31 / 44
#8 栄子と呼ばれたで章
#8.2 和平交渉
しおりを挟む
夜の街を白いリムジンで疾走する私です。私の国と敵対する政府が侘びを入れたいとのことなので、その会合の場所であるホテルに向かっています。勿論、護衛も付けていますよ。ただ、私の乗ってるリムジン、すごく派手です、恥ずかしいです。先代魔王ことマオの悪趣味ですね。ですが本人は一度もこれに乗ったことがありません。次に会うことがあれば小言でも言ってあげましょう。
ホテルの前に到着です。さあ、降りて行きましょうか。それにしても、あれ、政府のお出迎えは無いようです。ええ、私は偉ぶるつもりはありませんが招待しておいて、これですか。まあ良いでしょう、人目を避けるという意味合いもありますからね。
会合の部屋までは階段を上がっていきます。それも長~い階段です。そうして漸く部屋に着きました。中でお待ちでしょう、早速、中に入ります。あら、中はガランとしています。そこに椅子が2脚、寂しそうに置いてあるだけです。どうやら私が一番乗りのようです。何事も一番は気持ちの良いものです。
その部屋の中を行ったり来たりする私です。約束の時間はとうに過ぎています。きっと先方は忙しいのでしょう、分かります。そうして漸く、ノックもなく政府の方々、似たようなお爺さんが2人で来られました。その内の1人が私を見てニヤリとしました。きっと私に会えて嬉しいのですね。少し心の中を聞いてみましょう。
(なんだ、本当に小娘じゃないか、へへ、これらな楽勝だな。魔王と言っても大したことないな。本当にあの国は、へへ、笑ってしまいそうだ)と思いながら、
「よくお出で下さいました。どうぞこちらにお座りください」と言うお爺さんです。
「では、そうさせて頂きます」心の声は聞かなかったことにしましょうの私です。
椅子が2脚しかありませんので、その他の方は立ったままです。遅刻の言い訳は、無いようです。まあ、良いでしょう。
「早速ですが先日の件、私どもの手違いで迷惑を掛けましたことをお詫びします」
椅子に座るお爺さんは、それでも笑顔を絶やさず、頭も下げません。これが謝罪なのでしょうか。まあ、良いでしょう。
「分かりました。謝罪をお受け致します」
ところでこのお爺さん、一体誰なのでしょうか。自己紹介も無く誰なのか分かりません。でもきっと偉い人なのでしょう、そう信じます。
「そう言ってくれると有り難い。ではこの件はこれで」と話を切ろうとするお爺さん。いいえ、まだ聞きたいことがあるのです、の私です。
「先程、手違いと言われましたけれど、その関係者の処罰はどうなりますか」
「処罰? はあ、適切に致します」
「では、誰かを更迭するのですか」
「適切に、対処します」
これはいけませんね。同じことを繰り返すだけのようです。まあ、良いでしょう。これ以上、お話しすることは無いと思いますので、これで終わりでしょう。ですが、お爺さんはまだ続けるようです。
「この機会に我が国からの提案があるのですが、宜しいですか」
「良いですよ、続けてください」
「今回のような事が今後起きないように、つまりは、そろそろ敵対関係を解消したい、と首相が申していまして」
「それは良い考えだと思います」
「そうでしょう。我が国も貴女の国と何時までも紛争状態にあるのはとても不経済な事です。そこで、そろそろ講和を持ちまして終わりにしたいと考えています」
「私もその意見には賛成です」
「そうでしょう。そこで我が国と貴女の国とで条約を結ぶのですが、我が国の国家としての有り様と貴女の国の立場を考えた結果、バランス的に合う形にするには、その、率直に言いますが、我が国に従う形になって貰いたいのです」
「それは、どのようなことでしょうか。分かるように言ってくれませんか」
「うーん、つまり簡単に言いますと我が国の属国になるということです」
「はあ、属国ですか」
「いえいえ、あくまで建前、形式的なものですよ」
「嫌です」
「即答されることではないですよ」
「私が嫌なのですから、嫌です、お断りです」
「はあ、国の規模を考えれば分かるでしょう。その気になれば貴女の国は無くなりますよ。それを貴女の一存で決めて良いのですか。国を存続、繁栄させるのが貴女の役目でしょう。それを一時の感情で決めてしまうのは。全く政治を分かっていない」
「それは我が国に対する宣戦布告と捉えて宜しいのですか」
「いやいや、そんなことは一言も」
「お話は分かりました。とても不愉快です、これで帰らせて貰います」
「ちょっと、あなた」
「ごきげんよう」
私は椅子から立ち上がり、ああ、興奮していたのでしょうか、少し立ちくらみが。不覚にも床に手をついてしまいました。これではいけません、気合を入れて立ち上がりましょう。
「えい!」
するとどうでしょう、地震が起きたようです。私は立ち上がることを止め、そのままの姿勢で地震をやり過ごすことにしました。
「おお~」
おじさんが変な声をあげています、それほど強い地震なのです。上下にドンドン突き上げるような揺れが続きます。その後、シェイクするように左右にユサユサと続きます。それが暫く続いてから収まりました。ですが部屋の中は騒然としています、右往左往するおじさん達です。もうお話は終わりました。不愉快ついでに地震とは、ついていません。さようなら。
◇
ホテルの前に到着です。さあ、降りて行きましょうか。それにしても、あれ、政府のお出迎えは無いようです。ええ、私は偉ぶるつもりはありませんが招待しておいて、これですか。まあ良いでしょう、人目を避けるという意味合いもありますからね。
会合の部屋までは階段を上がっていきます。それも長~い階段です。そうして漸く部屋に着きました。中でお待ちでしょう、早速、中に入ります。あら、中はガランとしています。そこに椅子が2脚、寂しそうに置いてあるだけです。どうやら私が一番乗りのようです。何事も一番は気持ちの良いものです。
その部屋の中を行ったり来たりする私です。約束の時間はとうに過ぎています。きっと先方は忙しいのでしょう、分かります。そうして漸く、ノックもなく政府の方々、似たようなお爺さんが2人で来られました。その内の1人が私を見てニヤリとしました。きっと私に会えて嬉しいのですね。少し心の中を聞いてみましょう。
