21 / 35
#8 希望の星
#8.1 夢から覚めて
しおりを挟む
夜露に濡れまくって目覚めの朝を迎えた俺である。それにしても変な夢を見たものである。その夢の主人公様は未だ目を覚まず、王子様のキスを待っているのだろうか。
リンダが最後に言った『約束の場所で待ってる』というのはどういう意味だったのだろうか。そもそも、その『約束の場所』というのが分からない。それは一言も言葉を交わしていないのだから当然だが。
「それは一体、どこなんだよ」
とリンダに被せてあるシートに触れるつもりで手を伸ばすと、そのまま俺の手が荷台の底まで届いてしまった。そのままシートを取り去ると——
どうしたことだろう、そこにリンダはいなかった。
俺は考える。どこかに歩いて行ってしまったのだろうか、それとも誘拐されたのか。しかし、見間違えたように、シートはリンダに被せてあったままの形をしていた。ということは、そうなんだろう。ジョンに続いてリンダまで居なくなって、俺の前から消えてしまった、ようだ。
少し呼吸と整えてから立ち上がり、もう必要が無くなってしまったシートを畳み、そしてまた考える。子供ではないので喚いたり叫ぶことはしない。しくしくと起きた事実を受け入れるまでである。
この国、いや、ここには一人で来たのだ。それも一人でこなせる仕事で来た。そしてそれが終われば、ただ帰るだけである。最初から最後まで一人旅のはずだったのだ。
思えば今の会社に転職した時もそうである。三年半もの間、俺は誰とも組まず、一人で仕事をしていが、もちろん俺自身がそれを決めたわけではない。努力と根性の甲斐あって部長に昇進したが、充てがわれた部屋は無駄に広く、そして俺の机だけが置かれていた。名ばかりでも役職には就いたが、そこでも一人である。これは多分、そういう運命なのだろう。
しかしそれが気に入らなかった訳ではない。一人というのは、それはそれで気軽なものだ。何をやるにも即断即決である。俺の性に合っているといえば、そうだろう。誰かに頼ったり助けを求めてはいけない、一人が一番である。
これでリンダを連れて帰る面倒は無くなった。俺にとっては、そう悪い状況でもないだろう。とにかく俺の目的は北上し、近くの空港に辿り着いたら一気に高飛びするだけである。明確なゴールがある分、気が楽になるというものだ。
もし戦争が起きなければ、ジョンとは早々に分かれていただろうし、そもそもリンダを呼び寄せることもなかっただろう。全てはタイミングが悪かったと言える。しかしそれがなければ、ジョンと親密になることもリンダと出会うことも無かったことになる。だが、良くも悪くも結局、俺は最後には一人になる運命である。それが少しだけ早まっただけのことだ。だだ、それだけだろう、それだけだ。
「どいつもこいつも黙って行きやがって! クッソー、クソクソクソ、クソー」
◇◇
リンダが最後に言った『約束の場所で待ってる』というのはどういう意味だったのだろうか。そもそも、その『約束の場所』というのが分からない。それは一言も言葉を交わしていないのだから当然だが。
「それは一体、どこなんだよ」
とリンダに被せてあるシートに触れるつもりで手を伸ばすと、そのまま俺の手が荷台の底まで届いてしまった。そのままシートを取り去ると——
どうしたことだろう、そこにリンダはいなかった。
俺は考える。どこかに歩いて行ってしまったのだろうか、それとも誘拐されたのか。しかし、見間違えたように、シートはリンダに被せてあったままの形をしていた。ということは、そうなんだろう。ジョンに続いてリンダまで居なくなって、俺の前から消えてしまった、ようだ。
少し呼吸と整えてから立ち上がり、もう必要が無くなってしまったシートを畳み、そしてまた考える。子供ではないので喚いたり叫ぶことはしない。しくしくと起きた事実を受け入れるまでである。
この国、いや、ここには一人で来たのだ。それも一人でこなせる仕事で来た。そしてそれが終われば、ただ帰るだけである。最初から最後まで一人旅のはずだったのだ。
思えば今の会社に転職した時もそうである。三年半もの間、俺は誰とも組まず、一人で仕事をしていが、もちろん俺自身がそれを決めたわけではない。努力と根性の甲斐あって部長に昇進したが、充てがわれた部屋は無駄に広く、そして俺の机だけが置かれていた。名ばかりでも役職には就いたが、そこでも一人である。これは多分、そういう運命なのだろう。
しかしそれが気に入らなかった訳ではない。一人というのは、それはそれで気軽なものだ。何をやるにも即断即決である。俺の性に合っているといえば、そうだろう。誰かに頼ったり助けを求めてはいけない、一人が一番である。
これでリンダを連れて帰る面倒は無くなった。俺にとっては、そう悪い状況でもないだろう。とにかく俺の目的は北上し、近くの空港に辿り着いたら一気に高飛びするだけである。明確なゴールがある分、気が楽になるというものだ。
もし戦争が起きなければ、ジョンとは早々に分かれていただろうし、そもそもリンダを呼び寄せることもなかっただろう。全てはタイミングが悪かったと言える。しかしそれがなければ、ジョンと親密になることもリンダと出会うことも無かったことになる。だが、良くも悪くも結局、俺は最後には一人になる運命である。それが少しだけ早まっただけのことだ。だだ、それだけだろう、それだけだ。
「どいつもこいつも黙って行きやがって! クッソー、クソクソクソ、クソー」
◇◇
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
王妃から夜伽を命じられたメイドのささやかな復讐
当麻月菜
恋愛
没落した貴族令嬢という過去を隠して、ロッタは王宮でメイドとして日々業務に勤しむ毎日。
でもある日、子宝に恵まれない王妃のマルガリータから国王との夜伽を命じられてしまう。
その理由は、ロッタとマルガリータの髪と目の色が同じという至極単純なもの。
ただし、夜伽を務めてもらうが側室として召し上げることは無い。所謂、使い捨ての世継ぎ製造機になれと言われたのだ。
馬鹿馬鹿しい話であるが、これは王命─── 断れば即、極刑。逃げても、極刑。
途方に暮れたロッタだけれど、そこに友人のアサギが現れて、この危機を切り抜けるとんでもない策を教えてくれるのだが……。
壁穴奴隷No.19 麻袋の男
猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。
麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は?
シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。
前編・後編+後日談の全3話
SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。
※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。
※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる