち上がった男性です。そして電車が駅に着くと降りてしまいますが、その男性の頭の上に鎮座したままのケイコです。
「ほっほー。これはこれで、良い眺めじゃ」
視線が高くなったことで周囲がよく見渡せ、ご満悦のケイコです。そうして男性は駅のホームからエスカレーターに乗り、地上に出現、更に道をスタスタ。そして、どこかの高いビルに到着です。それを見上げたケイコは、
「おおおおお、なんじゃあああ、こらあああ」と何時ものように叫びます。
男性は高層ビルに潜り込み、そのままエレベーターに乗って上階へ。そのままくっ付いて来たケイコも一緒ですが、狭い空間に人がビッシリです。それでとうとう男性の頭から離れて、プカプカとエレベーターの中で浮いています。
そうしてエレベーターの扉が開くと、こんなところは嫌じゃ、とばかりに飛び出したケイコです。そして誰も居ない廊下をスイーと進み、終点の窓際に到着です。そこで外を眺めたケイコは、
「ほっほー」と感心しながら、何やら閃いたような。それは、ここに来た目的、即ちマチコを探すという使命を思い出し、それなら高いところから探すのが一番じゃ、と考えたそうな。
そこで、窓をスーッと抜けて行きます。えっ? そう、彼女たちシルフィードの行く手を阻むものなど、この世には無いのです。そうして外に出たケイコを待ち受けていたのは強烈なビル風です。それに煽られ、一気に上昇していきます。そこで、「おわー」とか「うわー」とか言ったところで、容赦無いビル風です、ビューン・ブルブル。
それでも負けないケイコです。どうせ高いところから見渡そうとしていたので、吹き上げられたのは却って好都合。吹上が終わったところで、
「マチコー、どこじゃー」と大声で叫ぶケイコです。
しかし、吹上が終わったということは、はい、後は落ちるだけです。それに『なすがまま』のケイコです。風が上から横から、時々下からと予想外の吹き方に戸惑い、また、それらの風を掴むことが出来ない都会初心者なのです。
本来ならフワフワ・ヒラヒラと舞い落ちたいところですが、どうも都会の風は気まぐれ・乱暴なのです。まさしく風の吹くまま気の向くまま状態。おまけに回転が加わり、クルクル大回転のケイコ、これには困りました。
「ちょっと、待つのじゃ、待ってー」と手足も羽もバタつかせても制御不能。これはもしかして、万事休す?
そんなピンチの時です。サーっと現れた親切な風さんがケイコの手を取り、
「大丈夫、君」と助けてくれたのでした。
「う、うん」と答えたケイコは、自分でも気がつかないうちに涙を零していたようです、グッスンです。
「気をつけてね。この辺の風は複雑だから」と親切な風さんの言葉に、
「ありがとう」と素直にお礼が言えたケイコです。
そうして手を引かれながら地上に舞い降りることが出来ました。そして、またサーっと去って行く親切な風さんに、「ありがとう、バイバーイ」と手を振るケイコです。
◇◇
歩道という地上に立つケイコ。ですがそこは大勢の人が行き交うところでもあります。そこを、「おっと」と言いながら避けていると、知らず識らずのうちに隅に追いやられ、気が付けは公園まで移動してしまったようです。
でも、そこなら安心して歩くことが出来るでしょう。行き交う人も車もなく、穏やかな風が流れています。それ以外の場所、都会全体で見ればケイコにとっては危険が一杯なのです、はい。
ということで、公園の片隅から全体を眺めるケイコです。そこで見上げる空は快晴。殆ど雲はなく、青く澄み切っていました。それが、ついさっきまで居たところと、余りにも違うことに驚き、つい都会に居ることを忘れてしまいそうになる風模様です。
「うむ、良かろう」
穏やかな景色に地元を思い出したのでしょうか、何かが『良い』ようです。そして次いでのように「マチコや~、どこをほっつき歩いとるのじゃ~」と呟いた後、うっとりと見上げていた空に、何やらキラキラと光るものが。咄嗟に、
「あれはあああ、なんじゃあああ」と叫び、一気に興味が移ってしまったケイコです。そして、キラキラとくれば当然、
「とうぉぉぉ」と飛び出したのでした。
ビューンと飛び上がり、グングンと上昇、そのキラキラが目前に迫った時です。それがただの紙切れだと分かった瞬間、
「なんだ、マチコではないのか~」と、見間違えたことにするケイコです。しかしそれは、どう見ても最初からマチコではないことは確かだったはずなのですが。
せっかくここまで来たのだから、という感じで偽のキラキラを手に取ってみようとしたケイコです。ですがそれも風に飛ばされ、遠くに飛んでいく様子を「あれれ」と見送っていると、ケイコ自身も風に飛ばされ、どんどんと流されてしまいました。
そうして、それに抵抗すればするほど体が回転し始め、クルクルと舞っていくケイコです。でも、一度経験した風です、何度も同じ目に合うケイコではありません。
「うりゃあああ」の掛け声で体勢を整え、見事に着地することが出来ました、エヘンのケイコです。
◇◇
ゴロゴロ・ブップー。
ケイコが降り立ったところは道路のど真ん中です。当然、車がビュンビュンと走り回っているところです。そこにいきなり、言葉の通り降って湧いたケイコです。しかも体の小さなケイコは誰からも見えていません。このままでは『ぺしゃんこ』になってしまうかも~、です。
「なんじゃあああ、こらあああ」
何時もの元気な叫び声が聞こえてきました。しかし、叫ぶだけで動こうとしない、または動けないケイコです。それはきっと初めて正面から迫り来る車に足が竦んでしまったのでしょう。
ケイコは、思うのです。
ただ、迎えに、マチコを迎えに来ただけなのに。そのためにずっと旅をしてきたんだ。
きっと、どこかで泣いている、きっと、どこかで私を思い出して泣いている。
そんなマチコの手を握ってあげたいだけなんだ。
だから急がなくちゃいけないんだよ。だからここに来たんだ。
もう、隠れてなんかいないで、さっさと出てこいよ、マチコのアホー。
ヒュー、サワサワ。
一陣の風がケイコに吹いて参りました。風はケイコをその場から連れ去り、高く高く舞がるのです。その風は、ただ只管に真っ直ぐ、邪魔な風を蹴散らしながら、青い空に向かって駆け登って行くのです。
「ちょっとぉ、やっと見つけたわよぉ、全くぅ」
ケイコの手を引きながら、上手に都会の空を駆けるマチコです。その手を振り解くケイコ、そして、
「マ”チ”コ”ー、なんでじゃー」と半分、泣きながら叫ぶケイコです。因みにマチコの手を離しても風に乗っているので一緒に移動しています。
「なんでぇ? そりゃーあんたがあっちこっちで叫んでれば嫌でも聞こえるってもんでしょう、全くぅ」
マチコの返答に不満のケイコのようです。その証拠に頬をいっぱい膨らませています。
「なんでー、迷子になったのじゃー、探したんだぞー」と言うケイコに、迷子??? のマチコです。それでも、
「はいはい。でも、いいじゃない、こうして会えたんだからぁ」と答えるマチコです。それに、
「良くない、良くないもん。迷子なんだから、泣いてるんだから、アホなんだからー」のケイコです。
「はあ? 泣いてんのは、あんたでしょう。まあいいわ、帰りましょう」
「アホー、アホー、マチコの、アホー」
「はいはい」
愚図るケイコを連れてフワフワ・ユラユラと進むマチコの風です。ちょうどベンチに腰掛けるように座るマチコは、風の進むその先を見つめ、その横で両目をゴシゴシしながら座っているケイコです。
そして風は都会の喧騒を離れ、気持ちが良いくらいの空をスーッと進んで行くのでした。
◇
「せっかく都会に来たんだから、ちょっとぉ、寄って行こうかぁ」
海辺に建つ観覧車を横目で見ながらケイコに話し掛けるマチコです。それにブツブツと何かを言っているケイコです。
そうして風は観覧車に近づき、ゴンドラの中へと入って行きます。そして座席に舞い降りると、窓際に立ち、「ほらぁ、見てごらんよ」とプンスカ中のケイコを手招きするマチコです。
そんな誘いに「ふんっ」という感じでマチコの隣に立つケイコ。それでもつい、そそられてしまいます。
「あんたが来たがってた都会だよぉ、ごちゃごちゃしているでしょう。人が一杯、物が一杯、風もめちゃくちゃ、そんなところだよぉ。景色だって、ほら、いいんだか悪いんだかねぇ」
マチコの解説に泣き腫らした目を輝かせるケイコです。オマケに、お口もポッカリと開けています。そして時々、「ほー、ほー」と声を上げると、その度に、「そうでしょう」と付け加えるマチコです。
そうして暫く眺めていたケイコは、飽きてしまったのか、座席に戻り、背もたれに寄りかかりながら足を伸ばして座ってしまいます。そして、
「探したんだよ、ずっと探してたんだからねー」と、またプンスカを発動させるケイコです。
その隣に座ったマチコは、ただケイコの言い分に「はいはい」とだけ答えるのでした。
「なんで迷子になったのさー、なんで、すぐに私を呼ばなかったのよー」
「はいはい」
「みんなに聞いても、マチコなんて知らないって言うし」
「はいはい」
「困ったんだもん」
「はいはい」
「アホだもん、マチコは」
「はいはい」
「マチコは……」
そうして、いつの間にか寝てしまったケイコです。その手を握り、「じゃぁ、もう帰ろうかねぇ」と呟くマチコです。そしてその言葉の後に、スーッと消えて行くケイコとマチコです。
誰も居なくなったゴンドラは、その後もゆっくりと回り続けます。
◇
マチコの部屋、そのベッドの上に戻ったケイコとマチコです。眠ったままのケイコを家に運ぶは面倒と思ったのか、マチコはそのままケイコをベッドに寝かせました。そしてその寝顔を見ていたら自分も眠くなったのでしょうか、「まあ、いいかぁ」と言いながらケイコと一緒に寝てしまうマチコ、グッスリです。
そんな時、たまたま通り掛かったヨシコがマチコの部屋を窓から覗き見していました。本当に『たまたま』なんでしょうか、疑惑は深まりました。
「戻って来たね~。まあ、可愛い子には旅をさせろって云うけどさ~。これで良かったのかね~、全く~」とマチコの真似をしながらブツブツと呟くヨシコです。そしてそのヨシコも、ケイコとマチコの幸せそうな寝顔を見た後、スーッと消えて行くのでした。
こうして、お出かけしたマチコを迎えに行くというケイコの目的は達成されました。きっと今頃は良い夢を見ていることでしょう。そしてそのケイコを追いかけたマチコも、ケイコを見つけることが出来たことにホッとして、心地よい夢を見ていることでしょう。
スヤスヤのケイコとマチコ、です。
ケイコを乗せたバスが都会に到着し、その扉が開いたところです。長旅による疲れでしょうか、乗客は皆フラフラしながら降りていきます。そしてケイコもフラフラと飛びながら扉の外へ、という時、ケイコが運転手に声を掛けました。
「ご苦労じゃったな、ちと休むがよいぞ。ところで、私の歌に聴き惚れてしまったようじゃから、また聴かせてしんぜよう。では、さらばじゃ」
ケイコの挨拶に、少々驚いている様子のおっちゃん、
「元気でな、お嬢ちゃん。それと、歌は……、……、……、だな」と締め括りました。
こうして、都会という大海原に飛び出したケイコです。陽は疾うに暮れ、辺りは真っ暗、ではなく、至る所にある照明で明るく輝いています。そんな光に戸惑いながら夜空を見上げました。しかし地上が明るいため、黒っぽい空しか見えません。
「なんなんじゃ、ここは」
星の見えない空、初めて見る多くの人たち、騒がしい音の洪水。それらに圧倒されてキョロキョロするばかりのケイコです。そこでマチコの声を拾おうと耳を澄ましましたが雑音ばかりで判別不能です。そこで高いところから眺めようと、風を掴んで飛び上がっても、短く乱れる風で思うように飛べず、すぐに諦めたケイコです。
それに、周囲が明るいと言っても夜です。すっかり弱気になったケイコは、
「仕方ないのぉ、一度、帰ってから出直すとするかの~」と久しぶりに帰宅を思い立ったようです。そうして一歩を踏み出すと——
ケイコと一緒にバスに乗り込んだ女性が、ケイコの様子を『たまたま』見ていました。それは、初めての都会で驚いた自身の経験と重ねながら思うところがあったのでしょう。それで、大丈夫だろうかと少し心配しながら見ていたところ、ケイコの姿がスーッと消えてしまったことに驚いたのでした。
「あっ、あああああ」
思わず声を上げてしまった女性です。その直後、世間からの視線がグサグサと刺さりまくった女性です。その視線を気にしたのは、ケイコが消える瞬間を目撃したのは、おそらく自分だけだろうと思えたからです。それは、日常で起こりえない事は、特に都会では起きないからだからです。
そうして女性は、それが錯覚だったのか、それとも実際に有ったことなのかは確認のしようがないため、考え方を変えることにしたようです。それは、都会に戻って来たことで本来の自分を取り戻した、または、現実に生きている自分には現実しか見えないのだと。それはつまり、『大人なのだから』と言い聞かせた女性です。
◇
自宅に戻ったケイコは、すぐに葉っぱベッドでスヤスヤです。きっと、あれやこれやで疲れていたのでしょう。そこにヨシコがたまたま(というより、しょっちゅうですが)通りかかり、ケイコの寝姿を見て、「あれまっ!」と驚き、思わず、
「ケイコ戻りし、探しに行ったマチコは、今何処」と声に出して言ってしまう程でした。
そして、そのままケイコの家を出て、マチコの部屋を覗きますが、案の定、留守であることを確認しました。それでも、取り敢えずケイコが戻って来たことだし~、ということで消えてしまったヨシコです。
◇◇
「ふあ~」
目覚めたケイコです。そして身支度を整えると、都会へ向けて第一歩を踏み出します。目的は迷子のマチコを探すこと。その実現まであと少しと思うと士気が上がります。いざ行かん、都会へ、トウォォォ。
昨夜、ケイコが消えた場所から出現したケイコ、早速、人混みに押されて行きます。そこで道の脇に避け、耳を澄まします。それでマチコの泣き声を聴き分け、居場所を特定するのです、やっほー。
ところが、都会の雑音でマチコの声どころか煩くて断念せざるを得ません。そこで、行き交う人よりも高い位置まで飛び上がり、キョロキョロと探しますが、そんなことで見つかるものではありません。
焦り始めたケイコは大きな声で「マチコー、どこじゃー、迎えに来たぞー」と呼び掛けましたが、それも都会の喧騒で掻き消されてしまいます。
でも、まだまだ諦めるケイコではありません。今度は行き交う忙しい風に声を掛けていきます。
「マチコをー、知らんかねー」
「いまー、忙しいからー、またー、あとでねー」
忙しい風は、その名通り忙しく通り過ぎていくだけでした。それでも返事をしてくれるだけマシでしょう。中にはチラッと見るだけで通り過ぎる風も居るのです、ああ~。
そうして、だんだんと弱っていくケイコです。でも、その前にケイコの目的を整理しておきましょう。都会に行ったまま、なかなか戻らないマチコを迎えに行ったケイコです。そして遂に、その都会に辿り着いたケイコです。それはそれは長い旅路でした。
でも、でもですよ。都会って、世界中のあちこちに在るじゃありませんか。そんな数ある都会の中で、マチコの居る都会は『ここ』なんでしょうか? まあ、そんな細かいことは考えないようにしましょう。きっと、『ここ』のはずなんです、きっと。
気力の低下が著しいケイコです。おまけに、探すことに飽きてしまったのか、そのままゆっくりと降下して行きます。そして人の波に流され、フラフラ・ヒラヒラと舞い始め、その風は地下鉄の入り口へと誘われていきます。
そして人の流れに沿って、流されるだけ流され、風の吹くまま身を委ねるるケイコです。そうして気がつくと、あれっ、地下鉄に乗って移動するケイコ、モダンです。
◇◇
「なんじゃあああ、ここはあああ」
地下鉄の轟音で正気を取り戻したケイコです。明るい車内なのに、窓の外は真っ暗です。それは異次元の世界を思わせるには十分な光景、都会から一気に別世界に転送された気分のケイコです。
そこでケイコがどんなに叫んでも物凄い騒音で掻き消されてしまいます。そして、ケイコの姿は誰の目にも入らず、存在感が気薄になっています。
しかーし、これまでの冒険で鍛えられたケイコです、この位のことで挫けるようなケイコではありません。早速、空いている席に直行、そこに座り、フンフンと寛ぎます。快適な列車の旅が始まりました。
ゴゴゴー、ゴトンゴトン。
窓の外は何も見えないので、車内の人物観察を堪能するケイコです。そして、「結局、皆、暇なんじゃなー」という感想を抱いたようです。こうして快適な地下鉄の旅が続くと思っていたケイコです。
しかし、電車が次の駅で停車した時、乗り込んできた男性がケイコの座っている座席めがけて、大きなお尻を向けてきました。そうです、その男性にはケイコは見えていないのです。
「こらあああ、なにすんじゃあああ」とケイコが苦情を叫んでも、その男性には聞こえていません。仕方なくヒョイと避けたケイコですが、そのまま飛び上がり、男性の頭の上に陣取りました。もちろん、ケイコが見えない男性は、それを意識することはありません。しかし、
「なんじゃあああ、この匂いはあああ」と頭髪の匂いに苦悩するケイコです。
ゴゴゴー、ゴトンゴトン、ピカピカー。
地上に姿を現した地下鉄です。暗闇から突如出現した陽の光に、
「なんじゃあああ、ピカピカじゃあああ」と、驚きと感激が入り混じった魂の叫びを披露するケイコです。
◇◇
そうこうしているうちに座席を立ち上がった男性です。そして電車が駅に着くと降りてしまいますが、その男性の頭の上に鎮座したままのケイコです。
「ほっほー。これはこれで、良い眺めじゃ」
視線が高くなったことで周囲がよく見渡せ、ご満悦のケイコです。そうして男性は駅のホームからエスカレーターに乗り、地上に出現、更に道をスタスタ。そして、どこかの高いビルに到着です。それを見上げたケイコは、
「おおおおお、なんじゃあああ、こらあああ」と何時ものように叫びます。
男性は高層ビルに潜り込み、そのままエレベーターに乗って上階へ。そのままくっ付いて来たケイコも一緒ですが、狭い空間に人がビッシリです。それでとうとう男性の頭から離れて、プカプカとエレベーターの中で浮いています。
そうしてエレベーターの扉が開くと、こんなところは嫌じゃ、とばかりに飛び出したケイコです。そして誰も居ない廊下をスイーと進み、終点の窓際に到着です。そこで外を眺めたケイコは、
「ほっほー」と感心しながら、何やら閃いたような。それは、ここに来た目的、即ちマチコを探すという使命を思い出し、それなら高いところから探すのが一番じゃ、と考えたそうな。
そこで、窓をスーッと抜けて行きます。えっ? そう、彼女たちシルフィードの行く手を阻むものなど、この世には無いのです。そうして外に出たケイコを待ち受けていたのは強烈なビル風です。それに煽られ、一気に上昇していきます。そこで、「おわー」とか「うわー」とか言ったところで、容赦無いビル風です、ビューン・ブルブル。
それでも負けないケイコです。どうせ高いところから見渡そうとしていたので、吹き上げられたのは却って好都合。吹上が終わったところで、
「マチコー、どこじゃー」と大声で叫ぶケイコです。
しかし、吹上が終わったということは、はい、後は落ちるだけです。それに『なすがまま』のケイコです。風が上から横から、時々下からと予想外の吹き方に戸惑い、また、それらの風を掴むことが出来ない都会初心者なのです。
本来ならフワフワ・ヒラヒラと舞い落ちたいところですが、どうも都会の風は気まぐれ・乱暴なのです。まさしく風の吹くまま気の向くまま状態。おまけに回転が加わり、クルクル大回転のケイコ、これには困りました。
「ちょっと、待つのじゃ、待ってー」と手足も羽もバタつかせても制御不能。これはもしかして、万事休す?
そんなピンチの時です。サーっと現れた親切な風さんがケイコの手を取り、
「大丈夫、君」と助けてくれたのでした。
「う、うん」と答えたケイコは、自分でも気がつかないうちに涙を零していたようです、グッスンです。
「気をつけてね。この辺の風は複雑だから」と親切な風さんの言葉に、
「ありがとう」と素直にお礼が言えたケイコです。
そうして手を引かれながら地上に舞い降りることが出来ました。そして、またサーっと去って行く親切な風さんに、「ありがとう、バイバーイ」と手を振るケイコです。
◇◇
歩道という地上に立つケイコ。ですがそこは大勢の人が行き交うところでもあります。そこを、「おっと」と言いながら避けていると、知らず識らずのうちに隅に追いやられ、気が付けは公園まで移動してしまったようです。
でも、そこなら安心して歩くことが出来るでしょう。行き交う人も車もなく、穏やかな風が流れています。それ以外の場所、都会全体で見ればケイコにとっては危険が一杯なのです、はい。
ということで、公園の片隅から全体を眺めるケイコです。そこで見上げる空は快晴。殆ど雲はなく、青く澄み切っていました。それが、ついさっきまで居たところと、余りにも違うことに驚き、つい都会に居ることを忘れてしまいそうになる風模様です。
「うむ、良かろう」
穏やかな景色に地元を思い出したのでしょうか、何かが『良い』ようです。そして次いでのように「マチコや~、どこをほっつき歩いとるのじゃ~」と呟いた後、うっとりと見上げていた空に、何やらキラキラと光るものが。咄嗟に、
「あれはあああ、なんじゃあああ」と叫び、一気に興味が移ってしまったケイコです。そして、キラキラとくれば当然、
「とうぉぉぉ」と飛び出したのでした。
ビューンと飛び上がり、グングンと上昇、そのキラキラが目前に迫った時です。それがただの紙切れだと分かった瞬間、
「なんだ、マチコではないのか~」と、見間違えたことにするケイコです。しかしそれは、どう見ても最初からマチコではないことは確かだったはずなのですが。
せっかくここまで来たのだから、という感じで偽のキラキラを手に取ってみようとしたケイコです。ですがそれも風に飛ばされ、遠くに飛んでいく様子を「あれれ」と見送っていると、ケイコ自身も風に飛ばされ、どんどんと流されてしまいました。
そうして、それに抵抗すればするほど体が回転し始め、クルクルと舞っていくケイコです。でも、一度経験した風です、何度も同じ目に合うケイコではありません。
「うりゃあああ」の掛け声で体勢を整え、見事に着地することが出来ました、エヘンのケイコです。
◇◇
ゴロゴロ・ブップー。
ケイコが降り立ったところは道路のど真ん中です。当然、車がビュンビュンと走り回っているところです。そこにいきなり、言葉の通り降って湧いたケイコです。しかも体の小さなケイコは誰からも見えていません。このままでは『ぺしゃんこ』になってしまうかも~、です。
「なんじゃあああ、こらあああ」
何時もの元気な叫び声が聞こえてきました。しかし、叫ぶだけで動こうとしない、または動けないケイコです。それはきっと初めて正面から迫り来る車に足が竦んでしまったのでしょう。
ケイコは、思うのです。
ただ、迎えに、マチコを迎えに来ただけなのに。そのためにずっと旅をしてきたんだ。
きっと、どこかで泣いている、きっと、どこかで私を思い出して泣いている。
そんなマチコの手を握ってあげたいだけなんだ。
だから急がなくちゃいけないんだよ。だからここに来たんだ。
もう、隠れてなんかいないで、さっさと出てこいよ、マチコのアホー。
ヒュー、サワサワ。
一陣の風がケイコに吹いて参りました。風はケイコをその場から連れ去り、高く高く舞がるのです。その風は、ただ只管に真っ直ぐ、邪魔な風を蹴散らしながら、青い空に向かって駆け登って行くのです。
「ちょっとぉ、やっと見つけたわよぉ、全くぅ」
ケイコの手を引きながら、上手に都会の空を駆けるマチコです。その手を振り解くケイコ、そして、
「マ”チ”コ”ー、なんでじゃー」と半分、泣きながら叫ぶケイコです。因みにマチコの手を離しても風に乗っているので一緒に移動しています。
「なんでぇ? そりゃーあんたがあっちこっちで叫んでれば嫌でも聞こえるってもんでしょう、全くぅ」
マチコの返答に不満のケイコのようです。その証拠に頬をいっぱい膨らませています。
「なんでー、迷子になったのじゃー、探したんだぞー」と言うケイコに、迷子??? のマチコです。それでも、
「はいはい。でも、いいじゃない、こうして会えたんだからぁ」と答えるマチコです。それに、
「良くない、良くないもん。迷子なんだから、泣いてるんだから、アホなんだからー」のケイコです。
「はあ? 泣いてんのは、あんたでしょう。まあいいわ、帰りましょう」
「アホー、アホー、マチコの、アホー」
「はいはい」
愚図るケイコを連れてフワフワ・ユラユラと進むマチコの風です。ちょうどベンチに腰掛けるように座るマチコは、風の進むその先を見つめ、その横で両目をゴシゴシしながら座っているケイコです。
そして風は都会の喧騒を離れ、気持ちが良いくらいの空をスーッと進んで行くのでした。
◇
「せっかく都会に来たんだから、ちょっとぉ、寄って行こうかぁ」
海辺に建つ観覧車を横目で見ながらケイコに話し掛けるマチコです。それにブツブツと何かを言っているケイコです。
そうして風は観覧車に近づき、ゴンドラの中へと入って行きます。そして座席に舞い降りると、窓際に立ち、「ほらぁ、見てごらんよ」とプンスカ中のケイコを手招きするマチコです。
そんな誘いに「ふんっ」という感じでマチコの隣に立つケイコ。それでもつい、そそられてしまいます。
「あんたが来たがってた都会だよぉ、ごちゃごちゃしているでしょう。人が一杯、物が一杯、風もめちゃくちゃ、そんなところだよぉ。景色だって、ほら、いいんだか悪いんだかねぇ」
マチコの解説に泣き腫らした目を輝かせるケイコです。オマケに、お口もポッカリと開けています。そして時々、「ほー、ほー」と声を上げると、その度に、「そうでしょう」と付け加えるマチコです。
そうして暫く眺めていたケイコは、飽きてしまったのか、座席に戻り、背もたれに寄りかかりながら足を伸ばして座ってしまいます。そして、
「探したんだよ、ずっと探してたんだからねー」と、またプンスカを発動させるケイコです。
その隣に座ったマチコは、ただケイコの言い分に「はいはい」とだけ答えるのでした。
「なんで迷子になったのさー、なんで、すぐに私を呼ばなかったのよー」
「はいはい」
「みんなに聞いても、マチコなんて知らないって言うし」
「はいはい」
「困ったんだもん」
「はいはい」
「アホだもん、マチコは」
「はいはい」
「マチコは……」
そうして、いつの間にか寝てしまったケイコです。その手を握り、「じゃぁ、もう帰ろうかねぇ」と呟くマチコです。そしてその言葉の後に、スーッと消えて行くケイコとマチコです。
誰も居なくなったゴンドラは、その後もゆっくりと回り続けます。
◇
マチコの部屋、そのベッドの上に戻ったケイコとマチコです。眠ったままのケイコを家に運ぶは面倒と思ったのか、マチコはそのままケイコをベッドに寝かせました。そしてその寝顔を見ていたら自分も眠くなったのでしょうか、「まあ、いいかぁ」と言いながらケイコと一緒に寝てしまうマチコ、グッスリです。
そんな時、たまたま通り掛かったヨシコがマチコの部屋を窓から覗き見していました。本当に『たまたま』なんでしょうか、疑惑は深まりました。
「戻って来たね~。まあ、可愛い子には旅をさせろって云うけどさ~。これで良かったのかね~、全く~」とマチコの真似をしながらブツブツと呟くヨシコです。そしてそのヨシコも、ケイコとマチコの幸せそうな寝顔を見た後、スーッと消えて行くのでした。
こうして、お出かけしたマチコを迎えに行くというケイコの目的は達成されました。きっと今頃は良い夢を見ていることでしょう。そしてそのケイコを追いかけたマチコも、ケイコを見つけることが出来たことにホッとして、心地よい夢を見ていることでしょう。
スヤスヤのケイコとマチコ、です。
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