(なんだ、本当に小娘じゃないか、へへ、これらな楽勝だな。魔王と言っても大したことないな。本当にあの国は、へへ、笑ってしまいそうだ)と思いながら、
「よくお出で下さいました。どうぞこちらにお座りください」と言うお爺さんです。
「では、そうさせて頂きます」心の声は聞かなかったことにしましょうの私です。
椅子が2脚しかありませんので、その他の方は立ったままです。遅刻の言い訳は、無いようです。まあ、良いでしょう。
「早速ですが先日の件、私どもの手違いで迷惑を掛けましたことをお詫びします」
椅子に座るお爺さんは、それでも笑顔を絶やさず、頭も下げません。これが謝罪なのでしょうか。まあ、良いでしょう。
「分かりました。謝罪をお受け致します」
ところでこのお爺さん、一体誰なのでしょうか。自己紹介も無く誰なのか分かりません。でもきっと偉い人なのでしょう、そう信じます。
「そう言ってくれると有り難い。ではこの件はこれで」と話を切ろうとするお爺さん。いいえ、まだ聞きたいことがあるのです、の私です。
「先程、手違いと言われましたけれど、その関係者の処罰はどうなりますか」
「処罰? はあ、適切に致します」
「では、誰かを更迭するのですか」
「適切に、対処します」
これはいけませんね。同じことを繰り返すだけのようです。まあ、良いでしょう。これ以上、お話しすることは無いと思いますので、これで終わりでしょう。ですが、お爺さんはまだ続けるようです。
「この機会に我が国からの提案があるのですが、宜しいですか」
「良いですよ、続けてください」
「今回のような事が今後起きないように、つまりは、そろそろ敵対関係を解消したい、と首相が申していまして」
「それは良い考えだと思います」
「そうでしょう。我が国も貴女の国と何時までも紛争状態にあるのはとても不経済な事です。そこで、そろそろ講和を持ちまして終わりにしたいと考えています」
「私もその意見には賛成です」
「そうでしょう。そこで我が国と貴女の国とで条約を結ぶのですが、我が国の国家としての有り様と貴女の国の立場を考えた結果、バランス的に合う形にするには、その、率直に言いますが、我が国に従う形になって貰いたいのです」
「それは、どのようなことでしょうか。分かるように言ってくれませんか」
「うーん、つまり簡単に言いますと我が国の属国になるということです」
「はあ、属国ですか」
「いえいえ、あくまで建前、形式的なものですよ」
「嫌です」
「即答されることではないですよ」
「私が嫌なのですから、嫌です、お断りです」
「はあ、国の規模を考えれば分かるでしょう。その気になれば貴女の国は無くなりますよ。それを貴女の一存で決めて良いのですか。国を存続、繁栄させるのが貴女の役目でしょう。それを一時の感情で決めてしまうのは。全く政治を分かっていない」
「それは我が国に対する宣戦布告と捉えて宜しいのですか」
「いやいや、そんなことは一言も」
「お話は分かりました。とても不愉快です、これで帰らせて貰います」
「ちょっと、あなた」
「ごきげんよう」
私は椅子から立ち上がり、ああ、興奮していたのでしょうか、少し立ちくらみが。不覚にも床に手をついてしまいました。これではいけません、気合を入れて立ち上がりましょう。
「えい!」
するとどうでしょう、地震が起きたようです。私は立ち上がることを止め、そのままの姿勢で地震をやり過ごすことにしました。
「おお~」
おじさんが変な声をあげています、それほど強い地震なのです。上下にドンドン突き上げるような揺れが続きます。その後、シェイクするように左右にユサユサと続きます。それが暫く続いてから収まりました。ですが部屋の中は騒然としています、右往左往するおじさん達です。もうお話は終わりました。不愉快ついでに地震とは、ついていません。さようなら。
◇
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

異世界立志伝
小狐丸
ファンタジー
ごく普通の独身アラフォーサラリーマンが、目覚めると知らない場所へ来ていた。しかも身体が縮んで子供に戻っている。
さらにその場は、陸の孤島。そこで出逢った親切なアンデッドに鍛えられ、人の居る場所への脱出を目指す。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

食うために軍人になりました。
KBT
ファンタジー
ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。
しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。
このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。
そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。
父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。
それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。
両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。
軍と言っても、のどかな田舎の軍。
リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。
おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。
その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。
生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。
剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる