32 / 44
#8 栄子と呼ばれたで章
#8.3 円卓会議
しおりを挟む
また派手なリムジンで戻る私です。政府の出方は事前に承知していました。それを、あたかも初めて知った振りをした私です、役者になれるでしょうか。
そもそも政府は防衛費目的で税率を釣り上げるのが難しくなってきたようです。それもそうでしょう、高すぎますから。そこで一気に和平に舵を切りたいようですが、その方法が属国です。とても飲める条件ではありません。それに謝罪の場でそれを持ち出すとは言語道断です、フンです。
「魔王様、先程からこちらを付け狙う車がおりますが、如何致しましょうか」
運転手さんに言われ振り返る私です。確かに車が一台、ずっと後を付いて来ているようです。では、その方の心情を少し時間を遡ってから覗いてみましょう。
「なんて女なんだ! 癇癪にも程があるぞ」
政府のおじさんが何やら怒鳴っています。それも顔を真っ赤にして。それでは血圧が上ってしまいますよ。
「全くだ。よりによって地震を起こすとは、何という恐ろしいまでの力なんだ」
はて、私が地震を起こしたような言い分ですね。もう一人のおじさんも変なことを言っていますが、そんな訳が有る訳無いじゃありませんか。もうボケてしまわれたようですね。おじさん達の会話はまだ続きます。
「これは早急に手を打たないと不味いな」
「安心しろ、プランBを用意してある」
「そうか。悪い芽は早めに刈り取る方が良いだろう」
見窄らしい男がおじさん達に近寄ってきました。この人が私の後を追っている人ですね。どこかで……ああ、ケンジ部長、いえ、ケンジ。こんなところで何をしているのでしょうか。政府のおじさんがケンジに厳つい顔を向けています。
「分かっているな、責任はお前一人にある。その時は、」とのおじさんに、
「分かっている。あれには借りがある、それを返すだけだ」と答えるケンジです。
そうして私の派手なリムジンを追い回している訳ですね。一体、何をするつもりでしょうか。あなたに借りがあるとは到底思えないのですが、また私の温情が裏目に出てしまったようです。
「運転手さん、そのまま行ってください」と指示する私です。
「分かりました」
執拗に付け狙ってくるケンジです。気分が良いものではありませんね。では、えい! としておきましょう。
交差点を黄色信号で通過した私です。その信号を無視してケンジが後ろにピタリと貼り付いています。ですが。
「そこの車、止まりなさい!」
信号無視をしたケンジの車が早速パトカーに停車を求められています。それに従い車を止めるケンジです。おほほ。
どうやらケンジは事故に見せかけて私を亡き者にしようと企てたようですが、それも徒労に終わりました。私を乗せた派手なリンムジは、そのまま夜の街を疾走して行きます。
◇
帰国した私は早速、円卓会議です。春子、夏子、冬子、あれ、冬子がまだのようです。議長は夏子が務めます。
「やはり予想していた通りの展開になったわね」
開口一番、夏子の予測の正しさが確認されました。属国を迫ってくるのは先刻お見通しです。
「それにしても、すごい地震でしたね」
これは私です。まだ体が揺れている感じが残っています。怖かったよー。
「あれは魔王の仕業ではないの? 会談場所付近の直下型でしたよ」
春子が地図上でホテル周辺を丸で囲っています。確かに発生した範囲は狭いようです。そこに遅れて冬子が席に着きました。
「遅れました。先程、政府から謝罪以外の件で、更に謝罪の申し入れがありました。つまり、謝罪以外の件は無かったことにしてくれと」
それを聞いて夏子の、片方の目がつり上がったような、なんとかです。
「まあ、白々しい。ではきっと例の地震を勘違いしたようですね。まあ、それはそれで好都合かもしれません」
冬子の報告が続きます。
「それと例の元副社長4人組に動きがあるそうです」
「何を企んでいるのでしょうか」
「詳細はまだ分かりませんが、新兵器の目処が立ったようで、実験間近という情報です」
「まあ、恐ろしい」
「極秘情報によると、どうやらそれは曽て、シロちゃんが発明したものらしいのです。まだ正確な情報ではありませんが、魔王を超える威力が有るとか無いとか」
「トンデモないジジイですね」
「でも、良くそんなものを採用する気になったものね。魔王といえば魔力のことでしょう。そんなものを信じるなんて」
「そこで例の4人組ですよ。先代魔王に仕えていましたから、その能力を良く知っている、というわけです。それで表沙汰にならないように陰でこっそりと暗躍しているのですね。それが、4人組が向こう側で重宝されている理由でしょう」
ここで議長である夏子がまとめに入ります。
「魔王に匹敵する力ですね。こちらも迎え撃つ手段を準備をしなければなりませんね。一層の事、私達全員が魔王にでもなってしまいましょうか」
「それは良い考えかもしれません。戦力は多いに越したことはありませんから」と冬子に、
「それが『出来れば』よね~」と夏子。そして、
「「そうよね~」」と全員の思いです。
何故か私にだけに発現した魔王の力です。皆さんにも同様の力があれば、どれだけ心強いことかと思う私です。ここで夏子が何かを思い出したようです。
「ところで、魔王で思い出したのだけれど、例の子達、その後は如何?」
これに答えるのは春子です。私が春子に丸投げした彼ら元勇者サークルの少年少女達の面倒を見てくれています。いえ、春子が私に任せてと言ってくれたので、その、あの、丸投げではなく全てをお任せしたのです、はい。
「そうですね、少年AB、今は太郎と次郎ですが、この二人は問題ないですけれど、少女A、今は栄子と呼んでいますが、この子は問題ありですね」
「そうなんですか、一番熱心な子でしたのに」と驚く私です。南の島で私に縋ってきた子ですから。
「ええ、そうなんですが、慣れてきたというのでしょうか、余り生活態度が良くないですね。近隣から苦情が来てますから」と申し訳なさそうな春子。
「あらまあ」と驚いた私はピピッと閃いてしまいました。それを早速披露しましょう。「ではこうしましょう。お仕置きがてらシロちゃんの聞き取り調査をして貰いましょうか。それで、どんなものを発明したのか訊き出しましょう」
「彼女一人では心配ですね」と私の名案に不安そうな春子です。
「それもそうですね、少年Bこと次郎を一緒につけましょう。彼ならシロちゃんの事も詳しそうですからね」と春子の不安を一掃するかのように冬子が提案します。
「「ではそうしましょう」」
全員の意見が一致しました。これにて円卓会議は終了です。えっ、会議が短いですか? それは大丈夫です。何時も密に連絡・相談していますから。それに私達は菫組です、強いのです。
◇
そもそも政府は防衛費目的で税率を釣り上げるのが難しくなってきたようです。それもそうでしょう、高すぎますから。そこで一気に和平に舵を切りたいようですが、その方法が属国です。とても飲める条件ではありません。それに謝罪の場でそれを持ち出すとは言語道断です、フンです。
「魔王様、先程からこちらを付け狙う車がおりますが、如何致しましょうか」
運転手さんに言われ振り返る私です。確かに車が一台、ずっと後を付いて来ているようです。では、その方の心情を少し時間を遡ってから覗いてみましょう。
「なんて女なんだ! 癇癪にも程があるぞ」
政府のおじさんが何やら怒鳴っています。それも顔を真っ赤にして。それでは血圧が上ってしまいますよ。
「全くだ。よりによって地震を起こすとは、何という恐ろしいまでの力なんだ」
はて、私が地震を起こしたような言い分ですね。もう一人のおじさんも変なことを言っていますが、そんな訳が有る訳無いじゃありませんか。もうボケてしまわれたようですね。おじさん達の会話はまだ続きます。
「これは早急に手を打たないと不味いな」
「安心しろ、プランBを用意してある」
「そうか。悪い芽は早めに刈り取る方が良いだろう」
見窄らしい男がおじさん達に近寄ってきました。この人が私の後を追っている人ですね。どこかで……ああ、ケンジ部長、いえ、ケンジ。こんなところで何をしているのでしょうか。政府のおじさんがケンジに厳つい顔を向けています。
「分かっているな、責任はお前一人にある。その時は、」とのおじさんに、
「分かっている。あれには借りがある、それを返すだけだ」と答えるケンジです。
そうして私の派手なリムジンを追い回している訳ですね。一体、何をするつもりでしょうか。あなたに借りがあるとは到底思えないのですが、また私の温情が裏目に出てしまったようです。
「運転手さん、そのまま行ってください」と指示する私です。
「分かりました」
執拗に付け狙ってくるケンジです。気分が良いものではありませんね。では、えい! としておきましょう。
交差点を黄色信号で通過した私です。その信号を無視してケンジが後ろにピタリと貼り付いています。ですが。
「そこの車、止まりなさい!」
信号無視をしたケンジの車が早速パトカーに停車を求められています。それに従い車を止めるケンジです。おほほ。
どうやらケンジは事故に見せかけて私を亡き者にしようと企てたようですが、それも徒労に終わりました。私を乗せた派手なリンムジは、そのまま夜の街を疾走して行きます。
◇
帰国した私は早速、円卓会議です。春子、夏子、冬子、あれ、冬子がまだのようです。議長は夏子が務めます。
「やはり予想していた通りの展開になったわね」
開口一番、夏子の予測の正しさが確認されました。属国を迫ってくるのは先刻お見通しです。
「それにしても、すごい地震でしたね」
これは私です。まだ体が揺れている感じが残っています。怖かったよー。
「あれは魔王の仕業ではないの? 会談場所付近の直下型でしたよ」
春子が地図上でホテル周辺を丸で囲っています。確かに発生した範囲は狭いようです。そこに遅れて冬子が席に着きました。
「遅れました。先程、政府から謝罪以外の件で、更に謝罪の申し入れがありました。つまり、謝罪以外の件は無かったことにしてくれと」
それを聞いて夏子の、片方の目がつり上がったような、なんとかです。
「まあ、白々しい。ではきっと例の地震を勘違いしたようですね。まあ、それはそれで好都合かもしれません」
冬子の報告が続きます。
「それと例の元副社長4人組に動きがあるそうです」
「何を企んでいるのでしょうか」
「詳細はまだ分かりませんが、新兵器の目処が立ったようで、実験間近という情報です」
「まあ、恐ろしい」
「極秘情報によると、どうやらそれは曽て、シロちゃんが発明したものらしいのです。まだ正確な情報ではありませんが、魔王を超える威力が有るとか無いとか」
「トンデモないジジイですね」
「でも、良くそんなものを採用する気になったものね。魔王といえば魔力のことでしょう。そんなものを信じるなんて」
「そこで例の4人組ですよ。先代魔王に仕えていましたから、その能力を良く知っている、というわけです。それで表沙汰にならないように陰でこっそりと暗躍しているのですね。それが、4人組が向こう側で重宝されている理由でしょう」
ここで議長である夏子がまとめに入ります。
「魔王に匹敵する力ですね。こちらも迎え撃つ手段を準備をしなければなりませんね。一層の事、私達全員が魔王にでもなってしまいましょうか」
「それは良い考えかもしれません。戦力は多いに越したことはありませんから」と冬子に、
「それが『出来れば』よね~」と夏子。そして、
「「そうよね~」」と全員の思いです。
何故か私にだけに発現した魔王の力です。皆さんにも同様の力があれば、どれだけ心強いことかと思う私です。ここで夏子が何かを思い出したようです。
「ところで、魔王で思い出したのだけれど、例の子達、その後は如何?」
これに答えるのは春子です。私が春子に丸投げした彼ら元勇者サークルの少年少女達の面倒を見てくれています。いえ、春子が私に任せてと言ってくれたので、その、あの、丸投げではなく全てをお任せしたのです、はい。
「そうですね、少年AB、今は太郎と次郎ですが、この二人は問題ないですけれど、少女A、今は栄子と呼んでいますが、この子は問題ありですね」
「そうなんですか、一番熱心な子でしたのに」と驚く私です。南の島で私に縋ってきた子ですから。
「ええ、そうなんですが、慣れてきたというのでしょうか、余り生活態度が良くないですね。近隣から苦情が来てますから」と申し訳なさそうな春子。
「あらまあ」と驚いた私はピピッと閃いてしまいました。それを早速披露しましょう。「ではこうしましょう。お仕置きがてらシロちゃんの聞き取り調査をして貰いましょうか。それで、どんなものを発明したのか訊き出しましょう」
「彼女一人では心配ですね」と私の名案に不安そうな春子です。
「それもそうですね、少年Bこと次郎を一緒につけましょう。彼ならシロちゃんの事も詳しそうですからね」と春子の不安を一掃するかのように冬子が提案します。
「「ではそうしましょう」」
全員の意見が一致しました。これにて円卓会議は終了です。えっ、会議が短いですか? それは大丈夫です。何時も密に連絡・相談していますから。それに私達は菫組です、強いのです。
◇
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

戦地に舞い降りた真の聖女〜偽物と言われて戦場送りされましたが問題ありません、それが望みでしたから〜
黄舞
ファンタジー
侯爵令嬢である主人公フローラは、次の聖女として王太子妃となる予定だった。しかし婚約者であるはずの王太子、ルチル王子から、聖女を偽ったとして婚約破棄され、激しい戦闘が繰り広げられている戦場に送られてしまう。ルチル王子はさらに自分の気に入った女性であるマリーゴールドこそが聖女であると言い出した。
一方のフローラは幼少から、王侯貴族のみが回復魔法の益を受けることに疑問を抱き、自ら強い奉仕の心で戦場で傷付いた兵士たちを治療したいと前々から思っていた。強い意志を秘めたまま衛生兵として部隊に所属したフローラは、そこで様々な苦難を乗り越えながら、あまねく人々を癒し、兵士たちに聖女と呼ばれていく。
配属初日に助けた瀕死の青年クロムや、フローラの指導のおかげで後にフローラに次ぐ回復魔法の使い手へと育つデイジー、他にも主人公を慕う衛生兵たちに囲まれ、フローラ個人だけではなく、衛生兵部隊として徐々に成長していく。
一方、フローラを陥れようとした王子たちや、配属先の上官たちは、自らの行いによって、その身を落としていく。

テンプレを無視する異世界生活
ss
ファンタジー
主人公の如月 翔(きさらぎ しょう)は1度見聞きしたものを完璧に覚えるIQ200を超える大天才。
そんな彼が勇者召喚により異世界へ。
だが、翔には何のスキルもなかった。
翔は異世界で過ごしていくうちに異世界の真実を解き明かしていく。
これは、そんなスキルなしの大天才が行く異世界生活である..........
hotランキング2位にランクイン
人気ランキング3位にランクイン
ファンタジーで2位にランクイン
※しばらくは0時、6時、12時、6時の4本投稿にしようと思います。
※コメントが多すぎて処理しきれなくなった時は一時的に閉鎖する場合があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる