じーさんず & We are

Tro

文字の大きさ
上 下
35 / 44
#9 出張はバカンスで章

#9.2 井戸端会議

しおりを挟む
空き部屋に通された私達です。中央に大きなテーブルがデーンとあります。そこで私と次郎、向かいに何故かアッ君さんが居てシロちゃん共々椅子に座ります。あれ、その隣に見知らぬお爺さんが居ます。それも相当小汚いジジイです。きっとボケて部屋に入って来てしまったようです。困った爺さんです。ああー、ヨダレが垂れてるー。

「あの~、お爺さん。部屋、間違えてませんか」

私の問いかけにピクリとも反応しません、相当いっちゃってるみたいです。

「こやつはマオだ、気にすることはない」

マオ? シロちゃんの説明にイマイチ信じられない私です。よく知らない私でもマオはここまで老けていはいませんでした。まるで別人です。ただのゴミのようです。

「何時だ! 何時戻るんだ」

アッ君さんの、何言ってるのか分かんない発言を次郎が手の平を向けて静止しました。ああ、後は次郎に任せるわ。でも、それってパーでしょう。アッ君さんに、それはないんじゃ、ああ、パーで正解だわ、続けて次郎。

「今日は白金先生にお聞きしたいことがあって参りました」
「誰だ、白金先生ってのは」

またしても次郎がパーでパーを、アッ君を黙らせます。そう、少し大人しくしててください。それも永遠に。

「何が聞きたいんじゃ我が弟子よ。あれか、お主、モテたいのか、ワシのように」と何かを自慢している風のシロちゃん。

「いえ、それは間に合っていますので。実は先生が以前、発明したという研究成果についてお聞きしたくて参りました」

何が『間に合っています』なのよ。私、知ってるよ~、次郎がマダムキラーって呼ばれてんの。やだね~、この男は~。

「わしの功績は沢山あるがのう、どれのことだ」

シロちゃんが自慢しているようですが、残念ながら本当です。これでも一応は教授ですから。

「何でも魔王を凌ぐ力と聞いているのですが」と次郎が申していますが、さて、何のことでしょうか、私にはサッパリです。

「魔王だと。ほれこの通り、わしは魔王よりも強いぞ、あれもじゃが」

シロちゃんがポンポンと、以前マオと呼ばれた者の頭を叩いています。あんまり叩くと、アレしちゃうんじゃないかな。

「そうではなくて、発明されたものです。それとも……いえ、分かりました。どうやら勘違いのようです。他の方を当たってみます」と、やっと諦めてくれた次郎なのに、何か心当たりがある、と頑張るシロちゃんです。

「待て待て、まだ何も言っておらんじゃろうが。あれじゃろう、タイム……」
「マシーンですか」
「いや、ドカーンじゃ」
「それは時限爆弾のことでは」

あれ、アッ君が腕組みしながら寝ちゃったよ、それも凄いイビキ。うっさいから、どっかに行ってくれないかな~。

「冗談じゃ。そうじゃの~、あれかの~」と何かを必死で思い出そうとするシロちゃんです。でも、いいでんすよ、忘れたら忘れたで。

「先生、床に魔法陣を書いたやつですよ」としつこく迫る次郎。ねえ、もう諦めたらどうなのよ~。

「何じゃと!」

もう、シロちゃんが立ったじゃないの。どっかに行くの? 早く済まして帰ろうよ~。

「思い出しましたか、あれです」とアレな次郎に、
「あれはいかん! 絶対にいかん!」と手でバッテン印をしているシロちゃんです。

「その原理が知りたいんです、お願いします」
「ダメだダメだ。それに、何故お主がそのことを知っているのじゃ」
「それは……」
「さてはお主、政府のスパイだな。わししか知らないことを」
「先生、それ、講義でやりましたよ」
「おお! そうか。もうバレておるのか」

ああ、なんか私も思い出した~。教室の床に魔法陣を描いたもんだから、用務員さんにシロちゃんがこっぴどく怒られたんだ。

「あの魔法陣は何の役にも立たん」と言い切るシロちゃんに、
「え! そうなんですか」と驚く次郎。そう驚くことはないでしょう、相手は教授、シロちゃんだよ?

「何だ、お主もか、騙されおって。じゃがな、あの方が雰囲気が出てよかろう、それらしくて」
「それは、まあ」
「子ども騙しにはもってこいじゃ、あはー」

あはー、じゃないよ、シロちゃん。忘れたんならそれでいいからー。でも、まだ諦めない、しつこい次郎です。

「例の実験、4人で構えるんですよね。講義の時もそうでしたが、あともう少しというところで上手くいかないのです。先生はあれをどうやって証明したんですか」

「4人? ああ、うん。それはじゃな~、この先は有料じゃ」
「それは……」
「なんじゃ、そんな裁量も持っておらんのか。情けないの~」

「ケチ臭いことを。その位教えてやれば良いじゃないか、シロちゃんよー」といきなりアッ君が起きてきました。さあ、もっと言ってあげて。そしてシロちゃんをギャフンと言わすのよー。

「お前は黙っとれ。ならわしを雇え。そうしたら教えてやらんでもない」と臍を曲げるシロちゃんに、
「なんだと! おい、シロちゃん、自分だけズルイぞ、おい、こら」と言い返すアッ君。
「能無しのお前はここで一生暮すが良いのじゃ」と話が逸れて行くシロちゃんに、
「言わせておけばこのジジイ、誰のおかけで飯が食えていると思ってやがんだ」と、ああ言えばこう言うのアッ君。そこに、
「飯、まだかな~」あちゃー、マオまで参戦してきたよー。ジジイが揉めるとこじれるから嫌なんだよー。

「まだじゃ。それよりもマオ、お前の仕事は終わったのか」と自分のことは棚上げのシロちゃんに、
「終わったよ~、多分」と力の抜けた返答のマオ。
「なら、そこで大人しゅうしとれ」と駄目押しするシロちゃん。

マオ爺さん、前は3人のリーダーみたいだったけれど、何これ、ここまでダメダメになっちゃうもんなの~。

「先生、今教えてくれたら魔王様に相談できますが、そうでなければ、ですね」

あれ~、次郎ってこんなに人の足元を見る奴だったっけ。そうやってマダムを手にかけてるんだ、そうなんだ~。

「う~む、仕方ないの~。じゃが約束だぞ」と欲に釣られるシロちゃん。
「はい、約束しますよ」
「ならば、これこれじゃ」

シロちゃんが次郎の耳元で囁いています。女の人以外で、こんなに近づいているところを見たのは始めてのような気がします。それだけ真剣なんですね、今更ですけど。

「成る程、そうでしたか、分かりました」と納得顔の次郎。
「約束だぞ」と念を押すシロちゃん。

「おい待て、俺もセットにしろ」
ああ、またアッ君が割り込んできました。折角、もう終わりだと思ったのにー。もう、黙らっしゃい。

「いいですよ、アッ君さん」
今度は静止しない次郎。多分、適当に返事をしているだけかと思いますよ、きっと。

「ちょい待て。こ奴が何の役に立つというんじゃ。一緒にするでない」
自分だけが良い思いをしたいと熱望するシロちゃんです。

「まあまあ、序でですから」とシロちゃんを宥める次郎。
「俺は序でなのかよ」と不満なアッ君さん。
「なら、黙っていましょうか」とアッ君さんの運命を転がす次郎。
「いやダメだ。俺も入れろ」とアッ君さん、何かが必死です。
「分かりました、ではそのように」と次郎。多分、どうでも良いのでしょう。
「おい、お前はまだわしに縋るつもりなのか」とアッ君さんを蹴落とそうとするシロちゃん。
「縋るだとー、このジジイが」と一気にヒートアップのアッ君さん。

なんじゃこりゃ。終わんないよー。えい! 逃げたれ。

「お世話になりました~、あとはごゆっくりー」

こうして私は次郎を引っ張り、ジジイ達を置いて部屋を出ました。もう、本当に厄介な人達でした。



老人ホームを出た私達。ここで次郎とはお別れです、お疲れ様でした。私はこれから南の島を満喫していきます。別れた次郎は一足先に戻りますが、三日後に会社で落ち合うことになっています。それならバレることはないでしょう。良いバカンスを。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

《鍵》から始まる《餞》までの物語

一花カナウ
大衆娯楽
【あなたを求める場所にお連れしましょう】 小箱に入っていたのは鍵と一枚のメモ。 鍵は必ず何処かへと導いてくれる。その行き先は―― #novelber 2021参加作品のまとめ。Twitter、カクヨム、ノベルアップ+でも掲載中。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

[男女比がバグっている世界で僕は今日も今日とて平凡(最強)です]

Tanishisan
ファンタジー
中学3年生の甘露寺楓はひょんなことから異世界に転移してしまったそこの世界は男女比が1対50と バグり散らかしており楓は平穏な毎日を過ごせることなく台風の目となりいろんな女性を翻弄していく。

幼馴染のチート竜,俺が竜騎士を目指すと伝えると何故かいちゃもんつけ始めたのだが?

モモ
ファンタジー
最下層のラトムが竜騎士になる事をチート幼馴染の竜に告げると急に彼女は急にいちゃもんをつけ始めた。しかし、後日協力してくれそうな雰囲気なのですが……

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

我儘女に転生したよ

B.Branch
ファンタジー
転生したら、貴族の第二夫人で息子ありでした。 性格は我儘で癇癪持ちのヒステリック女。 夫との関係は冷え切り、みんなに敬遠される存在です。 でも、息子は超可愛いです。 魔法も使えるみたいなので、息子と一緒に楽しく暮らします。

処理中です...